2021年3月1日月曜日

トシリズマブとサリルマブの臨床効果

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスと共に生きていく
ウィズコロナ時代において好ましいのは
ワクチン、マスク着用、衛生管理など
予防的な処置が十分に行われた状態で
それでも出てしまった少数の感染者に対して
早期の治療を行う事です。
そうすれば重症化する患者さんは激減すると考えられます。
重症化の治療というのはいわば最後の砦ともいえます。
しかし、今はワクチンなどの接種が
まだ進まないことから予防的な処置が十分ではなく
感染者も多い状態ですので
そのような医療機関による治療は
後手に回っている部分があります。
特効薬、治療ガイドラインがないのも一因です。
日本の重症者数は2月28日時点で434人で
減ってはきていますが、以前多い状態です。
酸素補充が必要な中等症患者も含めると
その数はもっと多いと考えられます。
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The REMAP‑CAP Investigatorsによる
イギリス、オーストラリア、フランス、オランダ、
アメリカ、カナダ、ドイツ、ニュージーランド、
タイ、アイルランド、フィンランド
からなる国際的な医療研究グループは
新型コロナウィルスの治療薬の選択肢の
炎症性サイトカインIL-6阻害薬である
トシリズマブ(アクテムラ)、サリルマブの薬効について
新型コロナウィルス重症患者において調べられています(1)。
本日は、その内容の一部について
読者の方と情報共有したいと思います。
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//重要な結果//ーーーーーー
酸素補充が必要な中等症、重症の患者に対して
トシリズマブ、サリルマブ
90日後の退院率、生存率ともに
有意な効果が見られます。
サリルマブの方が退院率、生存率に関わる
薬効が最大限発揮されるまでの時間が
トシリズマブよりも短い。
生存率に関してはサリルマブのほうが
トシリズマブよりも効果が高い。
しかし、治験人数がサリルマブは相対的に
少ないためさらなる調査の余地は残されていると
考えられます。
重篤な副作用はコントロール群に対して
少なくとも多くは確認されていません。
ーーーーーー

//薬剤について//ーーーーーー
トシリズマブ、サリルマブは
共にIL-6(インターロイキン6)のモノクローナル抗体。
IL-6は急性期反応としての炎症性経路を高め、
新型コロナウィルス感染時に放出されるものです。
ゆえに重症化、死亡率と相関があります(8-10)。
この働きをモノクローナル抗体によって
ブロックすることで組織の炎症による損傷を
緩和する事が期待されます。
しかし、過去の臨床試験では
人工呼吸器装着のリスクは軽減されますが、
死亡率に対しては効果がないことが示されています(2-7)。
ーーーーーー

//条件//ーーーーーー
①トシリズマブ/②サリルマブ/③コントロール
--
(人数)
①353人/②48人/③402人
--
(年齢)
平均:①61.5±12.5/②63.4±13.4/③61.1±12.8
--
(性別)
男性/女性:①74%/26% ②81%/19% ③70%/30%
--
(人種)
白人:①70%/②74%/③74%
アジア系:①18%/②21%/③17%
--
(治験参加時の治療状況)
入院からの日数:①1.2/②1.4/③1.2
集中治療からの日数:①13.1/②16.0/③14.0
--
(重症度)
酸素補充のみ、補充なし:①1%/②0%/③<1%
高流量鼻腔カニューレ:①29%/②35%/③27%
非侵襲挿管のみ:①42%/②48%/③42%
侵襲人工呼吸器:①29%/②17%/③30%

ほぼ中等症、重症患者
--
(PaO2:FiO2)中央値
①115/②126/③118

正常値はおおよそ500、重症ARDSでは100未満
--
(C反応性タンパク質μg/mL)中央値
①150/②136/③130

10(μg/mL)を超えると
臨床的に明らかな急性期反応を示す
--
(Dダイマーng/mL)中央値
①832/②828/③1010
※年齢×10ng/mL以上で異常値。中央値からは600程度。
--
(以上、参考文献(1) Table 1より)
--
(他の治療)治験参加前48h以内の治療
コルチコステロイド:①92.7%/②95.8%/③93.9%
レムデシビル:①31.4%/②43.8%/③34.2%
(参考文献(1) Supplementary appendix Table S2より)
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//薬剤の用量//ーーーーーー
(トシリズマブ)
8mg/kg(body-weight) ※最大800mg
1時間かけて静脈注射投与
この投与が12~24時間後に再投与
--
(サリルマブ)
400mg投与 1回のみ
--
(コントロール群)
標準的な治療。
グルココルチコイド:80%以上
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//結果//ーーーーーー
------
(生存率)
①トシリズマブ投与群:約70%(90日後)
②サリルマブ投与群:約80%(90日後)
③コントロール群:約65%(90日後)
-
特記事項
①は少しではあるが90日間で死亡者がでる
②は治験後30日程度から死亡者がいない
(ただし、治験人数が少ない。)
③は治験後45日程度から死亡者がいない
(参考文献(1) Supplementary appendix Figure 10より)
------
(退院率)
①トシリズマブ投与群:約70%(90日後)
②サリルマブ投与群:約70%(90日後)
③コントロール群:約60%(90日後)
-
特記事項
①、②共にコントロール群よりも
患者の退院が早く退院率が短期であがる。
特に②サリルマブはトシリズマブよりも
短期で退院率があがり
90日間で最大の退院率70%に
短期(30日程度)で達する
トシリズマブはその値まで45日程度要する。
(参考文献(1) Supplementary appendix Figure 14より)
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ーーーーーー

//重篤な有害事象(adverse events)//ーーーーーー
①トシリズマブ:9/353人(2.5%)
②サリルマブ:0/48(0%)
③コントロール:11/402(2.7%)
(参考文献(1) Supplementary appendix Table S7より)
ーーーーーー

以上です。

(参考文献)
(1)
The REMAP‑CAP Investigators
Interleukin-6 Receptor Antagonists in Critically Ill Patients with Covid-19
The New England Journal of Medicine February 25, 2021, 
(2)
Stone  JH,  Frigault  MJ,  Serling-Boyd NJ, et al. 
Efficacy of tocilizumab in patients hospitalized with Covid-19. 
N Engl J Med 2020; 383: 2333-44.
(3)
Hermine O, Mariette X, Tharaux P-L, et al.
Effect of tocilizumab vs usual care in adults hospitalized with COVID-19 and moderate  or  severe  pneumonia:  a  ran-domized clinical trial. 
JAMA Intern Med 2021; 181: 32-40
(4)
Salvarani C, Dolci G, Massari M, et al. 
Effect of tocilizumab vs standard care on clinical  worsening  in  patients  hospitalized  with  COVID-19  pneumonia:  a  randomized clinical trial. 
JAMA Intern Med 2021; 181: 24-31.
(5) 
Salama C, Han J, Yau L, et al. 
Tocilizumab  in  patients  hospitalized  with Covid-19 pneumonia. 
N Engl J Med 2021; 384: 20-30.
(6)
osas IO, Bräu N, Waters M, et al. 
Tocilizumab  in  hospitalized  patients  with severe Covid-19 pneumonia. 
N Engl J Med. DOI:  10.1056/NEJMoa2028700.
(7)
Veiga VC, Prats JAGG, Farias DLC, et al. 
Effect of tocilizumab on clinical outcomes at 15 days in patients with severe or critical coronavirus disease 2019: randomised  controlled  trial.  
BMJ  2021; 372: n84.
(8)
Zhou  F,  Yu  T,  Du  R,  et  al.  
Clinical course  and  risk  factors  for  mortality  of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study. 
Lancet 2020; 395: 1054-62.
(9)
Zhou Y, Fu B, Zheng X, et al. 
Pathogenic  T-cells  and  inflammatory  monocytes incite inflammatory storms in severe COVID-19 patients. 
Natl Sci Rev 2020; 7: 998-1002.
(10)
Zhu J, Pang J, Ji P, et al. 
Elevated interleukin-6  is  associated  with  severity  of COVID-19:  a  meta-analysis.  
J  Med  Virol 2021; 93: 35-7.


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