2020年10月1日木曜日

mRNA-1273ワクチンの高齢の方に対する治験結果

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスのワクチン接種の指針が
今後、治験結果、供給規模、時期などが決まれば
詳しく決まっていくものだと思われます。
しかし、インフルエンザワクチン接種のように
まずは医療関係者の方、
リスクの高い高齢の方から接種されるという
指針はすでに出ています。
そうなるとフェーズ3の大規模
治験の結果において、高齢の方に関して
そのワクチンの効き目、副作用が気になるところです。

アメリカのモデルナ社(さん)が現在フェーズ3の治験を進めている
ワクチンmRNA-1273は、
日本の厚生労働省の方々が
現在交渉を進めてられていると報道されています。
また実現すれば、武田薬品工業社(さん)を通じて
流通される見込みであるといわれています。

このmRNA-1273ワクチンについて
高齢の方のフェーズⅠの治験結果が報告されている(1)ので
本日はその情報を共有いたします。

〇mRNA-1273
脂質のナノ粒子の中に封入。
全ての長さを持つ糖たんぱく質から成る3量体
のSタンパク質(S-2P)をコード化。
宿主細胞(摂取された人の細胞)で
転写、翻訳されてSタンパク質(S-2P)が作られる。
(具体的にどの細胞で?)

〇接種の条件
2回接種(1回あたり25μg or 100μg)
28日間隔。

〇年齢、性別、人種、BMIの条件
(参考文献(1) Table 1参照)
56~70歳、70歳以上にわける。
治験に参加された方はほぼ白人。

〇副作用
(参考文献(1) 図1(p.6)参照)
条件:それぞれの接種後7日間の経過観察
※2回目接種から1年間は継続して観察を予定されています。
深刻な副作用は所見されませんでした。
偽薬との比較がないので心理的な影響を排除できませんが、
基本的には2回目の接種後、接種量100μgに
副作用の頻度は多くなっています。
年齢による依存はみられません。
副作用の程度はほとんどが軽度か中程度です。

〇抗体価
(参考文献(1) 図2(A)(p.8)参照)
1回目接種から36日後くらいから安定しています。
接種量が25→100μgに増やせば
それに応じて抗体価向上がみられます。
100μgで比較した時
18~55歳と同程度の抗体価です。
年齢の依存性はみられません。

〇中和能力
(参考文献(1) 図2(B)(p.8)参照)
57日間ほぼ継続しています。
接種量が25→100μgに増やせば
それに応じて中和能力向上がみられます。
100μgで比較した時
18~55歳と同程度の中和能力です。
年齢の依存性はみられません。

〇T細胞
(参考文献(1) 図3(B)(p.8)参照)
Th1型のヘルバーT細胞の数が
1回目接種から43日後に上昇がみられます。
100μgのほうが顕著です。

〇いくつかの優れた点
------
高齢の方に対しても
実際に新型コロナウィルスよりも
免疫を誘発するSタンパク質を多く生み出すことができます(1)。
prefusion-stabilized mutationのため(2,3)。
2Pという変異(設計?)可能なたんぱく質を融合する前に
構造的に安定な状態で変異を加えたため(?)
--------
自然免疫の誘発を制御できます(4)。
-------
脂質からできたナノ粒子が
人の細胞の中に効率的に取り込まれます(5)。

今回は少人数によるフェーズⅠの報告でしたが、
70歳以上の高齢の方にも
変わらない抗体価、中和能、T細胞反応が見られ、
副作用も高齢になれば深刻になる
という傾向もみられませんでした。
調査としては、基礎疾患がある方はどうか?
という点が後は気になるところです。

以上です。


(参考文献)
(1)
E.J. Anderson, N.G. Rouphael, A.T. Widge, L.A. Jackson, P.C. Roberts, M. Makhene, J.D. Chappell, M.R. Denison, L.J. Stevens, A.J. Pruijssers, A.B. McDermott, B. Flach, B.C. Lin, N.A. Doria-Rose, S. O’Dell, S.D. Schmidt, K.S. Corbett, P.A. Swanson II, M. Padilla, K.M. Neuzil, H. Bennett, B. Leav, M. Makowski, J. Albert, K. Cross, V.V. Edara, K. Floyd, M.S. Suthar, D.R. Martinez, R. Baric, W. Buchanan, C.J. Luke, V.K. Phadke, C.A. Rostad, J.E. Ledgerwood, B.S. Graham, and J.H. Beigel, for the mRNA-1273 Study Group*
Safety and Immunogenicity of SARS-CoV-2 mRNA-1273 Vaccine in Older Adults
The New England Journal of Medicine (2020) 9/29 
DOI: 10.1056/NEJMoa2028436
(2)
Kizzmekia S. Corbett, Darin K. Edwards, Sarah R. Leist, Olubukola M. Abiona, Seyhan Boyoglu-Barnum, Rebecca A. Gillespie, Sunny Himansu, Alexandra Schäfer, Cynthia T. Ziwawo, Anthony T. DiPiazza, Kenneth H. Dinnon, Sayda M. Elbashir, Christine A. Shaw, Angela Woods, Ethan J. Fritch, David R. Martinez, Kevin W. Bock, Mahnaz Minai, Bianca M. Nagata, Geoffrey B. Hutchinson, Kai Wu, Carole Henry, Kapil Bahi, Dario Garcia-Dominguez, LingZhi Ma, Isabella Renzi, Wing-Pui Kong, Stephen D. Schmidt, Lingshu Wang, Yi Zhang, Emily Phung, Lauren A. Chang, Rebecca J. Loomis, Nedim Emil Altaras, Elisabeth Narayanan, Mihir Metkar, Vlad Presnyak, Cuiping Liu, Mark K. Louder, Wei Shi, Kwanyee Leung, Eun Sung Yang, Ande West, Kendra L. Gully, Laura J. Stevens, Nianshuang Wang, Daniel Wrapp, Nicole A. Doria-Rose, Guillaume Stewart-Jones, Hamilton Bennett, Gabriela S. Alvarado, Martha C. Nason, Tracy J. Ruckwardt, Jason S. McLellan, Mark R. Denison, James D. Chappell, Ian N. Moore, Kaitlyn M. Morabito, John R. Mascola, Ralph S. Baric, Andrea Carfi & Barney S. Graham 
SARS-CoV-2 mRNA vaccine design enabled by prototype pathogen preparedness
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2622-0
(3)
Pallesen J, Wang N, Corbett KS, et al. 
Immunogenicity and structures of a rationally designed prefusion MERS-CoV spike antigen. 
Proc Natl Acad Sci U S A 2017; 114: E7348-E7357.
(4)
Corbett KS, Edwards D, Leist SR, et al. 
SARS-CoV-2 mRNA vaccine development enabled by prototype pathogen preparedness. June 11, 2020
 (https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.06.11.145920v1). preprint.
(5)
Wec AZ, Wrapp D, Herbert AS, et al. 
Broad neutralization of SARS-related viruses by human monoclonal antibodies. 
Science 2020; 369: 731-6.

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