いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
柔らかいボールをイメージします。
それが野球のボールのように小さい場合と
気球の大きさくらい大きな場合を考えてみます。
通常中には空気が入っていて
ストレスを受けたときには戻る性質があります。
しかし、中の空気が十分ではなく、
ある程度の可塑性が認められる場合には
大きさの異なる球の形の安定性はどちらが高いでしょうか?
大きさに対する変形比率は変わらないかもしれないですが、
変化量を見ると気球の方が大きくて
不安定性が大きいように思えます。
そうした場合に形を保つためには
冒頭で述べたように中に空気をしっかり入れることです。
そうすることでストレスを受けても元に戻ることができます。
これは人の体がなぜ形を保っていられるか?
ということも関係すると思いますが、
もう一つの方法として
その球の中に骨やそれを繋ぐ筋肉を作ったり
今述べた様に空気を入れたり、
あるいは表面にゴムのように伸び縮みする糸を張ることです。
そうすることで球は機械的なストレスに対して強くなります。
体の様々な組織、臓器には決まった形があります。
体の容積に合わせて、位置に合わせて
成長するときには大きさを制御する必要があります。
また大人になればその大きさを保持する必要があります。
あるいは外から機械的なストレスを受けたときには
大きさを保つために元に戻る必要があります。
その組織をミクロに見ていくと
その組織の単位となるものは細胞です。
もちろん細胞間をつなぐ物質は存在します。
あるいは間質もあります。
上述した形の恒常性を保つためには、
細胞自身も冒頭で述べた球のように
機械的ストレスに耐える構造を取る必要があります。
細胞には細胞骨格と呼ばれる線維状の構造があり
体を支える骨のように形態を「内から」維持する
働きがあります。
その細胞の形を維持するための組織は
内からだけではなくて外にもある場合があります。
Jesús M. López-Gay氏らは
ショウジョウバエの背面胸部の上皮組織において
細胞の外に張られた線維状の組織が
細胞の形状を保つために貢献していることを
確認しました(1)。
その細胞の接点を中心とした細胞外の組織を
模式化して、それぞれの機能について詳しく考えています。
細胞外の機械的なストレスの耐性に関わる
組織は下記4つがあると考えられています。
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①
接着結合部:adherens junctions (AJs)
------
②
先端のストレス線維:apical stress fibers (aSFs),
機械的なストレスを検知して、
筋肉のように伸び縮みして、細胞の形を決める
弦のような組織
-------
③
三細胞接点:tricellular junctions (TCJs),
隣接する3細胞の合流地点にある組織
-------
④
Jub/Wts cluster
LIM domain protein Ajuba (Jub)/Warts(Wts) kinase
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LIM domain protein Ajuba (Jub)
様々なたんぱく質を集めた土台となるようなタンパク質で
機能としては細胞の運命、細胞骨格の形成、有志分裂など
細胞の形成や動的機序に関わりのあるタンパク質です。
--
Warts(Wts) kinase
Ykiのリン酸化酵素
上述した組織の形を決める上で重要な役割を果たす
Hippo信号経路で物質として重要な役割を果たす
セリン/スレオニン特異的タンパク質リン酸化酵素によって
リン酸化の連鎖が起こりますが、
リン酸化される中でこのWtsというリン酸化酵素(キナーゼ)が
活性化されます。
このリン酸化というのはエネルギー、
代謝に関わるプロセスなので
人が食べ物を得て、それをエネルギーに変えて
組織を守るようなことを細胞レベルでしていると
考えることができます。
従って、このWtsというのは細胞サイクル、成長、分化、増殖に
関与すると考えられています(5)。
--
これら細胞機能に大きくかかわる2物質が塊(クラスター)となり
下記、図(*)(B)で模式図が書かれているように
機械的なストレスによって細胞周囲をつなぐ弦の分布や長さを
変えることによって細胞の大きさを調整する②aSFsの
細胞周囲での接合部、接点に存在するものです(1)。
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図(*)
参考文献(1) Research Article Summaryの図
An interplay between apical stress fibers (aSFs) and tricellular junctions (TCJs) drives area-dependent cell mechanical response to morphogenetic stresses
(A)ショウジョウバエの背面胸部の上皮組織の顕微鏡写真
(B)細胞周囲、支柱の組織の模式図
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その中で②先端のストレス線維:apical stress fibers
(以下、aSFs)を中心に細胞の機械的堅牢性について
評価しています(1)。
このaSFsは物質名として、
Myosin II、Zyxin (Zyx), Enabled(Ena),a-Actinin(Actn)
が知られています。
従って、人の細胞の大きさを調整する弦のような組織が
あった時には、その物質、太さ、特徴などは
異なる可能性があります。
これらの数は機械的なストレスによって可変である
と言われています。
しかし、その数を変える仕組み、
あるいはこれらの線維組織aSFsの動的機序については
十分な理解は得られていないとされています(2,3)。
その線維組織aSFsは、隣り合う3つの細胞の接点である
③TCJsで核形成されるといわれています。
言い換えれば、数を変えるためには線維を新たに
作る必要がありますが、その工場となるが
このTCJsと呼ばれる接点の部分です。
(参考文献(1) Fig.5(C)参照)
そして作られた線維組織aSFsは細胞表面を掃くように
動いて(1)、ストレスを緩和させる機能を果たします。
しかし、場所は特定されていますが、
それがどのような分子機序で形成されるか
というまでの理解には至っていません(1)。
また数を制御するためには同時に
線維組織aSFsを切断する機序も含む必要があります。
aSFsは機械的ストレスに対して
「衣服の強靭性を保つための繊維のように」働き
それがないときよりもストレスがかかった時に
ストレス分布が平均化されます。
(参考文献(1) Fig.2(H)より)
Jesús M. López-Gayらは
この細胞膜上に楽器の弦のように張られる
線維組織aSFsをレーザーによって切断した時に
力がかかったときのセルの変形の度合いが大きくなった
ことを確認しています(1)。
これらは、Hippo経路と関係があるので
細胞の成長、分化、増殖などにも関わり、
この線維組織を通じて
エネルギーの循環にも影響を与えていることです。
言い換えれば、細胞が組織を作り、成長していくためには
エネルギー代謝が必要ですが、
そのエネルギー代謝の制御に
この細胞表面に楽器の弦のように張られた線維組織
その接点が関わっているということです。
実際にその糸が張られている状態と切られている状態で
エネルギー状態の時間変化が異なっていることが
Jub:GFPクラスターの数の変化によってわかっています。
(参考文献(1) Fig.3(G)より)
以上です。
(参考文献)
(1)
Jesús M. López-Gay, Hayden Nunley, Meryl Spencer, Florencia di Pietro, Boris Guirao, Floris Bosveld, Olga Markova, Isabelle Gaugue, Stéphane Pelletier, David K. Lubensky, Yohanns Bellaïche
Apical stress fibers enable a scaling between cell mechanical response and area in epithelial tissue
Science 16 Oct 2020: Vol. 370, Issue 6514, eabb2169
(2)
L. Blanchoin, R. Boujemaa-Paterski, C. Sykes, J. Plastino,
Actin dynamics, architecture, and mechanics in cell motility.
Physiol. Rev. 94, 235 – 263 (2014).
(3)
E. Kassianidou et al.,
Extracellular Matrix Geometry and Initial Adhesive Position Determine Stress Fiber Network Organization during Cell Spreading.
Cell Rep. 27, 1897 – 1909.e4(2019).
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