新型コロナウィルスに今使われている薬
〇レムデシビル/〇デキサメタゾンは
ともに従来から他の疾患に使われていたものです。
レムデシビルは、エボラ出血熱の薬として使われ、
デキサメタゾンはステロイド系の免疫調整剤として
認可されている薬です。
他の目的で使われていた薬が
新型コロナウィルスに薬効を示すかどうか
またその使用を簡略な手続きで承認まで持っていく事を
リパーポスといいます。
元々使われていた薬で、FDAなどが定める
認可プロセスを経て承認を得た薬ですから
用法などが定められ、副作用のリスクは小さいです。
もしあったとしても禁忌などが定められているため
それに従って使用を中断することもできます。
また、
もし新型コロナウィルスのための薬を
新規に開発するとなると、
試験管、動物などを使った臨床前実験から
3段階のステージの人による治験を経て
承認される必要があります。
途中で頓挫する可能性を考えると
時間、費用も大きなものになります。
従って、
従来ある薬の中で薬効を示すものを探すということは
費用対効果、時間帯効果両方に対して、
大きな意味を持つと考えます。
また
レムデシビルは比較的高価な薬であることから
新型コロナウィルスの増殖を細胞内で(?)防ぐ
代替となる有効な薬を探すことも意味がある事です。
しかしながら
何万種類も膨大にある薬の中で
1つ1つ人で試していくわけにはいきません。
ある程度、論理的根拠を持って的を絞って、
いくつかの薬を選び出す必要があります。
その際において
Teruhisa S. Komatsu氏 Noriaki Okimoto氏らが
報告しているように(1)、
コンピューターを使った分子モデルで
薬効を計算上で予測することは大きな意味を持ちます。
彼らは、HIVの治療薬として使われている
darunavir, indinavir, lopinavir,
nelfinavir, ritonavir, saquinavir, tipranavir
7種類の薬において、
ウィルスが持つRNAによって転写、翻訳された
タンパク質の合成(ポリタンパク質)で
重要な役割を担うプロテアーゼの阻害能力
について分子計算モデルで評価しました。
このプロテアーゼはウィルスの増殖のために必要なものです。
その阻害能力はSARS-CoV-2の
プロテアーゼの活性部位に対して
どれだけの範囲、頻度で結合するか?
という動的シミュレーションを行っています(1)。
HIVの治療薬を選んだのは、プロテアーゼにおいて
新型コロナウィルスの作用機序と類似性が見いだせるからです(1)。
従って、
すでにいくつかの薬において治験が行われています。
(ChiCTR2000029603など)
しかし、lopinavir–ritonavirなど
いくつかの薬においては、
新型コロナウィルスに対する有効性が顕著に見いだせない
という結果もあります(2)。
2量体からなるプロテアーゼにおいて活性部位は
上面、下面、側面全てにおいて存在し
計5つ存在します。
それに対してそれぞれの薬が
どれだけの接触頻度を示したか?
という尺度において色で表し、
その空間的分布を図示化したのがFig.2です(1)。
赤色が一番頻度が高いわけですが
7種類の薬を比べると
Indinavirが一番赤色の領域が広いことが分かります。
また薬ごとに接触位置、頻度にばらつきがあることがわかります。
活性部位に対する接触の範囲、程度を
薬ごと数値化して、時間経過でどう積みあがっていくか
というグラフがFig.3です(1)。
ただし、これは結合性のない接触を評価したもので
平衡状態(静的)での量を正確に反映しているものではない
とされています(1)。
また、この分子動的シミュレーションの中で
配位子(薬剤)とタンパク質の結合のための相互作用が強く
その作用を生み出すカギとなる7つの残基を特定しました。
residues 44, 143, 166, 187, 188, 189, 190です(1)。
おそらく参考文献(1)Fig.3に示される数字は
活性部位ごとの差別化、重みづけはしていないと推測しています。
おそらくプロテアーゼに対して
ポリタンパク質の合成能力を決める
結合部位の位置依存性はおそらくあるものだ
と推測しています。
つまり「このサイトにつくことが一番効果的」
というのが恐らくあるとは思いますが、
それに関してはおそらく考慮されていないと推測しています。
しかし、
様々なサイトに高頻度で結合する可能性のある薬は、
実際に試験管、動物、人で試した時に
ウィルスの増殖能力を抑制する効果と
ある程度の相関関係を持つ可能性はあると考えます。
結合性についは、研究グループ(1)によれば、
熱エネルギー差の大きい(高いエンタルピー差異)をもつ
活性サイトであれば「密接して、強く(tightly)」
に結合できる可能性があり、
それが薬効に貢献することを示唆しています。
薬剤は弱く結合するケースも多くあるとされているからです(1)。
HIVプロテアーゼ阻害薬のリパーポスのための
indinavir, darunavir, saquinavir
における他の計算報告があります(3-7)。
以上です。
(参考文献)
(1)
Teruhisa S. Komatsu, Noriaki Okimoto, Yohei M. Koyama, Yoshinori Hirano, Gentaro Morimoto, Yousuke Ohno & Makoto Taiji
Drug binding dynamics of the dimeric SARS-CoV-2 main protease, determined by molecular dynamics simulation
Scientific Reports volume 10, Article number: 16986 (2020)
(2)
Cao, B. et al.
A trial of lopinavir-ritonavir in adults hospitalized with severe Covid-19.
N. Engl. J. Med. https ://doi.org/10.1056/NEJMo a2001 282 (2020).
(3)
Contini, A.
Virtual screening of an FDA approved drugs database on two COVID-19 coronavirus proteins.
ChemRxiv https ://doi.org/10.26434 /chemr xiv.11847 381 (2020).
(4)
Farag, A., Wang, P., Ahmed, M. & Sadek, H.
Identification of FDA approved drugs targeting COVID-19 virus by structure-based drug repositioning.
ChemRxiv https ://doi.org/10.26434 /chemr xiv.12003 930.v3 (2020).
(5)
Sang, P., Tian, S. H., Meng, Z. H. & Yang, L. Q.
Anti-HIV drug repurposing against SARS-CoV-2.
RSC Adv. https ://doi.org/10.1039/d0ra0 1899f (2020).
(6)
Ngo, S. T., Quynh Anh Pham, N., Thi Le, L., Pham, D.-H. & Vu, V. V.
Computational determination of potential inhibitors of SARS-CoV-2 main protease.
J. Chem. Inf. Model. https ://doi.org/10.1021/acs.jcim.0c004 91 (2020).
(7)
Kumar, S. et al.
Discovery of new hydroxyethylamine analogs against 3CLpro protein target of SARS-CoV-2: molecular dock-ing, molecular dynamics simulation, and structure-activity relationship studies.
J. Chem. Inf. Model. https ://doi.org/10.1021/acs.
jcim.0c003 26 (2020).
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