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新型コロナウィルスで肺、血管に障害を受けたり
あるいは、
肝硬変などで肝臓の組織がダメージを受けたりすると
その組織は、線維化すると言われています。
一旦、線維化すると組織は硬くなり、
そこから通常の細胞に戻ることはない
といわれています。
従って、それ以外の通常組織の中で
その障害を受けたところを補償するように
働かせるしかないわけですが、
再生医療によって線維化した組織を初期化して
そこから分化させるときに
周辺の通常細胞からの適切な信号を得て
組織が通常状態に修復するかどうか?
という可能性を探っています。
その中で、線維化した組織の細胞を調べて、
細胞特異的輸送系統によって
その細胞に特異的に発現する受容体との結合の中で
エンドサイトーシスを実現し
初期化させるための複数の遺伝子のベクターを
中に選択的に注入できるようなシステムを考えています。
そうした際には
細胞が初期化して形が変わる中で
ストレスを受けたりするのでその影響を調べたり、
再成長を支配する形態形成の機序を理解することは
基礎として求められます。
その組織の形態形成のうち
重要な役割を担っているのが「モフォゲン」です。
そのモフォゲンは、
組織の成長形態を制御するプロセスに影響を与える
タンパク質であり、
それは源となる、すでに存在する、
基盤となる細胞によって作られます。
そのモフォゲンが周辺の組織に拡散し、
分化前の胚細胞に働きかけます。
その中でモフォゲンの濃度勾配が起き
この勾配が細胞種が決まっていない幹細胞が
違う(特定の?)細胞種に分化する過程を推し進めます。
最終的にそれが組織になり、体の臓器になります(1)。
そのモフォゲンの濃度勾配の中で限られた空間の中で
特定の細胞種に分化します。
モフォゲンは濃度勾配を付ける中で、
組織の成長のベクトルを誘導するような役割があります(1)。
このモフォゲンの一つであるHedgehog(HH)には
それ自身を抑制するプロセスも同時に存在して、
亢進と抑制の合成的なプロセスの中で
細胞密度や他分子の利用性などの様々な要因が
柔軟に制御されると考えられています(2)。
しかし、Naama Barkai氏, Ben-Zion Shilo氏は
モフォゲンの分泌量によって
どのようにその信号に伴って活性化される
隣の細胞の遺伝子のスイッチが変わるのか?
という境界条件について疑問を呈していると理解しています。
つまり、モフォゲンの量が閾値的に変わるのではなく、
連続的に変わる中で、
遺伝子のスイッチの切り替わりが
どのような基準で行われているか?
ということが疑問だということです(2)。
組織、その集合である臓器には
当然、ある程度決まった形、大きさがあります。
また中には血管もあります。
従って、無限に無秩序に成長するわけにはいきません。
その成長を抑制するシステムというのは
前述したモフォゲンの一つであるHedgehog(HH)で
明らかになっているように機能を
アンタゴナイズさせる受容体が存在しますが、
それによってその作用量が少なくなった時に
その境界条件がどうであるか?についてです。
結果的には臓器はうまく制御されて形成されているわけですが
その機序であったり、成長を制御する遺伝子のスイッチの
基準についてはまだはっきりしたことがわからない
ということではないかと推測しています。
このモフォゲンというのは
組織、臓器の形態形成のために非常に重要な役割を
担っているので体の中に多く存在する「ノイズ」
となる交絡因子の影響を受けると非常に問題があります。
従って、このモフォゲンは合成的、並列的な
信号処理によるとされています(3)。
Satoshi Toda氏らは、
試験管の中で緑に蛍光発光するプロテインを
モフォゲンとして機能するように設計して、
そのモフォゲンが隣接する細胞に結合した時に
発現する遺伝子に対して赤色発光するように設計して
基準となる位置からモフォゲンが
どれくらいの濃度勾配を持って広がっているか
というのを条件を変えて可視化して実験しました。
その中でモフォゲンを受け取る受容体を持つ細胞が
強く発現しているものが多くある場合には
濃度勾配が大きくなり(3)、
隣接する組織成長を選択的に促す可能性が示唆されています。
(参考文献(3) Fig.2(A)参照)
これは、子どもから大人になるにかけて
組織が自然と成長するときに、
段階的にどのように成長するか?
というのに当てはまるモデルだと考えます。
ここで想定している
損傷部位の選択修復の時には、
一つの目的としては、修復部位を初期化することです。
それによって
成熟細胞と未成熟な細胞が混在する状態になります。
分化時計が組織修復面外周部界面で大きく異なる時に
少しずつ順に発達していく組織の進化のメカニズムとは
大きく異なることが考えられます。
その中で未成熟な細胞が
周りの成熟細胞からの信号を受けて
適切な細胞種に分化して
空間的な制約の中で臓器として正常に機能するような
形態に再生するかどうかは未知だと考えています。
例えば、
組織として再生能力がない肝臓以外の臓器は、
組織として成熟している中で、
その一部を失ったときに、
そこに幹細胞のような組織を成長させる元となる細胞があった時に、
位置情報と機能の記憶が残っているかどうか?
言い換えれば、それを実現するように
位置ごとに適切なモフォゲンが発現され、
その幹細胞が適切な細胞に分化し、結合していくか?
ということです。
ただ、肺障害の後に修復される過程で、
幹細胞が肺組織に分化する現象が確認されている(6)ので
線維化など障害を受けた部分を初期化して
幹細胞に局所的に変化させることで
そこから組織の修復が実現する可能性も
現時点では否定はできないと考えています。
今述べた様に、肺については
一般的には再生されないと考えていますが、
実際には肺の再生医療の研究は平成19年(2007年)から
Ichiro Yoshino氏などによって研究されています(4)。
例えば、肺の一部を切除した場合には、
切除肺を補うようにして成長する現象「代償性肺成長」が
確認されています(5,6)。
但し、左肺全摘後残存右肺の遺伝子発現変化では
肺胞の再生を示唆する所見は乏しかったとされています(6,7,8)。
また幹細胞研究の中で
ヒト切除肺から、自己複製能、細胞増殖能かつ多分化能を持つ
Human lung stem cellsが同定・分離され、
免疫不全マウスの傷害肺に局所注射することで、
傷害肺の再生に寄与することが報告されています(9)。
人の肺には、未分化の肺幹細胞が抹消気道に局所的に
存在していると言われています。
この細胞は、多能性を持ち、自己複製することができます。
その細胞を肺に障害を負ったマウスの肺の中に注入すると
人の細気管支、肺胞、肺静脈として機能的に組織化された
と報告されています。
またこのキメラ性の肺細胞は人の上皮、血管の遺伝子も
発現していることが確認されました。
これらの自己修復、長期間の増殖は連続移植によって示されました(9)。
従って、iPS細胞の技術によって
損傷部位を選択的に初期化して幹細胞にしたときに
そこから組織の修復が促されるかどうかは
完全には否定はできない状態だと考えられます。
もちろん、当然の指摘として
癌化のリスクもあることから、
それを避けるための条件の確率は必須となります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Wkipedia:Morphogen
(2)
Naama Barkai, Ben-Zion Shilo
Reconstituting tissue patterning
Science 16 Oct 2020: Vol. 370, Issue 6514, pp. 292-293
(3)
Satoshi Toda, Wesley L. McKeithan, Teemu J. Hakkinen, Pilar Lopez, Ophir D. Klein, Wendell A. Lim
Engineering synthetic morphogen systems that can program multicellular patterning
Science 16 Oct 2020: Vol. 370, Issue 6514, pp. 327-331
(4)
千葉大学大学院医学研究院呼吸器病態外科学/千葉大学病院呼吸器外科
肺再生/肺再生医療実現を目指して
(5)
Hsia CC.
Signals and mechanisms of compensatory lung growth.
J Appl Physiol 2004; 97: 1992-1998
(6)
Hironobu WADA, Yuichi SAKAIRI, Ichiro YOSHINO
Lung restoration, growth and regeneration
「移植」 Vol.52 No.1 P.31-37 特集「再生と臓器移植」
(7)
Wada H, Yoshida S, Suzuki H, et al.
Transplantation of alveolar type II cells stimulates lung regeneration during compensatory lung growth in adult rats.
J Thorac Cardovasc Surg 2012; 143: 711-719.
(8)
Ito T, Suzuki H, Wada H, et al.
Concordant pattern of radiologic, morphologic, and genomic changes during compensatory lung growth.
J Surg Res 2017;212: 60-67.
(9)
Jan Kajstura, Ph.D., Marcello Rota, Ph.D., Sean R. Hall, Ph.D., Toru Hosoda, M.D., Ph.D., Domenico D’Amario, M.D., Fumihiro Sanada, M.D., Hanqiao Zheng, M.D., Barbara Ogórek, Ph.D., Carlos Rondon-Clavo, M.D., João Ferreira-Martins, M.D., Alex Matsuda, M.D., Christian Arranto, M.D., Polina Goichberg, Ph.D., Giovanna Giordano, M.D., Kathleen J. Haley, M.D., Silvana Bardelli, Ph.D., Hussein Rayatzadeh, M.D., Xiaoli Liu, M.D., Ph.D., Federico Quaini, M.D., Ronglih Liao, Ph.D., Annarosa Leri, M.D., Mark A. Perrella, M.D., Joseph Loscalzo, M.D., Ph.D., and Piero Anversa, M.D.
Evidence for Human Lung Stem Cells
The New England Journal of Medicine 2011;364:1795-806
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