いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
最近、メディアで逃避変異(Escape mutation)について
取り上げられることが多いです。
新型コロナウィルスが流行してから
日本では慶応大学の医学部などで
毎日リアルタイムでウィルスの変異、進化(Evolution)
について監視されています。
その範囲は日本だけではなく世界です。
世界で一元的にサイトを作り
新型コロナウィルスの系統図を更新されています。
変異は基本的にRNAのコピーミスで
ある一定の確率で起こりますから
何か逃れようと意思があるわけではなく、
ランダム(乱雑)に起こると考えられます。
その中で「結果的に」残ることができたものが
変異として社会で認識されるという理解です。
日本で独自に変異が起こったものは
重症化しにくい特徴を持っていたとされています。
このような事も起こりえます。
ただ、モノクローナル性が強く
Classが揃っている抗体を生むワクチンが
世界で広く接種されると
おそらく一定割合それを逃れるウィルス株が
生じると考えられます。
そう考えるのが自然です。
それ以外の親和性の高いウィルス株は消滅しますから
結果としてワクチンの抗体から逃れる
ウィルス株が主流になると思います。
ただ、それがどれだけ拡がるか?
これについては未知です。
人の免疫機能には一定の交差性がありますから
2020年の初期の頃のように一気に広がる事は
よほど新規性の高いウィルス株でないとないのではないか
と考えられます。
しかし、それは確定的ではありません。
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このような事が想定されますし、
ワクチンの開発、治験、接種までは一定の期間かかりますから
今の時点で逃避変異が起こる事を前提にして
ワクチンの開発を進める必要があります。
また、ワクチンを混合する(Cocktail)する事は
今、1社のワクチンだけではないので
組み合わせる事はできます。
様々な組み合わせで治験を進める事が大切になります。
できれば、流行がある程度見られる時に
フェーズ3の治験まで行くことが大事です。
感染が収まると大規模治験ができなくなるからです。
従って、これは急ぐ必要があります。
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Paul-Albert Koenig, Hrishikesh Das, Hejun Liu,
Beate M. Kümmerer, Florian N. Gohr,Lea-Marie Jenster,
Lisa D. J. Schiffelers, Yonas M. Tesfamariam, Miki Uchima,
Jennifer D. Wuerth(敬称略)ら
ドイツ、スウェーデン、アメリカからなる
医療研究グループはアルパカなどで作られる
重鎖のみのナノボディー(抗体)の組み合わせの
逃避変異の抑制効果についても報告されています(1)。
従って、今の時期の需要に沿った報告となっています。
本日はその内容の一部を読者の方と情報共有したい
と思います。
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//重要な結果//ーーーーーー
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(ナノボディーVHHの種類)
・VHH EとVHH Vを選択。
※EとUはRBDと高い親和性を持つナノボディーの種類
(参考文献(1) Fig.1Bより)
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(選択されたVHH EとVHH Vの構造上の特徴)
・重なることなく互いに独立して形成できる。
接触することなく同時結合できる。
(参考文献(1) Fig.2A、Fig.4E,Fより)
※例えば、VHH UとVHH Vは近い。
これが同時結合させる場合にどのような影響があるか?
この点は重要だと考えられます。
(参考文献(1) Fig.2Fより)
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(ナノボディー混合の細胞感染阻止効果)
・VHH EとVHH Vを組み合わせる事で中和能10倍~100倍
※IC50:中和能
単独:VHH E 51nM/VHH V 201nM
混合:VHH EV 2.9nM/VHH V 4.1nM
(参考文献(1) Fig.4Cより)
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(ナノボディー混合の細胞の融合現象)
違う種類のナノボディーを混合させると
結合後10時間程度で細胞同士の融合現象が観られます。
参考文献(1) Supplementary Information Fig.S22
で全体の色が変わっている段階が融合が起きた時です。
基本的に単一の抗体に関しては価数に関わらず
融合現象は見られません。
--
(多価の効果)
・同じナノボディーでも3量体から成るSタンパク質に
2つ結合した時点(Bivalent)69倍程度中和能が向上する。
(参考文献(1) Fig.4Gより)
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((ナノボディー混合による逃避変異に対する効果))
VHH EとVHH Vの結合部位に変異を与える。
単独ではほぼ100%細胞感染する条件で
組み合わせた時は最大で20%程度の感染で済む。
条件によればほとんど0%の場合もある。
他の変異に対しても寛容的である。
(参考文献(1) Fig.5Fより)
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//追記事項、考察//ーーーーーーーー
ナノボディーは基本的に重鎖のみであり
Fcドメインを含まないので
自然免疫系を中心に発現されているFc受容体との
相互作用がないと考えています。
しかし、SARS-CoV(2003-)で作製されたVHH72は
Fcドメインを融合しているといいます(2)。
ただ、参考文献(1)の記載では
Fc受容体は欠落しているといわれています。
この有無はナノボディーの設計に際に重要だと考えられます。
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組み合わせる事で中和能が上がっている事
直接的なものも含めて逃避変異に強い構造体なっている
事は適切なナノボディー抗体の選択によって
逃避変異に強い予防的な免疫系を築けるということです。
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(考察(Perspective and Discussion)※英訳あり)ーー
ナノボディーは重鎖のみなので
分子量、体積がIgG抗体よりも小さいです。
このことにより比較的近い受容体結合面でも
衝突することなく、接触することなく
複数のナノボディーが同時に受容体結合面に結合できるため
混合させる際には適している可能性があります。
衝突する事は同時結合を阻害する可能性があるからです。
ただ、参考文献(1)Fig.4のように離れた受容体結合面でも
ナノボディー分子としては大きさがあるので
空間的にはそれほど余裕はありません。
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細胞と細胞の融合(Cell-cell fusion)は
遊離ウィルス株なしに細胞内の他に細胞に
ウィルスが移動する事ができることと
組織を破壊する事からそれを阻害する事が考えられています(7)。
おそらく細胞内に感染する前の細胞融合の場合は
細胞が破壊されるので感染の機会を奪うという事かもしれません。
しかし、組織の破壊という点においては
感染前後の両者で明確に区別できるものではありません。
ナノボディーを組合させたときに
細胞の融合と組織の健全性の副反応がないか?
これについては注視が必要です。
また融合が起こる前後での中和能の変化を調べれば
融合によって中和能が上がっているのか
構造的な機序で中和能が上がっているか
という切り分けができる可能性があります。
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Nanobody has only a heavy chain, so molecular mass and volume are smaller than those of IgG antibody. Therefore, multi-nanobodies can bind two RBD domains without collision or touch simultaneously. This may make nanobody cocktail suitable for prophylaxis or vaccination. Collision between nanobodies prevents them from simultaneous bonding. However, even small nanobody doesn’t have space margin (Ref.(1) Fig.4).
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When cell-cell fusion occurs in infected cells, virus can move other cells without free virus(outside a cells), whereby tissue may be inflamed. Therefore, cell-cell fusion must be prevented on an infected cell(7). Probably, cell-cell fusion before infecting by nanobody cocktail may prevent virus from infecting a cell due to rupturing a cell before entry. However, even in this case, tissue damage cannot be avoided. Therefore, we need to continuously investigate side effect for tissue when nanobody cocktail is adopted. Additionally, we could understand why neutralization capacity is significantly improved through investigating change of neutralization capacity both before and after cell-cell fusion (due to fusion? or structure?).
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(質問事項(Question and Discussion)※英訳あり)ーー
なぜ3量体のSタンパク質に同じナノボディーが
2つ結合したら一気に中和能が変わるのか?
重要な点ですが、理由は不明です。
一つ考えられる理由としては
Sタンパク質の3量体の構造が融合する事によって
構造が崩れる事です。
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ナノボディーは回復者血漿療法のように
抗体を直接入れるのであれば、
その持続期間がどれくらいであるか?
基本的に人のB細胞で産生できないと考えているので
本体設計後のナノボディーを入れた時に
B細胞など免疫細胞がどのように記憶して
その後の抗体産生に影響を与えるのか?
あるいは、そこの相互作用はないのか?
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下記のようにSタンパクの配座は安定化されています。
このことはオープンとクローズ配座の転換が
起こりにくいことを示していると考えますが、
ナノボディーによって中和されることで
その構造は変わり得るとされています。
一つ目の質問とも関わりますが
どのような機序で構造が変わるのでしょうか?
(固定に関するする引用文(1))
To stabilize the prefusion conformation, mutants of spike lacking the furin cleavage site and containing stabilizing proline substitutions were used throughout this study
(変化に関するする引用文(1))
Stabilization of the RBD up conformation by neutralizing nanobodies may thus favor conformational changes that mediate fusion
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Why bivalent nanobodies can improve neutralization capacity significantly compared to monovalent nanobodies?
On possible reason is that S protein structure may break up via fusion of trimer spike.
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How many time doses nanobodies level maintain if nanobodies are infused directly as convalescent plasma therapy, meaning that humoral immunity isn’t mediated?
To my knowledge, nanobody cannot be produced through human B cell. How immune system is affected through infusion of nanobodies?
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How the stabilized prefusion conformation change by neutralizing nanobodies? This is correlated with the first question.
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//その他の情報//ーーーーーー
選択されたVHH Eは下記と類似。
・中和抗体CC12.3 (3)
・ナノボディーH11-D4, MR17, SR4 (4,5)
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(参考文献)
(1)
Paul-Albert Koenig, Hrishikesh Das, Hejun Liu, Beate M. Kümmerer, Florian N. Gohr,Lea-Marie Jenster, Lisa D. J. Schiffelers, Yonas M. Tesfamariam, Miki Uchima,Jennifer D. Wuerth, Karl Gatterdam, Natalia Ruetalo, Maria H. Christensen, Caroline I. Fandrey,Sabine Normann, Jan M. P. Tödtmann, Steffen Pritzl, Leo Hanke, Jannik Boos, Meng Yuan,Xueyong Zhu, Jonathan L. Schmid-Burgk, Hiroki Kato, Michael Schindler, Ian A. Wilson,Matthias Geyer, Kerstin U. Ludwig, B. Martin Hällberg, Nicholas C. Wu, Florian I. Schmidt
Structure-guided multivalent nanobodies block SARS-CoV-2 infection and suppress mutational escape
Science 371(6530) eabe6230 (2021)
(2)
Xavier Saelens and Bert Schepens
Single-domain antibodies make a difference
Science 371(6530) 681-682 (2021)
(3)
M. Yuan et al.,
Structural basis of a shared antibody responseto SARS-CoV-2.
Science 369, 1119 – 1123 (2020).
doi: 10.1126/science.abd2321; pmid: 32661058
(4)
J. Huo et al.,
Neutralizing nanobodies bind SARS-CoV-2 spikeRBD and block interaction with ACE2.
Nat. Struct. Mol. Biol. 27,846 – 854 (2020).
doi: 10.1038/s41594-020-0469-6;pmid: 32661423
(5)
T. Li, H. Cai, H. Yao, B. Zhou, Y. Zhao, W. Qin, C. Hutter, Y. Lai,J. Bao, J. Lan, G. Wong, M. Seeger, D. Lavillette, D. Li,
A potentsynthetic nanobody targets RBD and protects mice fromSARS-CoV-2 infection.
bioRxiv 10.1101/2020.06.09.143438[Preprint]. 24 September 2020. doi: 10.1101/2020.06.09.143438
(6)
D. Wrapp et al.,
Cryo-EM structure of the 2019-nCoV spike inthe prefusion conformation.
Science 367, 1260 – 1263 (2020).doi: 10.1126/science.abb2507; pmid: 32075877
(7)
Bojan F. Hörnich, Anna K. Großkopf, Sarah Schlagowski, Matthias Tenbusch, Hannah Kleine-Weber, Frank Neipel, Christiane Stahl-Hennig, Alexander S. Hahn
SARS-CoV-2 and SARS-CoV spike-mediated cell-cell fusion differ in the requirements for receptor expression and proteolytic activation
biRχiv https://doi.org/10.1101/2020.07.25.221135
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