2020年9月24日木曜日

ナノ粒子を設計通りに輸送するための保護について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

抗体、細胞内のタンパク質、遺伝子などに作用する薬剤、
腸内にいるような善玉細菌、善玉ウィルス
特定の栄養素、
特定の細胞(免疫細胞、CAR-T細胞など)
エクソソーム、サイトカインなどの小胞などを
ナノ粒子、マイクロ粒子などの中に任意に封入して
標的細胞に特異的に発現している細胞表面受容体に
特異的親和性を持つような装飾因子を
ナノ、マイクロ粒子の表面に多く作製できたとしても
それを生体内に入れたあと
その状態が保持されるかどうかわかりません。
いろんな意図しないタンパク質などが
ナノ粒子の周りについて、
それが邪魔をして特異性を失わせることも
すでにナノ粒子を使った薬剤輸送の試みの中で
知られています(1-8)。

しかしここである疑問が生じます。
体内に自然にある細胞、
あるいはウィルスなどは体内に入って
その特異性をなぜ発揮できるのだろうか?
ということです。
この問いに関して未知の部分もあると思いますが、
コロナウィルスの装飾因子であるSタンパク質は、
そういった血液など体内に大量に存在するタンパク質の
付着を防ぐように表面積の40%は多糖で覆われています。
(ref.(11)、Figure.1の海藻のような部分)
従って、特異性を発揮するエピトープ(結合部位)は
それらの保護構造の間から顔を出すようにあって、
周辺環境によって擾乱されにくい構造になっています。

この多糖によるコーティングは
薬剤の輸送において検討されており、
特定の組織への標的性を強化するといわれていて
循環上の安定性が高いといわれています(9)。
一方、
ポリエチレングリコールで表面処理することは
正の表面電荷を下げ、ゼータ電位を下げ、
ナノ粒子の安定性と生体との互換性を挙げる
といわれています(10)。
このようなモフォロジーはナノ粒子の周りに
親水性の層を生み出し、立体斥力により
プロテインの吸着を防ぎます(9)。
このポリエチレングリコールコートの代替として
多糖コーティングが挙げられています(9)。
今述べたような
〇親水性〇電荷を下げる〇ゼータ電位を下げる
ということがポイントです。
ゼータ電位とは粒子表面付近での電位の勾配
のことを示していて、
それが大きいと大きな引力が働きます。

従って、ナノ、マイクロ粒子に
標的細胞特異的に発現している受容体に
特異的親和性を持つように結合部位を設計した
タンパク質などの物質を粒子表面に
多数装飾するときに
ウィルスのように装飾物質自体に
多糖の構造が複合体として存在するような構造にしたり
あるいは、持続性のある表面コートをすることで
冒頭で述べたナノ、マイクロ粒子の
生体内での意図しないタンパク質の付着を
防ぐことができる可能性があります。

以上です。

(参考文献)
(1)
Wilson Poon, Benjamin R. Kingston, Ben Ouyang, Wayne Ngo & Warren C. W. Chan 
A framework for designing delivery systems
Nature Nanotechnology (2020)
doi.org/10.1038/s41565-020-0759-5
(2)
Walkey, C. D. et al. 
Protein corona fingerprinting predicts the cellular interaction of gold and silver nanoparticles. 
ACS Nano 8, 2439–2455 (2014).
(3)
Tenzer, S. et al. 
Rapid formation of plasma protein corona critically affects nanoparticle pathophysiology. 
Nat. Nanotechnol. 8, 772–781 (2013).
(4)
Monopoli, M. P. et al. 
Physical−chemical aspects of protein corona: relevance to in vitro and in vivo biological impacts of nanoparticles.  
J. Am. Chem. Soc. 133, 2525–2534 (2011).
(5)
Walczyk, D., Bombelli, F. B., Monopoli, M. P., Lynch, I. & Dawson, K. A. 
What the cell ‘sees’ in bionanoscience. 
J. Am. Chem. Soc. 132, 5761–5768 (2010).
(6)
Monopoli, M. P., Åberg, C., Salvati, A. & Dawson, K. A. 
Biomolecular coronas provide the biological identity of nanosized materials. 
Nat. Nanotechnol. 7, 779–786 (2012).
(7)
Varnamkhasti, B. S. et al. 
Protein corona hampers targeting potential of MUC1 aptamer functionalized SN-38 core–shell nanoparticles.  
Int. J. Pharm. 494, 430–444 (2015).
(8)
Salvati, A. et al. 
Transferrin-functionalized nanoparticles lose their targeting capabilities when a biomolecule corona adsorbs on the surface. 
Nat. Nanotechnol. 8, 137–143 (2013).
(9)
Eleni K. Efthimiadou, Aikaterini-Foteini Metaxa and George Kordas
Modified Polysaccharides as Drug Delivery
Polysaccharides
DOI 10.1007/978-3-319-03751-6_23-1
(10)
Janes KA, Calvo P, Alonso MJ 
Polysaccharide colloidal particles as delivery systems formacromolecules. 
Adv Drug Deliv Rev 47:83–97(2001a) 
(11)
Oliver C. Grant, David Montgomery, Keigo Ito & Robert J. Woods 
Analysis of the SARS-CoV-2 spike protein glycan shield reveals implications for immune recognition
Scientific Reports volume 10, Article number: 14991 (2020)
doi.org/10.1038/s41598-020-71748-7

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