2020年9月19日土曜日

αvβ3インテグリンの安定的アンタゴニスト

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

インテグリンは、癌の増殖因子にもなっており
従来からそのインテグリンの機能を弱める、無効にするような
アンタゴニストが薬剤として提案されてきました。
しかし、配座が変化することから
部分的に逆に機能を強めるような効果が生まれ
それが致命的な免疫反応や細胞の増殖などを
招くことが懸念されています(1)。
従って、インテグリンと高い親和性を持ち、
純粋な型で機能を拮抗させるアンタゴニストの形成が
望まれています。

そのインテグリンは様々種類があり
なかでもαvβ3インテグリンは
転移性乳癌に特異的に発現されていると言われており、
それに高い親和性、特異性を持つアンタゴニスト
の開発が待たれます。
そのαvβ3インテグリンに対して
高い親和性を持ちアンタゴニストとして働く
①wild-type fibronectin(wtFN10),
※10th型、タイプ3のRGDドメインを持つ
②high-affinity mutant (hFN10) 
の比較構造解析がされました(1)。
結合させた細胞:K562(骨髄性白血病細胞)
結果は②のほうが適している。

①は上述したRGDドメインを持ちますが、
このRGDドメインとは
アミノ酸Arg-Gly-Asp(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)
という構造を持ち、接着に関わる結合面です。

②が適している構造の特徴
①hFN10のRGD面のループの中のTrp1496
②wtFN10に誘発される構造変化を止めるβ3サブユニットのTyr122
のπ-π相互作用
※π-π相互作用
有機化合物分子の芳香環の間に働く分散力(ロンドン分散力)。
タンパク質、DNAの構造を安定化させる。
つまり、インテグリンとの結合の中での構造変化が
拮抗作用を失わせ、逆にインテグリンの作用を強めるような
従来の物理がありましたが、
π-π相互作用による安定化によって
あるいは構造変化を止めるβ3サブユニットによって
構造が安定し、アンタゴニストとしての機能を保持した
と考えられます。
結合に関与するイオン解析の中で、
構造の安定化を示すCaイオンの検出がwtFN10よりも大きい。
wtFN10においてはβ鎖におけるMnイオンの影響を受けた結合において
結合前のストークス径を0.3nmだけ大きくしたと言われています。
これは反応に水が関与する水和性を高めたことを意味します。
一方、hFN10ではこのストークス径は結合前後では
変わらなかったとされています。
構造的な部分を大きく擾乱させなかったことが
部分的なアゴニストの機能の発現させなかったことと
関係している可能性があります。
また結合構造的な特徴として
wtFN10ではpropellerと呼ばれる部位に結合していたのに対して
hFN10ではその結合が見られませんでした。
あくまで仮説ですが
プロペラと呼ばれる部分ですから
細胞の動的機序においてプロペラのように構造的な
ダイナミクスがある中で、そこにリガントが結合することで
動きによって結合親和性が落ちる可能性はあるのではないか?
と考えました。
hFN10では「動的な?」propellerに結合しないことで
安定性を保ったと考えられないかさらなる調査が必要です。
また静電の相互作用による安定化が
おそらく不活性な基底状態にαvβ3に維持、あるいは近づけ、
それによって細胞外から細胞内への信号を弱め
結果としてアンタゴニストとして働いた可能性を考えています。

(参考)
インテグリンは特異的な受容体で
基本的には不活性だと言われています。
この不活性であることが重要で
血液血小板や免疫細胞にあるインテグリンは、
血管壁に凝集したり、相互作用したりすることを最小化させます。
従って、このインテグリンに作用するためには
細胞外のドメインにおいて
構造的な変化が必要だといわれています。
そのドメインに結合できるモノクローナル抗体として
AP5,LIBS-1, LIBS-6があります(2,3)。
例えば、今述べた血液血小板は、
新型コロナウィルスなどで症状として現れる
血栓などと関係がありますが、
インテグリンαⅡbβ3を標的としたアンタゴニストが
それを防ぐとありますが、
その副作用として重篤な血小板減少症をおこす
とされています。
その副作用の割合は2%です(4)。
従って、新型コロナウィルスなどの血栓に対する
治療の中で血小板のインテグリンの抗体として
働くような薬剤を検討する際には
血小板減少という副作用を考慮する必要があります。

(参考文献)
(1)
Johannes F Van Agthoven, Jian-Ping Xiong, José Luis Alonso, Xianliang Rui, Brian D Adair, Simon L Goodman & M Amin Arnaout 
Structural basis for pure antagonism of integrin αVβ3 by a high-affinity form of fibronectin
Nature Structural & Molecular Biology volume 21, pages383–388(2014)
doi.org/10.1038/nsmb.2797
(2)
Honda,  S.  et  al.  
Topography  of  ligand-induced  binding  sites,  including  a  novel cation-sensitive  epitope  (AP5)  at  the  amino  terminus,  of  the  human  integrin  β3 subunit. 
J. Biol. Chem. 270, 11947–11954 (1995).
(3)
Frelinger, A.L. III, Du, X.P., Plow, E.F. & Ginsberg, M.H. 
Monoclonal antibodies to ligand-occupied conformers of integrin α IIb β 3 (glycoprotein IIb-IIIa) alter receptor affinity, specificity, and function. 
J. Biol. Chem. 266, 17106–17111 (1991).
(4)
Aster,  R.H.,  Curtis,  B.R.,  McFarland,  J.G.  &  Bougie,  D.W.  
Drug-induced  immune thrombocytopenia: pathogenesis, diagnosis, and management. 
J. Thromb. Haemost. 7, 911–918 (2009).

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