2020年9月30日水曜日

接着因子としてのカドヘリンの可能性

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

細胞特異的に特定の物質を輸送させるときに、
狙いの細胞に物質を届けるための
想定している方略として、
細胞表面から出ている受容体にテザリングすることです。
しかし、標的細胞以外にも同じ受容体があると
そこにも固定されているため
意図したところと違うところに輸送されてしまいます。
また輸送するときには
マイクロオーダーと比較的大きな粒子を想定しているため
アンカーとして構造的に強い受容体が
望ましいと考えられます。
従って、本来持つ性質として
細胞の接着機能があるような受容体は
細胞同士をつなげて固定する役割があるため
構造的に強い可能性が高く、
特定の物質を封入した粒子の固定には適している
可能性があります。
その細胞同士をつなげる役割を持つ受容体が
「カドヘリン(Cadherin)」です。
このカドヘリンは構造的には
5つのドメイン構造(ECドメイン)を繰り返すものです。
(参考文献(1) Figure 1より)
このカドヘリンは
〇Classical / 〇Desmosomal
〇Protocadherins / 〇Unconventional-ungrouped
に大分類され、その種類は120種類あるともいわれます(2)。
これだけ多様な種類があるために
病変部位に特異的に存在する変異した細胞だけに
発現される型のカドヘリンがある可能性はあります。
しかし、カドヘリンには接着特異性が少なく
手あたり次第結合する性質を持つといわれています(3)。
また型の違いは細胞外にはなく
細胞質内にある場合もあります。
(参考文献(1) Figure 1より)
従って、特異的な結合面を見出せるかどうか?
もしそうであったとしても、
高い結合性のために特異性を持たせた装飾因子であっても
標的細胞以外の別の型のカドヘリンと
結合してしまう可能性も考られます。

このようなカドヘリンは
細胞の接着に関わっていますから、
細胞が数を増やして塊を作って組織化する
癌細胞の成長にも関わっています。
その時に通常細胞では
Eカドヘリン(CDH1)が関わっています、
接着機能を果たすカドヘリンが
間葉系のカドヘリンであるNカドヘリン(CDH2)に
癌細胞の成長ではスイッチする事が知られています(4)。
しかしながら、このような傾向は
普遍的にみられるのではなくEカドヘリンでも
腫瘍組織を促進するものもあります。
様々なカドヘリンが特定の癌に対して
亢進と抑制の機能を果たしています。
(参考文献(1) Table 1より)
例えば、大腸癌に進行する前には
異常腺窩巣、過形成、ポリープなど
腸の表皮に組織的な異常が段階的にみられますが、
その初期の段階から細胞同士を繋ぐ
カドヘリンに改変が起き
Pカドヘリン(CDH3)が発現されているといわれています(5)。
このPカドヘリンは、通常は大腸にはなく
胎盤(placenta)や
皮膚、口、食道、膣の表層(stratified squamous epithelia)
で発現しているといわれています(6)。
従って、Pカドヘリン自体は
癌細胞だけに特異的に見らえる細胞接着因子ではありません。
従って、もし腸だけに届けるのであれば、
胃で溶けるようなカプセルに
ナノ粒子を入れて、口や食道で作用するのを防いだ後
腸の病変部位に見られるPカドヘリンに作用させることが
考えられます。

また先ほど述べた様に
特定の型のカドヘリンには癌を抑制する場合
あるいは促進する場合両方が存在すると考えられますが、
例えば、Pカドヘリンでいえば
IGF1R(インスリン様成長因子1受容体)
とクラスタリングして結合した時には
あるいはEカドヘリンが欠損した時には、
癌細胞を促進する働きがあるけど、
単体では抑制する働きがあるかもしれない
と考えられています。
(参考文献(1) Figure 2)
従って、上述したような腸の組織の炎症が見られた時に
特異的にPカドヘリンの発現が見られるのか?
ということはこのカドヘリンをアンカーにして
腸の病変部位を標的とする場合には
見極める必要があります。

このPカドヘリンを標的にする場合には
このカドヘリンが持つ構造上の特異性が必要です。
例えば、
Tカドヘリン(CDH13)とEカドヘリン(CDH1)の
構造を比べても最も細胞外側にあるECドメイン(EC1)の
構造は異なります。
(参考文献(7) Figure 2 (e) 左と右の比較)
しかし、その構造は遺伝子変異が入ると異なるので、
構造の詳細をみれば、同じ型のカドヘリンでも
構造が多数存在することは考えられます。
(参考文献(7) Figure 2 (e) 真ん中と右の比較)
従って、カドヘリンに繰り返し形成される
ECドメインの構造は微細にみれば、
細かく変化しうると考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Frans van Roy
Beyond E‑cadherin: roles of other cadherin superfamily members in cancer
Nature Reviews Cancer volume 14, pages121–134(2014)
doi.org/10.1038/nrc3647
(2)
Wikipedia:Cadherin
(3)
Carien M. Niessen, Barry M. Gumbiner
Cadherin-mediated cell sorting not determined by binding or adhesion specificity
J Cell Biol (2002) 156 (2): 389–400.
doi.org/10.1083/jcb.200108040
(4) 
Ugo Cavallaro et al.
Cadherins and the tumour progression: is it all in a switch?
Cancer Letters Volume 176, Issue 2, 25 February 2002, Pages 123-128
(5)
R G Hardy, C Tselepis, J Hoyland, Y Wallis, T P Pretlow, I Talbot,DSA Sanders, G Matthews, D Morton,JAZ Jankowski
Aberrant P-cadherin expression is an early event in hyperplastic and dysplastic transformation in the colon
Gut vol.50 issue.4 p.513 (2002)
dx.doi.org/10.1136/gut.50.4.513
(6)
Shimoyama Y, Yoshida T, Terada M, et al. 
Molecular cloning of a human Ca2+-dependent cell-cell adhesion molecule homologous to mouse placental cadherin: its low expression in human placental tissues. 
J Cell Biol 1989;109:1787–94
(7)
Carlo Ciatto, Fabiana Bahna, Niccolò Zampieri, Harper C VanSteenhouse, Phini S Katsamba, Goran Ahlsen, Oliver J Harrison, Julia Brasch, Xiangshu Jin, Shoshana Posy, Jeremie Vendome, Barbara Ranscht, Thomas M Jessell, Barry Honig & Lawrence Shapiro 
T-cadherin structures reveal a novel adhesive binding mechanism
Nature Structural & Molecular Biology volume 17, pages339–347(2010)
doi.org/10.1038/nsmb.1781

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