いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスなどの感染症では
ウィルスを抗原として認識して
液性免疫の機序でB細胞を通して抗体を発現させます。
その際、B細胞から生み出された抗体は
Fabドメインを使って、ウィルス株を特異的に認識して
細胞感染させないように結合します。
一方、この抗体の役割はFabドメインに限らず、
Fcドメインと呼ばれるY字型の根元に当たる
定常部からなる部位があります。
そのFcドメインはFc受容体を介して
様々な免疫細胞と相互作用をすることがわかっています。
Fc受容体の型によりますが、
多くの骨髄系免疫細胞、リンパ系であればNK細胞、B細胞と
結合して機能改変する事が知られています。
基本的にこれらの細胞は他のT細胞とも連携するので
間接的な事も含めると抗体が産生される事によって
様々な免疫細胞の影響を与える可能性が考えられます。
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一方、癌の治療においては特定の受容体を標的とした
モノクローナル抗体による治療が従来から考えられています(2)。
実際には抗体そのものを薬剤として投与する場合と
B細胞の液性免疫の機序を使って抗原を投与する場合の
両方が考えられます。
ただ、後者の場合はB細胞をトレーニングできるので
その中で親和性成熟が起きて、
より長期にわたる治療効果が生まれやすい可能性はあります。
その癌の中で卵巣癌に関しては癌組織を退行させるに当たっては
B細胞の関与が指摘されています(1)。
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Subir Biswas, Gunjan Mandal, Kyle K. Payne,
Carmen M. Anadon, Chandler D. Gatenbee,
Ricardo A. Chaurio, Tara Lee Costich, Carlos Moran,
Carly M. Harro, Kristen E. Rigolizzo, Jessica A. Mine,
Jimena Trillo-Tinoco, Naoko Sasamoto, Kathryn L. Terry,
Douglas Marchion, Andrea Buras, Robert M. Wenham,
Xiaoqing Yu, Mary K. Townsend, Shelley S. Tworoger,
Paulo C. Rodriguez, Alexander R. Anderson
Jose R. Conejo-Garcia(敬称略)
からなるアメリカ合衆国の医療研究チームは
IgA抗体とその受容体の複合体による卵巣癌の退行の
機序について詳細に調べられています(1)。
この内容の一部について読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は筆者の追記、考察です。
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卵巣癌はB細胞が記憶化され、B細胞も含めて
血漿の免疫細胞が卵巣癌の中に浸潤する事によって
優れた臨床効果を発揮する事が知られています。
またこれは癌細胞傷害性を示すT細胞の活性にも
影響がある事が知られています(3,4)。
B細胞は抗体の発現に関わります。
その中で免疫グロブリンの種類はいくつかありますが、
卵巣癌と関連が高いそれとしてIgA抗体が挙げられています。
このIgA抗体は単体として機能すのではなく
この抗体の受容体であるポリマー免疫グロブリン受容体
(Polymeric immunoglobulin receptor (pIgR))
と結合して、複合体として細胞内のエンドソームなどを
通して作用する事が指摘されています(Transcytosis)。
このトランスサイトーシスにより
細胞内の機能に関わる転写因子を改変して
細胞傷害性を示すIFNγを亢進したり
癌成長促進因子:Ephrinsを抑制する事がわかっています。
これらを通して
キラーT細胞の誘導だけではなく
B細胞から生み出された抗体と受容体の複合体の
細胞内の侵入による抗癌効果が確認されています。
また癌に対してB細胞が働くためには
癌が生み出す抗原(Neoantigenなど)をB細胞が認識して
それに対して特異性を生み出す抗体を産生する必要があります。
この時の抗原の種類は非常に多様で
それに合わせた交差性の高い抗体産生が促されています。
その抗原に反応性を持つ抗体においては
高い癌成長阻害が確認されました。
また抗体依存的な細胞傷害性、食作用をも確認されています。
抗体のFc受容体を通じた自然免疫系
マクロファージ、樹状細胞、NK細胞などの活性も考えられます。
-----
⇒
//細胞特異的輸送系統の観点//ーーーーーー
卵巣癌は癌組織の退行においてB細胞の関与が大きいと
考えられるので、B細胞の機序を利用する
癌ワクチンの治療戦略が有効である可能性があります。
すでに卵巣癌に対する癌ワクチンの研究は進められています(5)。
その中でいくつかの抗原を標的とした
樹状細胞やウィルスベクトルなどを使ったワクチンがあります。
Subir Biswas氏らの研究では(1)では
卵巣癌から分泌されているタンパク質の種類が明らかにされているので
(参考文献(1) Supplementary Data 6より)
その中でより効果が高く、標的性の上げられる
タンパク質を選び出して
それに対する遺伝子ワクチン設計するという事も考えられます。
その時に細胞特異的輸送系統では
そのワクチンの輸送媒体を考える事になります。
それによって卵巣癌近くのより局所で働くようにできるかどうか
という観点になります。
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以上です。
(参考文献)
(1)
Subir Biswas, Gunjan Mandal, Kyle K. Payne, Carmen M. Anadon, Chandler D. Gatenbee, Ricardo A. Chaurio, Tara Lee Costich, Carlos Moran, Carly M. Harro, Kristen E. Rigolizzo, Jessica A. Mine, Jimena Trillo-Tinoco, Naoko Sasamoto, Kathryn L. Terry, Douglas Marchion, Andrea Buras, Robert M. Wenham, Xiaoqing Yu, Mary K. Townsend, Shelley S. Tworoger, Paulo C. Rodriguez, Alexander R. Anderson & Jose R. Conejo-Garcia
IgA transcytosis and antigen recognition govern ovarian cancer immunity
Nature (2021)
Department of Immunology, H. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute, Tampa, FL, USA.
Department of Mathematical Oncology, H. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute, Tampa, FL, USA.
Department of Pathology, H. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute, Tampa, FL, USA.
Obstetrics and Gynecology Epidemiology Center, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA, USA.
Department of Gynecology Oncology, H. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute, Tampa, FL, USA.
Department of Biostatistics and Bioinformatics, H. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute, Tampa, FL, USA.
Department of Cancer Epidemiology, H. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute, Tampa, FL, USA.
Department of Epidemiology, Harvard T.H. Chan School of Public Health, Boston, MA, USA.
(2)
Andrew M. Scott, Jedd D. Wolchok & Lloyd J. Old
Antibody therapy of cancer
Nature Reviews Cancer volume 12, pages278–287(2012)
(3)
Montfort, A. et al.
A strong B-cell response is part of the immune landscape in human high-grade serous ovarian metastases.
Clin. Cancer Res. 23, 250–262 (2017).
(4)
Kroeger, D. R., Milne, K. & Nelson, B. H.
Tumor-infiltrating plasma cells are associated with tertiary lymphoid structures, cytolytic T-cell responses, and superior prognosis in ovarian cancer.
Clin. Cancer Res. 22, 3005–3015 (2016).
(5)
Stephanie Chow, Jonathan S. Berek, and Oliver Dorigo
Development of Therapeutic Vaccines for Ovarian Cancer
Vaccines (Basel). 2020 Dec; 8(4): 657.
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