2021年2月23日火曜日

周辺系と独立性を有する神経中枢系の食欲制御機構

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

程度によると考えられますが、
基本的には肥満は生活習慣病、
新型コロナウィルスのリスクを高めるといわれています。
生活習慣病は老化に伴う病気に含まれますが、
健康寿命を延ばすためには
少なくとも中程度、重度の肥満は避ける必要がある
と考えられます。
最近の老化研究においては
「間欠的断食」と呼ばれる食事を制限する事が
まだ人においては確実性はありませんが、
健康において一つの重要な因子になる可能性がある
と考えられています(2)。
例えば、食事の時間を空けたり、
時々何も食べない日があったり、
カロリーを制限する日を定期的に設けたり
、、、
これらのようなことが間欠的断食にあたります。
--
もちろん個人、個人が肥満におけるリスクを理解して
生活習慣を改善するという事は欠かせませんが、
食欲やエネルギー代謝の科学的な理解も求められます。
また、肥満に対して薬剤による医療的な介入によって
減量が成功したという千人規模の治験結果があります(3)。
ーーーーーーーー
Daniel I. Brierley, Marie K. Holt, Arashdeep Singh
(敬称略)らイギリス、アメリカ、スイスの
医療研究グループは
インスリンを通じて血糖値を調整したり、
摂食制限に関わる消化管ホルモンである
GLP-1システムにおいて中枢系、末梢系が
それぞれ部分的には独立性を持って
摂食抑制に関わっていることを報告されています(1)。
本日はその内容の一部について
読者の方と情報共有したいと思います。
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//重要な内容//ーーーーーー
GLP-1系統における中枢系と抹消(周辺)系。
-
中枢系:脳プログルカゴン神経細胞
(brain preproglucagon (PPG) neurons)
周辺系:腸内分泌細胞(gut enteroendocrine cells)
-
中枢系のPPG神経細胞は迷走神経に発現している
オキシトシン受容体からの信号を受け取るため
必ずしも摂食制限を促進する
GLP-1作動薬(アゴニスト)を必要としません。
この中枢系PPG神経細胞に作用させる事は
既に参考文献(3)の大規模治験で肥満抑制の成果がでている
GLP-1に作用する薬剤Semaglutideを単独で作用させるよりも
摂食制限の効果を上げる可能性が示唆されます。
--
従って、GLP-1アゴニストに加えて
脳プログルカゴン神経細胞を
迷走神経の受容体を活性化せることは
肥満抑制のより高い効果に繋がる可能性があります。
そのことが「マウスの実験により」で示唆されています。
ーーーーーー

//結果(1)//ーーーーーー
マウス
--
(PPG神経細胞「脳幹に」直接的に化学的刺激)
機能を高めることで摂食を減らしました。
(参考文献(1) Fig.2cより)
--
(GLP1受容体「抹消神経」直接的に化学的刺激)
機能を高めることで摂食を減らしました。
(参考文献(1) Fig.3bより)
--
(PPG神経細胞「脳幹に」直接的に「オキシトシンで」刺激)
機能を高めることで摂食を減らしました。
(参考文献(1) Fig.5gより)
--
薬剤SemaglutideとPPG神経細胞活性化
両立により摂食量がより少なくなっています。
(参考文献(1) Fig.8d-fより)
---
これらの事から身体の各組織に延びている
末梢神経のGLP1受容体の機能によって
食欲の度合いが影響を受けることが示されています。
その信号の行き先はPPG神経細胞です。
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//筆者の考察//ーーーーーー
GLP-1作動薬は2型糖尿病の患者さんに使用されることがあります。
GLP-1受容体の働きを強める薬で
主に膵臓に作用させる事を目的としていると考えています。
それによってインスリンの血糖値に対する感受性を上げることです。
2型糖尿病の場合は(1型糖尿病ではない)、
減量、食事のコントロールが求められますから
食欲をどう制御するかがカギになります。
食欲は視床下部と関連がありますが、
その視床下部とつながっている脳幹にある
PPG神経細胞の働きが活性化されることで
満腹の感受性があがり、過剰な摂食を防ぐことができる
と考えられます。
生活習慣病やそのリスクがある肥満の方に対して
膵臓、胃腸に直接働くようなGLP-1に関わる薬剤と
食欲の信号そのものに関わる中枢神経系への薬剤
両方を組み合わせることで
より効果が高まることが期待できます。
その際には治療を受けた方は
「お腹がすいていないのに食べない。」
「食欲に従って食べる。」
「過剰な満腹を避ける。」
できれば「ゆっくり食べる。」
このようなことが必要になると思います。
そうではなくても中年以降になると
肥満のリスクはあがりますから
自分の食欲に耳を傾けて摂食する、
食べ過ぎないという事は求められると思います。
--
また、これからの研究に期待する事として
脳幹にあるPPG神経細胞を化学的な薬剤ではなく
運動などの生活習慣の中で活性化する方法はないか?
私の知る限り、そのような報告はないので
その点知りたいと思います。
そうすれば、治療対象以外の人も
予防的に日常生活を改善できる可能性があります。
参考文献(1)によればオキシトシンが関係している
可能性が示唆されています。
例えば、女性のマウスでは有酸素運動で
オキシトシンのレベルが向上したという報告もあります(4)。
(男性ではみられなかった。)
周期的にも変わる可能性があるので
それと摂食の関係はどうかという点は気になります。
(ただし、オキシトシンが脳幹のPPG神経細胞に伝わるか
どうかという要因はあります。)
例えば、出産後、女性が体重増加することがありますが、
これはオキシトシンの「増減が大きい事」
(参考文献(5) 図2より)と
関係している可能性があります。
ーーーーーー

以上です。

(参考文献)
(1)
Daniel I. Brierley, Marie K. Holt, Arashdeep Singh, Alan de Araujo, Molly McDougle, Macarena Vergara, Majd H. Afaghani, Shin Jae Lee, Karen Scott, Calyn Maske, Wolfgang Langhans, Eric Krause, Annette de Kloet, Fiona M. Gribble, Frank Reimann, Linda Rinaman, Guillaume de Lartigue & Stefan Trapp 
Central and peripheral GLP-1 systems independently suppress eating
Nature Metabolism volume 3, pages258–273(2021)
(2)
Valter D. Longo, Maira Di Tano, Mark P. Mattson & Novella Guidi 
Intermittent and periodic fasting, longevity and disease
Nature Aging volume 1, pages47–59(2021)
(3)
John P.H. Wilding, D.M., Rachel L. Batterham, M.B., B.S., Ph.D., Salvatore Calanna, Ph.D., Melanie Davies, M.D., Luc F. Van Gaal, M.D., Ph.D., Ildiko Lingvay, M.D., M.P.H., M.S.C.S., Barbara M. McGowan, M.D., Ph.D., Julio Rosenstock, M.D., Marie T.D. Tran, M.D., Ph.D., Thomas A. Wadden, Ph.D., Sean Wharton, M.D., Pharm.D., Koutaro Yokote, M.D., Ph.D., Niels Zeuthen, M.Sc., and Robert F. Kushner, M.D., for the STEP 1 Study Group
Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity
The New England Journal of Medicine  February 10, 2021,
(4)
Oğuz Yüksel et al.
Regular Aerobic Voluntary Exercise Increased Oxytocin in Female Mice: The Cause of Decreased Anxiety and Increased Empathy-Like Behaviors
Balkan Med J. 2019 Sep; 36(5): 257–262.
(5)
久納智子
周産期におけるオキシトシン値の変化と母親役割獲得過程の関連
心身健康科学 15巻1号 2019年

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