いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
関東の感染状況を見ていると
少なくとも「下げ止まり」の状況であり
東京都においては3日間前週の同じ曜日を上回る感染者数になっています。
日本、国立感染症研究所の3月3日時点の第7報によれば
ウィルスの遺伝子解析は国内症例全体の5.8%で
解析に数週間かかります。
従って、現在の変異ウィルス株の情報は
2月の初旬から中旬くらいの情報なので
現状とは大きく異なっている可能性があります。
その理由はイギリスや南アフリカで確認されている
変異株のその地域での広がり方が
時間に対して「指数関数的」だからです。
一旦、核形成すれば1か月くらいで一気に広がります。
従って、2月と3月中旬の今では状況が異なる
という事は十分に考えられる事です。
イギリスで確認されている変異系統(B.1.1.7)に関しては
感染力が数十パーセント以上高まると考えられており、
現在の関東地方の下げ止まり、
あるいは少し上昇の兆しが見える事は
この感染力が強いウィルス系統(lineage)が
主要になりつつあることを示している可能性があります。
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基本的に日本の感染状況は
イギリスの数カ月遅れで傾向が引き継がれる可能性が
考えられます。
イギリスで確認された変異系統が現地では
数か月前から確認されており、
現地BBCの6時間前のニュースによれば
2300万人以上の方が少なくとも1回以上の
ワクチン接種が終了しています。
イギリスの人口が6665万人ですから
34.5%、約3人に1人は1回目の接種を終えている状況です。
日本でワクチン接種が1/3になるのは
数か月先になります。
従って、人口に対する感染者数は異なりますが、
イギリスの傾向を良く分析しておくことが重要です。
つまり、ワクチンを接種した時に
社会での新型コロナウィルスの疫学、系統の分布は
どのようになるか?ということです。
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その中で一つ気になる事実があります。
イギリスの変異系統(B.1.1.7)において
E484Kの逃避変異が導入された株が確認されている事です。
(参考文献(1) Fig.2B(件数)、2C(赤色のライン))
前述したように、イギリスでは1/3の方が
1回目の接種を終えている状況です。
ワクチンが効力を発揮するのは2回目接種以降
1回目接種から1か月くらいはかかりますが、
そういった状況の中でウィルス株の系統の分布
それに応じた感染者数の推移などを分析する事です。
E484Kの変異はワクチンや回復者の抗体の効力を
低下させるということは科学的にほぼ間違いないので
ワクチンを接種している社会状況の中で
このような変異が起こりやすく
かつ広がりやすいのか?という視点があります。
当然、そうであれば、
日本でもワクチン接種の状況によって
このようなE484K変異がRNAのランダムな変異の中で
起こる可能性があります。
--
ただし、日本の場合は
人口に対する感染者数が少ないという事実があります。
これは社会の人の
・マスク・衛生・手洗い・うがい・3密回避
これらの行動や遺伝子的な特徴が関わっていると考えられます。
感染の機会が増えれば、
当然逃避変異の確率もあがりますから
イギリスと同じように起こるかどうかは不明です。
このような可能性を考えると
ワクチンの接種を行ったとしてもそこで安心せず、
しばらくは上述した感染対策は必要になります。
ただし、ずっと同じレベルで活動を制限することは
社会経済に悪影響を及ぼしますので、
どのように蛇口を開放していくか?
この点に関してはよく考える必要があります。
またこれから季節的にも暖かくなっていくので
おそらく新型コロナウィルスも
ある程度の季節性は持っていると思いますので
温度、湿度など環境的な要因がプラスに働くか?
一方で、東京オリンピックという
大きなイベントがあります。
確実に人と触れ合う機会は増えます。
色んな要因の天秤の中で
感染状況、病床逼迫度合い、社会経済、
ウィルス系統の分析などを並列して行い
総合的に社会として判断していく必要があります。
ーーーーーーーー
Dami A. Collier, Anna De Marco, Isabella A. T. M. Ferreira, Bo Meng, Rawlings Datir, Davide Corti, Ravindra K. Gupta
(敬称略)らイギリス、スイス、アメリカ、イタリア、メキシコ、南アフリカ
の国際的な医療研究グループは
イギリスで確認されたウィルス系統(B.1.1.7)の
ワクチン、回復者抗体の中和能に対する評価と
2021年2月1日時点で数十例確認されている(2)
その系統にE484Kという逃避変異が入った場合の
それら抗体の中和能の変化について詳しく報告されています(1)。
本日は、特に懸念されるE484Kの変異が入った時に
ワクチン、回復者の抗体の中和能が
どれくらい低下するかというデータを紹介いたします。
そのうえで筆者の視点を提供いたします。
ーーーーーーーーー
ウィルス系統(B.1.1.7)に対して
E484K逃避変異が導入されているウィルス株の
確認事例推移。
(参考文献(1) Fig.2B)
このデータを見ると2021年1月4日時点で
確認が見られ、2月1日で30例程度となっています。
その時点で件数の絶対数としては大きくないですが、
2月から現時点の3月12日、4月、5月と
この逃避変異E484Kを中心とした系統図、
それに応じた感染事例の変化を世界的に注視する必要があります。
ウィルスの系統図。
B.1.1.7+E484Kは赤色のライン。
(参考文献(1) Fig.2C)
//B.1.1.7+E484K系統、中和能の変化//ーーーーーー
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ワクチン接種の種類
mRNAワクチン BNT162b2 ファイザー社
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(ワクチン一回接種)
中和能は9.7倍程度平均で低下。
しかし、バラつきが多く低下割合が低い方もいます。
逆に数十倍程度低下する方もいます。
ただ、B.1.1.7の変異系統においては
従来株に対して中和能が向上する人もいましたが
E484Kの変異が入るとほぼすべての人で
中和能が低下するデータとなっています。
(参考文献(1) Fig.3bより)
--
(ワクチン二回接種)※既定の手順
中和能は6.7倍程度平均で低下。
1回接種に対して中和能の低下幅が小さくなっていて
個人差も小さくなっているのが特徴です。
(参考文献(1) Fig.3dより)
⇒
Booster doseで変異に相対的に強くなることは
従来の報告で示唆されていました。
--
(罹患回復者)
中和能は11.4倍程度平均で低下。
しかし、バラつきが非常に大きなことが特徴です。
また注目すべきは
2人の人で従来株よりも中和能が向上していることです。
これら向上した2人の抗体の分布を
分析する事で何らかの重要な科学的情報が
得られる可能性があります。
(参考文献(1) Fig.3fより)
ーーーーーー
//追記//ーーーーーーー
参考文献(3)Fig.1aにACE2受容体結合面(黄色の部分)
と変異の位置が図示されています。
N501, K417はこの受容体結合面内にある
残基の変異を示すものです。
同じように受容体結合面に入るE484Kと
これらの結合面の変異が「同時に入ることで」
抗体の中和能をより低下させてしまうことが
複数の報告によって示されています(4-7)。
N501はB.1.1.7で変異している部分。
ーーーーーー
以上です。
(参考文献)
(1)
Dami A. Collier, Anna De Marco, Isabella A.T.M. Ferreira, Bo Meng, Rawlings Datir, Alexandra C. Walls, Steven A. Kemp S, Jessica Bassi, Dora Pinto, Chiara Silacci Fregni, Siro Bianchi, M. Alejandra Tortorici, John Bowen, Katja Culap, Stefano Jaconi, Elisabetta Cameroni, Gyorgy Snell, Matteo S. Pizzuto, Alessandra Franzetti Pellanda, Christian Garzoni, Agostino Riva, The CITIID-NIHR BioResource COVID-19 Collaboration, Anne Elmer, Nathalie Kingston, Barbara Graves, Laura E. McCoy, Kenneth G. C. Smith, John R. Bradley, Nigel Temperton, L. Lourdes Ceron-Gutierrez, Gabriela Barcenas-Morales, The COVID-19 Genomics UK (COG-UK) consortium, William Harvey, Herbert W. Virgin, Antonio Lanzavecchia, Luca Piccoli, Rainer Doffinger, Mark Wills, David Veesler, Davide Corti & Ravindra K. Gupta
Sensitivity of SARS-CoV-2 B.1.1.7 to mRNA vaccine-elicited antibodies
Nature (2021)
(2)
PHE. Public Health England statement on Variant of Concern and new Variant Under Investigation,
<https://www.gov.uk/government/news/
(3)
Pengfei Wang, Manoj S. Nair, Lihong Liu, Sho Iketani, Yang Luo, Yicheng Guo, Maple Wang, Jian Yu, Baoshan Zhang, Peter D. Kwong, Barney S. Graham, John R. Mascola, Jennifer Y. Chang, Michael T. Yin, Magdalena Sobieszczyk, Christos A. Kyratsous, Lawrence Shapiro, Zizhang Sheng, Yaoxing Huang & David D. Ho
Antibody Resistance of SARS-CoV-2 Variants B.1.351 and B.1.1.7
Nature (2021)
(4)
Tegally, H. et al.
Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa.
medRxiv, 2020.2012.2021.20248640,
https://doi.org/10.1101/ 2020.12.21.20248640 (2020).
(5)
Greaney, A. J. et al.
Comprehensive mapping of mutations to the SARS-CoV-2 receptor-binding domain that affect recognition by polyclonal human serum antibodies.
bioRxiv, 2020.2012.2031.425021,
https://doi.org/10.1101/2020.12.31.425021 (2021).
(6)
Greaney, A. J. et al.
Complete mapping of mutations to the SARS-CoV-2 spike receptor- binding domain that escape antibody recognition.
Cell Host & Microbe (2020).
(7)
Weisblum, Y. et al.
Escape from neutralizing antibodies by SARS-CoV-2 spike protein variants.
Elife 9, e61312, https://doi.org/10.7554/eLife.61312 (2020).
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