2021年3月10日水曜日

進行性腎細胞癌に対するニボルマブ、カボザンチニブ治療効果

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスは多くの臓器や脳に影響を
与えることが考えられます。
ウィルスそのものがウィルス向性を示して
その組織に直接働きかけることも考えられます。
一方で、肺など影響力の大きい臓器で
高められた炎症性免疫機能が血流やリンパ液を
通じて全身に広がり、損傷させている可能性も考えられます。
基本的に肺にウィルスが侵入してきて
細胞に何らかの変化が生じ、
組織の炎症、損傷が生じた時には
身体の防御機能としての免疫機能が自発的に働きます。
例えば、自然免疫系のマクロファージは
組織の修復能力があります。
しかし、ウィルスの勢力が強く
そのような異常事態が慢性化すると
免疫機能中に改変が生じ、悪影響を及ぼす
細胞やサイトカインが生じることが考えられます。
先ほどのマクロファージでも
タイプ1、タイプ2の二つのタイプに分類でき
それぞれ炎症性、抗炎症性と異なる性質があります。
組織の慢性異常によって
これらのバランスが崩れる事も考えられます。
---
このような異常組織の慢性化は癌組織でも生じます。
おそらく癌組織が上皮組織から萌芽した時には
それを防ぐ免疫機能が働くと考えられます。
あらゆる人は細胞1個単位でみれば
日々、癌細胞は出来ている可能性があります。
しかし、それらは免疫機能によって消去され
恒常的には問題のあるレベルまで成長しない
ということが起こっているのではないかと想定しています。
しかし、身体のバランスとしての
慢性的な異常によって癌細胞が閾値を超えて
成長してしまった時には組織が慢性化します。
そうした場合にも免疫機能が働くことが考えられますが、
それを逃れるシステムも同時に発展することが考えられます。
実際に癌組織には免疫的な攻撃を逃れる
免疫チェックポイントという生理があります。
T細胞が細胞傷害信号を放出するときには
MHC-Ⅰという受容体を介した
癌細胞との結合をスイッチにします。
しかし、並列的に生じた
T細胞(PD-1)、癌細胞(PD-L1)の結合によて
そのような細胞傷害性の信号が抑制されることが
知られています。
これを免疫チェックポイントと呼びますが、
これを阻害するためにPD-1やPD-L1に
結合するモノクローナル抗体を薬剤として開発しています。
そのモノクローナル抗体のうち
ニボルマブ(オプジーボ)はPD-1のモノクローナル抗体で
京都大学の本庶佑教授が発見、開発に貢献されました(2)。
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T.K. Choueiri, T. Powles, M. Burotto(敬称略)ら
アメリカ、イギリス、チリ、フランス、メキシコ
ポーランド、イタリア、オーストラリア、ブラジル、
アルゼンチン、日本(新潟、東京)、ドイツ
国際的な医療研究グループは
腎細胞癌の医療において実績を示してきた
カボザンチニブ(マルチキナーゼ阻害薬)と
上述したニボルマブ(免疫チェックポイント阻害薬)
これらの薬剤の併用における臨床効果について
フェーズ3の治験結果を通じて報告されています(1)。
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//腎細胞がんについて//ーーーーーー
腎細胞がんではVHL遺伝子が機能喪失することで
血管生成を促すとされています(3)。
癌組織の成長では癌細胞に成長、生存のための
栄養を送るために組織周辺の血管生成が必要にあります。
従って、血管生成を促すことは
腫瘍組織の成長を促すと考えられます。
ゆえにこの血管生成を抑える事と
免疫機能を高める免疫療法を組み合わせる治療が試みられ
それによって治療効果が得られています(3-5)。
ーーーーーー

//カボザンチニブとニボルマブによる治療//ーー
-----
〇カボザンチニブ
チロシンキナーゼ阻害薬(低分子量)
(チロシンキナーゼ阻害の機能)
・癌細胞増殖抑制
・血管生成抑制
・免疫細胞調整
・免疫チェックポイント阻害薬反応性向上
これらの機能が確認されています(6-9)。
-
〇ニボルマブ
PD-1免疫チェックポイント阻害抗体
-----
これら2薬のフェーズⅠの治験では
一定の奏功が見られ、副作用である
有害な効果も比較的低く抑えられています(10)。
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//投薬、用量//ーーーーーー
--
①ニボルマブ+カボザンチニブ
ニボルマブ240mg 2週間おき
カボザンチニブ40mg 毎日
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②スニチニブ
スニチニブ50mg 毎日 4週間継続+2週間休息
これら6週サイクル
--
All trial treatment continued until disease progression  
or unacceptable  toxic  effects,
最大で2年(ニボルマブ治療)
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//条件//ーーーーーーーー
①ニボルマブ+カボザンチニブ/②スニチニブ
------
(時期)
2017年9月~2019年5月
------
(場所)
18カ国、125か所
------
(人数)
①323/②328
------
(年齢)
中央値(範囲):①62(29–90)/②61(28–86)
65歳以下:①191人(59.1%)/②210人(64.0%)
65歳以上:①132人(40.9%)/②118人(36.0%)
------
(性別:人(割合))
男性:①249 (77.1)/②232 (70.7)
女性:①74 (22.9)/②96 (29.3)
------
(地域:人(割合))
アメリカ、ヨーロッパ:①158 (48.9)/②161 (49.1)
それ以外の国:①165 (51.1)/②167 (50.9)
------
(Karnofsky performance-status score:人(割合))
0~100まで、数字が少ないほど重症
-
100:健康、無症状
90:日常生活可能、軽症
80:日常生活いくつかの困難がある。いくつかの症状
70:通常の生活、仕事ができない
60:いくつかの補助を必要とする
、、
-
90 or 100:①257 (79.6)/②241 (73.5)
70 or 80:① 66 (20.4)/②85 (25.9)

60以下はいないので癌の症状としては
比較的軽い人に対して治験が行われたと評価できます。
------
(IMDC prognostic risk score:人(割合))
予後のリスク
好ましい(Favorable:0):① 74 (22.9)/②  72 (22.0)
中程度(Intermediate:1 or 2):① 188 (58.2)/② 188 (57.3)
不良(Poor:3-6):① 61 (18.9)/② 68 (20.7)
------
(腫瘍PD-L1発現:人(割合))
1%以上:① 83 (25.7)/②  83 (25.3)
1%以下:①240 (74.3)/② 245 (74.7)
------
(Sarcomatoid features:人(割合))
-
肉腫様の特徴
肉腫:多形性の癌。上皮性、間葉性両方の性質を持つ
-
持つ(Yes):①34/313 (10.9)/② 41/319 (12.9)
持たない(No):①279/313 (89.1)/② 278/319 (87.1)
------
(放射線治療歴あり:人(割合))
① 46 (14.2)/① 45 (13.7)
------
(腎臓摘出術歴あり:人(割合))
① 222 (68.7)/② 233 (71.0)
------
(病変部位の数:人(割合))
No. of sites with target or nontarget lesions
-
1つ:① 63 (19.5)/②  69 (21.0)
2つ以上:①259 (80.2)/② 256 (78.0)
------
(転移の(共通の)場所:人(割合))
Most common sites of metastasis 
-
肺:①238 (73.7)/② 249 (75.9)
リンパ節:①130 (40.2)/② 131 (39.9)
骨:① 78 (24.1)/② 72 (22.0)
肝臓:① 73 (22.6)/② 53 (16.2)
副腎:① 36 (11.1)/② 36 (11.0)
------
(参考文献(1) Table 1より)
ーーーーーーーー

//結果//ーーーーーー
①ニボルマブ+カボザンチニブ/②スニチニブ
--
(癌の進行が見られない期間)
中央値:半分の人が達成した期間
①16.6カ月/②8.3カ月
(参考文献(1) Figure 1Aより)
--
(生存率:27か月後)
①:70-80% /②:50-60%
(参考文献(1) Figure 1Bより)

①、②どちらも21カ月以降亡くなられる患者さんは
非常に少なくなります。①は一人もいません。
--
(薬効)人数(割合)
完全寛解:①26 (8.0)/②15 (4.6)
部分的に退行:①154 (47.7)/② 74 (22.6)※Partial response
安定状態:①104 (32.2)/②138 (42.1)
進行:①18 (5.6)/②45 (13.7)
(参考文献(1) Table 2より)

明らかに癌の退行、寛解の割合が②に比べて
①は高く、癌の客観的奏効率がよく
治療効果が高いことが示されています。
--
(カテゴリ別結果)※特に効果がある分類抽出
〇進行がない患者さん
ハザード比(範囲) ① for ②
・予後不良:0.37 (0.23–0.58)
・骨に転移あり:0.34 (0.22–0.55)
-
〇生存割合
ハザード比(範囲) ① for ②
・予後不良:0.37 (0.21–0.66)
・腎臓摘出術あり:0.49 (0.33–0.74)
(参考文献(1) Figure 2より)
--
(生活の質)※症状をスコアにしたもの
①の治療経過の特徴して
治療開始7週間でやや症状が知覚されますが、
そこから25週間まで症状が改善され
そこから91週まで近くできる症状が安定します。
②の治療では
知覚できる症状が多く
そこから回復しない傾向にあります。

実際に診療現場を拝見しないとわからないですが、
①の治療は比較的楽に癌治療が進められる
ということだと考えられます。
ーーーーーー

//副作用、副反応//ーーーーーー
①ニボルマブ+カボザンチニブ/②スニチニブ
※人数(割合)
--
(グレード3以上比較的頻度が多い症状)
高血圧:①40 (12.5)/②42 (13.1)
⇒①の治療特有ではない
--
(①>②の症状)※すべてのグレード
・ALTレベル上昇
・ASTレベル上昇
・発疹
・かゆみ
・関節痛
・発生困難
・低ナトリウム血症
・腹痛
・低リン血症
・アミラーゼ値上昇
・筋肉のけいれん
・体重減少
・上気道感染症
・めまい
・甲状腺機能亢進

グレード3以上の副作用の頻度は大きくありません。
ほとんどが5%以下。
また、免疫機能が高まっているわけですから
その免疫的な応答の証拠として副作用、副反応が
相対的に強く出ているともいえます。
(参考文献(1) Table 3より)
ーーーーーー

//筆者の基礎医学的な視点//ーーーーーー
PD-L1の発現活性度のカテゴリ分けにおける
ハザード比(① for ②)を見てみると
多く発現されているほうが効果が低いことが示されています。
この結果をどう見るか?
それが一つのポイントとなります。
本来なら免疫チェックポイント阻害薬を加えていますから
相対的にはPD-L1の発現量が多い群のほうが
ハザード比がさがるだろうと考えられます。
そうならないのはなぜでしょうか?
--
免疫チェックポイント阻害によって
T細胞の細胞傷害性が上がることが想定されます。
これらの治療によって
免疫細胞、サイトカインの種類、数、表現型が
①と②の治療でどのように変わっているか
という視点があります。
例えば、予期せぬ免疫細胞の機能が高まっている
可能性も完全には除外できません。
血液検査では癌細胞付近の免疫細胞の特性を
特異的に分析する事は出来ませんが、
希釈された状態でもある程度明らかになるか?
ということです。
多くの人の統計的なデータになるので
筆者としては大きな関心があります。
カボザンチニブに関しても
血管生成が実際に抑制されているかどうか?
それが液体生検の中のRNA, DNAでわかるかどうか?
--
臨床で効果が試されるときに
本当に狙いの薬効が人で作用しているかどうか?
この確認は細胞特異的輸送系統でも
精密医療を目指しているので行いたいと考えています。
ーーーーーー

以上です。

(参考文献)
(1)
T.K. Choueiri, T. Powles, M. Burotto, B. Escudier, M.T. Bourlon, B. Zurawski, V.M. Oyervides Juárez, J.J. Hsieh, U. Basso, A.Y. Shah, C. Suárez, A. Hamzaj, J.C. Goh, C. Barrios, M. Richardet, C. Porta, R. Kowalyszyn, J.P. Feregrino, J. Żołnierek, D. Pook, E.R. Kessler, Y. Tomita, R. Mizuno, J. Bedke, J. Zhang, M.A. Maurer, B. Simsek, F. Ejzykowicz, G.M. Schwab, A.B. Apolo,  and R.J. Motzer, for the CheckMate 9ER Investigators
Nivolumab plus Cabozantinib versus Sunitinib for Advanced Renal-Cell Carcinoma
The New England Journal of Medicine 2021;384:829-41.
(2)
Ishida, Y.; Agata, Y.; Shibahara, K.; Honjo, T. (1992). 
"Induced expression of PD-1, a novel member of the immunoglobulin gene superfamily, upon programmed cell death". 
The EMBO Journal. Wiley. 11 (11): 3887–3895. 
(3)
Choueiri  TK,  Motzer  RJ.  
Systemic therapy  for  metastatic  renal-cell  carcinoma. 
N Engl J Med 2017; 376: 354-66.
(4)
McKay  RR,  Bossé  D,  Choueiri  TK. 
Evolving  systemic  treatment  landscape for patients with advanced renal cell carcinoma.  
J  Clin  Oncol  2018  October  29 (Epub ahead of print).
(5)
Heidegger I, Pircher A, Pichler R. 
Targeting  the  tumor  microenvironment  in renal  cell  cancer  biology  and  therapy. 
Front Oncol 2019; 9: 490.
(6)
Saeed  A,  Phadnis  M,  Park  R,  et  al. 
Cabozantinib (cabo) combined with durvalumab (durva) in gastroesophageal (GE) cancer  and  other  gastrointestinal  (GI) malignancies:  Preliminary  phase  Ib CAMILLA study results. 
J Clin Oncol 2020; 38: Suppl: 4563. abstract.
(7)
Bergerot P, Lamb P, Wang E, Pal SK. 
Cabozantinib in combination with immunotherapy  for  advanced  renal  cell  carcinoma and urothelial carcinoma: rationale and clinical evidence. 
Mol Cancer Ther 2019; 18: 2185-93.
(8)
Lu X, Horner JW, Paul E, et al. 
Effective  combinatorial  immunotherapy  for castration-resistant prostate cancer. 
Nature 2017; 543: 728-32.
(9)
Apolo AB, Nadal R, Tomita Y, et al. 
Cabozantinib in patients with platinum-refractory  metastatic  urothelial  carcinoma: an open-label, single-centre, phase 2 trial. 
Lancet Oncol 2020; 21: 1099-109.
(10)
Apolo AB, Nadal R, Girardi DM, et al. 
Phase  I  study  of  cabozantinib  and nivolumab alone or with ipilimumab for advanced or metastatic urothelial carcinoma  and  other  genitourinary  tumors.  
J Clin Oncol 2020; 38: 3672-84.

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