いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスは肺などの組織が炎症を起こすことで
組織特異的な免疫惹起が起こるという指摘もあります。
自己免疫疾患では骨髄系やリンパ系の幹細胞が
遺伝子的な異常を起こして生じることもあると考えられますが、
新型コロナウィルスに関しては
ウィルスによる組織の異常に端を発したものではないか?
このような指摘もあります(3)。
仮説の域は出ませんが、組織特異的な免疫異常であれば
そこから血液を通り全身に炎症性免疫細胞や
サイトカインが放出されたときには
「少し希釈された状態で」全身に到達するかもしれません。
そうした場合、自己免疫疾患の症状よりも軽い形で
関節、脳、臓器に影響を与える可能性があります。
あるいはウィルスそのものが拡散して
各組織で免疫異常が生じている可能性もあります。
特に脳に関しては回復が難しい組織なので
後遺症が続く原因の一つとして考えられます。
多発性硬化症は軸索の周りにあるミエリン鞘が破壊される
事によって神経細胞が死滅する疾患です。
この原因はB細胞やT細胞などの免疫異常によって
起こることが指摘されています(1,2)。
また、エプスタイン・バール・ウイルスの関与なども
指摘されていることから
新型コロナウィルスと多発性硬化症の関連についても
一定の注意が必要だと考えられます。
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Scott S. Zamvil、Stephen L. Hauser(敬称略)からなる
アメリカ合衆国の医療研究グループは
多発性硬化症とB細胞の関連、
Joan M. Goverman(敬称略)からなる
アメリカ合衆国の医療研究グループは
多発性硬化症と制御型T細胞の関連について
基礎医学の観点から臨床に対しての示唆を提供しています(1,2)。
本日は、その内容の一部について
考察、見識を追記しながら読者の方と情報共有したいと思います。
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//B細胞との関連(1)//ーーーーーー
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B細胞に強く発現されている表面受容体であるCD20の
機能をアンタゴナイズしてB細胞を欠損させることで
多発性硬化症に対してB細胞は重要な役割を果たしている
ことが示されています(4,5)。
例えば、Ofatumumab(ant-CD20モノクローナル抗体)は
T細胞とB細胞の活性を抑えるTeriflunomideよりも
多発性硬化症に対する臨床効果が優れていたことが
示されています(5)。
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(病理)
B細胞に発現されるHLA-DR15 Locusである
表面受容体DR2aとDR2bはMHCクラスII分子で
CD4+T細胞と相互作用します。
これが通常では弱い親和性でT細胞と相互作用して
メモリT細胞として脳の組織の恒常性が保たれています。
しかし、
ウィルスや自己ペプチド(RASGRP2)はスーパー抗原と働き
B細胞とCD4+T細胞のDR2a,2b受容体を通した
相互作用を高める効果があります。
それによってエフェクターT細胞が過剰に活性化され
神経細胞が炎症を起こすと考えられています。
(参考文献(1) Fig.1より)
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(診断)
自己ペプチド(RASGRP2)などのバイオマーカーを
脳脊髄液などで検出する事によって
病因の一つを少なくとも診断できる可能性があります。
ただし、通常でも脳で発現されているペプチドなので
量依存的な評価指標が求められます。
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//制御型T細胞との関連(2)//ーーーーーー
自己免疫疾患ではエフェクターT細胞に対して
制御型T細胞の機能が相対的に落ちている事が考えられます。
それは代謝的な環境変化によって
一つ引き金になっている可能性があります。
具体的にはオレイン酸が不足することで
免疫細胞の核内にある遺伝子を通した代謝経路(OXPHOS)が
抑制されるため、その代謝を必要とする
制御型T細胞の活動が弱められてしまうことです。
制御型T細胞は創傷治癒など組織の恒常性を保つために
必要なので、ウィルスや外敵で高められた
エフェクター細胞の副反応として生じた
脳の神経細胞、細胞外組織などの損傷を
治癒する働きがあると考えられます。
実際にオレイン酸を増やすことで制御型T細胞の機能が
高まったという報告があります(6)。
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(問い)
オレイン酸は他の自己免疫疾患でも影響がありますか?
食事によるオレイン酸補充で制御性T細胞を活性化できますか?
例えば、オリーブオイルなどはどうでしょうか?
脳脊髄液のオレイン酸量は制御性T細胞の寿命に影響を
与えるでしょうか?
これらの事は調べる価値のあることです。
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//細胞特異的輸送系統の観点//ーーーーーーーー
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おそらくB細胞そのものを欠損させるよりも
強いアゴニストとして働く自己ペプチド(RASGRP2)の
働きを阻害する事が有効だと考えられます。
脳に多く存在するペプチドですが
もし多発性硬化症の場合に特異的な変異が入っていれば
それをマーカーとして
ペプチド特異的輸送系統の標的とすることができます。
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生み出された過剰のCD4+T細胞が自己ペプチド(RASGRP2)の
スーパー抗原の影響を受けて通常の記憶型CD4+T細胞と
何らかの表現型の違いがないか?ということです。
もし、過剰なエフェクターT細胞だけを
細胞輸送系統によって攻撃できれば、
免疫機能のバランスを整える事に貢献する可能性があります。
B細胞自体は恒常性のために必要なので
過剰なT細胞のみを攻撃したほうが副作用は小さくなる
可能性があります。
--
細胞特異的輸送系統では
栄養素を運ぶこともコンセプトの中に組み込んでいます。
ナノ粒子の中に液体のオレイン酸を入れて
脳に特異的に輸送することで
食事で接種するよりも効果的に代謝治療を行うことが
できるかどうかです。
当然、食事療法で効果があるほうがコストメリット
圧倒的に大きいのですが、
エフェクターT細胞など
病状を悪化させるCD4+T細胞もこの栄養によって
活性化されるとなるとオレイン酸を
制御型T細胞だけに特異性を持たせて輸送する事の
価値が生まれてきます。
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以上です。
(参考文献)
(1)
Scott S. Zamvil, M.D., Ph.D.,and Stephen L. Hauser, M.D.
Elizabeth G. Phimister, Ph.D., Editor
Antigen Presentation by B Cells in Multiple Sclerosis
The New England Journal of Medicine 384;4 378-381(2021)
(2)
Joan M. Goverman, Ph.D.
Elizabeth G. Phimister, Ph.D., Editor
Regulatory T Cells in Multiple Sclerosis
The New England Journal of Medicine 384;6 578-580(2021)
(3)
Dennis McGonagle, Athimalaipet V. Ramanan & Charlie Bridgewood
Immune cartography of macrophage activation syndrome in the COVID-19 era
Nature Reviews Rheumatology (2021)
(4)
Stephen L. Hauser, M.D., Amit Bar-Or, M.D., Giancarlo Comi, M.D., Gavin Giovannoni, M.D., Hans-Peter Hartung, M.D., Bernhard Hemmer, M.D., Fred Lublin, M.D., Xavier Montalban, M.D., Kottil W. Rammohan, M.D., Krzysztof Selmaj, M.D., Anthony Traboulsee, M.D., Jerry S. Wolinsky, M.D., et al., for the OPERA I and OPERA II Clinical Investigators
Ocrelizumab versus interferon beta-1a in relapsing multiple sclerosis.
The New England Journal of Medicine 2017; 376:221-234
(5)
Stephen L. Hauser, M.D., Amit Bar-Or, M.D., Jeffrey A. Cohen, M.D., Giancarlo Comi, M.D., Jorge Correale, M.D., Patricia K. Coyle, M.D., Anne H. Cross, M.D., Jerome de Seze, M.D., David Leppert, M.D., Xavier Montalban, M.D., Krzysztof Selmaj, M.D., Heinz Wiendl, M.D., Cecile Kerloeguen, M.Sc., Roman Willi, Ph.D., Bingbing Li, Ph.D., Algirdas Kakarieka, M.D., Davorka Tomic, D.V.M., Alexandra Goodyear, M.D., Ratnakar Pingili, M.B., B.S., Dieter A. Häring, Ph.D., Krishnan Ramanathan, Ph.D., Martin Merschhemke, M.D., and Ludwig Kappos, M.D. for the ASCLEPIOS I and ASCLEPIOS II Trial Groups
Ofatumumab versus teriflunomide in multiple sclerosis.
The New England Journal of Medicine 2020; 383:546-557
(6)
Pompura SL, Wagner A, Kitz A, et al.
Oleic acid restores sup-pressive defects in tissue-resident FOXP3 regulatory T cells from patients with multiple sclerosis.
J Clin Invest 2020 November 10 (Epub ahead of print).
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