いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
日本は伝統的に善玉の細菌を
積極的に食品を通じて体内に取り込んできた
という歴史があります。
味噌、豆腐、納豆、醤油などの大豆製品、
様々な種類の漬物、海外からはキムチ、
海外からヨーグルト、チーズなどの乳製品
鰹節、塩辛、くさやなどの魚介類、
後は酒類などもあります。
またヤクルト社(さん)など
企業が独自の腸内細菌を発明して
それを積極的に飲料として提供している商品も
多くの企業から出ています。
また各化粧品メーカー(さん)が
乳酸菌化粧品なども発売しています。
このような長い歴史の中で培われてきた細菌を利用する
技術、ノウハウを生かすためにも
腸内細菌と身体の健康、疾患の関連を調べることは
重要になるのではないかと思います。
また、
再生医療などと合わせて
美容、アンチエイジングというところに貢献できれば
女性を中心とした幅広い方の強固な関心と需要があるため
産業界からの幅広い協力も得られる可能性も想定しています。
実際に
肌荒れの原因となる毛穴の詰まりは
オートファジーの不全によって
余計なたんぱく質がたまることによって起こる
ということがコーセー社(さん)から発表されています(1)。
このように体の恒常性維持、再生において
重要な役割を果たしている生理機序が
美容やエイジングに影響を与えている可能性はあります。
冒頭で述べた腸内細菌もその中に細胞がありますから、
オートファジーやタンパク質を分解する酵素(protease)は
細胞内にあると思います。
その中で腸内細菌の数、組成、種類が
オートファージーなどの生理機序を含めて、
美容、健康、老化、疾患と関連性があっても
不思議ではありません。
この細胞特異的輸送系統においては
「特定の場所に」「任意の」腸内細菌を輸送できるように
することを想定しています。
従って、
腸内細菌と様々な身体の臓器、組織との
クロストーク、関連性を調べていく事は基礎として
重要になると考えています。
本日はその腸内細菌に関して、
Livia H. Morais氏らが
腸内細菌叢と脳神経疾患の関連性について総括(2)しています
ので読者の方と情報共有したいと思います。
この腸内細菌は、
生まれた直後の形成状態が重要だといわれることがあり、
それからしばらく経つと安定してくるという情報もありますが、
より細かく組成や活性度を見ていくと
年齢を通してそれらは変わっていくと言われています(3)。
また冒頭で述べた食べ物(4)、あるいは薬(5)など
環境的な要素によっても変わると言われています。
実際に脳の疾患に関わる薬と腸内細菌は
相互作用して代謝などにも影響を与える可能性が
示唆されています(6)。
この腸内細菌は体の細胞の数と同程度存在する(7)
と言われているので
体内に生息する最近の細胞数は
その数倍の100兆個といわれています。
しかし、
その数に関する見積もりは個人差がある
という見方もありますが、
いずれにしても体内では
タンパク質、核酸、脂肪、糖、酸素、窒素、硫黄、鉄など
様々な物質の循環がありますが、
ミクロにみれば細胞がそういった循環を支えています。
腸内細菌が各組織、臓器とそれぞれ
どの程度クロストークしているか?という
相関係数はありますが、それを無視できないほど
影響を与えている可能性も十分に考えられます。
前述した脳と腸がどのような軸、経路を持って
互いに影響しあっているかという
解剖的な模式図が参考文献(2)Fig.1に示されています。
脳から迷走神経が大腸まで伸びて
腸から放出されたセロトニンなどの神経伝達物質と
腸内細菌の副産物、代謝産物が
迷走神経の表面にある受容体に取り込まれる
様子が描かれています。
また同時に樹状細胞、T細胞、B細胞、マクロファージなど
免疫細胞がサイトカインを通じて免疫系統を作り
それが直接的、間接的に(迷走神経を通じて?)
脳とクロストークしている可能性が示唆されています。
(参考文献(2)Fig.1拡大図より)
具体的にどの腸内細菌が
どのような神経伝達物質と関係があり
その中で心の状態などと関連しているかという一例が
下記のように挙げられています。
------
・乳酸菌(Lactobacillus reuteri)
⇒オキシトシン↑亢進
・乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus)
⇒GABA↑亢進
・ビフィズス菌(Bifidobacterium longum NCC3001)
⇒神経栄養因子(BDNF)↑亢進
・バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)
⇒4-EPS↓抑制
・短鎖脂肪酸産生細菌(SCFA-producing bacteria)
⇒SCFA↑亢進
------
(参考文献(2)Fig.2より)
このように見ると乳酸菌、ビフィズス菌は
一般的には善玉細菌であると評価できます。
また
その他に重要な神経伝達物質としてセロトニンがあります。
このセロトニンは腸内を無菌状態にしたマウスでは
減少することが知られています(8)。
しかしながら、セロトニンと腸内細菌が
脳に対して物理的にどのように関係しているか
という描写に関してまだ理解されていない部分があります(2)。
逆に、
脳から神経伝達がある迷走神経は
腸の筋組織や粘膜層を刺激するといわれています(2)。
従って、
腸の蠕動運動に関わっていると言われています。
ゆえに、
便通などは迷走神経からの信号が関わっている可能性があります。
実際にドーパミンが不足するパーキンソン病では
80%の人が便秘を経験するといわれています(10)。
従って、脳神経系の疾患と腸の蠕動運動などの活動は
迷走神経の活性を通じて関連性を持つ場合があると考えられます。
前述したように、
迷走神経は腸と脳を繋ぐ
「電気回路のような」役割をしていますから、
そこには「抵抗成分」があっても不思議ではありません(?)。
従って、迷走神経を電気デバイスなどで刺激して
腸から運ばれる神経伝達物質が効率よく運ばれるようにする
治療も(一部では?)承認されています。
実際に一般的な治療において抵抗性を示す場合において
てんかんや鬱などの治療で適用されています(9)。
脳疾患の一つであるパーキンソン病では
Enterobacteriaceaeの割合が増えるケースが多く
抗炎症性を持つ腸内細菌が少なくなると言われています(11-13)。
腸、脳、迷走神経、免疫機能の因果関係、主従関係は
現時点では未調査ですが、
これらの色んなバランスで結果として
Enterobacteriaceaeが生き残るような環境になっている
ということです。
そのベースを考える上で一つ大事になるのは、
腸内細菌の(細胞レベルを含めての)代謝が
種によってどのように違うかによって
なぜ、Enterobacteriaceaeが周りの環境が
不全になった時に生き残るか?
という疑問に対する一つの示唆を与えてくれる
可能性を考えています。
その一つとして神経毒性のある
1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP)
という物質がEnterobacteriaceaeの割合を増やすことに
関係している可能性が挙げられています(14)。
これを考える背景には、
もし仮に、意図的に迷走神経の近くの影響の大きい腸の組織に
善玉の腸内細菌を運べたとしても
その生息する環境が「ベースとして」不全で有れば
その効果は「一時的であり」またすぐに元に戻ってしまう
可能性があることです。
その因果性は完全な形で切り分けることができないもの
かもしれませんが、
・迷走神経を刺激
・免疫機能を高める
・腸の細胞、組織の炎症を治す
・脳のタンパク質を除去する
といった並列的な治療の中で
適切な場所に善玉の腸内細菌を運ぶことができたら
より高い奏功が得られる可能性があると考えています。
同様に、鬱などの症状でも
-----
腸の上皮細胞の浸透率が変わる、
-----
炎症性サイトカインが多く出る(15)、
C- reactive protein,
interleukin (IL)-1β
IL-6
tumour necrosis factor (TNF)
-----
腸内細菌の組成が変わる
-
Bacteroidetes減少
Firmicutes減少
Actinobacteria減少(16,17)
-
Dialister減少
Coprococcus spp.減少(19)
-
Alistipes spp特異的上昇(18)
------
など腸、免疫機能、腸内細菌が脳の状態とかかわりがあります。
また、
迷走神経を刺激して鬱を治療する研究も行われています(20,21)。
従って、
パーキンソン病に限らず鬱など
他の疾患においても病因、病理は多岐にわたり
少なくとも腸内細菌、腸の機能、免疫機能、迷走神経、
脳の状態を総合的に見ていく必要があると思います。
また心理的なカウンセリングも併用する事も
鬱、不安神経症、統合失調症などの
精神疾患の場合は必要になります。
従って、
この細胞特異的輸送系統を使って
迷走神経が伸びている場所に近いところに
もし選択的に求められる腸内細菌を特異的に運ぶこと
ができたら、上述した従来の治療と併用できる
可能性があると考えています。
以上です。
(参考文献)
(1)
株式会社コーセー 皮膚・薬剤研究室 厚木 徹
「毛穴トラブルの起源を探る
〜毛穴の詰まりは脂腺細胞のオートファジー不全によって引き起こされる〜」
(2)
Livia H. Morais, Henry L. Schreiber IV & Sarkis K. Mazmanian
The gut microbiota–brain axis in behaviour and brain disorders
Nature Reviews Microbiology (2020)
(3)
de la Cuesta- Zuluaga, J. et al.
Age- and sex- dependent patterns of gut microbial diversity in human adults.
mSystems 4, e00261–e00319 (2019).
(4)
David, L. A. et al.
Diet rapidly and reproducibly alters the human gut microbiome.
Nature 505, 559–563 (2014).
(5)
Vich Vila, A. et al.
Impact of commonly used drugs on the composition and metabolic function of the gut microbiota.
Nat. Commun. 11, 362 (2020).
(6)
Andrew P. Morgan et al.
The Antipsychotic Olanzapine Interacts with the Gut Microbiome to Cause Weight Gain in Mouse
PLoS One. 2014; 9(12): e115225.
(7)
Sender, R., Fuchs, S. & Milo, R.
Are we really vastly outnumbered? Revisiting the ratio of bacterial to host cells in humans.
Cell 164, 337–340 (2016).
(8)
Clarke, G. et al.
The microbiome–gut–brain axis during early life regulates the hippocampal serotonergic system in a sex- dependent manner.
Mol. Psychiatry 18, 666–673 (2013).
(9)
Milby, A. H., Halpern, C. H. & Baltuch, G. H.
Vagus nerve stimulation for epilepsy and depression.
Neurotherapeutics 5, 75–85 (2008).
(10)
Chen, H. et al.
Meta- analyses on prevalence of selected Parkinson’s nonmotor symptoms before and after diagnosis.
Transl. Neurodegener. 4, 1 (2015).
(11)
Barichella, M. et al.
Unraveling gut microbiota in Parkinson’s disease and atypical parkinsonism.
Mov. Disord. 34, 396–405 (2019).
(12)
Hasegawa, S. et al.
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PLoS ONE 10, e0142164 (2015).
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Vagus Nerve Stimulation (VNS™) for Treatment-Resistant Depression: Efficacy, Side Effects, and Predictors of Outcome
Neuropsychopharmacology volume 25, pages713–728(2001)
(21)
Ziad Nahas, Charlotte Teneback, Jeong-Ho Chae, Qiwen Mu, Chris Molnar, Frank A Kozel, John Walker, Berry Anderson, Jejo Koola, Samet Kose, Mikhail Lomarev, Daryl E Bohning & Mark S George
Serial Vagus Nerve Stimulation Functional MRI in Treatment-Resistant Depression
Neuropsychopharmacology volume 32, pages1649–1660(2007)
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