いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
細胞内で「単一」で特異的に表面に発現している
受容体を見つけることは困難だといわれています。
例えば、
転移性を持つ前立腺癌の細胞に共通してみられて
かつ他の細胞に見られないような
特異性のある受容体はあるか?
ということは難題だと考えられてます。
しかし、「2つの組み合わせ」での特異性が含まれるときには
その確率は向上します。
例えば、Aという表面受容体は
他の細胞でも見られるけど、
AとBという組み合わせで
しかもそれが比較的近い位置で発現している細胞は
転移性前立腺癌だけである
という可能性は、単一の場合よりも上がると考えられます。
従って、このような組み合わせが成り立った
ときに「だけ」活性を示すようなタンパク質があれば、
細胞特異的輸送系統のアンカーとしての
タンパク質の可能性は向上します。
参考文献(1)では、そのような
組み合わせが成り立った時にだけ
結合性を変えて活性を示すようなタンパク質
「colocalization-dependent protein switches (Co-LOCKR) 」
の設計に成功しました(1)。
このたんぱく質はスイッチタンパク質と呼ばれ
身近にあるレバースイッチの棒のように
位置がレバーのように動いて
母体の接合から離れて
構造がオープンになり活性になることで
組み合わせの中での特異性を発揮しています。
(参考文献(1) Fig.1(C)で
黄色部分を含む棒状のタンパク質に着目)
そのレバーとなるたんぱく質が
構造から離れる際には「latch」と呼ばれる
留め金となる構造が外れる必要があります。
そのために組み合わせとなる「キー、鍵」となる
別のタンパク質が必要となります。
このようなタンパク質は
以前から知られていましたが、
それを純正化して作り出す際には
3量体の構造的な周期的対称性によって
ドメインが入れ替わるために
凝集が起こるとされていました(2)。
そこでRosettaというタンパク質を任意に設計できる
ソフトウェアを使い、ほぼ単量体から成る、
スイッチ機能を持つたんぱく質、LOCKRを
作り出すことに成功しました(1)。
螺旋となる構造内には
いくつかの水素結合、
あるいは疎水性を持つ残基があります。
(参考文献(1) Fig.1(B)参照)
標的とした細胞は骨髄性白血病細胞(K562)で
受容体はHer2-eGFP、EGFR-iREPです。
使われたドメインは
周期性を持つアンキリンタンパク質
ankyrin repeat protein(DARPin) です。
上述したスイッチタンパク質は
Her2、EGFRがともに発現された時にのみ
選択性を持って配座を変え活性を示しました。
(参考文献(1) Fig.1(E)参照)
cage-latchの親和性を弱めることによって
おそらく構造内の相互作用を弱めて
多量体化(?)することを防いでいると考えています。
この構造内の相互作用を弱めることも
特異性を生み出すうえで重要であると示唆されています。
実際にこの相互作用を弱めるために
構造の色んな部分を変異させ、その部位によって
両方の骨髄性白血病細胞の表面受容体
(Her2, EGFR)が発現した時の特異的親和性は
変わりました。
その中で共通して言えることは
このような構造内の変異を導入することで
その選択性は向上しているということです。
(参考文献(1) Fig.2(B)参照)
例えば、
細胞外でT細胞にウィルスを導入し
任意に細胞膜タンパク質を設計した
CAR-T細胞において、その設計タンパク質が
このスイッチタンパク質の構造がオープンになった時に
特異的に結合して機能を発揮するように設計する事も
検討されました。
その中でCAR-T細胞による癌細胞の減少が
「試験管内の結果」で示されました。
(参考文献(1) Fig.4(C)紫矢印参照)
ここからは細胞特異的輸送系統の目指すべき
方向性を考えながら論を進めていきます。
例えば
インテグリンなどにおいても
α鎖、β鎖のヘテロ2量体からなる表面糖たんぱく質が
「稲が風で倒れるように」
膜に倒れて付着している可能性が示唆されています。
このような状態では
構造は不活性であり、物質との結合性は低く
インテグリンを通じた機能は抑制されている状態です。
(参考文献(4) Figure 2参照)
こうした場合においては
上述した「latch(留め金)」となるような構造が
固定部分で架橋されている可能性は高く
活性を高めるためには、
それを「key(鍵)」となる酵素などの
触媒によって外す必要があります。
こうした相互作用が
膜表面タンパク質の結合部位での
表面結合性、親和性を改変させている可能性があります。
様々な求める生理機能を有する物質を封入した
ナノ粒子、マイクロ粒子に
装飾する糖たんぱく質受容体の設計をするにあたって
標的とする細胞があります。
例えば、小児癌の一つである神経芽細胞腫に対して
副作用が少なく、極めて予後の良い治療を目指して
神経芽細胞腫「だけ」に存在する
受容体結合部位を探すときに
その細胞の表面を調べて
数ある受容体の中から選択することになります。
しかし、受容体はしばしばクラスタリングといった
受容体同士の相互作用があります(5)。
そうした受容体同士の相互作用の中で
上述した「留め金」を通したスイッチのオンオフのような
機能が構造中にある可能性も否定はできません。
そうした中、標的を考えるときに
単に一つの受容体「だけ」に注目するのではなく
複数の受容体の混合状態、複合体の中での
特殊性を見出すことの意義が見えてきます。
例えば、
αvβ3のインテグリンは
他の細胞でもみられますが、
この細胞の場合はクラスタリングしているケースが多く
その時に初めて現れる結合面がある
ということであれば、
それが特異性を見出す道筋ともなります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Marc J. Lajoie, Scott E. Boyken, Alexander I. Salter, Jilliane Bruffey, Anusha Rajan, Robert A. Langan, Audrey Olshefsky, Vishaka Muhunthan, Matthew J. Bick , Mesfin Gewe, Alfredo Quijano-Rubio, JayLee Johnson, Garreck Lenz, Alisha Nguyen, Suzie Pun, Colin E. Correnti, Stanley R. Riddell, David Baker
Designed protein logic to target cells with precise combinations of surface antigens
Science 25 Sep 2020:
Vol. 369, Issue 6511, pp. 1637-1643
DOI: 10.1126/science.aba6527
(2)
S. E. Boyken et al., Science 352, 680 – 687 (2016).
(3)
5. A. Leaver-Fay et al., Methods Enzymol. 487, 545 – 574 (2011).
(4)
Klaus Ley, Jesus Rivera-Nieves, William J. Sandborn and Sanford Shattil
Integrin-based therapeutics: biological basis, clinical use and new drugs
Nature Reviews Drug Discovery volume 15, pages173–183(2016)
doi.org/10.1038/nrd.2015.10
(5)
Caroline Cluzel, Frédéric Saltel, Jost Lussi, Frédérique Paulhe, Beat A. Imhof, and Bernhard Wehrle-Haller
The mechanisms and dynamics of αvβ3 integrin clustering in living cells
J Cell Biol (2005) 171 (2): 383–392.
doi.org/10.1083/jcb.200503017
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