2020年9月23日水曜日

Sタンパク質表面を覆う多糖と抗体結合部位

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスにおける抗体による
獲得免疫をワクチンだけではなく
罹患によって自然に生み出されたものも含めて
理解するためには、
Sタンパク質の構造的な理解、解析が重要になります。

参考文献(1)ではヒト胎児腎細胞293(HEK293細胞)
の中で作られた糖鎖生物学、3次元構造をベースとして
新型コロナウィルスから生まれたSプロテインの発生期の
糖型の構造解析を行い、
それに合わせて分子動力学計算(molecular dynamics simulation)
糖たんぱく質からなるSプロテインの抗原性への
影響の程度の評価をされています。

Sプロテイン内に存在する多糖は
広域において分布し、
抗原認識から遮蔽されるように守られていますが
ACE2受容体結合面(RBD)は例外的に露出されています。
どれくらい遮蔽されているかは
特異的な糖の型に対しての感受性は低いとされています。
この表面を覆う多糖は、
結晶粒界境界、へき開面を少なくとも2つ持つ
3量体からなるSタンパク質において
分子重量の17%を占め、
おおよそ40%の表面を抗原認識しないように覆っている
と考えられています。
このように表面を覆うことで
体内の免疫機能から逃れるように
様々な抗体を含むタンパク質のウィルス粒子へのアクセスを
外側にそらす(クローキングしている)
と考えられています(2-4)。
参考文献(1)にSタンパク質の構造が図示されています。
紫、橙、黄の「海藻のような」構造が
多糖であり表面の大部分を縫うように覆っている
ことがわかります。
それに対してタンパク質からなるRBD面が間から出ていて、
抗体の接続性の程度が赤色でグラデーションされています。
(参考文献(1)、Figure1より)
それに対して抗体がどの位置についているか?
SARS(2002年流行)、MARSと比較して図示されています。
これを見るといずれも抗体が結合している領域は
SARS、MARSとマクロなスケールでみれば、
共通しています。
それがFigure1の青〇で囲まれた部分であり、
そこには受容体結合面があるとされています。
(参考文献(1)、Figure2より)
例えば、アロステリックアンタゴニスト
(allosteric antagonist)
という薬剤の戦略があります。
活性部位とは違う領域に抗体を付けて
それによって受容体を不活性にしようという試みです。
下述するようにSタンパク質は構造変換して
あるいは変異が起こるので、
その動的機序を抑えるために、
構造を固定するために、
青〇で示されている以外のアクセスできる
タンパク質露出面に抗体を結合させることによって
将来的に脅威となるかもしれない
変異を防ぐことができるかもしれません。

Sプロテインでは他の受容体と同様に
「永続的ではない過渡な(transient)」?
構造変換を行うとされています。
へき開面で架橋されている有機物質が外れて
構造がオープンになると、
ACE2受容体への感受性が上がると言われています。
この時に表面を覆っている多糖がどのように
同様に構造変換するか?
という点が重要だと思います。
上述されているように糖型(glycoform)に対しての
感受性の低さが指摘されていますが、
大きく構造を変えた時に
表面を覆っている糖がどのように表面状態を変えるか?
という論点です。
このようなオープンになることも含めて
変異(mutation)が起こるとタンパク質が
どの程度糖化されるかというのは変わるということは
既に知られています(5,6)。

以上です。

(参考文献)
(1)
Oliver C. Grant, David Montgomery, Keigo Ito & Robert J. Woods 
Analysis of the SARS-CoV-2 spike protein glycan shield reveals implications for immune recognition
Scientific Reports volume 10, Article number: 14991 (2020)
doi.org/10.1038/s41598-020-71748-7
(2)
Tate, M. D. et al. 
Playing hide and seek: how glycosylation of the influenza virus hemagglutinin can modulate the immune response to infection. 
Viruses 6, 1294–1316. (2014).
(3)
Helle, F., Duverlie, G. & Dubuisson, J. 
The hepatitis C virus glycan shield and evasion of the humoral immune response. 
Viruses 3, 1909–1932. (2011).
(4)
Marth, J. D. & Grewal, P. K. 
Mammalian glycosylation in immunity. 
Nat. Rev. Immunol. 8, 874–887 (2008).
(5)
Altman, M. O. et al. 
Human influenza A virus hemagglutinin glycan evolution follows a temporal pattern to a glycan limit. 
mBio https ://doi.org/10.1128/mBio.00204 -19 (2019).
(6)
Zost, S. J. et al. 
Contemporary H3N2 influenza viruses have a glycosylation site that alters binding of antibodies elicited by egg-adapted vaccine strains. 
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 114, 12578–12583.(2017).

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