2020年10月15日木曜日

分泌物質との引力で流れに乗れるか?

片頭痛になる方は女性が多くて、
アメリカの調査ではピークの年齢が15~30歳くらいで
おおよそ1000人に20~25人なので
2~2.5%と比較的高い罹患率となっています。
男性の4倍から5倍です。
(参考文献(1) Fig.1参照)
その中で一つ問題なのが
子供も多くて、10歳以下、
あるいはもっと下の5歳以下の子供の中にも
片頭痛を経験する人が比較的多くいることです(1)。

片頭痛は生活の質と相互関係があるといわれています。
頭の片側が痛く、それが続くわけですから
ずっと不快感と向き合う必要があります。
その中で、生活の質が落ち、
それで片頭痛が悪化することも考えられます。
例えば、
学生さんが片頭痛を経験した場合には、
学習意欲、学力にも影響がでるといわれています(2,3)。

特に痛みがひどく急性の処置の場合には
いくつかの薬の候補があります
幼児、子供に対しての用量も定められています。
(参考文献(1) Table 1参照)

しかしながら、その他の薬剤に関して、
例えば、
topiramate, amitriptylineといった薬では
子供や青年でプラゼボに対して
顕著な薬効は示されなかったというデータもあります。

健康的な生活や、その他
自身で獲得できる、自助努力によって可能な対策は
「自分ならできる」という自己効力感につながり(5)
片頭痛に対する治療において良い効果があったとされています(6)。
健康的な生活とは
規則的な食事、栄養バランス、栄養補充、運動、
十分な睡眠などが挙げられます(1)。
後は心理的なケアもあると思います。
その中ではレジャー、趣味なども有効かもしれません。
上述したように
特に子供の場合には体が小さいこともありますが、
薬による副作用のリスクが大人に比べて
大きいことが考えられるので、
薬だけに頼らない治療が大切になるということです。
例えば、
US National Pain Strategy 
The Federal Pain Research Strategy
では薬に頼らない介入のプラグラムが用意されています(7,8)。

一方で、
片頭痛の病理、あるいは薬理を理解して、
少ない量で効果を発揮するような薬剤
あるいはその輸送システムを考えることが重要です。
病理においてその標的となるペプチドとして
カルシトニン遺伝子関連ペプチド
(calcitonin gene-related peptide)
というのがあります。
片頭痛では三叉神経末端が刺激されて
そこからカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が分泌され、
血管拡張を誘発して片頭痛が起こるとされる(9)
とあります。
従って、このペプチドの作用を弱めるような
拮抗作用を持つ薬は病状の緩和に貢献する可能性があります。
そこでこのペプチドの受容体に特異性を持つ
モノクローナル抗体からなる薬剤が治験段階にあります(10-15)。
しかし、これらは大人に対するデータで(1)、
若い人や子供に対してどうかという結果が待たれます。

おそらく、このペプチドの対する
アンタゴニスト(拮抗薬)は
「ペプチド自身ではなく」「受容体」を標的にして
ペプチドが結合しないようにしたものだと推測します。
そのような通常の傾向を考えた時に、
特定の病変部位に「治癒を促すような物質」
あるいは「治癒を促すような物質が封入された胞」を
運ぶときには、その病変部位に特異的に作用する
分泌物質自身を使うことができないか?
という観点が生まれました。
それはエクソソーム、エクトソーム
などといった小さな胞であったり、
そのような脂質膜などに包まれることなく運ばれる
ペプチド、たんぱく質などがあると思います。
それらと親和性があって、
その分泌物質が多く流れを作っているところにおいて
それらと正に相互作用することで
その流れにうまく乗ることができるような
輸送システムを築けないか?
という視点が生まれました。
基本的には細胞よりも小さいですし、
ダイナミックなので、固定的に付着することは
難しいかもしれないですが、
付着したり、離れたりしながらも、
ある程度の引力があることで
「その分泌の流れに乗ることができる」
といったことがないか?と考えました。
例えば、その流れに乗ることができれば、
最終的に到着したい病変部位まで有効に輸送できるかもしれません。
そうした時には、
輸送経路で使われるエピトープと
最終的に病変部位の細胞特異的な
エピトープ両方が存在する事になります。

以上です。

(参考文献)
(1)
Serena L. Orr, Marielle A. Kabbouche, Hope L. O’Brien, Joanne Kacperski, Scott W. Powers & Andrew D. Hershey 
Paediatric migraine: evidence-based management and future directions
Nature Reviews Neurology volume 14, pages515–527(2018)
(2)
Arruda, M. & Bigal, M. E. 
Migraine and migraine subtypes in preadolescent children: association with school performance. 
Neurology 79, 1881–1888 (2012).
(3)
Rocha- Filho, P. A. & Santos, P. V. 
Headaches, quality of life, and academic performance in schoolchildren and adolescents. 
Headache 54, 1194–1202 (2014).
(4)
Powers, S. W. et al. 
Trial of amitriptyline, topiramate, and placebo for pediatric migraine. 
N. Engl. J. Med. 376, 115–124 (2017).
(5)
Leroux, E. et al. 
A nursing intervention increases quality of life and self- efficacy in migraine: a 1-year prospective controlled trial. 
Headache https://doi.org/10.1111/head.13178 (2017).
(6)
Probyn, K. et al. 
Prognostic factors for chronic headache: a systematic review. 
Neurology 89, 291–301 (2017).
(7)
Interagency Pain Research Coordinating Committee. National pain strategy. National Institutes of Health 
https://iprcc.nih.gov/sites/default/files/HHSNational_Pain_Strategy_508C.pdf (2016).
(8)
Interagency Pain Research Coordinating Committee. Federal pain research strategy. National Institutes of Health 
https://iprcc.nih.gov/sites/default/files/FPRS_Research_Recommendations_Final_508C.pdf (2017).
(9)
Edvinsson L, Ho TW.
“CGRP receptor antagonism and migraine.”. 
Neurotherapeutics. 7 (2): 164-175.
(10)
Deen, M. et al. 
Blocking CGRP in migraine patients — a review of pros and cons. 
J. Headache Pain 18, 96 (2017).
(11)
Pellesi, L., Guerzoni, S. & Pini, L. A. 
Spotlight on anti-CGRP monoclonal antibodies in migraine: the clinical evidence to date. 
Clin. Pharmacol. Drug Dev. 6, 534–547 (2017).
(12)
Tso, A. R. & Goadsby, P. J. 
Anti-CGRP monoclonal antibodies: the next era of migraine prevention?  
Curr. Treat. Opt. Neurol. 19, 27 (2017).
(13)
Goadsby, P. J. et al. 
A Controlled trial of erenumab for episodic migraine. 
N. Engl. J. Med. 377, 2123–2132 (2017).
(14)
Silberstein, S. D. et al. 
Fremanezumab for the preventive treatment of chronic migraine. 
N. Engl.  J. Med. 377, 2113–2122 (2017).
(15)
Skljarevski, V. et al. 
Effect of different doses of galcanezumab versus placebo for episodic migraine prevention: a randomized controlled. 
JAMA Neurol. 75, 187–193 (2017).

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