いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
ワクチンの製作をするときに
新型コロナウィルスでは、
ウィルスの膜表面にある糖たんぱく質である
スパイク(Sタンパク質)の
ACE2受容体結合面(RBD)に結合親和性を示すような
中和抗体を体内で生み出すようなシステムを
構築する事を目的とします。
その時に、実際に罹患した人の
血液中から取り出した抗体をデザインの上で
参考にすることもあると思いますが、
一方で、Sタンパク質の構造をベースとして
抗体のデザインを考えるプロセスもあると思います。
あるいは、
どの過程で抗体を作る場合において、
それが実際にSタンパク質のどの部位に結合しているか
構造解析することは
実際に抗体価、中和能を評価することと
並列して求められることです。
そういった構造的な評価は、
効果的なワクチン開発のための論理的根拠の一つとなります。
従って、Sタンパク質を取り出して
それを低温電子顕微鏡などでナノスケールで
解析する必要がありますが、
実はこの過程に問題があります。
実際に解析装置に入れる前の段階で
熱にさらされたり、
機械的な圧力を受けたり、
冷凍-解凍のサイクルがあったり
することで本来持っている抗体結合前の
Sタンパク質の形状を保持することが難しいということです。
新型コロナウィルスのSタンパク質は
結合前の状態では「準安定状態(meta-stable)」
といわれています。
つまり、完全な安定状態にないために、
構造を変えてしまうことがあります。
構造が変わった状態で評価すると、
間違った解釈につながるために、
構造の安定化を施す必要があります。
実際に、糖たんぱく質の表面には
物質の表面にある宙に浮いたような結合の手である
ダングリングボンドのような
Residueというものがあります。
邦訳すると「残留物」という意味ですが、
「表面に露出している余った結合の手」と理解しています。
このようなResidueには番号が付けられていますが、
全てではないにしろ、
結合の手が余っていることで
「化学的に活性状態」と言えると思います。
仮説であり、追加調査は必要ですが、
このようなResidueが不安定な状態を生む
一つの要因となっていると考えてます。
もちろん、システインのように
物質のドメインを架橋するものがあって
それが切れて構造がオープンになることで
大きく形を変えるということもあると思います。
今述べたように構造解析のため
Sタンパク質を安定化させる必要があります。
そのためにいくつかの構造的ポイントがある
と参考文献では述べられています。
①プロリン(proline)置換
②二硫化物(disulfide)結合導入
③塩橋(salt bridge)導入
④キャビディー充填(cavity filling)置換
(参考文献(1).Fig.1参照)
特にSタンパク質の評価において重要な
S1タンパク質サブユニット(RBDがある部分)と
S2タンパク質サブユニット
(形状変化を経てエンドサイトーシスに関係する部分)
がありますが構造が環境によって変わりやすい
S2タンパク質サブユニットの
ナイーブな状態の保持が
①~④の対策を施すことによって
可能になったと理解しています。
①~④それぞれに対して
具体的な置換部位などが掲載されていますが、
こういった処理によって、
より実態に則した構造解析が可能になるものだと考えます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Ching-Lin Hsieh
Structure-based design of prefusion-stabilized SARS-CoV-2 spikes
Science 18 Sep 2020:
Vol. 369, Issue 6510, pp. 1501-1505
DOI: 10.1126/science.abd0826
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