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新型コロナウィルスのワクチンの目的としては
新型コロナウィルスの細胞内への浸入、増殖に関わる
Sタンパク質の細胞表面の受容体への結合能力を
弱めるためにそこに抗体を付けることです。
抗体を結合させるということですから
Sタンパク質の「特定の」面、
そのなかのいくつかの残基を通じて結合します。
その面をナノスケールと非常に微小な領域で
観察した時には、ワクチンの種類ごとに異なります。
また同じワクチンでも
全てにおいて同じ面に抗体が結合するか?
そういった固定観念の払拭も大切になると思います。
ワクチンがしっかりとした薬効を示すためには
抗体価、中和能が指標の一つとなりますが、
そのような数字で示されるデータだけではなく
構造的にどの面に、どのように結合しているか
可視化して明らかにすることは、
ワクチンの薬効に対して理解を深めるものであり、
それは新型コロナウィルスだけではなく
他のウィルスにも有効です。
それだけにとどまらず、
他の色んな疾患の治療薬を考える時にも有効です。
細胞表面には様々な受容体があり、
それぞれが重要な役割を担っているので、
その生理を利用して
病状の緩和側にシフトさせるために
受容体に対する抗体の開発が
鋭意行われているからです。
従って、今世界的に注目されている
新型コロナウィルスのワクチン開発において
構造的な解析結果を世界に公開していく事は
今後の医療全般に関して大きな意味を持つと拝察します。
免疫には交差性というのがあり、
例えば、2003年に流行したコロナウィルスと
現在流行している新型コロナウィルス
両方に効果を示す抗体もあります。
これらのコロナウィルスは高い類似性を持ちますが、
細かい構造を見ていった時には違いがあります(1)。
従って、そのような構造的な差異にも注目して
新型コロナウィルスに対して
効果的な結合面により高い親和性を持つ
抗体をテーラーメイドする必要性があります。
そこで新型コロナウィルスに対して効力の高い
(IC50:38mM)
H014という抗体に対しての構造解析を行っています(2)。
Sタンパク質に結合した抗体の構造的特徴として
以下の2つの事が挙げられます(2)。
①RBD(受容体結合面)のオープン構造を認識して
タンパク質とタンパク質のみの結合によります。
それは通常受容体に結合するモチーフと
異を放っていると考えられています(ref.(2) fig.2(B)より)。
以下、仮説も含みますが、
母体に対する様々なグレンバウンダリー、
へき開面があって、
クローズの状態ではそこに鍵がかけられていて
母体に多く接近、接触した状態ですが、
オープンというのは
システインのような鍵をかける、橋をかけるような
物質の結合がドメインで外れていて
構造の一部が母体から外れている状態だと認識しています。
(ref.(2) fig.2(A)上段左から3つ目と4つ目の比較より)
通常、オープンな構造のほうが
抗体認識しやすいといわれているので、
抗体が結合するときにはこのような構造変換が必要である
という認識です。
②エピトープ(結合部位)は通常1つと考えられますが、
このH014の結合部位は複数あって(paratope)
それぞれがループを形成しています。
(CDRL1 to -3 and CDRH1 to -3)
(ref.(2) fig.2(C)より)
さらに特異な重鎖があります。
重鎖はそのサブユニットが大きな分子量の
ペプチド重合体からなる部分です。
その結合に関わっている残基は58~65です。
この重鎖の結合がより強い相互作用を生み出し、
RBDと抗体との結合性を高めている事に貢献している
と考えられています。
抗体は通常ペプチドの分子量によって類別される
軽鎖と重鎖をサブユニットとして持ちますが、
結合面に関与している比率は
それぞれ32%、68%とされています。
さらにエピトープとして、
21の残基が結合に関与しています。
抗体H014とSタンパク質RBDとの結合を高めている
理由は上述したパラトープ、エピトープの
多数の結合因子によると考えられますが、
それらの結合の間に疎水効果が働いていることも
挙げられています。
この疎水効果は、水などの非極性分子が
凝集する性質であり、引力的相互作用をもたらします。
上述した特異なたんぱく質-タンパク質の結合の
間で働く相互作用はこの疎水効果であり、
それが互いに引き合う力を強め
結合性に貢献していると考えられます。
またSタンパク質のN終端面(NTD)に
H014抗体が結合した複合体に対して
細胞のエントリー受容体であるACE2が結合した
幾何構造が示されています。
H014抗体はこれらの結合界面に
部分的に挿入されるような位置に結合している
様子がわかります(ref.(2) fig.3(E)より)。
少なくとも抗体で中和するとは
結合そのものを防ぐという役割に限らない
ということです。
つまりエントリー受容体には結合するけど
そこからエンドサイトーシスに転換するような
過程を生み出さないように
結合状態を改変することにも貢献すると
推測しています。
例えば、インテグリンなどは、
細胞内に存在するタンパク質が
インテグリンの構造に関与する可能性が示唆されています。
新型コロナウィルスもエンベロープ膜内での
RNAなどの物質の作用によって、
外側に発現されているSタンパク質の状態に
影響を与える可能性があります。
例えば、感染性の強い状態とは、
Sタンパク質がより活性な状態、
構造の多くがオープンになっている
ということが挙げられるかもしれません。
このようなマクロスコピックな変化だけではなく
もっと細かいスケールでの活性化も考えられます。
あるいは、宿主細胞のACE2受容体の状態も
細胞内のタンパク質、DNA、RNA、酵素などの関与によって
活性状態が変わる可能性は考えられます。
こうした構造変化が、
ワクチンから生み出した抗体における
安定的な薬効を生み出すことの難しさを
生んでいる可能性があります。
そのバラつきの中で、個人差の中で
収束に向けた効果的な集団免疫につながるような
効果が求められます。
以上です。
(参考文献)
(1)
M. Yuan et al.,
Science 368, 630 – 633 (2020).
(2)
Zhe Lv et al.
Structural basis for neutralization of SARS-CoV-2 and SARS-CoV by a potent therapeutic antibody
Science 18 Sep 2020:
Vol. 369, Issue 6510, pp. 1505-1509
DOI: 10.1126/science.abc5881
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