2021年2月26日金曜日

癌クローン性増殖の視点を含めた組織形成(1)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

読者の方の中に小学校以下のお子さんが
家族にいる方もいると思います。
自分の肌と子供の肌を比べると
子供の肌はしわがなくきめ細やかで
非常に表面状態が良いことが一般的です。
それは細胞、細胞の連結状態
細胞の間の間質の状態が大人と比べて良いからである
と考える事も出来ます。
日本だけではなく世界でも
これから高齢化が進むと考えられます。
平均寿命が延びている事も一つの要因です。
その老化は人の身体を微視的に見ると
細胞の老化を一つ示すものです。
老化に伴う疾患は多くありますが、
時間の経過とともに細胞の質がどのように低下していくか
という事を考える事は
それら多くの疾患の根本的な理解、治療につながります。
身体の各器官を構成する組織は細胞の集まりで
その状態はそれぞれの表現型を持つ
細胞の分布に依存する部分が大きくあります。
例えば、その機械的特性において
延性が低い細胞の勢力が組織内で高ければ、
組織として硬くなります。
そうするとMRIなどでは白く見える事になります。
このような視点を持つと
細胞の発展を継ぎ目なく連続的な見地で
考えていく事は前述したように大きな意味を持ちます。
それが組織の中の細胞の勢力図に影響を与え
表現型、理科的性質を決めるものだからです。
化学療法に代表される薬物治療の
初期の視点が細胞内の信号に依拠する部分が
大きいとすれば、ここで議論したい事は
もう少し巨視的、マクロスコピックな視点とも言えます。
細胞内の遺伝子の事についても考えが及びますが、
その作用機序を考えるにあたっては
単一の細胞にとどまらず、
一つの組織単位での細胞の発展を考えます。
このような研究開発を進め、臨床につなげるためには
人の組織を作るオルガノイド技術の躍進は
必要不可欠となります。
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Nobuyuki Kakiuchi、Seishi Ogawa(敬称略)からなる
日本(京都)、スウェーデンの医療研究グループは
癌の視点を中心に据えて、
癌細胞以外の通常細胞も含めた
ドライバー変異によるクローン性増殖について
包括されています(1)。
本日は筆者の追記、考察を加えながら
その内容の一部を読者の方と情報共有したいと思います。
ーーーーーーーー

//概要(1)//ーーーーーー
癌細胞は前駆細胞において同じゲノム持つクローン細胞への
発展に優位性を持つ「ドライバー変異」を獲得した細胞に
由来するクローン性の疾患であると考えられます。
-----

癌細胞はこのドライバー変異を多く持ち(2)、
その組織の中での発展優位性を獲得していると
考える事も出来ます。
ドライバーというのは「推進力」ということですから
その変異は相同的増殖能力が高いという意味を
含有していると考えられます。
-----
このようなドライバー変異を有する
クローン細胞の組織の中の拡大は
必ずしも腫瘍組織を示すものではなく
表現型として通常細胞を典型的に示す組織にも見られます。
そのようなドライバー変異は
老化、環境負荷、慢性炎症などを示す組織にも
少なくとも一部は見られることがあります。
これらの相同的増殖優位性を持つドライバー変異は
血液、皮膚、食道、気管支、肝臓、子宮内膜、膀胱
などでも確認され、
組織の形成状態が再構築されています。
これらの表現型として典型的には腫瘍性を示さない
ドライバー遺伝子を持つ通常細胞は
これらの組織の中での腫瘍組織への初期形成、発展に
深くかかわっている事が示唆されています。
しかしながら、
このようなドライバー遺伝子の頻度は
必ずしも癌細胞へ発展する確率と正の相関を持つわけではなく
少なくとも一部のドライバー遺伝子においては
癌細胞に発展しにくい逆相関があるものもある
とされています。
-----

つまり、通常細胞へのクローン性の高い
ドライバー変異もあるということかもしれません。
-----
これらのドライバー遺伝子によるクローン性増殖において
癌化への過程、老化、炎症に関わる疾患における
生物学的な重要性について包括されています(1)。
ーーーーーー

//これまでの知見、報告//ーーーーーー
--
癌細胞の増殖に関与するドライバー変異(3-6)。
--
ドライバー遺伝子と環境要因、組織特異性の評価(7,8)。
--
通常組織から癌細胞まで発展するまでの
遺伝子的な進化、発展の過程と
癌組織内のクローン性の蓋然性、異種性、分布(9-33)。
--
診断、臨床症状が現れる前の初期の段階で
人の組織を調べる事が困難であることから
通常細胞からどのように癌細胞へ発展するのか
その境界の最も初期の段階の理解は進んでいない状況です。
このことは通常細胞と癌細胞の境界条件の
曖昧性を示唆するものであると考えられます。
ーーーーーー

//問い//ーーーーー
-----
(Q1:癌発生の根本的な問いに関して)
・癌細胞は「いつ」生じるのか?
・どの遺伝子的な事象によって生じるのか?
・生まれる分子的な機序は?
・微小環境によってどのように影響を受けるか?
・発がん物質や癌抗原などの影響は?
--
<Q1の解答が促す進展>
・癌生成機序
・早期の診断、予測
・予防
--
(Q2:癌細胞発展、通常組織との相違に関して)
・選ばれたクローン性が通常細胞をどう改変するか?
・通常細胞のクローン性との違いは?
・再構成される事によって生じる差異は?
--
<Q2の解答が促す進展>
・癌生成の新たな見識
・癌の予防
・新たな治療法
・組織恒常性への理解
・炎症プロセスの理解、治療
-----
継ぎ目のない時間的な細胞発展の可視化によって
発展プロセスが分かれば予防につながります。
また、
iPS細胞の山中因子(Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc)
ように時計を戻すこともできるかもしれません。
また画像分析において人工知能、機械学習の導入や
画像だけではなく全遺伝子的な時間連続評価が
「Method Primer」に存在するか?
このような事を人由来の組織を使った
オルガノイドで易分析性を持たせた状態でできないか?
ーーーーー

//筆者の視点//ーーーーー
細胞の細胞核の中にある23種類の染色体の2倍体、
46本の染色体が糸を引くように有糸分裂した後
娘細胞2つになります。
その際、遺伝子配列自体は前駆細胞の情報を
ほとんど引き継ぐことになります。
稀にコピーミスはあるのかもしれません。
しかし、DNAはRNAよりも安定的であると考えています。
では、なぜ細胞の表現型はこれだけ多能なのか?
ということです。
多能性を有する幹細胞であれば
身体の色んな組織になることができます。
それはおそらくアセチル化、ユビキチン化、
メチル化、それらの価数という
遺伝子の活性度を変える
DNAに結合するタンパク質などの影響に
一つは依存すると理解しています。
あるいはその遺伝子の表現型は
その遺伝子の配座、3次元構造
さらには時間発展(4次元構造)によっても変わる
可能性があります。
いずれにしても同じゲノム(全遺伝子情報)であったとしても
それがどのような機能を持つかというのは
一義的に決まるものではなくて
非常に多様であるという事です。
しかし、Nobuyuki Kakiuchi、Seishi Ogawa(敬称略)らが
議論しているクローン性とは
このような遺伝子によって生じた
細胞の表現型、機能の互いの均質性(homogeneity)が
高いことを示しています。
従って、
ドライバー遺伝子を深く考えていくにあたっては
細胞が有糸分裂するときに
染色体ば娘細胞に振り分けられて
その後、遺伝子構造が出来上がる時の
構造上の変化がクローン性の高い場合と
そうではない場合とでどのように異なるか?
それを調べることに対して一定の生物学的な意義を
見出しています。
ーーーーー

//細胞特異的輸送系統//ーーーーーーーー
癌化のリスク評価は慎重に行う必要がありますが、
通常細胞への相同的増殖優位性を持つ
ドライバー変異があるなら
その変異を人為的に導入する事によって
組織の細胞表現型勢力図の改変を行う事ができる
可能性があります。
多くの疾患において
病変部位での細胞の質が良くなれば
基礎的、根本的な治療の一翼を担うと考えられます。
--
もちろん形の恒常性、保護や
細胞同士の連結状態、生成、廃棄の循環
細胞間の間質の状態、液体、免疫機能との相関など
考えないといけないことは多くあります。
--
細胞の質を改善した細胞治療や
組織の一部に常在する質の高い幹細胞の有効利用や
生体内での遺伝子治療などによって
質の良い細胞の組織の中での
クローン性を上げる事ができるか?
これら実現において
特定の組織に対して走化性を与える事が
潜在的にできると考えられる細胞特異的輸送系統の
コンセプトが利用できる可能性があります。
ーーーーーーーー

以上です。

(参考文献)
(1)
Nobuyuki Kakiuchi & Seishi Ogawa 
Clonal expansion in non-cancer tissues
Nature Reviews Cancer (2021)
(2)
Vogelstein B, Papadopoulos N, Velculescu VE, Zhou S, Diaz LA, Kinzler KW 
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