2020年10月25日日曜日

心筋炎の病理、治療、診断について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

炎症性心筋症という疾患があります。
炎症を起こした細胞が心筋に侵入し
心臓機能が悪化することです。
その病因は異種性を示すと言われています(1)。
この心筋とは左心室、左心室の壁となっている
筋肉のように動く組織で、それが炎症を起こすと
その組織の壁が厚くなり、組織としても固くなり、
筋組織としての機能が弱くなり、
血液を送る能力もそれに応じて弱くなる可能性が考えられます。
その中にはウィルス性、細菌性のものもあります。
また、薬、あるいは系統的な免疫性の疾患によって
それが惹起されることもあります(1)。
特に左心室の不全、心不全、不整脈に発展すると
予後が悪くなる可能性が指摘されています(2)。
また新型コロナウィルス感染においても
炎症性心筋症を引き起こす可能性があることが
懸念されますが、ウィルス自身がそうしているのか?
それともウィルスによって引き起こされた
免疫異常など他の要因がそうさせているのか?
というのは未理解であるとされています(1)。

上述したようにウィルス性の心筋炎が報告されています。
その中で新型コロナウィルスを含むコロナウィルスは
インフルエンザと似た様式で疾患を引き起こすといわれています。
これらの疾患から心筋炎が引き起こされる特徴は
サイトカインストームなど免疫機能の異常によるものが
少なくとも一つとしてあると推定されています(3)。
それらの治療としてはレムデシビルなどの
抗ウィルス性の薬剤が挙げられています。
(参考文献(1) Table 1 最下段参照)

前述したサイトカインストームなどによる免疫異常は
アンバランスなヘルパーT細胞の反応
(Th1/Th2 CD4+T細胞)が一つの
原因である可能性が示唆されています(4,5)。

新型コロナウィルスが直接的、あるいは間接的に
心筋炎に影響を及ぼしているか
現在調べられているところですが、
血液を介して心臓にダメージを与えていることや
マクロファージなどがウィルス感染によって
影響を受けて心筋に侵入することで
機能不全を惹起している可能性があります(6)。
また、これら免疫機能は
臓器、組織間でのクロストークがあると考えられており、
例えば、脾臓や骨髄と
サイトカイン、免疫細胞を通して、
心臓の心筋細胞の状態が決まっている部分がある
とされています。
(参考文献(1) Fig.2参照)
またウィルス感染した時の
免疫応答に関して、NK細胞、マクロファージがあります。
NK細胞は心筋炎の進行を抑える働きがあります(1)。
またマクロファージはナイーブB細胞、T細胞に働きかけて
獲得免疫を誘発する機能があります(1)。
それによって特異的な受容体が細胞表面に形成されます。

また、新型コロナウィルスなどのウィルス性を含む
心筋炎に罹患するか、そうでないかという
分岐、個人差に関しては未知ではあると考えられています(1)が
実際に炎症性心筋炎に罹患した患者さんの60%は
心臓に特異的な自己抗体を持っているという報告があります(7-9)。
自己抗体は適正な免疫機能を逸脱させる働きをするので
ウィルスなどの外敵が体に侵入して、
血液などを通して、免疫細胞なども介しながら
心臓に負荷をかけてきた時に、心臓自身が持つ免疫応答が
適切に働かない可能性が考えられます。
実際に自己抗体の元となる自己抗原は
心筋炎に罹患している方から以下の部分において
確認されています(10-15)。
〇β1-adrenergic receptor, 
〇muscarinic acetylcholine receptor M2, 
〇cardiac myosin heavy chain isoforms
〇cardiac troponin

次世代の心筋炎の治療の一つとして
iPS細胞を使った研究が試験管ですが
進められています(16)。
しかしながら、免疫機能との相互作用
あるいはそれを含めた生体内での反応など
課題はまだ多くあるとされています(17)。
その他
〇キメラ抗原受容体(CAR)を使った治療
〇抗IL-17抗体による治療
〇細胞ベースの治療
〇アルドステロン拮抗作用を利用した治療
〇腸内細菌による治療
などが挙げられています(1)。
特にテーラーメイドのiPS細胞やCAR-免疫細胞、
あるいはCARそのものを血液を通して送り届ける際には
患部に特異的に輸送できるシステムを構築することも
一つの視点として重要になると考えます。

新型コロナウィルスにおける心筋炎が
生じているか診断するときには
血液によるバイオマーカーが一つの大切な情報になります。
その中で
〇C-reactive protein, 
〇N-terminal pro-B-type natriuretic peptide (NT-proBNP), 
〇troponin T and soluble IL-1 receptor-like 1 (IL1RL1,ST2), 
との関連が指摘されています(18,19)。
※新型コロナウィルスのケースではありません。

新型コロナウィルスにおける心筋炎の治療に関しては
基本的には体内のウィルスの量を減らすということが
考えられます。
その中で、今、世の中で使われているレムデシビルや
サイトカイン抑制剤などを通して、
心筋炎の病状の関連は調べられています(1,20)。

以上です。

(参考文献)
(1)
Carsten Tschöpe, Enrico Ammirati, Biykem Bozkurt, Alida L. P. Caforio, Leslie T. Cooper, Stephan B. Felix, Joshua M. Hare, Bettina Heidecker, Stephane Heymans, Norbert Hübner, Sebastian Kelle, Karin Klingel, Henrike Maatz, Abdul S. Parwani, Frank Spillmann, Randall C. Starling, Hiroyuki Tsutsui, Petar Seferovic & Sophie Van Linthout 
Myocarditis and inflammatory cardiomyopathy: current evidence and future directions
Nature Reviews Cardiology (2020)
(2)
Ammirati, E. et al. 
Clinical presentation and outcome in a contemporary cohort of patients with acute myocarditis. 
Circulation 138, 1088–1099 (2018).
(3)
Van Linthout, S., Klingel, K. & Tschope, C. 
SARS-CoV2-related myocarditis-like syndroms: Shakespeare’s question: What’s in a name? 
Eur. J. Heart Fail. 22, 922–925 (2020).
(4)
Huang, C. et al. 
Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China.  
Lancet 395, 497–506 (2020).
(5)
Moore, B. J. B. & June, C. H. 
Cytokine release syndrome in severe COVID-19. 
Science 368, 473–474 (2020).
(6)
Tavazzi, G. et al. 
Myocardial localization of coronavirus in COVID-19 cardiogenic shock. 
Eur. J. Heart Fail. 22, 911–915 (2020).
(7)
Caforio, A. L. et al. 
Novel organ- specific circulating cardiac autoantibodies in dilated cardiomyopathy.  
J. Am. Coll. Cardiol. 15, 1527–1534 (1990).
(8)
Caforio, A. L. et al. 
A prospective study of biopsy-proven myocarditis: prognostic relevance of clinical and aetiopathogenetic features at diagnosis.  
Eur. Heart J. 28, 1326–1333 (2007).
(9)
Caforio, A. L. et al. Current state of knowledge on aetiology, diagnosis, management, and therapy of myocarditis: a position statement of the European Society of Cardiology Working Group on Myocardial and Pericardial Diseases. 
Eur. Heart J. 34,  2636–2648 (2013).
(10)
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J. Immunol. 139, 3630–3636 (1987).
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Myosin-induced acute myocarditis is a T cell-mediated disease. 
J. Immunol. 147, 2141–2147 (1991).
(12)
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Lack in treatment options for virus- induced inflammatory cardiomyopathy: can iPS- derived cardiomyocytes close the gap? 
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Viral myocarditis- diagnosis, treatment options, and current controversies. 
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Pharmacologic treatments for coronavirus disease 2019 (COVID-19): a review.  
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