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病変部位の障害を緩和するような治癒効果
あるいは、薬効を示すような
特定の物質を封入した粒子を
その特定の病変部位に特異的に輸送するときに
一つの大きな要素は
その封入する粒子としてどのような材料を選択するか?
というのがあります。
例えば、それを金属とすると
表面電荷が高いために
おそらく血管を流れる中で
血管中に含まれるたんぱく質などをデブリとして引き付けて
付着させて状態を改変させる可能性が考えられます。
それを避けるためには
体内にある細胞膜の材料である
脂質ということも考えられますが、
その場合にも課題があるかもしれません。
その一つとして
「形状維持」というのがあります。
つまり脂質というのは柔らかい物質であるので
生体内の様々な条件によって
形状を大きく変えてしまう可能性があります。
時には破壊されてしまうこともあるかもしれません。
そうすることで
脂質膜表面にある設計した特異性を持つ
装飾因子である糖たんぱく質などのアンカーが
はずれてしまったり、
アンカー同士が不規則に結合してしまったり、
あるいは脂質膜に埋め込まれてしまう可能性があります。
そうするとそのようないろんな要因によって
設計した特異性が失われてしまう可能性が考えられます。
その形状は「ペクレ数」という輸送現象に関する指標
によって影響を受けると言われています。
そのペクレ数(Pe)は
Pe=(移流輸送速度)/(拡散輸送速度)です。
移流輸送速度というのは
例えば、血管でいれば
血流の流れの速さです。
そうすると、毛細血管は流れが遅いですから
ペクレ数は小さくなる傾向にあります。
拡散速度は、血管内をミクロで見た時には
いろんな血球系細胞の流れですから
その密度の中で設計したナノ粒子がどれくらい拡散できるか?
というものです。
例えばその密度が大きくなれば、
平均自由工程が下がります。
衝突から衝突までの平均の長さです。
それが拡散長と2次係数として正の相関があります。
つまり感覚的に血球系細胞が多くなって
密度が大きくなると拡散長は下がります。
その状態で血管の流速が早くなると、
ペクレ数は上がります。
あるいは物質を封入した粒子の大きさが大きくなると
平均自由工程は下がり、拡散長は下がります。
なぜなら衝突しやすくなるからです。
そうすると同じ血流速でもペクレ数は大きくなります。
ペクレ数が大きくなると
形状が乱れやすくなります。
(参考文献(1) Fig.2(a)より)
従って、粒子内に封入する特定の物質が大きくなったり
あるいは重くなって拡散係数が下がり、
さらには、
その状態で粒子の膜が一重膜など薄い場合には特に
形状が乱れやすくなると考えられます。
それは感覚的に理解できる事です。
例えば、運動場にいて風が強いときに
多くの砂が一方向に舞っているとします。
その時に小さな粒子を空中に浮かべると
その粒子は砂とぶつかって、
その衝撃によって形を変えてしまう恐れがあります。
その粒子が脂質などのように柔らかければ
なおさらそうです。
実際の物理的な現象を完全に説明できている
訳ではないと思いますが
感覚的にはそうです。
従って、脂質を2重層にしたり、
大きさ、重さを考えることはとても大切です。
ただ脂質を2重層にすると
今度は中身を任意に放出するのが難しくなります。
また冒頭で述べた様に
血液の流れは血管の太さによっても変わります。
毛細血管は流れが遅いと言われています。
あるいは人によって
コレステロール、脂質、血管の硬さ、血圧など
細かい条件は異なります。
そうした中で血液の流れも異なります。
血液がサラサラといいますが、
まさにあのイメージで
血流の速度は人によって異なります。
そうした中で「特定の物質」を「特定の場所」に
届けるために特別に設計した粒子の
大きさ、重さ、膜の設計などの
形状を保つための許容範囲は異なる可能性があります。
従って、最も厳しい条件でも
形状を保つことができるような条件で
粒子に対する物質の封入を考えることが
大切になると考えられます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Hanumantha Rao Vutukuri, Masoud Hoore, Clara Abaurrea-Velasco, Lennard van Buren, Alessandro Dutto, Thorsten Auth, Dmitry A. Fedosov, Gerhard Gompper & Jan Vermant
Active particles induce large shape deformations in giant lipid vesicles
Nature volume 586, pages52–56(2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2730-x
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