2020年10月31日土曜日 0 コメント

ウェアラブルデバイスによる特徴的な症状の抽出

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

季節の変わり目になり朝晩が冷え込んできました。
その中で体調を崩している方もいると思います。
インフルエンザの予防接種も始まり、
これからインフルエンザも流行する時期になります。
日常生活の中で身体のどこかの不調があった時に
新型コロナウィルスに感染したのではないか?と
不安になることもあります。
そうした中で、新型コロナウィルスにおける
特徴的な症状がより正確にわかると
日常的な生活の中での不安解消に貢献する部分があります。
余計な不安を感じる必要がないということです。
もちろん無症状の方もいますから難しさもあるのですが、
自分の症状に対して病院に行く必要があるかどうか
の判断基準にはなると思います。
しかしながら
無症状でもCTで肺の損傷がみられたり、
炎症を示す血液のマーカー、肝臓の酵素などが
異なることも示されています(2-5)ので
新型コロナウィルスに感染した場合には
それが顕わにはならなくても
身体が異常をきたしているということは想定されます。

そこでGiorgio Quer氏らはアメリカで
ウェアラブルデバイス、自己報告における症状を
統計的に調査していますので
読者の方々と情報を共有したいと思います(1)。

//条件//
------------
調査方法
--
/スマートフォンアプリ/
・スマートウォッチ
・アクティビティートラッカー
※運動量や睡眠の質などを自動計測する
リストバンド型またはクリップ型の活動量計
--
・自己報告
・診断検査
------------
調査期間 
・2020/3/25~6/7
------------
人数
・参加者30529人・症状報告3811人
・陽性54人・陰性279人
------------

//結果//
------------
陽性>陰性である症状
・頭痛(微増)・発熱、発汗・倦怠感
・呼吸困難・嗅覚障害・せき・体の痛み
※最も顕著なのは嗅覚障害
(参考文献(1) Fig.1より)
------------
陽性、陰性で差がない症状
・腹痛・咽頭炎・首の痛み・下痢・嘔吐
・鼻づまり・鼻水
(参考文献(1) Fig.1より)
------------
陽性の方は
睡眠時間が長くなる
活動量が減る
心拍数が速くなる
※ウェアラブルデバイスによる計測結果
(参考文献(1) Table 1より)
--
実際に(新型コロナウィルス以外ではありますが)
ウィルス感染による発熱があった場合
症状が出る2日前から心拍の顕著な増加が診られる
ということは報告されています(6)。
------------

嗅覚障害は日本でも同様に診られる
新型コロナウィルスの特徴的な症状なので
この症状が現れたときには
感染を疑うということは必要であると考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Giorgio Quer, Jennifer M. Radin, Matteo Gadaleta, Katie Baca-Motes, Lauren Ariniello, Edward Ramos, Vik Kheterpal, Eric J. Topol & Steven R. Steinhubl 
Wearable sensor data and self-reported symptoms for COVID-19 detection
Nature Medicine (2020)
(2)
Tabata, S. et al. 
Clinical characteristics of COVID-19 in 104 people with SARS-CoV-2 infection on the Diamond Princess cruise ship: a retrospective analysis. 
Lancet Infect. Dis. 20, 1043–1050 (2020).
(3)
Meng, H. et al. 
CT imaging and clinical course of asymptomatic cases with COVID-19 pneumonia at admission in Wuhan, China. 
J. Infect. 81, e33–e39 (2020).
(4)
Inui, S. et al. ]Chest CT findings in cases from the cruise ship ‘Diamond Princess’ with coronavirus disease 2019 (COVID-19). 
Radiol. Cardiothorac.Imaging 2, e200110 (2020).
(5)
Long, Q. X. et al. 
Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections. 
Nat. Med 26, 1200–1204 (2020).
(6)
Milechin, L. et al. 
Detecting pathogen exposure during the non-symptomatic incubation period using physiological data. 
Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/218818 (2017).

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遺伝子改変による治療、特異的治療ための輸送方式

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

私たちの体の組織、臓器を基礎として支える
大きな一つの単位は細胞です。
その細胞の中には様々な小器官があり、
細胞内の空間にはタンパク質があります。
その細胞質においても細胞の成長、分化、成熟
あるいは免疫細胞など他の細胞との相互作用などを司る
生理機能があります。
また、
細胞の中には細胞核があり、その中に遺伝子があります。
遺伝子はタンパク質、脂質など
私たちの体を支える機能性を持った
任意の高分子を作ることができます。
遺伝子はその設計図となるものです。
しかし、
何らかのきっかけがあり
体に疾患が出たときには身体の健康なバランス
恒常性が崩れた状態になります。
その大元では細胞の活動が不順になっていて
さらにはその細胞内の特定の遺伝子が変異したり
不安定になっていることが考えられます。
変異することで異常な生理物質の合成、分解などが起き
細胞の健康な活動が乱されている状態であると推測できます。
もちろん、様々な生理物質が
体の循環の中で「運命的に」「確率的に」作用するという
統計的な事も含めた物理的な要因の中で
遺伝子「だけ」で決められない部分がありますし、
またコード化されていない
遺伝子の役割についても検討されています。
しかし、そうではあっても
異常になっている遺伝子のうち
「影響力高いものについては少なくとも」
変異した遺伝子を良い方向に改変する事は
ベース、基礎の治療方針として考えられることです。

Elizabeth M. Porto氏らは
その遺伝子の単位であるヌクレオチドにおいて
単一ヌクレオチド可変物(single-nucleotide variants (SNVs))
を細胞内のDNA、RNAに導入することについて
その治療効果と輸送方式について総括していますので
読者の方々と情報を共有したいと思います(1)。

遺伝子変異の96%は単一のヌクレオチドの変異
だといわれていますので(2)、
この単一のヌクレオチドに作用する物質を
制御して細胞内に導入する技術は大切で
また遺伝子がどのような表現型を持ち、
遺伝子が人の体の状態、健康状態にどう影響を与えるか
の理解を改善する上で重要だと考えられてます(3-7)。

実際にはその遺伝子改変はCRISPRシステムの中で
Cas9と呼ばれるたんぱく質を通して行われるのが
一つの方式としてあります。
そのCas9がguideRNAと結合していて
それらの複合体が遺伝子に結合して、
遺伝子の結合を切ってguideRNAが
「遺伝子にまとわりつくように作用して(?)」
新しい任意の遺伝子配列(編集)に修復するのを
可能にするものです。
(参考文献(1) Fig.1より)
従って、この方式で遺伝子編集する場合においては
このCas9タンパク質とguideRNAの複合体を含む
物質を編集したい任意の遺伝子に運ぶ必要があります。
その際に問題となっていると考えられる細胞に
アクセスして、その中にある標的遺伝子を特異的に
任意のguideRNA(?)によって意図する遺伝子に編集できれば
それに対する動物、そして人の身体の応答をみることで
遺伝子の表現型を評価でき、
かつ上述したように健康状態への影響も同様に評価できます。
従って、
細胞特異的輸送系統では
狙った細胞に対して特異性を持って輸送することを
目的としていますから、
遺伝子編集を用いた治療との親和性は高いことになります。
今のところ全ゲノム情報など
コンピューターの性能の向上で蓄積されていますが、
ゲノム同士の相互作用やノンコード遺伝子、
あるいは物理的な相互作用などの影響もあることから
実際にゲノムに対する表現型へのリンクに関しては
大きな課題が残っていると考えられます。
しかしながら
前述したように遺伝子の中には
癌に関わるp53のように強固に作用する遺伝子もあることから
そのような影響力の大きな遺伝子に対して
細胞、遺伝子特異的にCas9のような編集のための
物質を輸送することは強く望まれていると考えています。

しかしながら、
遺伝子編集で気を付けないといけないのは
標的でない遺伝子を改変してしまう可能性(off-target edits)
があることです(8-10)。
この問題に対しては(改変する遺伝子に親和性を持つように?)
Cas9のタンパク質の(活性部位を?)改変する事で
目的ではない遺伝子に対しては作用しないようにする
研究が進められています。
(参考文献(1) Fig.3c Table 1参照)
現状、guideRNAに依存しない形では
狙いではない遺伝子の改変のレベルは10~100倍下げること
に成功しています(11)。
もう一つは、
周りの遺伝子と相互作用してしまう可能性(bystander effect)の
問題もあります(12)。
この効果はCas9を通した遺伝子編集では脱アミノ酸反応によって
引き起こされることが確認されている(13)ので、
この脱アミノ酸を引き起こす酵素の働きを弱めることで
防ぐことができるかもしれないと考えられています(1)。

/輸送方法/
輸送方法における一つの方針としては
狙いの細胞(遺伝子)への輸送効率を上げて
狙いでない細胞(遺伝子)に輸送されないようにすることです。
そのために参考文献(1) Fig.4に示されるような
大きく分けて以下の三つの輸送方式が提案されています。
-----
・ウィルスによる輸送
・ナノ粒子による輸送
・電気穿孔法
(電気パルスで細胞膜に孔をあけ物質を導入する手法)
-----
これらです。
また、
粒子で運ぶ際に物質に着目した分類では
参考文献(1) Table 2に
物質、輸送方式(下に記載)、技術的な要素、利点、課題
が表にしてまとめられています。
------
核酸(プラスミドDNA,RNA)
・陽イオン性脂質
・脂質ナノ粒子
・電気穿孔法
・直接的輸送
・細胞の注入
--
ウィルス(細胞表面受容体を通じて輸送)
・アデノウィルス
・アデノ関連ウィルス
・レトロウィルス
・レンチウィルス
・センダイウイルス
---
タンパク質
・脂質ナノ粒子
・陽イオン性脂質
---
その他
・DNAケージ
・ウィルス様粒子
・細胞貫通ペプチド
・物理的輸送
------
これらの輸送方式に対して
特にウィルスや脂質ナノ粒子に関する輸送では
細胞種を選んで特異的に輸送したいために
その細胞の表面に発現されている糖たんぱく質などの
受容体を「複合要素も含めて」調べて
その中で特徴を洗い出し、その特異的特徴に
親和性を示す装飾を
Cas9など遺伝子改変物質を封入した胞、粒子にすることで
より輸送の精度があげられる可能性を想定しています。

以上です。

(参考文献)
(1)
Elizabeth M. Porto, Alexis C. Komor, Ian M. Slaymaker & Gene W. Yeo 
Base editing: advances and therapeutic opportunities
Nature Reviews Drug Discovery (2020)
(2)
Auton, A. et al. 
A global reference for human genetic variation. 
Nature 526, 68–74 (2015).
(3)
Katsonis, P. et al. 
Single nucleotide variations:biological impact and theoretical interpretation. 
Protein Sci. 23, 1650–1666 (2014).
(4)
Zhang, F. & Lupski, J. R. 
Non-coding genetic variants in human disease. 
Hum. Mol. Genet. 24, R102–R110 (2015).
(5)
Kircher, M. et al. 
A general framework for estimating the relative pathogenicity of human genetic variants. 
Nat. Genet. 46, 310–315 (2014).
(6)
Bertucci, F. et al. 
Genomic characterization of metastatic breast cancers. 
Nature 569, 560–564 (2019).
(7)
Smith, C. et al. 
Efficient and allele-specific genome editing of disease loci in human iPSCs. 
Mol. Ther. 23, 570–577 (2015).
(8)
Komor, A. C., Kim, Y. B., Packer, M. S., Zuris, J. A. & Liu, D. R. 
Programmable editing of a target base in genomic DNA without double-stranded DNA cleavage. 
Nature 533, 420–424 (2016). 
(9)
Gaudelli, N. M. et al. 
Programmable base editing of A•T to G•C in genomic DNA without DNA cleavage. 
Nature 551, 464–471 (2017).
(10)
Rallapalli, K. L., Komor, A. C. & Paesani, F. 
Computer simulations explain mutation-induced effects on the DNA editing by adenine base editors. 
Sci. Adv. 6, eaaz2309 (2020).
(11)
Doman, J. L., Raguram, A., Newby, G. A. & Liu, D. R. 
Evaluation and minimization of Cas9-independent off-target DNA editing by cytosine base editors.  
Nat. Biotechnol. 38, 620–628 (2020).
(12)
Gehrke, J. M. et al. 
An APOBEC3A–Cas9 base editor with minimized bystander and off-target activities. 
Nat. Biotechnol. 36, 977 (2018).
(13)
Komor, A. C. et al. 
Improved base excision repair inhibition and bacteriophage Mu Gam protein yields C:G-to-T:A base editors with higher efficiency and product purity. 
Sci. Adv. 3, eaao4774 (2017).  

2020年10月30日金曜日 0 コメント

中和抗体LY-CoV555治療薬による治験結果

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

アメリカのイーライリリーは
新型コロナウィルスの治療薬として開発を進める
中和抗体LY-CoV555の緊急使用許可を申請をしている
ということが10月8日付けのニュースで報道されています。
この中和抗体はいわゆる「ワクチン」として
健康な人に投与するのではなく、
すでに新型コロナウィルスに罹患している人に
対して投与する治療薬です。
無作為化プラセボ対照二重盲検第1相(P1)臨床試験
の試験が6月10日時点の報道で6月末までに
終了する予定であるという報道がありました。

10月28日時点
The New England Journal of Medicine誌に
フェーズⅡの治験結果についてPeter Chen氏らによって
報告されているので読者の方と情報共有したいと思います(1)。

今まで動物のモデルでは中和抗体を使った
治療においてウィルス量の顕著な低下が確認
されていました(2)。
また中和抗体LY-CoV555における人以外の
動物における効果はすでに確認されています(3)。

条件
実施期間:2020/6/17~8/21
中間解析日:2020/9/5
患者数:467人 (投薬:317人 偽薬:150人)
場所:アメリカの41か所
症状:軽症~中程度
用量:700mg,2800mg,7000mg,偽薬
ウィルス量測定方法:RT-PCR

治験ナンバー:NCT04427501

結果
11日後
ウィルス量700mg:10-3.67=0.000213796(3桁~4桁低下)
ウィルス量2800mg:10-4.00=0.0001(4桁低下)
ウィルス量7000mg:10-3.38=0.000416869(3桁~4桁低下)
偽薬:10-3.47=0.000338844(3桁~4桁低下)
(参考文献(1) Table 2参照)
いずれの容量でも副作用は偽薬と比べて少ない
(参考文献(1) Table 4参照)

投薬後入院が必要になった患者さんの割合
1.6%(309人中5人)
(偽薬:6.3%(143人中9人)
(参考文献(1) Table 3参照)

これから開発されるワクチンにおいて
新型コロナウィルスのスパイクに対する
中和抗体が発現されますが、
それは健康な人に投与されることを前提に
今鋭意承認に向けた手続きが進められていますが、
それをこのように既に罹患している人への
治療薬として使えないか?
という視点が生まれました。

以上です。

(参考文献)
(1)
Peter Chen, M.D., Ajay Nirula, M.D., Ph.D., Barry Heller, M.D., Robert L. Gottlieb, M.D., Ph.D., Joseph Boscia, M.D., Jason Morris, M.D., Gregory Huhn, M.D., M.P.H.T.M., Jose Cardona, M.D., Bharat Mocherla, M.D., Valentina Stosor, M.D., Imad Shawa, M.D., Andrew C. Adams, Ph.D., Jacob Van Naarden, B.S., Kenneth L. Custer, Ph.D., Lei Shen, Ph.D., Michael Durante, M.S., Gerard Oakley, M.D., Andrew E. Schade, M.D., Ph.D., Janelle Sabo, Pharm.D., Dipak R. Patel, M.D., Ph.D., Paul Klekotka, M.D., Ph.D., and Daniel M. Skovronsky, M.D., Ph.D., for the BLAZE-1 Investigators* 
SARS-CoV-2 Neutralizing Antibody LY-CoV555 in Outpatients with Covid-19 
The New England Journal of Medicine  October 28, 2020
(2)
Baum A, Ajithdoss D, Copin R, et al. 
REGN-COV2 antibodies prevent and treat SARS-CoV-2 infection in rhesus macaques and hamsters.  
Science  2020  October  9 
(3)
Jones BE, Brown-Augsburger PL, Corbett KS, et al. 
LY-CoV555, a rapidly isolated potent neutralizing antibody, provides protection in a non-human primate model of SARS-CoV-2 infection. 
October  1, 2020  
(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.09.30.318972v3).preprint.

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癌組織に対する物理的特質

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

癌の治療戦略を考えるときには、
癌細胞の特徴に焦点を当てて考えられる事が多いです。
例えば、
・細胞表面にある受容体による増殖や分布
・癌細胞内の遺伝子の改変
・代謝バランスの崩壊、
・周辺の免疫細胞との関わり合い
などです。
しかし、癌組織の土壌となっている微小環境や
組織の周りの物理的な改変も癌組織に影響を与えている
可能性が示唆されています。
Hadi T. Nia氏らは
・機械的なストレス
・間質液によるストレス
・硬さなど機械的性質の改変
・周辺の微小構造の物理的改変
これら4つの項目について癌組織への影響を考えています。
(参考文献(1)Review Summary 図:Physical traits of cancer参照)

------------------
・機械的なストレス
--
影響:細胞の増殖、細胞の収縮、成長のパターン
--
特に細胞が機械的なストレスを受けた時に
細胞の特質がどう変わるか?というのは
一つの考える視点、調べる観点としてあると思います。
--
実際に癌細胞がどれくらいのストレスを受けているか
という報告があります。
膠芽細胞腫では100Pa未満
膵管腺種では10000Pa程度
であるといわれています(2).
実際に癌細胞が成長するときには組織が膨張するので
その時に周辺組織と相互作用しながら
一定の機械的なストレスがかかるといわれています(2,3)。
その他
--
通常組織が癌組織の成長によって
ストレスを受けて動かされる(4,5)。
--
電解浸透水の吸着によって
細胞外マトリックスにある多糖が膨張する(6,7)。
--
繊維芽細胞、免疫細胞、癌細胞が
細胞外マトリックスを収縮する(1)。
--
以上のようなストレスは
血管やリンパ管の損傷などにつながります(8-10)。
このような管が圧縮されると
癌組織の環境に適した低酸素状態になり(10,11)、
化学療法、放射線療法、免疫療法の効率が落ちる(12,13)
といわれています。
さらに、
機械的なストレスは
癌細胞の浸潤(14)、腸の上皮組織の癌の進行(15)
これらを促進すると言われています。
--
癌細胞の成長や周辺細胞、組織の改変によって
間質にある細胞外マトリックスも同様に機械的なストレスを
受けることになりますが、その細胞外マトリックスの
ダイナミクスによってインテグリンなどの
フェブロネクチンからなる細胞表面にある
受容体の活性が変わることも報告されています(16)。
--
臓器の大きさ、形などの決める組織の成長因子である
YAP/TAZ経路はこのような機械的ストレスに反応し(17,18)
活性化されることが報告されています。
活性化されると癌細胞の悪性度が上がることが指摘されています。
--
従って、機械的なストレスを下げることが抗癌効果に
繋がることが考えられます。
実際に膵管線種では高血圧の治療に使用される
ロサンタンという薬剤が組織、血管のストレス
を開放する役割があるとされ、
それと化学療法を併用することで薬効ががあり
生存率が向上したという報告もあります(19)。
この治療戦略は現在フェーズⅡの治験段階にあります(20)。
(NCT01821729)
さらに、免疫療法でも機械的ストレスの緩和は
有効な戦略であることが示されています(21,22)。

------------------
・間質液によるストレス
--
影響:機能を持たないリンパ液、漏れがある血管、圧縮された流れ
--
間質液は動脈から組織の間質を流れて静脈
そして肝臓(?)に排出される経路取ると言われています(1)。
この時の液圧(IFP)はほぼゼロで恒常性が保たれている
といわれていますが癌組織がある場合には
この間質液圧が上昇すると言われています(23,24)。
--
間質液圧上昇はせん断応力に繋がると言われています(1)。
このせん断応力は
・線維芽細胞活性化(25)
・内皮発芽の改変(25)
 ⇒癌組織成長因子である血管生成、リンパ管生成を導く(25,26)
・細胞外マトリックスの誘発
・細胞の運動性の活性化(27)
・癌細胞の遊動、浸潤の活性化(28,29)
これらを導くといわれています。
--
間質液圧による力は免疫細胞の制御にも関わる
と言われています(25)。

------------------
・硬さなど機械的性質の改変
--
影響:細胞外マトリックス蓄積、交差
--
癌組織は通常細胞よりも一般的に硬いと言われています。
その硬化作用は
・乳癌(30,31)・膵臓癌(32,33)・大腸癌(34)・脳腫瘍(35)
様々な癌種において癌組織を成長させる要因となります。
--
どれくらい組織が硬いかというのは
癌治療後の予後に関連があると言われています(36,37)。
従って診断のマーカーとして使われることがあります(38)。
--
組織が硬化度と化学療法の効果は負の相関がある
といわれています(39)。
従って、組織の硬化を緩和させることによって
化学療法の薬効が上がる可能性が考えられます。
--
硬化作用は癌組織の形態に関わる機序である
Hippo経路、YAP、TAZ経路に影響を与えます(40,41)。

------------------
・周辺の微小構造の物理的改変
--
影響:細胞の収縮、細胞外マトリックス蓄積、交差
--
癌細胞が異常増殖すると細胞数が増えるわけですから
その中でタンパク質の生成が増えると考えられます(?)。
その中で(?)タンパク質分解酵素である
プロテアーゼ活性化が変わり
間質にある細胞外マトリックスが変化し
細胞と細胞外マトリックス、
細胞と細胞の結合状態、信号伝達、形態
が変わる可能性が示唆されています(1)。
--
3次元の細胞の分布に関わる
細胞外マトリックスの(?)生理機序である
Rho/ROCK-mediated matrix alignment は
癌細胞が浸潤するときの初期過程において
鍵となるプロセスであるといわれています(42)。
--
細胞外マトリックス物質の一つである
コラーゲンの3次元構造は
細胞表面受容体であるインテグリンβ1の発現を改変して(43)
細胞の運動性、分布に影響を与えると言われています(1)。
--
周辺の微小構造で癌細胞が動くときには
その微小構造の通路、穴のサイズが
細胞内にある細胞核よりも小さいことがあります。
その様な小さい穴を細胞が変形しながら通過するときに
強いストレスを受けて細胞膜が破壊されることがあります。
そうした時に細胞核にある遺伝子が破壊されて(44-46)
染色体異常、遺伝子的不安定性の原因となることがあります(45)。
--
細胞外マトリックスの微小構造、穴(通路)は
免疫機能に関わるサイトカインの輸送にも影響を与えます(1)。
------------------
(影響に関して:参考文献(1)Fig.2参照)

上述した4要素
・機械的なストレス
・間質液によるストレス
・硬さなど機械的性質の改変
・周辺の微小構造の物理的改変
に関して、
細胞外、細胞表面受容体、細胞質、細胞核表面受容体、細胞核
それぞれの領域、境界でどのような生理物質(タンパク質など)
と影響があり、それぞれの関連についての
ネットワーク図が描かれています。
(参考文献(1)Fig.3参照)

/考察/
---
癌細胞の表面形態(トポロジー)から
外的な圧力(ストレス)への耐性について検討できないか?
例えば、癌細胞膜が通常細胞に比べて波打っていれば
圧力による体積変化に対する耐性は
感覚的には強くなると考えられるがどうでしょうか?
---
固形癌の退行においては
少しずつでも準平衡状態の中で体積を減らしていく
必要がありますから、組織を除去するメカニズムが
非常に重要になります。
間質液で動脈から静脈の流れを通じて除去されるメカニズム
あるいはタンパク質(リン酸脂質などを含む細胞なども?)
分解する食作用、オートファジーなどを活性化させることが
重要ではないかと考えられます。
従って、
人は糞便、尿、汗などの
マクロスコピックな排出のメカニズムを持っていますが、
その排出のメカニズムを分子レベルで考えていく
必要があると考えられます。
その中で代謝のメカニズムが一つ重要になると思います。
---
ここで想定されている固形癌の治療は
白血病などの流動性の癌に比べて、
薬物や免疫細胞による治療は難しいと考えています。
-
※血液性の癌でもせん断応力はあると言われています(1)。
但し、その程度が異なると考えました。
-
その理由の一つとして
同じ場所に繰り返し特異的にアクセスできるか?
という問題があります。
もう一つはここで示されているように
周りの環境との物理、化学的な相互作用があるからです。
ストレス、間質液、周辺微小環境は組織ごとに異なるし、
組織が成長、退行する中でも変化します。
そうした中で安定的に意図する物質を特異的に運べるか?
さらには周辺の相互作用の中で寛解へ導けるか?
という問題があります。
実際には固形癌は術前術後の補助療法
(neo-adjuvant therapy / adjuvant therapy)
によって、大きい部分は外科的に除去して、
周辺に播種しているかもしれない
小さな癌組織は化学療法で退行させるというのが
一つの有効な固形癌に対する治療法であると理解しています。
しかし、
転移が進んで大きな組織となっている
固形癌が体内に「多く」存在すると
外科的手術だけでは対応できないと思います。
そうした時には薬剤や免疫細胞などで
特異的にアクセスして効果的に退行させるということが
代替のアプローチになります。
そうした場合において、
参考文献(1)で示された周辺の物理的な要素と
癌組織の関係についての深い理解が必要になる
と考えています。

以上です。

(参考文献)
(1)
Hadi T. Nia, Lance L. Munn, Rakesh K. Jain
Physical traits of cancer
Science  30 Oct 2020: Vol. 370, Issue 6516, eaaz0868
(2)
H. T. Nia et al., 
Solid stress and elastic energy as measures of tumour mechanopathology. 
Nat. Biomed. Eng. 1, 0004 (2016).
(3)
G. Seano et al., 
Solid stress in brain tumours causes neuronal loss and neurological dysfunction and can be reversed by lithium. 
Nat. Biomed. Eng. 3, 230 – 245 (2019).
(4)
C. P. Heisenberg, Y. Bellaïche, 
Forces in tissue morphogenesis and patterning. 
Cell 153, 948 – 962 (2013).
(5)
K. D. Irvine, B. I. Shraiman, 
Mechanical control of growth: Ideas, facts and challenges. 
Development 144, 4238 – 4248 (2017).
(6)
C. Voutouri, C. Polydorou, P. Papageorgis, V. Gkretsi, T. Stylianopoulos, 
Hyaluronan-derived swelling of solid tumors, the contribution of collagen and cancer cells, and implications for cancer therapy. 
Neoplasia 18, 732 – 741 (2016). 
(7)
A. J. Grodzinsky, 
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2020年10月29日木曜日 0 コメント

ACE2受容体の分布、密度の不変性について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

ACE2受容体は鼻咽頭、肺、腸、腎臓、睾丸など
の組織にある細胞などの表面に存在し(10)、
(※確定的ではない)
新型コロナウィルスが細胞の中に入って、
増殖して、放出され
再度細胞の中に入って、増殖、、、、
といった中で免疫を始めする生理機能の
バランスを崩して疾患をもたらす際において
細胞の中に入るための「扉となる」受容体です。
そのACE2受容体の数が多ければ
当然、新型コロナウィルスがその細胞を通じて
数を増やす確率を上げてしまうことになります。
従って、ACE2の密度、分布を調べることは、
新型コロナウィルスにおける脅威を下げたり、
それによって引き起こされる病理を理解する上で
大切になります。

Ivan T. Lee氏らは上述したACE2受容体が
体のどの組織にどれくらいの密度であるか?
というのを
発色する免疫組織化学(chromogenic immunohistochemistry)
に対して抗体を作用させることによって 
ACE2タンパク質を「茶色」に発色させることで図示しています。
それによると
「気管支、精嚢、胃、空腸(小腸の一部)、腎臓」
が高密度で存在することが分かります。
逆に
「心臓、皮膚、肺、肝臓」
は少なくなっています。
(参考文献(1) Fig.1 茶色の部分を参照)

また、新型コロナウィルスは
年齢、性別、喫煙状態によってリスクの程度が異なる
と言われています。
その中で知られていることは
高齢、男性、喫煙でリスクがあがる事です(11,12)。
しかし、ACE2受容体の数は
これらの要因によって顕著な変化はないとされています。
(参考文献(1) Fig.5 参照)

さらに、鼻、口腔~気管支まで
呼吸器にある「髪の毛のような」鞭毛に
ACE2受容体は多く存在、局在している事を示しました。
従って、これらは準細胞レベル(subcellular level)でも
存在することが確認されました。
-----
参考文献(1) Fig.7参照
呼吸器にある鞭毛、ACE2受容体の模式図
--
参考文献(1) Fig.3参照
緑と黄に光っているのがACE2受容体関連
鞭毛、表面に多くあることがわかる。
鼻(Nasal turbinate、Ethmoid sinus、Uncinate process)、
気管(Trachea)、気管支(Bronchus)
-----

さらに、ACE2受容体は機能として
-----
レニン-アンジオテンシン系
renin-angiotensin-aldosterone system (RAAS)
-----
と呼ばれる血圧を適正に制御するのにかかわっています。
主に血圧低下や腎臓の循環血液量の低下に伴って
活性化されるといわれています(2)。
従って、高血圧の患者さんに対しては
このACE受容体の活性を抑える薬が処方されることがあります(1)。
-----
Angiotensin-converting enzyme inhibitors (ACEI) 
Angiotensin II receptor blockers (ARBs) 
-----
これから逃れるように生体内でACE2受容体の活性が高まり
新型コロナウィルスの感染に対するリスクが
上がる可能性があるのではないかと懸念されていました。
従って、高血圧との合併症の指摘があります(3-6)。
この仮説は
人やマウスなどの研究においてACEI/ARBsの投与の後
心臓、腎臓、尿においてACE2のRNAが亢進されていることが
示された研究から生まれたものです(7-9)。
しかしながら、
ウィルスの入り口である
鼻、口腔、喉、気管、気管支などの呼吸器で
ACEI/ARBsの薬剤の影響でACE2受容体が変化するかどうかに
ついては今までわかっていませんでした(1)。
Ivan T. Lee氏らは鼻、口腔~気管支まで
呼吸器にある「髪の毛のような」鞭毛に対して
ACEI/ARBsの投与によって数は増えないことを示しました(1)。
それは高血圧、年齢、性別、非喫煙者と
グループ分けした状態でも顕著な変化は見られません。
(参考文献(1) Fig.6 参照)

しかし、注意が必要なのは
ACE2受容体の密度、数が年齢、性別、既往歴、
喫煙状態によって変わらないことが
新型コロナウィルスのリスクが変わらないことを
示すわけではないということです。
新型コロナウィルスのリスクは
エントリー受容体だけではなく
細胞内の応答、免疫応答、血管の状態など
様々な要素で決まり、ACE2受容体の数は
その1要素にすぎないからです。
ただ、ACE2受容体の不変性の高さの可能性を示唆したこの研究は、
今後のワクチン開発における一つの情報として
貢献するものであると考えています。

以上です。

(参考文献)
(1)
Ivan T. Lee, Tsuguhisa Nakayama, Chien-Ting Wu, Yury Goltsev, Sizun Jiang, Phillip A. Gall, Chun-Kang Liao, Liang-Chun Shih, Christian M. Schürch, David R. McIlwain, Pauline Chu, Nicole A. Borchard, David Zarabanda, Sachi S. Dholakia, Angela Yang, Dayoung Kim, Han Chen, Tomoharu Kanie, Chia-Der Lin, Ming-Hsui Tsai, Katie M. Phillips, Raymond Kim, Jonathan B. Overdevest, Matthew A. Tyler, Carol H. Yan, Chih-Feng Lin, Yi-Tsen Lin, Da-Tian Bau, Gregory J. Tsay, Zara M. Patel, Yung-An Tsou, Alexandar Tzankov, Matthias S. Matter, Chih-Jaan Tai, Te-Huei Yeh, Peter H. Hwang, Garry P. Nolan, Jayakar V. Nayak & Peter K. Jackson 
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腸内細菌叢に関連した腸と脳の相互生理作用について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

日本は伝統的に善玉の細菌を
積極的に食品を通じて体内に取り込んできた
という歴史があります。
味噌、豆腐、納豆、醤油などの大豆製品、
様々な種類の漬物、海外からはキムチ、
海外からヨーグルト、チーズなどの乳製品
鰹節、塩辛、くさやなどの魚介類、
後は酒類などもあります。
またヤクルト社(さん)など
企業が独自の腸内細菌を発明して
それを積極的に飲料として提供している商品も
多くの企業から出ています。
また各化粧品メーカー(さん)が
乳酸菌化粧品なども発売しています。
このような長い歴史の中で培われてきた細菌を利用する
技術、ノウハウを生かすためにも
腸内細菌と身体の健康、疾患の関連を調べることは
重要になるのではないかと思います。
また、
再生医療などと合わせて
美容、アンチエイジングというところに貢献できれば
女性を中心とした幅広い方の強固な関心と需要があるため
産業界からの幅広い協力も得られる可能性も想定しています。
実際に
肌荒れの原因となる毛穴の詰まりは
オートファジーの不全によって
余計なたんぱく質がたまることによって起こる
ということがコーセー社(さん)から発表されています(1)。
このように体の恒常性維持、再生において
重要な役割を果たしている生理機序が
美容やエイジングに影響を与えている可能性はあります。

冒頭で述べた腸内細菌もその中に細胞がありますから、
オートファジーやタンパク質を分解する酵素(protease)は
細胞内にあると思います。
その中で腸内細菌の数、組成、種類が
オートファージーなどの生理機序を含めて、
美容、健康、老化、疾患と関連性があっても
不思議ではありません。
この細胞特異的輸送系統においては
「特定の場所に」「任意の」腸内細菌を輸送できるように
することを想定しています。
従って、
腸内細菌と様々な身体の臓器、組織との
クロストーク、関連性を調べていく事は基礎として
重要になると考えています。

本日はその腸内細菌に関して、
Livia H. Morais氏らが
腸内細菌叢と脳神経疾患の関連性について総括(2)しています
ので読者の方と情報共有したいと思います。

この腸内細菌は、
生まれた直後の形成状態が重要だといわれることがあり、
それからしばらく経つと安定してくるという情報もありますが、
より細かく組成や活性度を見ていくと
年齢を通してそれらは変わっていくと言われています(3)。
また冒頭で述べた食べ物(4)、あるいは薬(5)など
環境的な要素によっても変わると言われています。
実際に脳の疾患に関わる薬と腸内細菌は
相互作用して代謝などにも影響を与える可能性が
示唆されています(6)。

この腸内細菌は体の細胞の数と同程度存在する(7)
と言われているので
体内に生息する最近の細胞数は
その数倍の100兆個といわれています。
しかし、
その数に関する見積もりは個人差がある
という見方もありますが、
いずれにしても体内では
タンパク質、核酸、脂肪、糖、酸素、窒素、硫黄、鉄など
様々な物質の循環がありますが、
ミクロにみれば細胞がそういった循環を支えています。
腸内細菌が各組織、臓器とそれぞれ
どの程度クロストークしているか?という
相関係数はありますが、それを無視できないほど
影響を与えている可能性も十分に考えられます。

前述した脳と腸がどのような軸、経路を持って
互いに影響しあっているかという
解剖的な模式図が参考文献(2)Fig.1に示されています。
脳から迷走神経が大腸まで伸びて
腸から放出されたセロトニンなどの神経伝達物質と
腸内細菌の副産物、代謝産物が
迷走神経の表面にある受容体に取り込まれる
様子が描かれています。
また同時に樹状細胞、T細胞、B細胞、マクロファージなど
免疫細胞がサイトカインを通じて免疫系統を作り
それが直接的、間接的に(迷走神経を通じて?)
脳とクロストークしている可能性が示唆されています。
(参考文献(2)Fig.1拡大図より)
具体的にどの腸内細菌が
どのような神経伝達物質と関係があり
その中で心の状態などと関連しているかという一例が
下記のように挙げられています。
------
・乳酸菌(Lactobacillus reuteri)
 ⇒オキシトシン↑亢進
・乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus)
 ⇒GABA↑亢進
・ビフィズス菌(Bifidobacterium longum NCC3001)
  ⇒神経栄養因子(BDNF)↑亢進
・バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)
 ⇒4-EPS↓抑制
・短鎖脂肪酸産生細菌(SCFA-producing bacteria)
 ⇒SCFA↑亢進
------
(参考文献(2)Fig.2より)
このように見ると乳酸菌、ビフィズス菌は
一般的には善玉細菌であると評価できます。
また
その他に重要な神経伝達物質としてセロトニンがあります。
このセロトニンは腸内を無菌状態にしたマウスでは
減少することが知られています(8)。
しかしながら、セロトニンと腸内細菌が
脳に対して物理的にどのように関係しているか
という描写に関してまだ理解されていない部分があります(2)。
逆に、
脳から神経伝達がある迷走神経は
腸の筋組織や粘膜層を刺激するといわれています(2)。
従って、
腸の蠕動運動に関わっていると言われています。
ゆえに、
便通などは迷走神経からの信号が関わっている可能性があります。
実際にドーパミンが不足するパーキンソン病では
80%の人が便秘を経験するといわれています(10)。
従って、脳神経系の疾患と腸の蠕動運動などの活動は
迷走神経の活性を通じて関連性を持つ場合があると考えられます。

前述したように、
迷走神経は腸と脳を繋ぐ
「電気回路のような」役割をしていますから、
そこには「抵抗成分」があっても不思議ではありません(?)。
従って、迷走神経を電気デバイスなどで刺激して
腸から運ばれる神経伝達物質が効率よく運ばれるようにする
治療も(一部では?)承認されています。
実際に一般的な治療において抵抗性を示す場合において
てんかんや鬱などの治療で適用されています(9)。

脳疾患の一つであるパーキンソン病では
Enterobacteriaceaeの割合が増えるケースが多く
抗炎症性を持つ腸内細菌が少なくなると言われています(11-13)。
腸、脳、迷走神経、免疫機能の因果関係、主従関係は
現時点では未調査ですが、
これらの色んなバランスで結果として
Enterobacteriaceaeが生き残るような環境になっている
ということです。
そのベースを考える上で一つ大事になるのは、
腸内細菌の(細胞レベルを含めての)代謝が
種によってどのように違うかによって
なぜ、Enterobacteriaceaeが周りの環境が
不全になった時に生き残るか?
という疑問に対する一つの示唆を与えてくれる
可能性を考えています。
その一つとして神経毒性のある
1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP)
という物質がEnterobacteriaceaeの割合を増やすことに
関係している可能性が挙げられています(14)。
これを考える背景には、
もし仮に、意図的に迷走神経の近くの影響の大きい腸の組織に
善玉の腸内細菌を運べたとしても
その生息する環境が「ベースとして」不全で有れば
その効果は「一時的であり」またすぐに元に戻ってしまう
可能性があることです。
その因果性は完全な形で切り分けることができないもの
かもしれませんが、
・迷走神経を刺激
・免疫機能を高める
・腸の細胞、組織の炎症を治す
・脳のタンパク質を除去する
といった並列的な治療の中で
適切な場所に善玉の腸内細菌を運ぶことができたら
より高い奏功が得られる可能性があると考えています。
同様に、鬱などの症状でも
-----
腸の上皮細胞の浸透率が変わる、
-----
炎症性サイトカインが多く出る(15)、
C- reactive protein, 
interleukin (IL)-1β 
IL-6 
tumour necrosis factor (TNF)
-----
腸内細菌の組成が変わる
-
Bacteroidetes減少
Firmicutes減少 
Actinobacteria減少(16,17)
-
Dialister減少
Coprococcus spp.減少(19)
-
Alistipes spp特異的上昇(18)
------
など腸、免疫機能、腸内細菌が脳の状態とかかわりがあります。
また、
迷走神経を刺激して鬱を治療する研究も行われています(20,21)。
従って、
パーキンソン病に限らず鬱など
他の疾患においても病因、病理は多岐にわたり
少なくとも腸内細菌、腸の機能、免疫機能、迷走神経、
脳の状態を総合的に見ていく必要があると思います。
また心理的なカウンセリングも併用する事も
鬱、不安神経症、統合失調症などの
精神疾患の場合は必要になります。

従って、
この細胞特異的輸送系統を使って
迷走神経が伸びている場所に近いところに
もし選択的に求められる腸内細菌を特異的に運ぶこと
ができたら、上述した従来の治療と併用できる
可能性があると考えています。

以上です。

(参考文献)
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(21)
Ziad Nahas, Charlotte Teneback, Jeong-Ho Chae, Qiwen Mu, Chris Molnar, Frank A Kozel, John Walker, Berry Anderson, Jejo Koola, Samet Kose, Mikhail Lomarev, Daryl E Bohning & Mark S George 
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Neuropsychopharmacology volume 32, pages1649–1660(2007)

2020年10月28日水曜日 0 コメント

低酸素症による心臓疾患への影響

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの症状で怖さがあるのが
血管に損傷を受けることです。
免疫が異常に活性化して、サイトカインストームが
起こることで血液が異常に凝固して(1)、
それが血管内皮に付着して血液の流れを悪くします。
この事は肝臓で作られるビタミンK依存の血漿糖プロテインである
プロテインSの輸送、分泌を低下させます(1)。
このプロテインSは
・ダメージを受けた細胞を細胞死させて体から除去
・前述した血液の凝固を防ぐ(2)
これらの機能があります。
このプロテインSの発現が抑制されることによって
低酸素症が惹起されるといわれています(1)。

そのように血液の循環は体の様々な組織、臓器の
不全につながると考えられますが、
特に心臓は血液を全身に流すためのポンプ役で
ずっと動いていて、かつ大きな臓器ですから、
エネルギー需要の大きな臓器の一つです。

新型コロナウィルスによって
血液の過剰凝固が起き、循環が悪くなると
局所貧血(ischaemia)のリスクもあがり、
それによって酸素の供給が不十分になると考えられます。
酸素が不十分になると酸化代謝が損なわれるため
ミトコンドリアの機能不全につながる可能性があります(3)。
また局所貧血によって低循環、低酸素血症になると
心筋の機能不全につながることも懸念されています(3)。
このような酸素供給が低下すると
嫌気性雰囲気の中で糖の代謝(解糖)が行われ
代謝経路が改変されます。
このような代謝改変は
・心筋壁のストレス(4)、
・脂肪酸の代謝の中間体の毒性ある蓄積(5,6)
に関与すると言われています(3)。
一方で
・胎児の遺伝子発現のプログラム再活性化
これが起き心臓の機能を回復させようとします(7)。

ウィルス性心筋炎がインフルエンザなどで確認されており、
新型コロナウィルスも
それと似た様式で起こる可能性があるとされています(8)。
それらはマクロファージなど免疫細胞が
バランスを崩した状態で心筋に侵入することで
異常をきたしている可能性があるとされています(9)。
しかしながら、
免疫系統だけではなく代謝的な経路においても、
心臓関連疾患との関連が可能性として考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Sean M. Hacking
Red blood cell exchange for SARS-CoV-2: A Gemini of therapeutic opportunities
Medical Hypotheses 144 (2020) 110227
(2)
Castoldi E, Hackeng TM
Regulation of coagulation by protein S. 
Curr. Opin. Hematol. 15 (5): 529–36.(2008)
(3)
P. Christian Schulze & Jasmine M. F. Wu 
Ketone bodies for the starving heart
Nature Metabolism (2020)
(4)
Kato, T. S. et al. 
Circ. Heart Fail. 4, 546–553 (2011).
(5)
Chokshi, A. et al. 
Circulation 125, 2844–2853 (2012).
(6)
Ji, R. et al. 
JCI Insight 2, e82922 (2017).
(7)
Christophe Depre, Gregory L. Shipley, Wenhao Chen, Qiuying Han, Torsten Doenst, Meredith L. Moore, Stanislaw Stepkowski, Peter J.A. Davies & Heinrich Taegtmeyer
Unloaded heart in vivo replicates fetal gene expression of cardiac hypertrophy
Nature Medicine volume 4, pages1269–1275(1998)
(8)
Carsten Tschöpe, Enrico Ammirati, Biykem Bozkurt, Alida L. P. Caforio, Leslie T. Cooper, Stephan B. Felix, Joshua M. Hare, Bettina Heidecker, Stephane Heymans, Norbert Hübner, Sebastian Kelle, Karin Klingel, Henrike Maatz, Abdul S. Parwani, Frank Spillmann, Randall C. Starling, Hiroyuki Tsutsui, Petar Seferovic & Sophie Van Linthout 
Myocarditis and inflammatory cardiomyopathy: current evidence and future directions
Nature Reviews Cardiology (2020)
(9)
Tavazzi, G. et al. 
Myocardial localization of coronavirus in COVID-19 cardiogenic shock. 
Eur. J. Heart Fail. 22, 911–915 (2020).


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再生医療とオートファジーの相性と小胞発生機構

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

日本はiPS細胞技術、医療応用の発展のために
多くの時間、資金を投資してきました。
またそれに関わる多くの関係者の方がいます。
その投資してきた資源をより有効にするために
この細胞特異的輸送系統と融合できないか
考えているところです。
いろんな専門家の方の意見を伺いたいところですが、
以下の事を想定しています。
-------
生体内で任意の狙った場所の細胞を
遺伝子ベクターを入れて初期化するときに、
この技術がつかえる可能性があります。
-------
iPS細胞技術で作ることができる任意の発達段階にある細胞を
ナノキャリアとして使うということも考えられます。
細胞は体に自然にあるものですから、
金属などのナノ粒子を体内に入れる場合に比べて
適している可能性があります。
-------
iPS細胞技術で作ったCAR免疫細胞を
運ぶ際に細胞特異的輸送系統がつかえる可能性があります。
CAR免疫細胞は今のところ血液の癌である
白血病の治療に使われる事が多く、
固形の癌には適用が現状では難しいとされています。
それは安定的な病変部位への供給が難しいとされているからです。
-------
患者さんから取り出した免疫細胞を
iPS細胞の技術で初期化して、それを培養、数を増やして
体内に投与するときにより病変部位へ有効に運ぶために
この技術がつかえる可能性があります。
-------

一番初めに述べた技術を含めて
iPS細胞の一つの柱は「再生医療」です。
損傷を受けた臓器、組織を再生することが
その目的の一つとしてあると理解しています。
もちろん臓器そのものを作る研究もあります。
実際にメディアで患者さんの心臓に
iPS細胞技術で作った組織シートを移植する
手術を拝観したことがあります。
そのような「部分修復」が目指す治療の一つである
と理解しています。
しかし、それを様々な臓器の
癌化、老化、線維化、炎症など
様々な不全である状態の組織、細胞の状態において
より汎用的に適用するためには
その基礎的な生理を詳しく理解する必要があります。
その臓器を再生する際に
生理の理解として必要になると考えているのが
iPS細胞で作った質の良い組織が免疫細胞などを誘発して、
古い不全となった細胞、あるいは蓄積したタンパク質を
排除してくれる必要があります。
その時に不可欠になるのが「オートファジー」です。
食作用といわれます。
そのオートファジーは大隅良典先生が1992年に
出芽酵母でのオートファジーを初めて観察されました(1)。
従って、日本に共に所縁のある
iPS細胞、オートファジー現象の
少なくとも再生医療に関する相性は非常に良い
と理解しています。

本日はそのオートファジー現象の根幹をなす機序について
明らかにされた2つの報告を中心に
読者の方と情報共有したいと思います(2,3)。

細胞内では何万種類というたんぱく質が
遺伝子の設計に従って作られます。
その工場となる場所がリボソームと呼ばれる細胞内器官です。
「迷路のような粗面小胞体に」付着している粒子です。
そこで作られたタンパク質に対して細胞内で
いろんな物質と相互作用する中で不要となったもの
あるいは細胞外から取り込んで消化したいものも存在します。
タンパク質の生成、消滅というサイクルを回さないと
細胞内にはどんどんタンパク質が蓄積していくことになるので
私たちが食べ物を食べて、尿や糞便として排出するように
不要なものを消化、分解して放出する機構が必要です。
その消化、分解をする細胞小器官がリソソームと呼ばれ、
細胞質の中に小胞として存在します。
その時にタンパク質が直接的にリソソームに
食されるプロセスがあるかもしれないですが(?)
もう一つの経路として、
細胞質(細胞内の空間、部屋)にある
不要なたんぱく質がリン酸脂質膜に覆われ
オートファゴソームと呼ばれる小胞の中に包まれて
それがリソソームと融合して
リソソーム内にある加水分解酵素によって
タンパク質が分解されるものがあります。
------
その分解された物質は
どのような機序で細胞外へ排出されるのでしょうか?
それは最終的には糞便、尿として排出されるのでしょうか?
------

このようにオートファゴソームという自食胞を作るためには
胞子として覆うリン酸脂質2重膜をどこかから引き寄せて
タンパク質を囲むように形成する必要があります。
その際にその伝搬役となる物質が必要です。
Kazuaki Matoba氏ら(2)の報告によると、
Atg2と呼ばれるたんぱく質が
細胞核の周りにある「迷路のような」構造の小胞体から
リン酸脂質を受け取って(5-8)、それを(適切な位置に?)運び
Atg9というこれから形成する
細胞膜を貫通するタンパク質によって
細胞質側から胞子内(内腔)に向かって
リン酸脂質を転座させ、構造化します。
そのような細胞膜の建築屋を
「新規脂質:スクランブラーゼ(Scramblase)」
と呼びます。
このAtg9は「玉ねぎのかけら」のような
多層の構造からなる細胞内小器官であるゴルジ体由来の
小胞によって小胞体近くから運ばれます(9-22)。
そのAtg9の構造について低温電子顕微鏡で
詳しく調べられています。
さらにShintaro Maeda氏らはAtg9タンパク質に絞って
その詳細な構造について報告しています(3)。
その構造において、
酵母のAtg9はホモトリマー(同型3量体)であり、
そこに2つの小さな穴があります。
それが脂質2重層を形成するための経路になっている
と考えられています(2,3)。
加えて、
この穴は開いたり、閉まったりすることが可能で
それによって構造の制御を(何らかの信号を受けて)
行っているものであると考えられます。
(参考文献(3) Fig3(a) Fig.5(a)(b)参照)
この穴はAtg9が特異的に持つものであると言われています(2)。
また、
Atg9がスクランブラーゼと呼ばれる所以は
細胞膜の材料となるリン酸脂質を一方向ではなく
二方向に動かせることができるからです(2)。
リン酸脂質の「運び屋」であるAtg2と
細胞膜の「建築屋」であるAtg9は
隣り合うように存在しています。
(参考文献(2) Fig.1(a) Fig.5(d)参照)
その中でリン酸脂質を受け渡ししていて
実際にAtg9が細胞膜を組み立てていきます。
その時に、
Atg9の左側と右側両方から組み立てることができる
ことが上述した「二方向」であり、
その概念が「スクランブラーゼ」ということになります。
-------
※スクランブル交差点という言葉がありますが、
多方向に交差していることから一方向ではないということで
「スクランブ」ラーゼという命名になったのではないか?
と考えています。
--------
参考文献(2)Fig.1(a)からわかるように
オートファゴソーム(小胞)の脂質2重層の構造は
「リボン、てるてる坊主のような」構造が
上下さかさまに重を成して並んでいるような構造です。
従って、それを形成する際には
内側の部分は反転させる必要がありますが。
それはリボンの頭の部分と
上述したAtg9の穴の部分で
共に親水性担っていて、穴の(側壁に?)
溝が形成されていてそれでうまく反転するような
経路ができているようです(2,3)。

このようなリン酸脂質が小胞体から任意の場所に
どのような駆動力(エネルギー)を得て
運ばれているか?というのはわかっていないようです。
アデノシン三リン酸(ATP)であるエネルギーは
Atg2とAtg9は利用していないとされているので
他のリン酸脂質を任意の場所に動かす動力が
必要であると考えられています(2)。

また
オートファジーの生理が不全になると
感染症、神経変性、癌などの疾患の原因となる
と言われています(23,24)。
そのオートファジーの活性を決める要素の
一つとしてAtg9があります。
この小胞の膜形成の役割を果たすAtg9が
変位するとその活性は落ちるといわれています。
その中で
・triple-leucine  mutation (M8:  K321L  R322L E323L) 
これはオートファジー活性を20%程度低下、
・ pore mutation (M32: M8 + M26 (T412W); M33: M8 + M28 (T419W)) 
これはオートファジー活性を50%程度低下、
という「試験管での」結果になっています(3)。
従って、膜を形成する際において重要な役割を果たす
上述したAtg9の穴(小孔)において
構造的な変異があると膜の形成が上手くいかず(?)
オートファジー活性が落ちて、不要なたんぱく質が
蓄積しやすい状態になる可能性が考えられます。
また、
ATG9Aが発現されている細胞では
「バルーン、風船のような形の」小胞が
0.5~1 µmのサイズで形成されていますが。
その大きさにはバラつきがあります
(参考文献(3) Fig.4(d)WTの写真、(e)オレンジの棒グラフ参照)
この大きさもタンパク質消化能力に関係がある
可能性も考えられます。
あともう一つは、
参考文献(2)Fig.5からわかるように
小胞体に結合しているAtg2タンパク質に
連結(テザリング)される必要があります(3)。
その時の結合親和性がオートファジーの活性の一つの
要因となる可能性もあります。

オートファジーは「細胞内の」食作用の事をいわれます。
ここで想定しているのは、
iPS細胞で作られた質の良い組織、あるいは細胞群が
その「細胞外にある」
癌化、炎症、老化、線維化などの劣化した患部を
分解してくれるか?ということです。
その際、
「細胞外の」余計なタンパク質を取る必要があります。
コラーゲンなどの線維は
細胞表面にあるインテグリンを介して
食作用(ファーゴサイトーシス)によって
細胞内に取り込まれるといわれています(4)。
従って、余計なたんぱく質が細胞に食された後
細胞内で上のオートファジーの機序に従って
分解されるという2段階の経路が想定されます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Takeshige K, Baba M, Tsuboi S, Noda T, Ohsumi Y 
Autophagy in yeast demonstrated with proteinase-deficient mutants and conditions for its induction. 
The Journal of Cell Biology. 119 (2): 301–11.(October 1992). 
(2)
Kazuaki Matoba, Tetsuya Kotani, Akihisa Tsutsumi, Takuma Tsuji, Takaharu Mori, Daisuke Noshiro, Yuji Sugita, Norimichi Nomura, So Iwata, Yoshinori Ohsumi, Toyoshi Fujimoto, Hitoshi Nakatogawa, Masahide Kikkawa & Nobuo N. Noda 
Atg9 is a lipid scramblase that mediates autophagosomal membrane expansion
Nature Structural & Molecular Biology (2020)
(3)
Shintaro Maeda, Hayashi Yamamoto, Lisa N. Kinch, Christina M. Garza, Satoru Takahashi, Chinatsu Otomo, Nick V. Grishin, Stefano Forli, Noboru Mizushima & Takanori Otomo 
Structure, lipid scrambling activity and role in autophagosome formation of ATG9A
Nature Structural & Molecular Biology (2020)
(4)
Everts, V., van der Zee, E., Creemers, L. and Beertsen, W. 
Phagocytosis and intracellular digestion of collagen, its role in turnover and remodelling. 
Histochem. J. 28, 229-245. (1996). 
(5)
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Atg2 mediates direct lipid transfer between membranes for autophagosome formation. 
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(6)
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ATG2 transports lipids to promote autophagosome biogenesis. 
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(7)
Maeda, S., Otomo, C. & Otomo, T. 
The autophagic membrane tether ATG2A transfers lipids between membranes. 
Elife 8, e45777 (2019).
(8)
Osawa, T., Ishii, Y. & Noda, N. N. 
Human ATG2B possesses a lipid transfer activity which is accelerated by negatively charged lipids and WIPI4. 
Genes Cells 25, 65–70 (2020).
(9)
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Atg9 vesicles are an important membrane source during early steps of autophagosome formation. 
J. Cell Biol. 198, 219–233 (2012).
(10)
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The Golgi as an assembly line to the autophagosome. 
Trends Biochem. Sci. 45, 484–496 (2020).
(11)
Orsi, A. et al. 
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Mol. Biol. Cell 23, 1860–1873 (2012).
(12)
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J. Cell Sci. 125,1488–1499 (2012).
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Koyama-Honda, I., Itakura, E., Fujiwara, T. K. & Mizushima, N. 
Temporal analysis of recruitment of mammalian ATG proteins to the autophagosome formation site. 
Autophagy 9, 1491–1499 (2013).
(18)
Kakuta, S. et al. 
Small GTPase Rab1B is associated with ATG9A vesicles and regulates autophagosome formation. 
FASEB J. 31, 3757–3773 (2017).
(19)
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Atg9A trafficking through the recycling endosomes is required for autophagosome formation. 
J. Cell Sci. 129, 3781–3791 (2016).
(20)
Suzuki, K., Akioka, M., Kondo-Kakuta, C., Yamamoto, H. & Ohsumi, Y. 
Fine mapping of autophagy-related proteins during autophagosome formation in Saccharomyces cerevisiae. 
J. Cell Sci. 126, 2534–2544 (2013).
(21)
Graef, M., Friedman, J. R., Graham, C., Babu, M. & Nunnari, J. 
ER exit sites are physical and functional core autophagosome biogenesis components. 
Mol.Biol. Cell 24, 2918–2931 (2013).
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Atg9 establishes Atg2-dependent contact sites between the endoplasmic reticulum and phagophores. 
J. Cell Biol. 217, 2743–2763 (2018).
(23)
Levine, B. & Kroemer, G. 
Biological functions of autophagy genes: a disease perspective. 
Cell 176, 11–42 (2019).
(24)
Jiang, P. & Mizushima, N. 
Autophagy and human diseases. Cell Res. 24, 69–79 (2014).

2020年10月27日火曜日 0 コメント

ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用時の注意点

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの治療薬の選定において
従来の薬の利用を検討するリパーポスが
世界で行われています。
その中で抗マラリア剤としての治療薬である
ヒドロキシクロロキンと
適応症として肺炎を含むマクロライド系抗生物質である
アジスロマイシンの併用が試みられています(3)。
日本でも30名の患者さんに投与され、
重篤な有害事象は確認されなかった報告があります(1)。
しかし、この処方をリウマチ性関節炎がある
患者さんにする場合においては注意が必要で
心血管系疾患のリスクがある可能性が指摘されています(2)。

Jennifer C E Lane氏らの90万人以上の大規模な
報告(4)によれば
「リウマチ性関節炎がある患者さん」に
-----
①ヒドロキシクロロキン単独、短期間(30日)で使用した場合
抗リウマチ薬であるスルファサラジンによる治療に比べて
大きな副作用はないと言われています。
-----
※ただし長期処方の場合注意が必要。
しかし、
-----
②ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用、
短期間(30日)の場合
心血管疾患によって亡くなられるリスクは
顕著に高くなると報告されています。
(ハザード比 2.19)
比較対象:ヒドロキシクロロキンとアモキシリン併用

しかしながら、
そのような心疾患に対するリスクに対する
機序はよくわかっていないと同時に、
処方量依存性のデータの不足などもあることから
これらの心疾患系の病気との関連は
少なくとも確定的ではないとされています(2)。
ただし、リウマチ性関節炎に加えて
ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用して
新型コロナウィするの治療をする場合のおいて
慢性的な心臓病を抱えている患者さんに対しては
注意が必要であるとされています(2)。

以上です。

(参考文献) 
(1)
社会福祉法人 仁生社 江戸川病院
伊勢川拓也 古市 基彦 加藤正二郎
ヒドロキシクロロキンを投与した新型コロナウイルス肺炎患者30例の検討
(2)
Yves-​Marie Pers​and​Guillaume Padern
Revisiting the cardiovascular risk of hydroxychloroquine in RA
Nature Reviews Rheumatology (2020)
(3)
Gautret, P. et al. 
Hydroxychloroquine and azithromycin as a treatment of COVID-19: results of an open-label non-randomized clinical trial. 
Int. J. Antimicrob. Agents 56, 105949 (2020).
(4)
Lane, J. C. E. et al. 
Risk of hydroxychloroquine alone and in combination with azithromycin in the treatment of rheumatoid arthritis: a multinational, retrospective study. Lancet Rheumatol.(2020)

0 コメント

集束超音波による血液脳関門拡張効果の可能性

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新生児、乳児、幼児、小児など
子供がかかる癌は、神経性のものが多いと理解しています。
(一位は白血病、血液の癌です。)
そうした時に一番危惧しているのは、
神経は脳に作用するので神経性の癌の治療の際には
非常に大きな痛みを伴うケースが多いのではないか?
と思うことです。
この細胞特異的輸送系統の中において
脳、神経、あるいは神経に作用する疾患も
治療戦略として視野にいれていますが、
神経に関わる病気を治療する際には、
それを改変した時の患者さんの痛みによる苦しみ、
脳に障害を負ってしまう危険性、
を考えると、他の部位を治療するよりも
より注意、繊細さが必要ではないか?
と考えている部分があります。

また、難しいのが
脳に薬剤を運ぶ場合においては、
血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)を超える必要があるため
その関門を突破できる物質(薬剤など)に限定されることです(9)。
これは専門家の方の間では常識として知られている事です。

その中で超音波を絞って、
任意の脳の場所に照射すること
(集束超音波:Focused ultrasound)が
神経系疾患治療として期待されています(1)。
超音波は安全性が高いことも魅力です(1)。
集束超音波が子宮、乳房、前立腺、肝臓などの
治療として使われてきた実績はありますが(2,3)、
脳は頭蓋骨に覆われているために
その骨によって超音波が散乱したり、弱められたりして
特定の領域の焦点を合わせて超音波を照射するのが
難しいという課題がありました(1)。
しかしながら、近年この課題に対して改善があります(1)。
この超音波は脳を開いて
神経を傷つけないように外科的に治療する必要はなく
非侵襲で治療ができるため安全性が高いといわれており、
精神疾患、慢性的な痛み、てんかんなどの
臨床的な適応が進んできています(4,5)。
またさらに、
この集束超音波治療は、
前述した血液脳関門を広げる効果もあり(1)、
この集束超音波を使いながら治療することで
下述するように適応性も広がる可能性があります。
もちろん、血液脳関門があるということは、
それだけ「脳に入る物質には繊細さが必要ですよ」
という体の自然なシステムなので、
それに逆らって物質を入れることに対しては
特別な配慮が必要な事はいうまでもありません。
しかし、そのような繊細さ、配慮の元
この細胞特異的輸送系統などを使って
効果的に薬剤、遺伝子ベクター、栄養などを運ぶことができたら
今までにない奏功が得られる可能性もあります。

上述したように血液脳関門は重要な役割があります。
血液脳関門は
・(細胞の?)結合部が非常に密着している事(tight junction)
・被膜の輸送体(membrane transporters)
・受容体
・チャネル(channels:イオンなど電気信号の輸送体?)
これらが脳の柔組織に循環物質が流れるのを系統的に制御しています(6)。
この血液脳関門は
・間質液(細胞外を流れる液体)の組成
・抹消、中枢の細胞の信号
・免疫機能
これらを制御することで中枢神経系の恒常性において
重要な役割を果たしています(7,8)。
この血液脳関門が機能不全になると
・多発性硬化症
・アルツハイマー病
・筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic lateral sclerosis)
などの病因の一つとなります(6)。

集束超音波治療における
血液脳関門の拡張(Blood–brain barrier opening:BBBO)は
前述したようにこれらのバランスが崩れる事、
あるいは予期しない物質が脳に運ばれる危険性から
注意、繊細さが必要であると指摘しましたが、
マウスなどを使った数百という前臨床段階において
安全性と効果が確かめられています(10,11)。

また集束超音波治療における脳の疾患の
人での治験は世界で行われています。
ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、中国、韓国、台湾
あとは日本です。
日本では東北から東京にかけて
・Essential tremor(自動的に体が揺れる神経の疾患)
神奈川県藤沢市では
・パーキンソン病
です。この治験実績はアメリカが進んでいます。
(参考文献(1) Fig.5参照)

血液脳関門の拡張(BBBO)は薬剤輸送において
どれくらいの可能性を広げるか?
集束超音波治療において拡張した場合
デキストラン分子において
2000kDa(炭素原子質量の200万倍)まで
脳に安全に運ぶことができたと言われています(16)。
通常は、150kDaの分子で浸透率が1%と言われていますから
拡張効果は顕著であると評価できます。
(拡張のイメージ:参考文献(1) Fig.3(b)参照)
従って、薬剤投与との併用によって
大きな効果が期待できます(17-21)。
また(良性の)ウィルス(22)や細胞(23-25)などの
輸送も少なくとも一定の効果が期待できます。
これくらい大きなものを運べるということは
「求める生理機能を持った物質」を封入した
ナノ粒子を脳の病変部位に特異的に運ぶシステムである
細胞特異的輸送系統とも相性が良いと考えられます。

小児も罹る癌として膠芽細胞腫があります。
これは難治性の癌の一つといわれています(26)。
その理由の一つとして抗癌作用のある薬を
血液脳関門を超えて有効に輸送出来ないことがあります(26)。
そこでSonoCloudデバイスというシステムを使って
(参考文献(1) Fig.2参照)
集束超音波を使いながら抗腫瘍活性のある
カルボプラチンを投与したところ
19人の患者のうち5人は
安全で(safe)、耐性があり(tolerable)、適している(feasible)
ことがわかりました(27-29)。
その中で進行が抑えられたケースもあります(28)。
また、
癌には癌組織の退行を促す免疫機能を回避するシステムが
癌細胞の急速な進化の中で獲得されると理解していますが、
その回避システムは膠芽細胞腫でも例外ではありません(30)。
しかし、
この集束超音波を使った血液脳関門の拡張(BBBO)では
腫瘍組織、癌細胞の検出の向上
(投与された薬が有効に輸送されるということ?)、
あるいは抗免疫反応の誘発が確認されています(31)。
従って、
癌免疫療法と集束超音波による血液脳関門の拡張(BBBO)
の併用は相乗効果をもたらす可能性が指摘されています(1)。

脳の治療に関して推測している懸念がもう一つあります。
それは、いわゆる中毒性、依存性の問題です。
例えば、痛みをとる鎮痛作用のあるモルヒネは
中毒性があるといわれています。
脳の神経に作用させる物質(薬)は、
程度の差はあると思いますが、
一定のこのような依存性があるように思えます。
例えば、脳に作用する薬があるとします。
それを長期的、かつ慢性的に摂取すると、
症状が大分改善して、その薬をやめた時に
なんらかの神経症状が現れる可能性があることです。
従って、この集束超音波も「一時的」ならばいいのですが、
慢性的にするとなると問題が出てくる可能性は否定できない
と思っています。
前述したように慢性的な痛み(chronic pain)の治療においても
臨床的に使われているということですから、
このような依存性の副作用について気になる部分があります。
しかしながら、
継続的に収束超音波治療をしたとしても
「炎症性の反応に関して」の副作用は
軽く、一時的(2週間以内)である
という報告もあります(12-15)。
また、
長期にわたる血液脳関門の機能不全などの
合併症も今のところ報告されていません(1)。

しかしながら、
神経は痛みと非常に密接に関わると理解しているので
癌を含め、脳、神経、神経に作用する疾患を抱えている
特に子供の患者さんに対しては、
予後における依存性などの苦しみがないように
どのように治療していけばいいか?
というのは脳の情報を取るたびに考えていることです。
神経というのは傷つけたら大変な事になる
という繊細さがあるので、
それに作用するなんらかの生理物質の選択、
あるいはそれによる治療法において、
上述したように様々な成功がある中においても
非常に難しさがあると認識しています。

以上です。

(参考文献)
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2020年10月26日月曜日 0 コメント

増殖のための加水分解酵素を標的とした薬剤スクリーニング

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

ウィルスは細胞内でしか増殖することができません。
新型コロナウィルスも例外ではなく、
細胞内に浸入した後、細胞内の様々な物質を利用しながら
RNAを増殖させて、その後、膜を形成して
細胞外に放出されます。
その増殖の時にMproと呼ばれるたんぱく質の加水分解酵素
を利用すると言われています。
従って、このMproと新型コロナウィルスの作用を
弱めるため、薬剤の開発における標的となります(1,2)。
具体的にはMproの様々な構造部位(Glnなど)における
ペプチド結合を切ることによって拮抗作用をもたらす
といわれています(3)。
この新型コロナウィルスとのMproとの作用の中で
ウィルス性のポリプロテインを加水分解しますが、
そのためのペプチド結合には特異性があることが
認められています(4,5)。
従って、その特異性が認められるペプチド結合を
切ることが抗ウィルス性のための
有効な薬剤につながる可能性が示唆されます。

それぞれのMproの構造部位における
薬剤として作用するためのアミノ酸が
どれくらいの反応性を持つか?
というのをマッピングしたのが
参考文献(3) Fig.1です。
これらの分析からMproのタンパク質分解酵素としての
機能を抑制するための基質としては、
Ac-Abu-dTyr-Leu-Gln-VSが好ましいことがわかりました。

これをもとに有効な酵素抑制剤を作ることができます。
この抑制剤がMproに結合した様子は
参考文献(3) Fig.3に示されています。
またこの薬剤の抑制効果は
参考文献(3) Table 2に示されています。

このような影響力の大きい構造部位を
スクリーニングするプロセスは
効果のある薬剤作製に貢献するものである
と理解しています。

以上です。

(参考文献)
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From SARS to MERS: crystallographic studies on coronaviral proteases enable antiviral drug design. 
FEBS J. 281, 4085–4096 (2014).
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J. Med. Chem. 59, 6595–6628 (2016).
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Wioletta Rut, Katarzyna Groborz, Linlin Zhang, Xinyuanyuan Sun, Mikolaj Zmudzinski, Bartlomiej Pawlik, Xinyu Wang, Dirk Jochmans, Johan Neyts, Wojciech Młynarski, Rolf Hilgenfeld & Marcin Drag 
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Nature Chemical Biology (2020)
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Chuck, C. P., Chow, H. F., Wan, D. C. C. & Wong, K. B. 
Profiling of substrate specificities of 3C-like proteases from group 1, 2a, 2b, and 3 coronaviruses. 
PloS ONE 6, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0027228 (2011).

0 コメント

双特異的なアンタゴニスト、アンカーとしての可能性

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

細胞の外側には様々な種類の受容体があり
その受容体は、細胞が分化、成熟する段階で
遺伝子などの設計図によて改変されます。
例えば、免疫細胞であれば
CD4+T細胞といった表記がされます。
この場合CD4という型の細胞表面の受容体が
活性な状態で存在することを意味します。
このような受容体は、細胞の機能と密接に関わっており、
CD4の場合はB細胞、CD8+T細胞の機能などを調整する
ヘルバーT細胞ととして働きます。
しかし、その機能は体にとって良いものばかりではなく
疾患の原因になるものもあります。
従って、これらの受容体の機能を弱めるような
薬剤を意図的に投与することがあります。
それを「アンタゴニスト」と呼びます。
しかし、
Ricardo A. Fernandes氏らの指摘によれば、
このような細胞内外の信号を受容体にリガント(薬剤)を
結合させることで「継続的に」弱めることは
想像以上に難しいことであるといわれています。
それは、リガンド(配位子)が結合した後に
それを補償するような信号は生じることがあるからです(1)。
そこでフォスファターゼと呼ばれる
基質(受容体)を加水分解する脱リン酸化酵素を
補強すること(phosphatase recruitment (RIPR))で
細胞表面の受容体の信号を弱める
代替のアプローチを示しています(1)。
この脱リン酸化酵素RRIPは、2つの受容体を
架橋するように連結結合します(cis-ligation)。
従って、双特異性を持ちます(bi-specific)。
この脱リン酸化酵素RIPRはチロシン活性の受容体の
結合面に特異性を持つのでPD-1受容体に結合します。
それに加えてCD45という受容体にも特異的に結合します。
(参考文献(1) Fig 2(a)参照)
PD-1は免疫細胞であるT細胞の活性化を抑制する
免疫チェックポイント阻害の標的となる受容体ですが
それとCD45を脱リン酸化酵素RRIPによって連結する
ことで従来の抗PD1抗体とよりも信号の抑制が
強化されたことを示しています(1)。
従って、脱リン酸化酵素RRIPは
2つの受容体に特異的親和性を持つように設計されています。
このCD45というのは免疫細胞を含むリンパを起源とする
全ての細胞に見つかっている
チロシンのリン酸化を活性化させるものです(2)。
従って、免疫細胞を標的とするときに
PD-1とセットで特異性を示す対象としての
選択として適していると考えられます。
加えて、
このCD45は大きな細胞外ドメインを持つ(1)ので
そこに結合させる配位子が特異的親和性を持つように
設計しやすい受容体です。
薬理的な効果としては
この脱リン酸化酵素RRIPを結合させることで
CAR-T細胞の機能を高めたり、
(参考文献(1) Fig 2(h)(i)参照)
癌細胞を退行させたりする効果がありました(1)。
※ただし、試験管(in vitro)の結果

この脱リン酸化酵素RRIPは広く免疫細胞に発現されている
チロシン活性の受容体に親和性を持っているので
例えば、食作用のあるマクロファージに作用させる
事もできます(1)。
従って、癌の免疫療法など、課題が多い治療戦略において
多面的な有効性を示す可能性があります。
例えば、
この双特異性を示す(bi-specific)リガントは
T細胞の活性化だけではなく、
B細胞(4)、マクロファージ(1)、NK細胞(3)など
多くの免疫系の細胞種に対して
その機能を調整するために応用できる可能性があります。

/細胞特異的輸送系統に対する応用について/
このように2か所でアンカーさせることは
足場が二つある事を意味し、
結合安定性を高めるものであると考えられます。
従って、
狙った生理機能を持たせた物質を中に封入したナノ粒子を
細胞特異的に輸送する際において
2つの受容体に同時に結合するような設計をすることで
より選択性を上げる事ができると思います。
例えば、片方しか受容体が存在しない場合と
両方受容体が存在する場合における
特異的親和性が大きく異なれば、
それによって特異性、選択性が高まります。
また、標的とする細胞
例えば悪性度の強い転移性の癌細胞に
特異的な受容体を探す場合において
「1つだけ」の特異的受容体を探すよりも
「2つ、3つのセットで」特異的受容体を探すほうが
その癌細胞だけの特徴を洗い出しやすい可能性もあります。
このように複数の受容体を視野に入れて
特異的なアンカーを探していく事は
細胞特異的輸送系統の可能性を広げるものである
と考えています。

以上です。

(参考文献)
(1)
Ricardo A. Fernandes, Leon Su, Yoko Nishiga, Junming Ren, Aladdin M. Bhuiyan, Ning Cheng, Calvin J. Kuo, Lora K. Picton, Shozo Ohtsuki, Robbie G. Majzner, Skyler P. Rietberg, Crystal L. Mackall, Qian Yin, Lestat R. Ali, Xinbo Yang, Christina S. Savvides, Julien Sage, Michael Dougan & K. Christopher Garcia 
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Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 7, 833–846 (2006).
(3)
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Leo D Wang and Marcus R Clark
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Immunology. 2003 Dec; 110(4): 411–420.

2020年10月25日日曜日 0 コメント

心筋炎の病理、治療、診断について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

炎症性心筋症という疾患があります。
炎症を起こした細胞が心筋に侵入し
心臓機能が悪化することです。
その病因は異種性を示すと言われています(1)。
この心筋とは左心室、左心室の壁となっている
筋肉のように動く組織で、それが炎症を起こすと
その組織の壁が厚くなり、組織としても固くなり、
筋組織としての機能が弱くなり、
血液を送る能力もそれに応じて弱くなる可能性が考えられます。
その中にはウィルス性、細菌性のものもあります。
また、薬、あるいは系統的な免疫性の疾患によって
それが惹起されることもあります(1)。
特に左心室の不全、心不全、不整脈に発展すると
予後が悪くなる可能性が指摘されています(2)。
また新型コロナウィルス感染においても
炎症性心筋症を引き起こす可能性があることが
懸念されますが、ウィルス自身がそうしているのか?
それともウィルスによって引き起こされた
免疫異常など他の要因がそうさせているのか?
というのは未理解であるとされています(1)。

上述したようにウィルス性の心筋炎が報告されています。
その中で新型コロナウィルスを含むコロナウィルスは
インフルエンザと似た様式で疾患を引き起こすといわれています。
これらの疾患から心筋炎が引き起こされる特徴は
サイトカインストームなど免疫機能の異常によるものが
少なくとも一つとしてあると推定されています(3)。
それらの治療としてはレムデシビルなどの
抗ウィルス性の薬剤が挙げられています。
(参考文献(1) Table 1 最下段参照)

前述したサイトカインストームなどによる免疫異常は
アンバランスなヘルパーT細胞の反応
(Th1/Th2 CD4+T細胞)が一つの
原因である可能性が示唆されています(4,5)。

新型コロナウィルスが直接的、あるいは間接的に
心筋炎に影響を及ぼしているか
現在調べられているところですが、
血液を介して心臓にダメージを与えていることや
マクロファージなどがウィルス感染によって
影響を受けて心筋に侵入することで
機能不全を惹起している可能性があります(6)。
また、これら免疫機能は
臓器、組織間でのクロストークがあると考えられており、
例えば、脾臓や骨髄と
サイトカイン、免疫細胞を通して、
心臓の心筋細胞の状態が決まっている部分がある
とされています。
(参考文献(1) Fig.2参照)
またウィルス感染した時の
免疫応答に関して、NK細胞、マクロファージがあります。
NK細胞は心筋炎の進行を抑える働きがあります(1)。
またマクロファージはナイーブB細胞、T細胞に働きかけて
獲得免疫を誘発する機能があります(1)。
それによって特異的な受容体が細胞表面に形成されます。

また、新型コロナウィルスなどのウィルス性を含む
心筋炎に罹患するか、そうでないかという
分岐、個人差に関しては未知ではあると考えられています(1)が
実際に炎症性心筋炎に罹患した患者さんの60%は
心臓に特異的な自己抗体を持っているという報告があります(7-9)。
自己抗体は適正な免疫機能を逸脱させる働きをするので
ウィルスなどの外敵が体に侵入して、
血液などを通して、免疫細胞なども介しながら
心臓に負荷をかけてきた時に、心臓自身が持つ免疫応答が
適切に働かない可能性が考えられます。
実際に自己抗体の元となる自己抗原は
心筋炎に罹患している方から以下の部分において
確認されています(10-15)。
〇β1-adrenergic receptor, 
〇muscarinic acetylcholine receptor M2, 
〇cardiac myosin heavy chain isoforms
〇cardiac troponin

次世代の心筋炎の治療の一つとして
iPS細胞を使った研究が試験管ですが
進められています(16)。
しかしながら、免疫機能との相互作用
あるいはそれを含めた生体内での反応など
課題はまだ多くあるとされています(17)。
その他
〇キメラ抗原受容体(CAR)を使った治療
〇抗IL-17抗体による治療
〇細胞ベースの治療
〇アルドステロン拮抗作用を利用した治療
〇腸内細菌による治療
などが挙げられています(1)。
特にテーラーメイドのiPS細胞やCAR-免疫細胞、
あるいはCARそのものを血液を通して送り届ける際には
患部に特異的に輸送できるシステムを構築することも
一つの視点として重要になると考えます。

新型コロナウィルスにおける心筋炎が
生じているか診断するときには
血液によるバイオマーカーが一つの大切な情報になります。
その中で
〇C-reactive protein, 
〇N-terminal pro-B-type natriuretic peptide (NT-proBNP), 
〇troponin T and soluble IL-1 receptor-like 1 (IL1RL1,ST2), 
との関連が指摘されています(18,19)。
※新型コロナウィルスのケースではありません。

新型コロナウィルスにおける心筋炎の治療に関しては
基本的には体内のウィルスの量を減らすということが
考えられます。
その中で、今、世の中で使われているレムデシビルや
サイトカイン抑制剤などを通して、
心筋炎の病状の関連は調べられています(1,20)。

以上です。

(参考文献)
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JAMA 323, 1824–1836 (2020).

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γδT細胞による組織修復効果

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

γδT細胞は、T細胞の派生物の中では特徴的で
リンパ節や脾臓などの2次リンパ系組織には
あまり存在せず、皮膚、腸、肺などの
抹消組織に多く存在するといわれています(1)。

γδT細胞は様々な種類のサイトカインと
活発に相互作用することから、
組織の「監視役」としての働きがあります。
例えば、温度管理、完全性、免疫防御、修復など
組織の恒常性を保つための役割があります(1)。

ここではγδT細胞の組織の修復について
読者の方と情報共有したいと思います。
その背景には、この細胞特異的輸送系統によって
繊維化、炎症、癌化など損傷を受けた組織を
再生させたいということがあります。
肝細胞を含む炎症など損傷を受けると
それに対して免疫細胞が活性化され、
それらを修復しようとします(2)。
その免疫細胞、機能の中心的な役割の一翼を担うのが
γδT細胞だと考えています。

ここからは皮膚、腸、肺について
その修復についての内容を紹介いたします(1)。

/皮膚の修復/
樹状表皮性T細胞(dendritic epidermal T cells(DETCs))
はγδT細胞の亜型と理解していますが、
皮膚の上皮の修復において重要な役割を担っています(3-5)。
その修復は、
〇insulin-like growth factor 1(IGF1):インスリン様成長因子
〇keratinocyte growth factors 21 :角化細胞成長因子
角化細胞は皮膚の表面の
角質層/顆粒層/有棘層/基底層の4層からなります。
これらの90%は角化細胞からできており、
その成長因子は組織の入れ替え、修復に大きく貢献すると
考えられます。
インスリン様成長因子1は成長ホルモンの仲介役として働きます。
また皮膚は紫外線によって一定の損傷を受けますが
そこからDNAの修復をIL-17というサイトカインが行い
それは樹状表皮性T細胞(DETCs)によって活性化されます(6)。
また、
皮膚にはVγ4、Vγ5というγδT細胞の亜型細胞があり、
それらが成長因子、サイトカインを放出して
DNAレベルの修復、さらには組織の修復を行います。
(参考文献(1) Fig.3 (a)参照)

/腸上皮の修復/
γδ上皮内のリンパ球:γδintraepithelial lymphocytes (IELs) 
高い運動性を持って分布し、
NADHを酸化する酵素であるオクルディンを介して
細胞と細胞を接合することを介して
この運動能力を実現しています。
それによって広範な腸上皮組織の監視、制御が
可能になっています(7)。
その恒常性はリンパ球が
〇keratinocyte growth factors 1 :角化細胞成長因子
を利用することで保たれています(8)。
組織の回転(入れ替わり)、修復は
γδT細胞の亜型であるVγ7型によって行われ
それが上述した成長因子、サイトカインなどを
放出しています。
(参考文献(1) Fig.3(b)参照)
このサイトカインのうちIL-22は
腸の上皮組織の修復や腸内細菌の調整などの
機能があると言われています(9)。

/肺の修復/
新型コロナウィルスで肺組織の線維化が
後遺症の一つとして問題となっています。
その中でサイトカインストームという
免疫暴走が病因の一つとして挙げられており、
肺組織の線維化、修復の機序を理解することは
大切になります。
このγδT細胞は肺組織の恒常性に貢献しています。
亜型であるVγ6活性型細胞によって
生み出された腸の組織を防御するのと同じ型の
サイトカインIL-22は肺の線維化を防ぐと
いわれています(10)。
このVγ6活性型T細胞はVγ4活性型T細胞ともに
肺組織に多く存在することが「マウス」で
確かめられていますが、
その生理機序はまだよくわかってない部分があります(1)。

このγδT細胞の理解は、完全には進んでいません。
今までは
「生体防御の最前線」
「制御性細胞」
「自然免疫系と獲得免疫系の架け橋」
と言われていました(1)、それは機能の一部にしか
すぎないといわれています。
実際に上で紹介したように細胞の創傷治癒などにおいて
重要な役割を果たしています。
特に肝臓とは違い、
肺、皮膚、腸といった細胞は、
大きく組織が損なわれた時の再生は難しい
と考えています。
実際に再生医療などを通じて、
通常の質の良い細胞組織を適切な場所(病変部位)に
結合させたときにその助けを借りて
どのような再生が可能になるか考えるときに
γδT細胞による再生や、
マクロファージなどによる食作用などの
免疫応答を正確に捉えることが大切になると考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Julie C. Ribot, Noëlla Lopes & Bruno Silva-Santos 
γδ T cells in tissue physiology and surveillance
Nature Reviews Immunology (2020)
(2)
Changyu Zhu, Ira Tabas, Robert F. Schwabe & Utpal B. Pajvani 
Maladaptive regeneration — the reawakening of developmental pathways in NASH and fibrosis
Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology (2020)
(3)
Jameson, J. et al. 
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Science 296, 747–749 (2002).  
(4)
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gammadelta T cells in homeostasis and host defence of epithelial barrier tissues. 
Nat. Rev. Immunol. 17, 733–745 (2017).
(5)
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Dynamic migration of gammadelta intraepithelial lymphocytes requires occludin. 
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(8)
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Modulation of epithelial cell growth by intraepithelial gamma delta T cells. 
Science 266, 1253–1255 (1994).
(9)
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Interleukin-22 mediates early host defense against attaching and effacing bacterial pathogens. 
Nat. Med. 14, 282–289 (2008).
(10)
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gammadelta T cells protect against lung fibrosis via IL-22. 
J. Exp. Med. 207, 2239–2253 (2010).
(11)
Holtmeier, W; Kabelitz, D 
Gammadelta T cells link innate and adaptive immune responses. 
Chemical immunology and allergy 86: 151–83.(2005). 

2020年10月24日土曜日 0 コメント

ワクチンのリスクを低減するために必要なこと

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今、治験最終段階のあるワクチンの
治験結果を見る限り、フェーズⅠ、Ⅱでは、
重度な副作用はみられないということです。
存在しても、
軽度な熱、腫れ、寒気などです。
熱は1日、2日で解熱します。
しかし、デング熱、RSウィスル、SARS、MARS
など過去の感染症に対するワクチンでは、
ワクチンは万能ではなくて、
副作用を呈する場合もありました。

その副作用の一つとして
抗体依存性感染増強(ADE:Antibody dependence enhancement)
があります。
これは抗体の質が良くない場合に起きるリスクが高まる
といわれています。
質が良くないとは、中和能が低いということが
一つの要因としてあります。
それが免疫細胞表面にあるFc受容体に結合する(1,2)ことで
炎症性の免疫機能を惹起してしまうことがあります。
それによってワクチンを接種することで
副作用が強く出る可能性があります。

また、免疫細胞のバランスが崩れることで
呼吸器疾患を惹起してしまうこともあります
(enhanced respiratory disease ERD)。
免疫機能のバランスが崩れるとは、
CD4活性のT細胞のうちTh2型に偏ったパターンになると
(TH2 cell-skewed pattern)
好酸球の上昇、
IL-4、IL-13、IL5サイトカイン
NK細胞の減少
などを通じて肺の炎症が起こる可能性が示唆されています。
(参考文献(3) Fig.1参照)

従って、過去の事例から考えると
ワクチン開発においては、
〇質の良い抗体の産生を促せる事
〇T細胞の発現のバランスを注視する事
が必要要件としたあると考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Kam, Y. W. et al. 
Antibodies against trimeric S glycoprotein protect hamsters against SARS-CoV challenge despite their capacity to mediate FcgammaRII- dependent entry into B cells in vitro. 
Vaccine 25, 729–740 (2007).
(2)
Yip, M. S. et al. 
Antibody-dependent infection of human macrophages by severe acute respiratory syndrome coronavirus. 
Virol. J. 11, 82 (2014).
(3)
Shan Su, Lanying Du & Shibo Jiang 
Learning from the past: development of safe and effective COVID-19 vaccines
Nature Reviews Microbiology (2020)

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肝臓組織の発達の機序

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

iPS細胞で細胞を初期化するときには、
「細胞の質」が重要である、と
公開されている文書を通じて伺ったことがあります。
その「細胞の質」が具体的にどのような質なのか?
というのは現場でiPS細胞技術に携わったことがないので
未理解ですが、細胞が老化していたり、
あるいは線維化した細胞を再生させるのは
「質」として難しい可能性を考えています。
もし、そうであるとするならば
従来から鋭意検討されている
iPS細胞技術で作られた組織のシートを患部に
外科的なプロセスで貼り付けるということが
有効かもしれないと考えています。
あるいは、
周辺の細胞を発達を促すような刺激をすること
ということも考えられるかもしれません。
他には、
細胞の再生を促す幹細胞を含む細胞を
患部に選択的に送り込むことが考えられます。

そうした時に一つ考える観点としては、
炎症が起こったり、線維化したりして、
細胞の質が落ちて再生が難しい組織を
取り除く必要があると思っています。
その際にうまく
マクロファージ、好中球、樹状細胞などの
食細胞が働いてくれる必要があります。
そうしたことを考慮すると
今述べたような食作用と
組織の再生の機序を理解することが
とても重要になります。

本日は肝臓の再生の機序についての報告があります(1)ので
読者の方と情報を共有したいと思っています。

世界的に農業、漁業、畜産技術が発達することで
飽食の時代になり、肥満の問題が顕著になってきています。
その中で肥満と関連がある
非アルコール性脂肪肝疾患が増えており、
程度の問題はあると思いますが、
25%の人がその疾患を抱えていると言われています(2-4)。
程度がひどくなると幹細胞、組織の線維化が進み
やがて肝硬変、肝臓がんなどの疾患につながります。
しかしながら、
その治療のための肝臓の移植は、
肝臓疾患の方が増えている現状で
需要に対して供給が追い付いていない状態です。
従って、病理を理解して、
薬剤を含む違うアプローチでの治療の需要が
高まってきています(1)。

幹細胞が炎症など損傷を受けると
それに対して免疫細胞が活性化され、
それらの細胞を修復しようとします。
しかし、
機能が損なわれてしまうと、それを埋め合わせるために
細胞間の細胞外マトリックスが働き(1)
そこに存在するタンパク質などが蓄積します。
それが線維化の一つの機序であると理解しています。
実際に細胞外マトリックス(タンパク質)が
過剰に蓄積すると通常の肝臓組織が乱され
機能を失うと言われています(5)。
この肝臓組織の線維化は、
肝硬変、肝細胞がんを惹起すると言われています(6)。
この肝臓の癌は世界で3番目に多い
癌に関連する死亡数となっています(7)。
亡くなられる方が多い癌の一つです。
ただ、国によってばらつきはあると推測しています。

肝臓は再生する臓器ですが、
成人する段階も含めて、
臓器の発達の経路は下記のようにいくつかあります。
①Notch /②Hippo–YAP–TAZ /③Hedgehog /④WNT-β-catenin
-----
①Notch経路
Notch経路は信号を送る細胞と細胞を受け取る細胞が
手をつなぐようにリガント、受容体を通して結合します。
それが参考文献(1)Fig.1(a)のように
並置するように結合する機序を取ります。
(juxtacrine interaction)
それによってβカテニンを通して
(細胞内の?)タンパク質を分解するプロテアソームに作用し、
かつ細胞の遺伝子にも作用します。
(参考文献(1)Fig.1(a)参照)
それによって、幹細胞の恒常性を保ったり、
境界や膜の形成、細胞の発展を決定したりします(8)。
この信号は、脊柱動物において
肝臓内の胆管の精巧な制御に貢献しています(1)。
肝臓内には胆のう、膵臓などとつながれている
胆管という組織があります。
それが肝臓内に「樹木の枝のように」分布しています。
その内部の胆管の組織形成に関与していると考えています。

このNotch経路はいくつかの型がありますが、
その中でも肝臓の組織形成の中で
NOTCH2タイプの受容体が最も豊富に含まれている
と考えられています(9)。
またNOTCH1タイプの受容体と関連のある
RBPJ遺伝子でコード化されたタンパク質が欠乏すると
胆管などの内部の管の形成や
その3次元構造が乱される可能性が示唆されています(10,11)。

しかし、このNotch経路の活性は「肝細胞」では
健康な肝臓においては欠如しているといわれており、
肝細胞にNotch経路が発現することは
不適応な結果につながるとされています(36)。
この不適応な肝細胞に見られるNotch経路は、
肝臓の糖の形成に関わっているとされており、
「マウスのケースにおいて」
過食による肥満状態で見られています(37)。
この中で非アルコール性脂肪性肝炎との関連も
指摘されています(1)。
また線維化と関連のある肝臓星細胞のNotch経路と
線維化の発展の因果関係も示唆されており(38)、
再生の際の線維組織の局所的な分布を生み出す際に
活性化されていることが指摘されています。

-----
②Hippo–YAP–TAZ経路
Hippo経路は細胞密度や組織のサイズを制御して
細胞が癌化しないように適正にバランスを取っています(12)。
その信号経路において具体的な物質として、
セリン/スレオニン特異的タンパク質リン酸化酵素
(Serine/threonine-specific protein kinase)
が細胞の増殖、細胞死、様々な機械的なストレス反応
を含む細胞のプロセスに関与している事がわかっています(13)。
従って、最終的な臓器のサイズを制御する中において
このリン酸化酵素が一つの制御機能として関与している
ということです。
また形を変えたり、成長したりすることは
エネルギーを要することですから、
連鎖的なリン酸化が必要であり、
エネルギーの動きをこの経路を包含するように
巨視的につかむことも同時に大切になってくると考えます。
また、
Yap経路にかかわるYap1というたんぱく質は
細胞の増殖や細胞死を防ぐ役割があるとされています。
これが欠乏すると胆管や肝細胞の発達を阻害する
と言われています(14)。

YAP–TAZ経路は肝臓組織の部分的な修復の後
信号の活性化の度合いにおいて影響を受けると言われています(1)。
このYAP経路は肝臓疾患における「non-parenchymal細胞」の
重要な制御因子であることがわかっています(32)。
-
「non-parenchymal細胞」とは
上皮細胞/類洞内皮細胞/星細胞/クーパー細胞
肝臓内リンパ球のことです。
肝臓内の40%の体積を占めると言われています。
-
従って、肝臓の外側の組織やや免疫機能に
影響を与えると考えられます。

-----
③Hedgehog経路
Hedgehogは組織の成長形態を制御するモフォゲンの一つである
といわれています。
-
表面モフォロジーという表面の空間的な構造(トポロジー、形態)
を表す言葉がありますが、組織の形態を制御する
物質名として「モフォ」という言葉が選ばれたと考えられます。
-
このモフォゲンは周辺の組織に拡散し、
分化前の胚細胞に働きかけます。
その中でモフォゲンの濃度勾配が起き
この勾配が細胞種が決まっていない幹細胞が
違う(特定の?)細胞種に分化する過程を推し進めます。
最終的にそれが組織になり、体の臓器になります(15)。
そのモフォゲンの濃度勾配の中で限られた空間の中で
特定の細胞種に分化します。
モフォゲンは濃度勾配を付ける中で、
組織の成長のベクトルを誘導するような役割があります(15)。

このモフォゲンの一つであるHedgehog(HH)には
それ自身を抑制するプロセスも同時に存在して、
亢進と抑制の合成的なプロセスの中で
細胞密度や他分子の利用性などの様々な要因が
柔軟に制御されると考えられています(16)。
しかしながら
このHedgehogの肝臓の発達における役割はよく
分かっていないと言われています(1)。
しかし、
前述したように分化前の前駆細胞に働きかけ
その拡散、分化を制御している可能性が示唆されています(1)。

Hedgehog経路は肝臓組織の部分的な修復の後
信号の活性化の度合いにおいて影響を受けると言われています(1)。
様々な細胞において創傷治癒の時にHedgehog経路は活性化されます(31)。

-----
④WNT-β-catenin経路
この経路は肝細胞や肝臓の上皮細胞の前駆細胞である
Hepatoblastの増殖、成熟、生存において重要な役割を
はたしていると考えられております(1)。
7回膜貫通タンパク質(Frizzled)受容体にWNTが結合し、
そこからβ-カテニン経路が活性化され
細胞核に入り遺伝子に作用します。
(参考文献(1)Fig.1(d)参照)

β-カテニンは部分的な肝臓組織修復の後、数分以内に
細胞核の中で急速に数を増やすと言われています(25)。

肝細胞内のWNT-β-catenin経路は脂質形成(33)、
ミトコンドリア機能(34)、糖新生(35)を制御している
と言われています。

------
またこれらの経路は相互作用もあります。
β-カテニンは肝細胞のNotchリガント発現を誘発し
Notch受容体を活性化させます。
それによって肝臓内に「樹木の枝のように」
分布している胆管の成熟に貢献しています(17)。

これらの組織の発達に関わる経路は
互いに作用しながら空間的に、時間的に精巧に制御され
正常な肝臓の発達に貢献しています(1)。
また、
組織が部分的に損傷を受け、その再生の時には
肝細胞は上述した発達経路の影響を受けて
新しい肝細胞を生成したり、
前駆細胞を形成したり、
胆管の細胞を形成したり
細胞の再プログラム化が行われます。
(参考文献(1)Fig.3参照)

肝臓は再生できる臓器で外科的な手術によって
臓器の一部を切断したり、部分的な損傷を負った後でも
完全に回復できる能力があるといます。
これを「Hepatectomy」と呼びます。
細胞レベルで回復すること(18)を指すと理解しています。
これらの回復は位置依存性なく
どこでも修復可能であるという見方もあります(19,20)。
一方で、
以下に示す特定の生理機序が関わっているという
可能性も示唆されています。
〇AXIN2+ pericentral(21)
〇SOX9+ periportal(22)
〇TERT activity(23)
〇LGR5+ cells(24)

冒頭で述べた様に肥満による脂肪肝のリスクが
世界的に上がってきています。
その中で非アルコール性脂肪性肝炎の病因として、
肥満に関連する様々な要素が挙げられています。
肥満によりインスリン抵抗性を示すことは
細胞の「エネルギー収支を制御する工場」である
ミトコンドリアの機能不全を導いたり、
「細胞内のタンパク質を制御する司令塔の一つ」である
小胞体にストレスを与えたりします。
それによって細胞の損傷、細胞死の原因となります(26,27)。

ダメージを受けたり、壊死した肝細胞は
それに付随した免疫機能を誘発して
免疫機能は創傷治癒、細胞の入れ替えを
図ろうとします(28,29)。
この時、一時的に
細胞外マトリックスにある物質が堆積します。
それ通常の肝臓の「構造の骨組み」となるような
役割をして、細胞を呼び込み、土台となります(30)。
従って、細胞外マトリックスは「過剰に」
堆積すると線維化を導きますが、
それが「適度」にあることは組織の再生には
欠かせない要素であると考えることができます。

損傷を受けた肝臓、
あるいは脂肪肝などによって機能不全が見られる状態では
上述した発達に関連する経路において
異常がみられるケースが指摘されています(1)。
このような発達経路が絶妙なバランスで制御され
臓器の恒常性、健康が保たれているので、
臓器を線維化から再生治療によって回復させるとき
そのバランスをどうやって制御しながら
正常に回復するように持っていけるか?
すでにダメージを受けている肝臓は
複数の発達経路のバランスが崩れている可能性があるので
それをどうやって正常状態に持っていくか?
それは組織が物理的に回復する中で
自然とそれに近づいていくのか?
そのような細胞内外の経路についても考える必要がある
と考えました。

以上です。

(参考文献)
(1)
Changyu Zhu, Ira Tabas, Robert F. Schwabe & Utpal B. Pajvani 
Maladaptive regeneration — the reawakening of developmental pathways in NASH and fibrosis
Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology (2020)
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