日本の厚生労働省が7月31日に
米製薬会社のファイザー社(さん)と
新型コロナウィルスのワクチンについて
6千万人分の供給を受けるように契約を結ばれました。
20日程度空けて2回接種のプログラムが想定されていますから
実際の個数としては1億2千万個ということになります。
10月17日に報道各社(読売新聞社(さん)、日本経済新聞社(さん)、
ロイター通信社(さん))が揃って
このナノ粒子を使ったRNAワクチンのニュースを報道し、
アメリカで11月末に緊急使用申請する可能性が上がっています。
アメリカだけではなく、ヨーロッパでも
未だ感染の収束の目途が立たず、
厳しい行動制限を余儀なくされている社会的状況もあります。
そうした中でワクチンの需要は高まっているものだと思われます。
このナノ粒子を使ったRNAワクチンにおいては
新しい型のワクチンが開発されており、
フェーズⅠの治験結果が出ています。
これはフルサイズの新型コロナウィルスのSタンパク質と同じ
糖たんぱく質をナノ粒子の表面に構造的に安定な形で
作れるように改変されています。
その中で抗体価、中和能などワクチンの性能において
新型コロナウィルス罹患の回復期の値と比べて
十分に高い値が確認されており、
副作用については特に高齢の方で
より程度が軽くなっている可能性がある事から、
改善効果が期待される結果となっています(1)。
今、治験が進んでいる型である(BNT162b1)においても
抗体価、中和能など高い性能があり、
副作用も懸念されるほどではないことから、
フェーズⅢの大規模な調査において
それ以前の小規模な結果が反映されているかどうか
に関心が集まります。
また、ワクチンの性能を評価するときには
通常はB細胞を通じた液性免疫の評価パラメータを
統計的に調査することが多いです。
液性免疫とは、いわゆる抗体の事で
その抗体の質、上で述べた抗体価、中和能を評価します。
しかし、実際には
新型コロナウィルスを模した物質が体内に入った時には、
T細胞、あるいはNK細胞といった
B細胞以外の免疫細胞が反応することが想定されます。
これらの細胞による免疫機能は、
主に細胞性免疫と呼ばれ、
少なくともその一部は、新型コロナウィルスに
細胞が感染した時に、その信号を受け取って、
その細胞を直接攻撃するような機序があります。
上述した液性免疫では
新型コロナウィルスが細胞に侵入、感染する経路を
遮断するような働きがありますが、
このT細胞に代表される細胞性免疫の場合は、
ウィルス粒子を直接的に攻撃することも考えられるし、
ウィルスに感染した細胞を細胞死に至らせる機序があります。
その様な並列的な免疫機能が体内に備わっていると
考えられるために、ワクチンを接種した時に
T細胞などの免疫細胞の反応を評価することは大切になります。
またワクチンの持続性についても関心が集まります。
私たちが共存してきたインフルエンザに対する
インフルエンザワクチンは1年に1回接種します。
新型コロナウィルスのワクチンは
どれくらいの間隔で摂取する必要があるのか?
それを考えるときには、
抗体価、中和能の時間依存性を見ることが主ではありますが、
付随してT細胞反応がどれくらいの期間、記憶されるか?
それも評価項目としては重要です。
このワクチンはドイツのビオンテック社(さん)も
共同開発しているものです。
この企業に所属しているUgur Sahin氏らは、
BNT162b1タイプのワクチンにおいて、
Th1型のT細胞の反応性について報告しています(2)。
このTh1型のT細胞はCD4に活性であり、
インターフェロンによって活性化されます。
このTh1型はCD8に活性なT細胞の働きを助けるため
細胞性免疫に貢献するものです。
評価期間
2020年4月23日~5月22日
治験参加者
60名
治験実施国
ドイツ
ワクチン接種用量
1μg、10μg、30μg、50μg
21日間空けて2回接種
それぞれの摂取量に対する
IFN-γによって活性化された
CD4+T細胞、CD8+T細胞の量は、
個人差が大きいものの1μgと非常に低い接種用量から
1回目接種から29日後増えています。
また1μgではほとんど増えない方がいた一方で
用量を30μg、50μgに増やすと
参加された方全員にこれらの免疫細胞の活性化が確認されました。
(参考文献(2) Fig.3(a)参照)
これらは新型コロナウィルスの
受容体結合面(RBD)に特異的であることが確認されています。
特に、CD4+T細胞についてはその傾向が強いです。
(参考文献(2) Fig.3(b)参照)
また活性化されたサイトカインの種類から
CD4ヘルパーT細胞については
Th1型が活性化されたことが確認されています(2).
また読まれている方は、
上述したように新型コロナウィルスに対する
ワクチン接種による免疫持続性について関心があると思います。
液性免疫に基づく抗体については
数か月間で減少していく報告もあります。
実際に参考文献(2)の調査では
接種43日後には低下の傾向がみられました。
但し、接種用量によっても変わり、
1μgと少ない量では43日後でも増加がみられました(2)。
評価として重要になる一つの指標は、
回復期の患者さんの抗体価、中和能のピークを
どれだけの日数上回っているか?
という絶対値にあるのではないか?と思います。
一方、
過去の同じタイプのSARS-CoV-1の調査によると
細胞性免疫に基づくCD4、CD8のT細胞の記憶については
長く続くと言われており、
CD8+T細胞については6年~11年続くという報告もあります(3,4)。
従って、仮に年に1度摂取すれば、
細胞性免疫は強化されていく可能性はあります。
従って、これらの細胞性免疫が
これから継続的に新型コロナウィルスの予防接種をしていった時に
どのように強化されていくか?
という継続調査は世界的に必要になってくると思います。
これらの細胞性免疫は
ワクチンによって生体内に入れられた抗原に特異的に
反応する部分があるので、液性免疫でも指摘されるように
インフルエンザのようにウィルスの遺伝子変異によって
その特異性に変化が生まれる場合において、
細胞性免疫の持続性の中で
期間が重複した時の交差性がどのようになるか?
というのが一つポイントだと考えられます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Edward E. Walsh, M.D., Robert W. Frenck, Jr., M.D., Ann R. Falsey, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D., Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M., Kathleen Neuzil, M.D., Mark J. Mulligan, M.D., Ruth Bailey, B.Sc., Kena A. Swanson, Ph.D., Ping Li, Ph.D., Kenneth Koury, Ph.D., Warren Kalina, Ph.D., David Cooper, Ph.D., Camila Fontes-Garfias, B.Sc., Pei-Yong Shi, Ph.D., Özlem Türeci, M.D., Kristin R. Tompkins, B.Sc., Kirsten E. Lyke, M.D., Vanessa Raabe, M.D., Philip R. Dormitzer, M.D., Kathrin U. Jansen, Ph.D., Uğur Şahin, M.D., and William C. Gruber, M.D.
Safety and Immunogenicity of Two RNA-Based Covid-19 Vaccine Candidates
The New England Journal of Medicine October 14 2020
(2)
Ugur Sahin, Alexander Muik, Evelyna Derhovanessian, Isabel Vogler, Lena M. Kranz, Mathias Vormehr, Alina Baum, Kristen Pascal, Jasmin Quandt, Daniel Maurus, Sebastian Brachtendorf, Verena Lörks, Julian Sikorski, Rolf Hilker, Dirk Becker, Ann-Kathrin Eller, Jan Grützner, Carsten Boesler, Corinna Rosenbaum, Marie-Cristine Kühnle, Ulrich Luxemburger, Alexandra Kemmer-Brück, David Langer, Martin Bexon, Stefanie Bolte, Katalin Karikó, Tania Palanche, Boris Fischer, Armin Schultz, Pei-Yong Shi, Camila Fontes-Garfias, John L. Perez, Kena A. Swanson, Jakob Loschko, Ingrid L. Scully, Mark Cutler, Warren Kalina, Christos A. Kyratsous, David Cooper, Philip R. Dormitzer, Kathrin U. Jansen & Özlem Türeci
COVID-19 vaccine BNT162b1 elicits human antibody and TH1 T cell responses
Nature (2020)
(3)
Nicolas Vabret et al.
Immunology of COVID-19: Current State of the Science
Immunity Volume 52, Issue 6, 16 June 2020, Pages 910-941
(4)
Oi-Wing Ng et al.
Memory T cell responses targeting the SARS coronavirus persist up to 11 years post-infection
Vaccine Volume 34, Issue 17, 12 April 2016, Pages 2008-2014
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