いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
このシステムでナノ粒子、マイクロ粒子の中に
封入するのは一般に言われる薬剤だけではなく、
免疫細胞などの特定の細胞や
サイトカインなどの小胞
善玉ウィルス、善玉腸内細菌なども考えられます。
それだけではなく、
特定栄養素なども考えられます。
細胞は分化、成長、相互作用するときには
エネルギーが必要なので、
そのエネルギーを細胞質内にある
ミトコンドリアなどを通して得るためには、
特定の栄養素による代謝が必要です。
そのエネルギーが転写、翻訳を促し、
それによってたんぱく質などを生み出します。
しかし、
病因となっている細胞は
このような代謝サイクルが異常な状態で
そのため栄養バランスが崩れています。
従って、
その栄養素のバランスを整えるために
任意の場所に特定の栄養素をナノ、マイクロ粒子で
保護しながら届けることは
一つの治療アプローチとして成立する
可能性があります。
T細胞はずっと抗原提示を行い免疫機能を
発揮し続けていると「疲弊して(exhaust)」
その機能を失う状態になると言われています。
それを「T cell exhaustion」といいます。
この状態は永続するものではなく回復することもあり、
T細胞が遺伝子的な事も含めて
どのように機能、形質変換するのか?
あるいはその機能が戻る時に生じる生理過程などを
理解することは大切です。
ただ、癌組織のように異常な成長、ストレスがあって
それに体が対峙するときには、
例えば、その攻撃を担う一つである
CD8+T細胞は相当なストレスがあるのだろうと思います。
そうした中で「疲弊して機能を失うこと」は
ある程度避けられないと考えます。
そうした時に
ヘルバーT細胞、NK細胞、マクロファージといった他のT細胞
B細胞による抗体、サイトカインなどの小胞による信号など
総合的なアプローチによって
ストレスを分散させる必要があると思います。
一方で、
癌細胞自体に栄養素の偏りがあることと
上述したexhausted T細胞にも代謝の改変があることから
その局所での栄養状態が同時に大切になると思います。
そうした観点から
疲弊したT細胞において
どのような代謝的な異常な特徴があって、
それを緩和するための栄養学的な観点を探ることは大切になります。
それを細胞特異性を持った薬剤輸送システムにおいて
薬剤の代わりに特定の栄養素を
exhausted T細胞に特異親和性を持たせて
排他的に運ぶことによって
元々の良い栄養状態に戻せないか探りたいと思っています。
疲弊T細胞は栄養状態が不足しており
細胞内の代謝の役割を果たす
ミトコンドリアの呼吸、解糖機能が弱るといわれています(2-5)。
解糖とはグルコースをビルビン酸に分解する過程で
エネルギーを生物が使いやすい形に変換するものです。
ここから得られたエネルギーは
タンパク質を細胞内にあるDNA,RNAによる
遺伝情報に従った転写、翻訳を経て生み出す際に
必要なものです。
従って、細胞の活動には欠かせないものですが、
その機能が弱るということは、
T細胞の免疫機能としての活性化が失われるということです。
従って、代謝的なアプローチをとる際には、
「疲弊したT細胞が使いやすいような」
栄養素を疲弊したT細胞だけが認識できるように
排他的に供給することが大事です。
(ex.小胞に包まれたままエンドサイトーシスさせる。)
あるいはその近接した場所で放出して
確率的に多くの栄養素にアクセスできるようにすることです。
周りの細胞との相互作用もあります。
例えば周りの存在する癌細胞は
乳酸塩の分泌を促進させて
その環境内が乳酸塩リッチな状態になります。
これがT細胞の増殖や機能を失わせると言われています(6)。
乳塩酸塩はビルビン酸、NADH/NAD比のバランスを崩し
それによって好気性解糖を阻害すると言われています(7)。
NADH/NAD比は酸化還元反応に関わり、
その中で電子の生成に関わっているので、
ファンデルワールス力で
細胞内の動的機序に関わる要因の一つだと考えました。
コレステロールレベルもCD8+T細胞の機能に関わります。
T細胞受容体のクラスタリング
(複数の受容体が束になって結合する事)
免疫的シナプスに影響を与えるといわれています。
コレステロールレベルが上がれば、
CD8+T細胞の機能は向上すると言われています(8).
上述した栄養素としての糖に関して
グルコースの接種能力がexhausted T細胞では
弱くなるといわれています(9-11)。
OXPHOS、ATPなど細胞の活動エネルギー源となる
プロセスが弱くなることから
「Metabolic exhaustion」とも呼ばれます(11)。
つまり、T細胞が疲弊する大きな要因として
「栄養不足」というのが挙げられる可能性が示唆されます。
グルコースの分解だけではなく
取得能力も落ちるということですが、
細胞外から細胞内に脂質2重膜を通して、
取り込むときにどのような経路か?
(ref.(1) Fig.4の緑のピーマンのような受容体)
例えばそれが受容体を介するのであれば、
その受容体を亢進させるような働きが機能を改変させる可能性もあります。
あるいは、癌細胞との代謝のバランスにも依りますが、
局所的な周辺環境内のグルコースレベルを
ナノ粒子による糖の排他的輸送によって上げる事ができれば
継続的にストレスを受けるT細胞への栄養供給が
改善される可能性があります。
------
※
血糖値を制御するのは
Gタンパク質共役受容体G-protein-coupled receptors
によるとされています。
それが細胞膜に貫通しているとあるので
この受容体が共通で関与している可能性もあります。
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このような栄養武装はタンパク質の合成を
細胞内で担っている小胞体にもストレスを与えます。
それによってたんぱく質の合成の際に
ミス、変異が生じるとされています(1)。
他方、メチオニンからの炭素代謝は
S-アデノシルメチオニンを生み出し
これはDNAのメチル化を制御する物質なので
後天的な細胞の機能変化において
重要な役割を果たしていると考えられます。
しかしメチオニンの代謝が
T細胞が「疲弊する過程」でどのように変わっているか
という点については不明な部分が多い
とされています(1)。
特にエネルギー源となる糖
あるいは免疫機能を高めるコレステロールなどを
どうやってT細胞に届けるか?
という点が大切ですが、
少なくとも糖に関しては
非常に難しさを孕んでいます。
癌細胞は異常な解糖系の活性化(Warburg効果)があるため
固形癌組織に浸潤したT細胞に
糖を届けようと思っても、
「優先的に」癌細胞がその糖を消費してしまう
可能性があります。
T細胞は癌細胞の中に埋まっているわけですから
局所的に糖を供給したとしても
周辺の癌細胞に食されてしまう可能性があります。
従って、T細胞の中に入るまで
小胞などによって糖を保護しておいて、
T細胞の中で初めて小胞が破れて
糖が供給されるような排他的な供給システムが
必要だと考えられます。
そうした時にエンドサイトーシスが不可欠となります。
癌細胞にはなくT細胞だけに発現している受容体を使って
糖やコレステロールが封入されている小胞を
供給するためには、
特異的受容体に感受性が高い装飾を施し
その結合の中でエンドサイトーシスさせる必要があります。
実際に、生体内に自然に存在する小胞の
エンドサイトーシスのシステムは
癌細胞の例ですがあるとされています(12)。
これを模した形で栄養素を入れるという機能を加えて
「T細胞だけに」供給できれば
癌組織の免疫機能状態は代謝的アプローチによって
変わってくる可能性があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Fabien Franco, Alison Jaccard, Pedro Romero, Yi-Ru Yu & Ping-Chih Ho
Metabolic and epigenetic regulation of T-cell exhaustion
Nature Metabolism (2020)
doi.org/10.1038/s42255-020-00280-9
(2)
Bengsch, B. et al.
Bioenergetic insufficiencies due to metabolic alterations regulated by the inhibitory receptor PD-1 are an early driver of CD8+T cell exhaustion council.
Immunity 45, 358–373 (2016).
(3)
Schurich, A. et al.
Distinct metabolic requirements of exhausted and functional virus-specific CD8 T cells in the same host.
Cell Rep. 16, 1243–1252 (2016).
(4)
Fisicaro, P. et al.
Targeting mitochondrial dysfunction can restore antiviral activity of exhausted HBV-specific CD8 T cells in chronic hepatitis B.
Nat. Med. 23, 327–336 (2017).
(5)
Sugiura, A. & Rathmell, J. C.
Metabolic barriers to T cell function in tumors. J.
Immunol. 200, 400–407 (2018).
(6)
Fischer, K. et al.
Inhibitory effect of tumor cell-derived lactic acid on human T cells.
Blood 109, 3812–3819 (2007).
(7)
Brand, A. et al.
LDHA-associated lactic acid production blunts tumor immunosurveillance by T and NK cells.
Cell Metab. 24, 657–671 (2016).
(8)
Wei Yang, Yibing Bai, Ying Xiong, Jin Zhang, Shuokai Chen, Xiaojun Zheng, Xiangbo Meng, Lunyi Li, Jing Wang, Chenguang Xu, Chengsong Yan, Lijuan Wang, Catharine C. Y. Chang, Ta-Yuan Chang, Ti Zhang, Penghui Zhou, Bao-Liang Song, Wanli Liu, Shao-cong Sun, Xiaolong Liu, Bo-liang Li & Chenqi Xu
Potentiating the antitumour response of CD8+T cells by modulating cholesterol metabolism.
Nature volume 531, pages651–655(2016)
doi.org/10.1038/nature17412
(9)
Bengsch, B. et al.
Bioenergetic insufficiencies due to metabolic alterations regulated by the inhibitory receptor PD-1 are an early driver of CD8+T cell exhaustion council.
Immunity 45, 358–373 (2016).
(10)
Schurich, A. et al.
Distinct metabolic requirements of exhausted and functional virus-specific CD8 T cells in the same host.
Cell Rep. 16, 1243–1252 (2016).
(11)
Scharping, N. E. et al.
The tumor microenvironment represses T cell mitochondrial biogenesis to drive intratumoral T cell metabolic insufficiency and dysfunction.
Immunity 45, 701–703 (2016).
(12)
Andreas Möller & Richard J. Lobb
The evolving translational potential of small extracellular vesicles in cancer
Nature Reviews Cancer (2020)
doi.org/10.1038/s41568-020-00299-w
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