2020年9月25日金曜日

新型コロナウィルス感染と心臓関連疾患との関連について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

「彼、彼女は理屈じゃなくてハートで動く人だから」
というとどのような様式、姿が頭に浮かぶでしょうか?
あるいは
「よく胸に手を当てて考えてみて」
と言われるとどうでしょうか?
自分の深部、内部にある純粋な「こころ」と
繋がる部分があります。
ハート(Heart)の意味を辞書で調べると名詞に限定すると
【名-1】心臓
【名-2】〔心臓の近くにある〕胸
【名-3】〔自分でコントロールできない感情的な〕心、胸の内、気持ち
【名-4】思いやりの心、愛情
【名-5】興味、関心、勇気
【名-6】中心
【名-7】〔愛情や敬意を込めて〕~な人、あなた、勇者
とあります。(英辞郎より)

心、愛情というのはとても密接なものですが、
生理学的にどういうものかというのはわかっていない
と思います。
でも、脳よりも心臓の方が英語の語彙として
近い位置に置かれています。
日本語でも「心」と聞いて連想するのは
「心臓」だと思います。
ハートマークが動いたりしますが、
あの動きは脈動を連想させます。
これはなぜなのかな?と思います。
私たちが緊張でドキドキするとき
最も敏感に反応してそれを感じられるのが「心臓の音」です。
どの臓器、組織も動いていますが、
その動的な振る舞いを一番深部にありながら
身近に感じられるのは「心臓」かもしれません。
そう考えると神聖で、大切な臓器なのかな
と思います。

その心臓は体中を流れている血液を送り込むポンプ役です。
そういう機能の類似性を持って、
ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋は
第二の心臓と呼ばれることもあります。
ここで心臓と呼ぶということは、
その役目として体に血液を届けるというものが
第一にあるということを示しています。
新型コロナウィルスが恐ろしいのは
この血液、および血管を免疫の暴走などによって
詰まらせたり、炎症を引き起こしたりすることです。
つまり体中の至る所に対して関わりがあるし、
そのポンプ役である心臓との関連も気になります。

スタンフォード大学の西賀雅隆先生は
(※2017年まで京都大学在籍)
心臓血管疾患⇔新型コロナウィルスの関連について
示されています(1)。
すなわち、
心臓血管疾患があると
新型コロナウィルスに対するリスクが高まり、
逆に新型コロナウィルスに罹患することで
初めて心筋障害、不整脈、
冠動脈不全症候群、、静脈血栓塞栓症など
心臓に関する代表的な疾患を引き起こす可能性があること
が示唆されています(1-6)。
実際に過去のSARS, MARSなど同類の呼吸器疾患ウィルス
においても同様に心臓血管疾患が確認されています(7,8)。
その頻度は海外の例でみれば決して低いものではありません。
肥満、高血圧、糖尿病、動脈硬化など
他の血液、血管の状態が通常よりも悪いと
そのリスクは高まる可能性も考えられます。

これらの疾患の原因は確定的ではないと思いますが
〇サイトカインストーム
〇使用されている薬の副作用
〇上述したような既往歴
△直接的なウィルス感染
などが疑われています。
(参考文献(1) Fig.2参照)
ただし、直接的なウィルス感染に関しては
懐疑性がやや強いとされています。
新型コロナウィルスで亡くなられた方において
心筋障害による関与が所見されなかったため
直接的な心臓不全ではないという見方があります(9,10)。
そうすると免疫的な機能不全によって
影響を受けた可能性が考えられると思います。
実際に心臓の細胞の中で
免疫細胞は10.4%を占めると言われています(11)。
サイトカインが直接的に心臓血管に作用した可能性がありますが、
心臓にある免疫細胞が心臓、およびその付近にある
血管の状態に何らかの影響を及ぼした可能性は否定はできません。
一方、
新型コロナウィルスの細胞感染に関連があるとされる
ACE2受容体の数ですが
①周皮細胞(血管の周りにある細胞)
②線維芽細胞
と順に多くなっており心筋細胞は少ないと言われています(11)。

後、特記しておきたいのが
子供が罹患する川崎病についてです。
突然の高熱が数日続き、目や唇の充血、
身体の発疹、手足の発赤(=赤くなること)、
首リンパ節の腫脹など様々な症状を惹き起こします(12)。
軽いものだと目の充血、軽い発疹、微熱程度で
継続するものもあります。
初期は急性熱性疾患(急性期)として全身の血管壁に炎症が起き
心臓の血管での炎症により、冠動脈の起始部近くと
左冠動脈の左前下行枝と左回旋枝の分岐付近に瘤が出来やすい
ということです。
心臓と血管の炎症に関わることから
新型コロナウィルスと川崎病が関連があっても
不思議ではありません。
ただ以前メディアで日本の医師の方が言われていましたが
日本ではまだ確認されていないということでした。
しかし疫学では
欧米に比べると日本をはじめとするアジアに多い
と言われています。
川崎病に関しては少なくとも日本では
その後血管の状態の定期的な観察は必要ですが、
治療法、ガイドラインはしっかりしていると認識しています。
イギリスでは
4歳から14歳までの8人の子供に対して
川崎病に似た症状が現れたので、
新型コロナウィルスの感染有無を調べたところ、
5人が陽性だったとされています(13)。
日本でも子供の感染は確認されているので
そういった症状がないかどうか?
というのは継続的に注視していく必要があると考えます。
あるいは川崎病に罹患している子供に対する
新型コロナウィルスに関するリスク管理も同様です。

新型コロナウィルスの薬の副作用が
心臓血管とかかわりがあるかどうか?
というのはまだデータが不足していますが、
現状での報告についてまとめられています。
(参考文献(1) Table2より)
日本で承認されている
レムデシビルについては
心臓血管に関する副作用は
「Not common(共通してみられない)」
しかしデータが不足していると評されています。
(参考文献(1) Table2より)

後は、心臓血管に障害が出たり、
あるいは後遺症としてそれが現れた時に
どのように治療、ケアしていけばいいか?
という点に関して
私自身、追加調査の必要性を感じています。

以上です。

(参考文献)
(1)
Masataka Nishiga, Dao Wen Wang, Yaling Han, David B. Lewis & Joseph C. Wu 
COVID-19 and cardiovascular disease: from basic mechanisms to clinical perspectives
Nature Reviews Cardiology volume 17, pages543–558(2020)
doi.org/10.1038/s41569-020-0413-9
(2)
Madjid, M., Safavi- Naeini, P., Solomon, S. D. & Vardeny, O. 
Potential effects of coronaviruses on  the cardiovascular system: a review. 
JAMA Cardiol. https://doi.org/10.1001/jamacardio.2020.1286 (2020).
(3)
Clerkin, K. J. et al. 
COVID-19 and cardiovascular disease. 
Circulation 141, 1648–1655 (2020).
(4)
Driggin, E. et al. 
Cardiovascular considerations for patients, health care workers, and health systems during the COVID-19 pandemic. 
J. Am. Coll. Cardiol. 75, 2352–2371 (2020).
(5)
Zheng, Y. Y., Ma, Y. T., Zhang, J. Y. & Xie, X. 
COVID-19 and the cardiovascular system. 
Nat. Rev. Cardiol. 17, 259–260 (2020).
(6)
Han, Y. et al. 
CSC expert consensus on principles  of clinical management of patients with severe emergent cardiovascular diseases during the  COVID-19 epidemic.
Circulation 141, e810–e816 (2020).
(7)
Li, S. S. et al. 
Left ventricular performance in patients with severe acute respiratory syndrome: a 30-day echocardiographic follow- up study. 
Circulation 108, 1798–1803 (2003).
(8)
Peiris, J. S. et al. 
Clinical progression and viral load in a community outbreak of coronavirus- associated SARS pneumonia: a prospective study. 
Lancet 361, 1767–1772 (2003).
(9)
Xu, Z. et al. 
Pathological findings of COVID-19 associated with acute respiratory distress syndrome. 
Lancet Respir. Med. 8, 420–422 (2020).
(10)
Deng, Q. et al. 
Suspected myocardial injury in patients with COVID-19: evidence from front- line clinical observation in Wuhan, China. 
Int. J. Cardiol. 311, 116–121 (2020).
(11)
Monika Litviňuková, Carlos Talavera-López, Henrike Maatz, Daniel Reichart, Catherine L. Worth, Eric L. Lindberg, Masatoshi Kanda, Krzysztof Polanski, Matthias Heinig, Michael Lee, Emily R. Nadelmann, Kenny Roberts, Liz Tuck, Eirini S. Fasouli, Daniel M. DeLaughter, Barbara McDonough, Hiroko Wakimoto, Joshua M. Gorham, Sara Samari, Krishnaa T. Mahbubani, Kourosh Saeb-Parsy, Giannino Patone, Joseph J. Boyle, Hongbo Zhang, Hao Zhang, Anissa Viveiros, Gavin Y. Oudit, Omer Bayraktar, J. G. Seidman, Christine E. Seidman, Michela Noseda, Norbert Hubner & Sarah A. Teichmann 
Cells of the adult human heart
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2797-4
(12)
三浦大 
『川崎病 = Kawasaki Disease : 増え続ける謎の小児疾患』 
弘文堂、2019年11月。ISBN 978-4-335-76020-4。
(13)
Riphagen, S., Gomez, X., Gonzalez- Martinez, C., Wilkinson, N. & Theocharis, P. 
Hyperinflammatory shock in children during COVID-19 pandemic. 
Lancet 395, 1607–1608 (2020).

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