2020年10月18日日曜日

組織、細胞の形は外部要因の中でどのように決まるか?

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

これを読まれている方は
「細胞をイメージする」としたら
どのような像が頭に浮かぶでしょうか?
初めに浮かぶのが核が真ん中にあって球状のものかな?
と思います。
でも、脳が専門の方は星状の細胞が頭に浮かぶかもしれません。
細胞の単位というのは
「脂質などの細胞膜が閉鎖空間を作っている単位」
だと仮に理解しています。
ただ、それだど脳の細胞に関しては
神経回路でつながっていますから、
どこまでが一つの細胞か?という境界条件設定が難しいです。
なぜ、このような話をするか?
というのはいくつかの理由があるのですが、
その一つとして、
筋線維細胞の画像を見た時に、
形が非常に細長くてアスペクト比が大きい感じがしましたが、
「果たしてどこまでが一つの細胞だろうか?」
というのがわかりにくかったというのがあります。
また、解剖学的に
細胞であるところと細胞外のところがどうであるか?
というのが分かりにくいところがあります。
また細胞外にあるマクロな組織でいう
柔軟性のある繊維のような小組織を拡大した時には
それはタンパク質などがむき出しになっているのか?
あるいはそれも脂質などの細胞膜で覆われているのか?
そういった疑問があります。
つまり、これらも幹細胞からできているのか?
という一つの疑問につながります。
では、なぜこのような事が重要になるのか?
それは、選択的な生体内の再生医療の可能性を探っているからです。
すでに組織としてある細胞は
今述べた様に非常にいろんな形、機能があります。
それをiPS細胞の技術を使って、分化時計を戻して
初期化するときには、形は大きく変わります。
その時間的な変化の中で細胞同士が「手を繋ぐように」結合している
あるいは細胞外の物質、それを支える線維などが
どのような力を受けて、細胞を開放することができるか?
ということを考える必要性があると推測しています。
例えば、
アスペクト比の大きな非常に細長い繊維細胞が
円形の幹細胞に戻る時には大きく形を変える必要があります。
その形を変えるときに
その時間変化をその場観察(in situ)で顕微鏡で見た時には
どのようであるか?
加えて、それが組織など固定されている状況で初期化されたときには
周りの組織との相互作用がある中でどのような動きになるか?
そういうことを考える必要があります。
従って、このような事の理解の基礎として、
細胞組織を支える線維(Apical stress fibers)や
その機械的な反応について考える必要があります。

Jesús M. López-Gayは
先端にあるストレス線維(apical stress fiber)が
細胞の機械的ストレス反応と上皮組織の領域の間の
細胞の大きさを決める(scaling)を制御していると
考えています(1)。

臓器を形作っている上皮組織には
接着部分において力を感知する部分があり、
それによって細胞の振る舞いが制御されています(1)。
この制御経路は「Hippo信号経路(Hipp singaling pathway」
と呼ばれています。
この経路では、
人を含めた動物の臓器のサイズを制御するもので
適切な大きさになるように細胞の増殖、細胞死を
コントロールしています。
この経路は幹細胞、組織特異的な前駆細胞の自己再生、
あるいは拡散において重要な役割を担っています(2)。
従って、生体内で選択的に再生医療を行うことを目指す際にも
このHippo信号経路の事を詳しく理解することは重要です。

その信号経路において具体的な物質として、
セリン/スレオニン特異的タンパク質リン酸化酵素
(Serine/threonine-specific protein kinase)
が細胞の増殖、細胞死、様々な機械的なストレス反応
を含む細胞のプロセスに関与している事がわかっています(3)。
従って、最終的な臓器のサイズを制御する中において
このリン酸化酵素が一つの制御機能として関与している
ということです。
また形を変えたり、成長したりすることは
エネルギーを要することですから、
連鎖的なリン酸化が必要であり、
エネルギーの動きをこの経路を包含するように
巨視的につかむことも同時に大切になってくるかもしれません。

この構想で一つ必要になる組織の再生において
その機序を理解することが重要です。
心臓のケースではYAP1(yes-associated protein 1)が
再生に関わっていると言われています(4)。
このたんぱく質は潜在的には癌遺伝子の要素を持ち、
通常はHippo信号経路で抑制されていますが、
心臓は基本的に温度が高いこともあり
癌化することが稀なので、
再生の時に活性化される可能性を考えました。

臓器、あるいは皮膚の表層部分にあるような
上皮組織の細胞は幹細胞で想像されるような円形ではなくて
形としては不揃いなことがあります。
このような生体機能を分析するときには、
生育期間が2週間と非常に短く、
人も含めた他の生物との共通性がある程度認められる
ショウジョウバエがモデル動物として
医学研究では共通的に用いられます。
そのショウジョウバエの背面胸部の上皮組織は
細胞単位で見ると非常に不揃いな形をしており、
細胞の外周部、
あるいは機械的ストレスを支える支柱のような
微小組織として以下のようなものがあります(1)。
------

接着結合部:adherens junctions (AJs)
------

先端のストレス線維:apical stress fibers (aSFs),
機械的なストレスを検知して、
筋肉のように伸び縮みして、細胞の形を決める
弦のような組織
-------

三細胞接点:tricellular junctions (TCJs),
隣接する3細胞の合流地点にある組織
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Jub/Wts cluster
LIM domain protein Ajuba (Jub)/Warts(Wts) kinase
--
LIM domain protein Ajuba (Jub)
様々なたんぱく質を集めた土台となるようなタンパク質で
機能としては細胞の運命、細胞骨格の形成、有志分裂など
細胞の形成や動的機序に関わりのあるタンパク質です。
--
Warts(Wts) kinase
Ykiのリン酸化酵素
上述した組織の形を決める上で重要な役割を果たす
Hippo信号経路で物質として重要な役割を果たす
セリン/スレオニン特異的タンパク質リン酸化酵素によって
リン酸化の連鎖が起こりますが、
リン酸化される中でこのWtsというリン酸化酵素(キナーゼ)が
活性化されます。
このリン酸化というのはエネルギー、
代謝に関わるプロセスなので
人が食べ物を得て、それをエネルギーに変えて
組織を守るようなことを細胞レベルでしていると
考えることができます。
従って、このWtsというのは細胞サイクル、成長、分化、増殖に
関与すると考えられています(5)。
--
これら細胞機能に大きくかかわる2物質が塊(クラスター)となり
下記、図(*)(B)で模式図が書かれているように
機械的なストレスによって細胞周囲をつなぐ弦の分布や長さを
変えることによって細胞の大きさを調整する②aSFsの
細胞周囲での接合部、接点に存在するものです(1)。
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図(*)
参考文献(1) Research Article Summaryの図
An interplay between apical stress fibers (aSFs) and tricellular junctions (TCJs) drives area-dependent cell mechanical response to morphogenetic stresses
(A)ショウジョウバエの背面胸部の上皮組織の顕微鏡写真
(B)細胞周囲、支柱の組織の模式図
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つまり、細胞は
「身体を支える骨、筋肉のような」あるいは
「ギターでいう弦」のようなaSFsという
線維状の組織によって支えられており、
それが引っ張り合ったり、長さを変えたり
柔軟に動くことで細胞の形、大きさを調整する機能があり
それが組織としての柔軟性を生んでいるということです。
実際に図(*)のAには細胞内に細い糸状の緑の線が見えます。
これがaSFsに当たる部分です(1)。

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肝硬変など肝臓の機能不全が進んでいる場合には、
肝臓の表皮組織が「線維化」しているといわれますが、
その線維化した細胞は一般的には
「硬く」なっていて組織としての柔軟性を失っている
といわれているので、アスペクト比の非常に大きな
線維状の組織となっています。
その線維細胞は細胞壁が木化して肥厚した細胞で
死んでいると言われています。
死んでいるとは具体的にどういうことでしょうか?
呼吸をしたり、エネルギーの取得、消費
あるいはタンパク質の生成、回収などの
様々なサイクルが行われていないということでしょうか?
では、このような死細胞は
遺伝子ベクターを入れることによって初期化できるか?
生命を吹き込むことができるか?
それはひょっとすると不可能なのかもしれません。
そうするとマクロファージなどの
体の死細胞を取り除く仕組みを生かして、
その中で再生する道はあるか?
ということになります。
前述した「木化」とは植物の細胞壁などで観察されますが、
リグニンを蓄積して硬くなることです。
肥厚化するので組織は強化され、
その中で柔軟性を失うということだと思います。
仮に、
完全に生命機能を失っているものばかりではなく
生命機能が弱りながらも維持されている細胞があったとして
それがベクターによる遺伝子挿入によって
初期化が可能になったとします。
そうした時に繊維細胞は細長くアスペクト比が大きいですから
幹細胞に戻る際に形を大きく変える必要があります。
その時に組織は連結部などを中心に機械的なストレスを
受けることになりますが、
その場合、どのような動的機序になるか?
ということです。
参考文献(1)で考えられている細胞の大きさを決める
弦のような組織は、非常に細いため
おそらくあったとしても切断されるのではないか?
と思います。

(参考文献)
(1)
Jesús M. López-Gay, Hayden Nunley, Meryl Spencer, Florencia di Pietro, Boris Guirao, Floris Bosveld, Olga Markova, Isabelle Gaugue, Stéphane Pelletier, David K. Lubensky, Yohanns Bellaïche 
Apical stress fibers enable a scaling between cell mechanical response and area in epithelial tissue
Science  16 Oct 2020: Vol. 370, Issue 6514, eabb2169
(2)
Bin Zhao, Karen Tumaneng & Kun-Liang Guan 
The Hippo pathway in organ size control, tissue regeneration and stem cell self-renewal
Nature Cell Biology volume 13, pages877–883(2011)
(3)
Dan I, Watanabe NM, Kusumi A . 
The Ste20 group kinases as regulators of MAP kinase cascades. 
Trends in Cell Biology. 11 (5): 220–30 (May 2001)
(4)
Wikipedia; Hippo signaling pathway/Regulation of human organ size
(5)
Ma J, Benz C, Grimaldi R, Stockdale C, Wyatt P, Frearson J, Hammarton TC  
Nuclear DBF-2-related kinases are essential regulators of cytokinesis in bloodstream stage Trypanosoma brucei. 
The Journal of Biological Chemistry. 285 (20): 15356–68 (May 2010).

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