2021年2月3日水曜日

血清抗体検査の評価と発症後の抗体時間変化

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

厚生労働省の発表によれば
新型コロナウィルス感染症発症から10日後には
感染のリスクがほぼ消滅すると言われています。
従って、
その日にちを経過した人で症状が落ち着いた人は、
新型コロナウィルスを受け入れていない民間の病院など
病床が空いているところに転院させる事が
地域の運用として求められると専門家の方は考えています。
新型コロナウィルス中等症、重症患者の病床を空床にして
適切な医療が受けられない患者さんを減らすことが
求められるからです。
あるいは新型コロナ病棟の医療従事者の方の負担を
減らすことも大きな目的の一つです。
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その目安として考えられている10日は
疫学的な裏付けがあって判断されたと推測しますが、
生理学的な検査データからも同様の事が言えれば、
その判断基準はより強いものになります。
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Yuki Nakano, Makoto Kurano(敬称略)ら
日本、中国の医療研究グループは、
抗体(IgM、IgG抗体)の発症からの時系列変化を報告しています(1)。
Yuki Nakano氏らの報告では、
血清から抗体を化学発光免疫測定法で定量化する手法に関する
PCRに変わる検査方法の選択肢としての評価について
主に記述されています。
その内容に加えて、抗体の産生のタイミングと
感染のリスクの有無の境界日に設定している10日間。
これらの視点からワクチンの観点を踏まえ考察します。
本日は参考文献(1)の内容の一部について
読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は筆者の追記、考察です
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//条件//ーーーーーー
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(場所)
東京大学病院(PCRテスト実施)
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(人数)
105人
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(PCR結果)
陽性:26人/陰性:79人

陰性の人も肺炎など何らかの疾患を持っている人がほとんどです。
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(抗体の評価)
IgG、IgM抗体
※Sタンパク質、Nタンパク質に対して親和性を持つ抗体
他のコロナ系ウィルスと交差性が少ない(3)。
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//検査としての評価//ーーーーーー
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(手法)
化学発光免疫測定法
Chemiluminescent immunoassays (CLIA) 
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(PCRの陽性感度)Ref.(2)より
唾液:72%、鼻綿棒:63%
※従って、3割程度は偽陰性が出る可能性がある。
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(化学発光免疫測定法のメリット)
血清による評価なので飛沫のリスクがほとんどなく
評価者に対しての安全性に優れている。
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(評価 ※PCRの陽性感度との比較の中で探る。)
-
IgG抗体の方がIgM抗体よりも優れている。
-
偽陽性を防ぐためには
IgG抗体カットオフ(陽性陰性の基準)5AU/mLが適切
(参考文献(1) Figure.1Dより)
その基準でみると唾液のPCRの感度を超えるのは
症状が現れてから9~10日後以降
陽性感度:80%程度
(参考文献(1) Figure.3Dの↓より)
9~10日以降ならばカットオフを6AU/mLに上げても
陽性感度はほとんど変わらない。
(参考文献(1) Figure.3Bより)
-
この発症から9~10日後の抗体量の平均は
最大抗体量のおおよそ1/100程度。
(参考文献(1) Figure.1Bより)
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(結論)
発症から9~10日程度経過すれば
化学発光免疫測定法による血清IgG抗体評価は
PCRの検査の陽性感度を超えると考えられます。
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//抗体の発症後時間変化について//ーーーーーー
上述したように発症から10日後以降の
感染リスクはほとんどないという事が示されています。
その時点の抗体量を見ると
最大抗体量の1/100から1/10程度であることがわかります。
感染リスクがないことが
体内のウィルス量が十分下がっている事と
等価であるかは議論が必要ですが、
最大抗体量が体内の十分な抗ウィルス性を発揮するために
必要かどうか?
このような視点が生まれます。
ワクチン接種では回復期抗体量よりも十分に高い
抗体量が平均的に分泌されることが
治験の結果から報告されています。
ただ、そのワクチンがどれくらいの期間有効か?
このことに関してはまだわかっていません。
そのワクチンの有効期間を考えるときに
液性免疫の視点では抗体が時間とともにどう変わっていくか?
これが一つの評価指標となります。
もし仮に、発症から9~10日程度の抗体量で十分であれば
ワクチンで生み出される最大の抗体量よりも
1/10以下程度でもウィルスを減らすためには十分であるかもしれない
という視点が生まれます。
そうした場合、この視点
抗体がどれくらいまで減少した時に
再度ワクチンを接種する必要があるかの判断基準の一つになります。
細胞性免疫、免疫機能の記憶性、親和性成熟など
様々な要因があるので複雑で鮮明にはならないかもしれないですが、
いずれにしてもワクチンをどれくらいの間隔で
継続的に接種していかなければいけないか?
これについて今後決めていく必要があります。
その際には最低の抗体量というのは一つの目安になります。
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以上です

(参考文献)
(1)
Yuki Nakano, Makoto Kurano, Yoshifumi Morita, Takuya Shimura, Rin Yokoyama, Chungen Qian, Fuzhen Xia, Fan He, Yoshiro Kishi, Jun Okada, Naoyuki Yoshikawa, Yutaka Nagura, Hitoshi Okazaki, Kyoji Moriya, Yasuyuki Seto, Tatsuhiko Kodama & Yutaka Yatomi 
Time course of the sensitivity and specificity of anti-SARS-CoV-2 IgM and IgG antibodies for symptomatic COVID-19 in Japan
Scientific Reports volume 11, Article number: 2776 (2021) 
Department  of  Clinical  Laboratory,  The  University  of  Tokyo  Hospital,  Tokyo,  Japan.  
Department  of  Clinical Laboratory  Medicine,  Graduate  School  of  Medicine,  The  University  of  Tokyo, Japan.  
The Key Laboratory for Biomedical Photonics of MOE At Wuhan National Laboratory for  Optoelectronics  -  Hubei  Bioinformatics  and  Molecular  Imaging  Key  Laboratory,  Systems  Biology  Theme, Department of Biomedical Engineering, College of Life Science and Technology, Huazhong University of Science and Technology,  Hubei,  People’s  Republic  of  China.  
Reagent  R&D  Center,  Shenzhen YHLO  Biotech  Co.,  Ltd, Shenzhen, Guangdong, People’s Republic of China.  
Business Planning Department, Sales and Marketing Division, Medical and Biological Laboratories Co, Ltd, Tokyo, Japan.  
Department of Blood Transfusion, The University of Tokyo Hospital, Tokyo, Japan.  
Department of Infection Control and Prevention, The University of Tokyo, Tokyo, Japan.  
Department of Gastrointestinal Surgery, The University of Tokyo, Tokyo, Japan.  
Laboratory for Systems Biology  and  Medicine, The University  of Tokyo, Tokyo, Japan.  
(2)
Wang, W. et al. 
Detection of SARS-CoV-2 in different types of clinical specimens. 
JAMA https ://doi.org/10.1001/jama.2020.3786 (2020).
(3)
Kontou, P. I., Braliou, G. G., Dimou, N. L., Nikolopoulos, G. & Bagos, P. G. 
Antibody tests in detecting SARS-CoV-2 infection: a meta-analysis. Diagnostics (Basel) 
https ://doi.org/10.3390/diagn ostic s1005 0319 (2020).


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