2021年2月2日火曜日

アカゲザルにおけるmRNAワクチン(BNT162b)の効果

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

東京の練馬区の職員の方々が
ワクチンの接種を迅速に行えるように創意工夫されています。
それを「練馬モデル」と呼んでいます。
基本的にはファイザー社(さん)、ビオンテック社(さん)の
ワクチンは1瓶で6接種となっていますので
冷凍庫から取り出し
開封したら6接種を連続して行う必要があります。
基本的に練馬区ではワクチンの接種を促し、
医療や社会経済の早期回復に貢献するために
高齢の方でも受けやすいようにかかりつけ医で接種できるような
システムを考えています。
従って、区内の保健師、診療所の医師、看護師の方々と
連携して、予約、輸送などを考えていく事になります。
上述したように6回セットなので
予約の際には1日の接種人数が6の倍数になるようにします。
(※キャンセルがあった場合には、付き添いの人に接種するなど
数の調整を柔軟に行います。) 
ワクチンは高齢者や基礎疾患がある方
全員が受けられるような供給がありますので、
その環境の中でその地域のどれくらいの方が接種してくれるか?
それが非常に医療、社会経済として重要になります。
ワクチンに対する正しい情報のコミュニケーションも重要ですが、
もう一つ大事なのが
身近な診療所で受けられるという安心、利便性です。
このような市区町村の職員の方々が考えられた
システムというのは転用が可能だと思いますので、
今度は市区町村、都道府県を超えて
このような良いモデルを参考にしてその地域の実情に合わせながら
より良い接種環境を整えていただければと思っています。
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今、一つ問題となっているのが、
世界の国々のワクチン供給状況の格差だと言われています。
COVAXファシリティーというのがあります。
基本的には感染症が生じた時に
ワクチンの製造技術、生産技術があって
迅速に供給できるシステムが世界で十分にあれば、
後は金銭的な問題となります。
今回の新型コロナウィルスの場合は
金銭面を除いたとしても供給の問題があります。
従って、これを機にワクチンや特効薬の技術開発能力
製造技術を日本を含めて世界的に上げていくということが
求められると思います。
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日本に供給される予定の3種類のワクチンがあります。
第3相治験が行われ、現在接種が行われている段階です。
当然、疫学調査も行われていると思われます。
今後、段階的に報告が出てくるものと予想されますので
逐次、読者のみなさんと情報共有したいと思います。
本日は、
Annette B. Vogel, Isis Kanevsky, Ye Che(敬称略)ら
ドイツ、アメリカの医療研究チームが
ファイザー社、モデルナ社のmRNAワクチンBNT162bの
アカゲザルの効果について報告しています(1)ので
その内容の一部を読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は筆者の追記、考察です。
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//mRNAワクチンの構造的観点//ーーーーーー
mRNAワクチンは新型コロナウィルスのSタンパク質を作る
設計図を脂質ナノ粒子の中に入れ、
体内に投与することで細胞内で、その設計図に応じて
病原性のないSタンパク質だけが形成されます。
そのSタンパク質の構造は等身大で消去されている部分がありません。
Sタンパク質は類似する構造を3つ持っていて
3量体を形成しています。
この3量体とすることでACE2エントリー受容体との
親和性を1000倍に上げることができています(単量体と比較)。
また、
この3量体(3つペア)のタンパク質は
Open配座、Close配座という2つの準安定状態があり
Open配座でしかACE2受容体に結合することはできません。
このOpen構造を持っている生み出されたSタンパク質は
全体の20.4%でした。
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3量体が適しているのはこのようなOpen配座が
生まれる確率が低いことが挙げられるのではないかと思います。
全体の20.4%しかないからです。
ACE2受容体との結合親和性が高いタンパク質の為
それを元に生み出された抗体は
実際に新型コロナウィルスが入ってきて
ACE2受容体を使って、本物のSタンパク質を通じて
感染しようとするときに高い効力を発揮する
と考える事ができます(高い中和能)。
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//2回接種(Booster dose)の効果//ーーーーーーーー
アカゲザルにおいて21日間空けて
2回接種した時の抗体、中和能の時間変化を見ています。
1回接種後、21日までと
21日後、2回接種した後では
抗体量では10倍以上、中和能も10倍以上異なります。
(参考文献(1) Figure.3a,bより)
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Booster doseの効果は液性免疫の
親和性成熟(Affinity maturation)が一つ関係していると思います。
1度接種した後、しばらく時間を置いて
もう一度同じワクチンを接種した場合においては
身体が記憶しているためワクチンの精製能力、質が
向上する可能性があることを1つ示唆していると考えます。
従って、1回でまとめて接種するよりも
2回接種のほうが抗体産生、質の面で有利であると考えられます。
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//感染予防効果//ーーーーーーーー
ワクチンを接種したアカゲザルに
新型コロナウィルスを感染させて、
その予防効果をウィルスRNA量で比較評価しています。
比較は予防接種していないアカゲザルとです。
その結果
ワクチン接種群では10日間の間、
ウィルスの上昇はRNA(肺、鼻腔)からは観察されませんでした。
しかし、接種していないアカゲザルは
3日目にピークとなり、6日目まで確認されました。
10日後にはどちらもウィルスは検出限界以下となっています。
抗体の中和能の反応も
接種群では新型コロナウィルス感染前から上がっており
ウィルスが体内に入れられても
その中和能を変化させる事はありませんでした。
(参考文献(1) Figure.4a-cより)
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//細胞性免疫//ーーーーーーーー
ワクチンを接種した時にアカゲザルのケースで
抗原認識とは別の経路でTh1型と呼ばれる
細胞性免疫が亢進されました。
-
IFNγ、IL2産生後CD4+T細胞が亢進
IFNγ産生後Sタンパク質特異的CD8+T細胞が亢進
-
ともに接種から28日後以降に向上しました。
(参考文献(1) Extended Data Figure 5b,dより)
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従って、感染細胞やウィルス株を
T細胞が直接攻撃するような細胞性免疫を
抗体とは別に有していると考えられます。
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※現在使用されているワクチンは効果がより高い
BNT162b2であるとファイザー社が明らかにしています。

以上です。

(参考文献)
(1)
Annette B. Vogel, Isis Kanevsky, Ye Che, Kena A. Swanson, Alexander Muik, Mathias Vormehr, Lena M. Kranz, Kerstin C. Walzer, Stephanie Hein, Alptekin Güler, Jakob Loschko, Mohan S. Maddur, Ayuko Ota-Setlik, Kristin Tompkins, Journey Cole, Bonny G. Lui, Thomas Ziegenhals, Arianne Plaschke, David Eisel, Sarah C. Dany, Stephanie Fesser, Stephanie Erbar, Ferdia Bates, Diana Schneider, Bernadette Jesionek, Bianca Sänger, Ann-Kathrin Wallisch, Yvonne Feuchter, Hanna Junginger, Stefanie A. Krumm, André P. Heinen, Petra Adams-Quack, Julia Schlereth, Stefan Schille, Christoph Kröner, Ramón de la Caridad Güimil Garcia, Thomas Hiller, Leyla Fischer, Rani S. Sellers, Shambhunath Choudhary, Olga Gonzalez, Fulvia Vascotto, Matthew R. Gutman, Jane A. Fontenot, Shannan Hall-Ursone, Kathleen Brasky, Matthew C. Griffor, Seungil Han, Andreas A. H. Su, Joshua A. Lees, Nicole L. Nedoma, Ellene H. Mashalidis, Parag V. Sahasrabudhe, Charles Y. Tan, Danka Pavliakova, Guy Singh, Camila Fontes-Garfias, Michael Pride, Ingrid L. Scully,Tara Ciolino, Jennifer Obregon, Michal Gazi, Ricardo Carrion Jr., Kendra J. Alfson, Warren V. Kalina, Deepak Kaushal, Pei-Yong Shi, Thorsten Klamp, Corinna Rosenbaum, Andreas N. Kuhn, Özlem Türeci, Philip R. Dormitzer, Kathrin U. Jansen & Ugur Sahin 
Immunogenic BNT162b vaccines protect rhesus macaques from SARS-CoV-2
Nature (2021)


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