新型コロナウィルスの感染者数が日々発表されています。
昨日は全国で467人です。
推移をみると、ここのところ横ばい状態となっています。
その感染の有無はPCR検査で陽性、陰性の結果によるものです。
そこではっきりとしたラインが引かれています。
インフルエンザなどの他の感染症でも言えることですが、
新型コロナウィルスの感染の有無を判断することは
厳密には非常に難しいです。
例えば、体内に1つのウィルス粒子がいたら
それは陽性でしょうか?
もちろんPCRでは検出限界以下なので陰性になるわけですが、
1つのウィルス粒子でも体内にいれば
「感染している」という見方もできます。
そのようにPCRの検出限界以下の領域もあることから
ウィルスに対しての社会の脅威に対する評価は
感染の有無ではなくて、
厳密には「社会にいる一人当たりのウィルス粒子数」
と言える部分があります。
それを計測することは不可能です。
ただ、概念としては考え得ることです。
その平均がPCRの検出限界以下を大きく下回れば、
おそらく感染者数は限りなくゼロに近づくと思います。
またその基準で判断される実効再生産数も1以下になると思います。
集団免疫(Herd immunity)という言葉があります。
どれくらいの割合の人が抗体、メモリー細胞を持つかで
判断されることもありますが、
参考文献(1)の定義では
「実効再生産数が1以下の状況」とあります。
つまり、感染者数が減って流行が収束に向かっている状況です。
1人の人が2次感染させる人の数が1人以下であれば、
ネットワーク理論から時間が経てば数は減少していきます。
このような社会の状況というのは、
新型コロナウィルスが社会から、
(厳密には環境と人を含め生体内から)
ウィルスが消滅するのではなくて、
その粒子数がPCRで検出できるほど多くなっていない状況で
医療の観点から言えば、
その粒子数で推移した時に、
人の免疫機能を乱すほどではない量と言えます。
その数を減らすためにはどうしたらいいかというと
------
①
今、日本の方が意識されているように
マスクをしたり、消毒をしたり、
3密を避けたり、こまめに手を洗ったり、
飛沫を避けたり、、、
そういった社会活動の中の意識で減っていきます。
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②
そしてやがて予防接種ができるようになり
抗体を生み出せるようになると
体内でウィルスの数は減っていきます。
------
③
また、本日記事にする免疫細胞による抗ウィルス性によっても
ウィルスの数は減っていきます。
------
社会全体で上の3つで挙げたような要素を合わせて
「多面的に」対策していく事によって
上述したように社会でのウィルスの数は減り
それによって実効再生産数が1以下になると思います。
また、同時に
医療現場での治療の診断、治療のレベルも上がってくると
中にはウィルスが体内で増えてしまう人もいますから
その方の医療的なケアも保障することができます。
このような事が段階的に整っていくと
季節性のインフルエンザに対する私たちの感覚と
近いものになります。
もちろん新型コロナウィルスは
心理的なものもあり、
罹患者に対する偏見、差別が未だ存在するので
上で述べたような多面的な取り組み、理解とともに
人々を啓蒙していく必要があると思います。
その新型コロナウィルスに対して
すでに事前免疫があるかもしれないという
議論もあります(2,3)。
免疫には交差反応性(cross reactivity)
というのがあり、
その中で、違うタイプのコロナウィルスの
事前感染によって構築された免疫が
新型コロナウィルスに対する免疫に貢献している
可能性がある、というのが議論の中にあります。
風邪ウィルスと言われることもありますが、
毒性の低い「コモンコールドな」
コロナウィルスの型としては、
HCoV-OC43, HCoV-HKU1, HCoV-229E, HCoV-NL63
が挙げられています(1)。
すでにこれらを含めたコロナウィルスによる
免疫細胞であるT細胞の
交差反応的な記憶(cross-reactive memoery)は
新型コロナウィルスに罹患した患者さんのうち
28~50%の人に診られたという報告が複数あります(4-10)。
その中でより広範に交差反応性を示すと言われている
免疫細胞はCD4型でCD4+記憶型T細胞です。
これにはいくつかのタイプがあって
FH型:B細胞の働きを助け抗体の産生を促すもの
H1型:直接的に感染細胞を攻撃するもの
があります(1)。
Marc Lipsitch氏らは、
今述べたCD4+記憶型T細胞が事前免疫としてあり、
そのパターンについて
想定される症状の度合いをシミュレーションしました。
(参考文献(1) Fig.1より)
その結果の中で、
細胞攻撃型であれ、B細胞を助ける型であれ
CD4+記憶型T細胞があることで
それがない時と比べて
新型コロナウィルスに対するリスクは小さくなります。
さらに、
そのCD4+記憶型T細胞が「どこにあるか?」が重要です。
特にウィルスの入り口である
口鼻喉あるいは目、上気管部などの「組織に」
これらの免疫細胞があると、
新型コロナウィルスに対する症状の程度は
顕著に軽くなると考えられるとあります。
(参考文献(1) Fig.1 Modelごとの緑の領域より)
ただ、特にB細胞の抗体産生を促すような
FH型のCD4メモリーT細胞の数が多い時には、
その抗体の構造が新型コロナウィルス特異的な抗体
との差異が大きく、中和能が低い場合には
抗体依存性感染増強の懸念が生まれます。
あるいはT細胞表面の受容体の親和性の低下
異常なT細胞の発現なども危惧されます(1)。
また、注意が必要なのは、
新型コロナウィルスに暴露されたときの
症状の程度は、今述べたCD4活性型だけではなく
既往歴、年齢、性別
あるいはナイーブ(未発達)なT細胞の保有種類
によっても異なることです(11-13)。
いずれにしても
おそらくウィルスの入り口の部分で
しっかり免疫機能が働き、数を減らすことができれば
体の内部、気管支、肺などへの浸入も減らすことができるので
症状の軽度化に貢献する可能性があります。
「抗体検査」では、
鼻に綿棒を突っ込んで検査する方法もあります。
あるいは唾液によってもできるでしょうか?
免疫細胞の採取は通常は血液からだと思いますが、
なんとか口鼻喉目から調べることができれば、
新たな知見になる可能性もあると考えられます。
またワクチン接種した時に
入口の免疫機能を高めるような方式があれば、
より効果的な予防効果があるという可能性も
否定はできません。
以上です。
(参考文献)
(1)
Marc Lipsitch, Yonatan H. Grad, Alessandro Sette & Shane Crotty
Cross-reactive memory T cells and herd immunity to SARS-CoV-2]
Nature Reviews Immunology (2020)
(2)
Sette, A. & Crotty, S.
Pre-existing immunity to SARS-CoV-2: the knowns and unknowns.
Nat. Rev. Immunol. 20, 457–458 (2020).
(3)
Doshi, P.
Covid-19: do many people have pre-existing immunity?
BMJ 370, m3563 (2020).
(4)
Grifoni, A. et al.
Targets of T cell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals.
Cell 181, 1489–1501.e15 (2020).
(5)
Braun, J. et al.
SARS-CoV-2-reactive T cells in healthy donors and patients with COVID-19.
Nature https://doi.org/10.1038/s41586-020-2598-9 (2020).
(6)
Bert, N. L. et al.
SARS-CoV-2-specific T cell immunity in cases of COVID-19 and SARS, and uninfected controls.
Nature 584, 457–462 (2020).
(7)
Mateus, J. et al.
Selective and cross- reactive SARS- CoV-2 T cell epitopes in unexposed humans.
Science https://doi.org/10.1126/science.abd3871 (2020).
(8)
Weiskopf, D. et al.
Phenotype and kinetics of SARS-CoV-2-specific T cells in COVID-19 patients with acute respiratory distress syndrome.
Sci. Immunol. 5, eabd2071 (2020).
(9)
Meckiff, B. J. et al.
Single-cell transcriptomic analysis of SARS- CoV-2 reactive CD4+T cells.
Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.06.12.148916 (2020).
(10)
Sekine, T. et al.
Robust T cell immunity in convalescent individuals with asymptomatic or mild COVID-19.
Cell https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.08.017 (2020).
(11)
Stephens, D. S. & McElrath, M. J.
COVID-19 and the path to immunity.
JAMA 324, (2020).
(12)
Moderbacher, C. R. et al.
Antigen-specific adaptive immunity to SARS-CoV-2 in acute COVID-19 and associations with age and disease severity.
Cell https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.09.038 (2020).
(13)
Bunders, M. & Altfeld, M.
Implications of sex differences in immunity for SARS-CoV-2 pathogenesis and design of therapeutic interventions.
Immunity 53, 487–495 (2020).
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