2020年9月18日金曜日

正確な構造解析のための処理について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

ワクチンの製作をするときに
新型コロナウィルスでは、
ウィルスの膜表面にある糖たんぱく質である
スパイク(Sタンパク質)の
ACE2受容体結合面(RBD)に結合親和性を示すような
中和抗体を体内で生み出すようなシステムを
構築する事を目的とします。
その時に、実際に罹患した人の
血液中から取り出した抗体をデザインの上で
参考にすることもあると思いますが、
一方で、Sタンパク質の構造をベースとして
抗体のデザインを考えるプロセスもあると思います。
あるいは、
どの過程で抗体を作る場合において、
それが実際にSタンパク質のどの部位に結合しているか
構造解析することは
実際に抗体価、中和能を評価することと
並列して求められることです。
そういった構造的な評価は、
効果的なワクチン開発のための論理的根拠の一つとなります。

従って、Sタンパク質を取り出して
それを低温電子顕微鏡などでナノスケールで
解析する必要がありますが、
実はこの過程に問題があります。
実際に解析装置に入れる前の段階で
熱にさらされたり、
機械的な圧力を受けたり、
冷凍-解凍のサイクルがあったり
することで本来持っている抗体結合前の
Sタンパク質の形状を保持することが難しいということです。
新型コロナウィルスのSタンパク質は
結合前の状態では「準安定状態(meta-stable)」
といわれています。
つまり、完全な安定状態にないために、
構造を変えてしまうことがあります。
構造が変わった状態で評価すると、
間違った解釈につながるために、
構造の安定化を施す必要があります。
実際に、糖たんぱく質の表面には
物質の表面にある宙に浮いたような結合の手である
ダングリングボンドのような
Residueというものがあります。
邦訳すると「残留物」という意味ですが、
「表面に露出している余った結合の手」と理解しています。
このようなResidueには番号が付けられていますが、
全てではないにしろ、
結合の手が余っていることで
「化学的に活性状態」と言えると思います。
仮説であり、追加調査は必要ですが、
このようなResidueが不安定な状態を生む
一つの要因となっていると考えてます。
もちろん、システインのように
物質のドメインを架橋するものがあって
それが切れて構造がオープンになることで
大きく形を変えるということもあると思います。

今述べたように構造解析のため
Sタンパク質を安定化させる必要があります。
そのためにいくつかの構造的ポイントがある
と参考文献では述べられています。
①プロリン(proline)置換
②二硫化物(disulfide)結合導入
③塩橋(salt bridge)導入
④キャビディー充填(cavity filling)置換
(参考文献(1).Fig.1参照)

特にSタンパク質の評価において重要な
S1タンパク質サブユニット(RBDがある部分)と
S2タンパク質サブユニット
(形状変化を経てエンドサイトーシスに関係する部分)
がありますが構造が環境によって変わりやすい
S2タンパク質サブユニットの
ナイーブな状態の保持が
①~④の対策を施すことによって
可能になったと理解しています。

①~④それぞれに対して
具体的な置換部位などが掲載されていますが、
こういった処理によって、
より実態に則した構造解析が可能になるものだと考えます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Ching-Lin Hsieh
Structure-based design of prefusion-stabilized SARS-CoV-2 spikes
Science  18 Sep 2020:
Vol. 369, Issue 6510, pp. 1501-1505
DOI: 10.1126/science.abd0826


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