2020年9月29日火曜日

受容体型チロシンキナーゼの標的としての可能性

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスでは
急速に病状が悪化することがあり、
家の近くに適切に処置ができる専用の病院が
ある事が求められます。
このような病院の地理的なネットワークは
日本は世界的にみて高水準で整っていますが、
世界には最寄りの病院まで車で移動しても
1時間以上かかる地域は多く存在します。
日本で車で移動しても1時間以上かかる地域は
北海道の内陸部の一部の地域に限られます。
海外諸国でみると比較的病院へのアクセスが
全国にわたり整っているのは、
ヨーロッパ諸国、アメリカ、韓国、インドです。
(参考文献(1) Fig.1より)
しかし、車ではなく徒歩で1時間以内の地域は
世界的に見て非常に少なく
日本でも都市部に限られます。
(※ただし、状況から考えて
対象となっている病院は世界的にみて
かなり大きな病院に限られると考えれられます。)
世界で病院の地理的状況が良いのは
データを見る限り韓国です。
(参考文献(1) Fig.2より)
新型コロナウィルスのように
進行が非常に速い病気は他にもいろいろあります。
例えば、
急性白血病は「急性」なので
慢性白血病とは違い病気の進行が早く
1日単位で大きく進行する場合もあるといわれています(2)。
従って、できるだけ早く正しく診断され、
適切な治療が求められます。
そうした場合においても
病院間の連携も含め、病院の地理的なネットワークは
とても大切になると考えています。

この急性白血病においてその一種である
急性骨髄白血病では、
その急性骨髄白血病細胞膜表面にある
MET型の受容体型チロシンキナーゼに
そのリガントである肝細胞増殖因子(HGF)が
異常増殖し、結合することによって
その受容体の機能が亢進されている
ということがわかっています。
従って、MET型チロシンキナーゼに特異的に働き
その機能を抑制する抗体(crizotinib)が
薬剤の候補として挙がっていますが、
それで蓋をしたとしても、
そのリガントである肝細胞増殖因子(HGF)が
補助的に分泌を亢進させるために
その薬剤に対する抵抗性を示すとされています(3)。

この受容体型チロシンキナーゼは
ALK, AXL, DDR, EGFR, EPH, FGFR,
INSR, Met, Musk, PDGFR, PTK7
RET, ROR, ROS, RYK, TIE, TRK
VEGFR, AATYK 
の19種類ある事がわかっています
(参考文献(4), 表1より)
例えば、MET型のチロシンキナーゼでは
上述したように急性骨髄白血病細胞の表面に
少なくとも発現していることがわかっていますが、
このチロシンキナーゼは細胞表面にあるだけではなく
細胞膜内部にもあり(5)、
胃癌細胞ではTPR-METというたんぱく質が
異常を起こしていると言われています。
(参考文献(4), 表3より)
腫瘍形成の活性化においては
TPR-METのCblユビキチンリガーゼという酵素からなる
装飾因子のためのTPR-METの結合部位が
欠損しているということがわかっています(5)。
つまり、そこに「構造的な違い」が生まれています。

チロシンキナーゼのうち
急性骨髄性白血病の標的となり得る
MET型細胞表面受容体においては
上皮細胞に広く発現していて、
標的とする急性骨髄性白血病などの癌細胞だけに
特異性を持たせるのは難しいと考えられます。
しかしながら、
METの機能が異常に活性化している状態が
肺の癌細胞で確認されています(6)。
上述した急性骨髄性白血病で肝細胞増殖因子を介した
傍分泌の機序で同様にMET受容体の亢進が観られました(3)。
これらのMETの機能改変において
もし、上述したTPR-METのユビキチンリガーゼの酵素
結合部位の欠落のように(5)、
癌細胞だけに構造上の違いがあれば、
細胞特異的輸送系統におけるアンカーとして
使える可能性があると考えます。

この受容体型チロシンキナーゼは上述したように
19種類あるので、
その中でインテグリンのように
悪性腫瘍だけに見られる構造上の特徴がないかどうか?
という点を調査していきたいと考えています。

またインテグリンとも接近した位置で
相互作用する可能性のある細胞表面受容体であり
(参考文献(7), Figure 8より)
これらの組み合わせの中での
特異性も探っていきたいと思っています。

以上です。

(参考文献)
(1)
D. J. Weiss, A. Nelson, C. A. Vargas-Ruiz, K. Gligorić, S. Bavadekar, E. Gabrilovich, A. Bertozzi-Villa, J. Rozier, H. S. Gibson, T. Shekel, C. Kamath, A. Lieber, K. Schulman, Y. Shao, V. Qarkaxhija, A. K. Nandi, S. H. Keddie, S. Rumisha, P. Amratia, R. Arambepola, E. G. Chestnutt, J. J. Millar, T. L. Symons, E. Cameron, K. E. Battle, S. Bhatt & P. W. Gething
Global maps of travel time to healthcare facilities
Nature Medicine (2020)
doi.org/10.1038/s41591-020-1059-1
(2)
愛知県がんセンター病因
がんの知識>いろんながん>白血病
(3)
Alex Kentsis, Casie Reed, Kim L Rice, Takaomi Sanda, Scott J Rodig, Eleni Tholouli, Amanda Christie, Peter J M Valk, Ruud Delwel, Vu Ngo, Jeffery L Kutok, Suzanne E Dahlberg, Lisa A Moreau, Richard J Byers, James G Christensen, George Vande Woude, Jonathan D Licht, Andrew L Kung, Louis M Staudt & A Thomas Look 
Autocrine activation of the MET receptor tyrosine kinase in acute myeloid leukemia
Nature Medicine volume 18, pages1118–1122(2012)
doi.org/10.1038/nm.2819
(4)
矢ケ崎史治
埼玉医科大学血液内科
慢性骨髄増殖性疾患:診断と治療の進歩
IV.最近のトピックス
2.チロシンキナーゼ阻害薬
(5)
H H L Mak, P Peschard, T Lin, M A Naujokas, D Zuo & M Park 
Oncogenic activation of the Met receptor tyrosine kinase fusion protein, Tpr–Met, involves exclusion from the endocytic degradative pathway
Oncogene volume 26, pages7213–7221(2007)
doi.org/10.1038/sj.onc.1210522
(6)
Jeffrey A. Engelman, Kreshnik Zejnullahu, Tetsuya Mitsudomi, Youngchul Song, Courtney Hyland, Joon Oh Park, Neal Lindeman, Christopher-Michael Gale, Xiaojun Zhao, James Christensen, Takayuki Kosaka, Alison J. Holmes, Andrew M. Rogers, Federico Cappuzzo, Tony Mok, Charles Lee, Bruce E. Johnson, Lewis C. Cantley, Pasi A. Jänne
MET Amplification Leads to Gefitinib Resistance in Lung Cancer by Activating ERBB3 Signaling
Science  18 May 2007:
Vol. 316, Issue 5827, pp. 1039-1043
DOI: 10.1126/science.1141478
(7)
Rachel Barrow-McGee, Naoki Kishi, Carine Joffre, Ludovic Ménard, Alexia Hervieu, Bakhouche A. Bakhouche, Alejandro J. Noval, Anja Mai, Camilo Guzmán, Luisa Robbez-Masson, Xavier Iturrioz, James Hulit, Caroline H. Brennan, Ian R. Hart, Peter J. Parker, Johanna Ivaska & Stéphanie Kermorgant 
Beta 1-integrin–c-Met cooperation reveals an inside-in survival signalling on autophagy-related endomembranes
Nature Communications volume 7, Article number: 11942 (2016)doi.org/10.1038/ncomms11942

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