いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスに対する
効果的な治療法を考えるときには、
体内で起こっている現象を「視覚化して」
理解することは大事だと思っています。
新型コロナウィルスがどのような形をしているか?
それはメディアで度々写しだされているので
頭の中ですぐにイメージできます。
では新型コロナウィルスが細胞に感染するときの
イメージはどうでしょうか?
いくつかの段階がありますが、
それを正確に想像するのは難しいです。
そういった一つ一つのことを細かく、
解像度よく視覚化できれば、
その中で今までよりも良い、
あるいは今までにない発見や治療戦略が生まれる
と思います。
なぜなら人は目からの情報を優先して取るからです。
日々の生活に根付いたものだから、
視覚的に現象を示すというのは
大きな意味を持つと考えます。
そういった視覚的なイメージにおいて、
日常身近なものと置き換えて、それに例えて考えると
イメージとして頭に残りやすいと思います。
例えば、
「パプリカのような構造の膜貫通タンパク質」
というとそれだけで頭の中で形が浮かびます。
そういった観点で
新型コロナウィルスのコロナと呼ばれる
Sタンパク質の突起の部分は
糖たんぱく質という糖とタンパク質の複合体からなります。
その糖の部分である多糖は
視覚化すると「海藻のよう」です。
もじゃもじゃとした海藻があって
そこから結合部位をもったタンパク質が顔を出しています。
(参考文献(1),Figure.1より)
この海藻の部分は、親水性を示して表面膜に偏りがないから
おそらくそれによってゼータ電位、表面電荷を下げられて
体内にある余計なたんぱく質などの付着を防ぐことができる
と推測されます。
そうすることによってSタンパク質の特異性を保っています。
実際にN結合性多糖(N-lonked glycans)が
表面を装飾して宿主の免疫反応や擾乱性の高い外的環境に対する
安定性を担保することに貢献していると考えられています(2)。
あるいはエントリー受容体との結合部位である
RBDの周りにN-terminusがあり、
それがRBDの保護に関わっていると考えられます。
(参考文献(2) Fig.2(B)より)
このSタンパク質は構造を変えることができて
「Down」あるいは「Close」と呼ばれる配座では
結合のための扉に鍵がかかって閉まっている状態です。
その状態では活発に結合することはできません。
結合部位は周りのドメインに固定されています。
(参考文献(2) Fig.5(B)左から1,2つ目の図より)
実際に新型コロナウィルスがSタンパク質を
体細胞のACE2受容体に結合させて、
細胞の中に入っていくわけですか
その時には連結部分を2つに割って回転し、
細胞とウィルスの膜同士が連結して
空壁を作り、ウィルスが入っていく様子が描かれています。
(参考文献(2) Fig.5(B)左から3,4つ目の図より)
実際にSタンパク質の構造変換において
受容体への結合、膜の開放の重要な役割を担っているのは
fusion-peptide proximal region (FPPR)
ペプチド融合近接領域と呼ばれる部分です。
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結合の中での構造変換
(参考文献(2) Fig.5(B)左から1,2つ目の図、紺色の部分より)
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結合した後の構造変換
(参考文献(2) Fig.5(B)左から3つ目の図、紺色の部分より)
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実際にD614G変異と呼ばれるものが
FPPRの変化に関与しているという
他の報告もあります(4,5)。
従って、これらの構造変化を想定した
ワクチン開発は必要になると考えられます。
ここで述べた多糖(Polysaccharides)が
なぜ親水性を持つのか?
その機能を考える上で一つ大切な事があります。
それは、表面エネルギーです。
基本的な考え方として、
エネルギーは低い方が安定ですから、
表面エネルギーが高いと表面状態は不安定になります。
核となる物質Aに対して物質Bが表面を覆う時には
表面エネルギー:A>Bが成り立つときには
系のエネルギーとして物質Bで覆ったほうが
低くなり安定となります。
そうするとBは「玉になることなく」
「均一な層として」形成されやすくなります。
ここで多糖の表面エネルギーを調べてみると
その構造によりますが
27.4~55.7 (mJ/m2)となっています。
その構造の中でも高いのが
a-cellulose purified with acetone 47.4
Chitosan (80%) 55.7
となっています。
(参考文献(3) TABLE.3より)
ちなみに水は7.28 (mJ/m2)なので
それよりも多糖のほうが大きいので
水が表面になじみやすく玉になりにくく
親水性になりやすいです。
もちろん多糖は網目状の構造になっていますから
もっと現象としては複雑ですが、
基本的に表面エネルギーが高いほうがいいです。
ちなみにアミノ酸やタンパク質の表面エネルギーは
調べる限り見当たりませんでした。
水に表面層で覆われると
水自体は電荷中性が保たれていますから
それが均一に表面を覆うような構造の場合は
基本的に表面電荷が少なくなると考えました。
そうすると表面電荷、
あるいはその空間的な偏りが少ないですから
新型コロナウィルスのSタンパク質の表面付近の
電位の勾配(ゼータ電位)は小さくなると考えられます。
そうするとそこに働く引力は小さくなるので
空間中からタンパク質などの付着が小さくなり
結果としてSタンパク質の構造が守られる
ということだと考えます。
そうすると薬剤の戦略において
Sタンパク質の表面エネルギー状態を変えるような
言い換えればアンチサーファクタントのような
材料をウィルスに作用することができれば
ウィルスが持つ特異性が失われる可能性があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Oliver C. Grant, David Montgomery, Keigo Ito & Robert J. Woods
Analysis of the SARS-CoV-2 spike protein glycan shield reveals implications for immune recognition
Scientific Reports volume 10, Article number: 14991 (2020)
doi.org/10.1038/s41598-020-71748-7
(2)
Yongfei Cai,Jun Zhang,Tianshu Xiao,Hanqin Peng,Sarah M. Sterling,Richard M. Walsh Jr.,Shaun Rawson,Sophia Rits-Volloch,Bing Chen
Distinct conformational states of SARS-CoV-2 spike protein
Science 25 Sep 2020:
Vol. 369, Issue 6511, pp. 1586-1592
DOI: 10.1126/science.abd4251
(3)
MOHAMED NACEUR BELGACEM, ANNE BLAYO, AND ALESSANDRO GANDINI
Surface Characterization of Polysaccharides, Lignins, Printing Ink Pigments, and Ink Fillers by Inverse Gas Chromatography
JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE 182, 431–436 (1996)
(4)
L. Zhang et al.,
bioRxiv 2020.06.12.148726 [Preprint].12 June 2020.
https://doi.org/10.1101/2020.06.12.148726.
(5)
Z. Daniloski et al.,
bioRxiv 10.1101/2020.06.14.151357 [Preprint].7 July 2020.
https://doi.org/10.1101/2020.06.14.151357.
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