2020年10月16日金曜日

Sタンパク質に対する抗体の結合状態の比較

新型コロナウィルス感染、あるいはワクチンによって
体内に生成された抗体が
どのように新型コロナウィルス粒子表面にある
Sタンパク質に結合しているか
その結合面(エピトープ)を評価することは大切です。
実際には抗体は一種類ではなく
多くの種類存在しているといわれており、
それぞれ中和能と呼ばれる
抗体が細胞の受容体に結合するのをどれくらい防いでくれるか
という能力を示す値があり、抗体ごとに異なります。
その違いというのは構造的にみれば、
Sタンパク質に対する抗体の結合の仕方が異なるということです。
実際にはSタンパク質の構造も可変なので、
どの型のSタンパク質に結合するかも異なります。
そのなかで「up」「down」と呼ばれる構造があり、
upのSタンパク質の構造では、
受容体結合面(receptor-binding domain:RBD)が露出していて
活性に結合し、細胞内にエンドサイトーシスできる状態です。
そのようなup、downの構造がSタンパク質は3量体なので
3パターン存在します。
その中で、抗体がどのように結合するか
以下のようなパターンがあるとされています。
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up構造だけに結合し、ACE2受容体結合を抑制する。
C102
downのRBDの場合には立体構造上の衝突が起き
結合できない状態となっています。
(参考文献(1) Extended Data Fig.1(f)参照)
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up,down構造両方に結合し、ACE2受容体結合を抑制する。
さらに,隣接するRBDsと接触、結合できる。
C144
隣り合う受容体結合面に「橋を架けるように」
結合しているのがわかります。
(参考文献(1) Fig.1(c),(d),(e)参照)
(参考文献(1) Fig.3(a)参照)
これによって構造を固定化することができると考えられます。
例えば、downの構造であれば、
RBDを不活性なまま安定化させることができると
考えられるため、高い中和能を示すことができる
といえるのではないかと推測しました。
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ACE2受容体結合サイトの外側に結合し、
up, downのRBDを認識する。
C135
RBDのうちACE2受容体が結合する面は
異なる面に抗体がついています。
(参考文献(1) Fig.4(b)参照)
これは自然感染で生まれる抗体です。
この抗体はC144という②のタイプの抗体がついている場合
C135の重鎖の部分とC144の軽鎖の部分が
立体構造上衝突して、結合できない状態になる
と考えています。
(参考文献(1) Fig.4(f)参照)
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up構造だけに結合し、ACE2受容体結合を抑制しない。
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これらから、
基本的に抗体が結合できるかどうかを示す一つの指標は、
Sタンパク質のRBD、あるいはその周辺部の表面モフォロジー
つまり、立体形状、立体構造があって、
その凹凸(トポロジー)に対して
抗体の立体構造が上手く整合するかどうか
だと考えました。
また、図で示されているように
他の抗体がすでに結合している場合に、
それらと干渉、衝突することで結合できないこともあります。
例えば、中和能の低い抗体がすでにSタンパク質についていて
それが後に結合する中和能の高い抗体に対して
結合を阻止するような立体構造をとる
ということも考えられます。
逆に中和能の高い抗体が低い抗体をブロックすることも
考えらえれると思います。
またそれらの抗体同士の干渉は、
Sタンパク質がup(open:活性),down(close:不活性)な
状態でも変わり、Sタンパク質のRBDサイトは
3量体からなり、3つある事から
それらのパターンによって異なる可能性が考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Christopher O. Barnes, Claudia A. Jette, Morgan E. Abernathy, Kim-Marie A. Dam, Shannon R. Esswein, Harry B. Gristick, Andrey G. Malyutin, Naima G. Sharaf, Kathryn E. Huey-Tubman, Yu E. Lee, Davide F. Robbiani, Michel C. Nussenzweig, Anthony P. West Jr & Pamela J. Bjorkman 
SARS-CoV-2 neutralizing antibody structures inform therapeutic strategies
Nature (2020)

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