2021年3月13日土曜日

エンドサイトーシスの種類と機序

いつも記事を読んで下さり、ありがとうございます。

ナノ粒子を使った薬剤輸送というのは
従来から広く考えられています。
ナノテクノロジーの一つの分野
といってもいいくらいのテーマかもしれません。
筆者が知る限り、ナノ粒子での薬剤輸送を考える時の
細胞内にエンドサイトーシスさせることを前提にしている
ケースが多いです。
例えば、ナノ粒子のとしてのキャリアである
エクソソームなどの小胞などが
細胞の食作用などによって細胞内に
取り込まれる事を想定します。
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新型コロナウィルスのワクチンは
mRNAワクチンの場合には脂質のナノ粒子の中に
新型コロナウィルス株のSタンパク質だけを作る
設計情報が遺伝子RNAに組み込まれています。
それが筋肉注射によって体内に入れられると
自然免疫系の樹状細胞に取り込まれ
その中でRNA情報に従って狙いのSタンパク質を作り出し
そのたんぱく質に体が反応して
それに高い親和性を持つ中和抗体が放出されます。
現在世界で接種されているワクチンはまさに
ナノテクノロジーの薬剤輸送の範疇にあります。
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Joshua J. Rennick, Angus P. R. Johnston, Robert G. Parton 
(敬称略)からなるオーストラリアの医療研究グループは
生物学的なエンドサイトーシスの概念、原理、研究結果を
ナノ粒子を使った治療を想定しながら詳しく包括されています(1)。
本日はその内容の中でエンドサイトーシスの機序に
焦点を当てて読者の方と情報共有したいと思います。
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//エンドサイトーシスの種類と機序//ーーーーーー
参考文献(1)Fig.1に示されるように細胞外の薬剤などの
物質が細胞内にエンドソームに包み取り込まれる過程は
受容体(これに限らない)との結合によって
細胞内に信号が送られ、エンドサイトーシスに必要な
タンパク質などの物質が細胞膜に作用することによって
細胞膜が変形します。
この変形したものが細胞内に取り込まれる中で
閉空間を作ります。これがエンドソームです。
そしてエンドソームが融解するか
あるいはリソソームで代謝されるなどをして
細胞外の物質が細胞質などの細胞内に送り込まれる
あるいは変化を与える事になります。
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〇ダイナミン(Dynamin)依存経路
ダイナミンとは多細胞生物を支配する真核細胞の中で
エンドサイトーシス、つまり細胞内への物質の取り込みにかかわる
GTPアーゼ(タンパク質:酵素)です。
ダイナミンは参考文献(1) Fig.1に示されているように
細胞膜からエンドソームが形成されるときに
細胞外、出口側のシャッターのような塞いで
閉空間を形成する物質です。
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(クラスリン(Clathrin))
クラスリンは細胞骨格、細胞質の中で
エンドソームを形成するのに必要な「細胞膜の変形、形状制御」
に関わるタンパク質です。
細胞内には様々な区画があり、
その中で物質の仕分けがされますが、
このクラスリンに覆われたエンドソーム、輸送媒体は
これらの細胞内の仕分けにおいて重要な役割を果たします。
例えば、コレステロールや鉄など
細胞の生存に必要な栄養物質を取り込む際に
この機序が採用されます。
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(FEME(Fast Endophilin-Mediated Endocytosis))
FEMEはクラスリンとは異なりエンドフィリンというたんぱく質が
クラスリンと同じように細胞膜の変形、エンドソーム形成
物質の仕分けなどに関わります(2)。
細胞の成長や細胞の分布を制御する際の信号伝達において
この経路は重要な役割を果たします(4)。
形成時間は早く10秒以内でエンドソームは
おおよそ数十から数百nm程度の大きさであるとされています(4)。
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〇EHD2依存経路
EHD2は参考文献(1) Fig.1に示されているように
細胞膜からエンドソームが形成されるときに
細胞外、出口側のシャッターのような塞ぐ物質です。
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(カベオリン(Caveolin))
受容体非依存性のエンドサイトーシスです(3)。
CAV1, CAV2, CAV3があり、
それらがヘテロ多量体を形成することで
エンドソームの形状維持に貢献します。
これに関するエンドサイトーシスは
ウィルスや病原体の除去など想定される機能がありますが、
この機能を遺伝子的に排除した時に
これらの機能の依存性が見られなかったころから
具体的な機能については不明だとされています。
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〇ダイナミン(Dynamin)非依存経路
これらの種類のエンドサイトーシスは
細胞内に取り込んでエンドソームを形成するときに
細胞外への出口をふさぐようなダイナミンが存在しません。
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(CLIC/GEEC (CG))
細胞膜が変形し、エンドソームを形成するときには
細胞骨格の一つであるアクチンが働きます。
他のエンドサイトーシスのように
エンドソームの外側には形状を固定するような
タンパク質が存在しない機序となっています。
ただし、内側で形状を固定するような
物質の多量体化が起こりエンドソーム骨格を形成します。
その物質の支柱としてCD44、インテグリンなど
多くの表面受容体がエンドソーム内壁に存在します(5)。
(参考文献(1) Fig.1より)
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(マクロピノサイトーシス)
アクチン、CTBP1の作用により細胞外の物質が
取り込まれます。
特徴としては細胞質に接触する
あるいは極めて近い物質だけではなく
ある程度距離が離れた細胞外に漂っている物質を
積極的に食するように取り込む過程です。
エンドソームが形成されるときには
その形状を指させる外側の鞘はRabankyrin-5となっています。
(参考文献(1) Fig.1より)
例えば、マクロファージや樹状細胞が病原体を取り込む際には
この機序が適合するとされています(6)。
従って、新型コロナウィルスワクチンの
脂質から成るmRNA封入のナノ粒子は
このマクロピノサイトーシス
(もしくはファーゴサイトーシス)によって
これらの自然免疫系の細胞に近接した時に
細胞内に取り込まれている可能性があります。
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(ファーゴサイトーシス)
ファーゴサイトーシスは
マクロピノサイトーシスとアクチンを通した
食作用という点では類似していますが、
この機序では比較的大きな物質を取り込むことが特徴です。
従って、その物質と結合する受容体が
細胞質、内側に存在します。
エンドソームの鞘は存在せず
取り込んだ大きな物質が骨格形成の一翼を担う
と考えられます。
(参考文献(1) Fig.1より)
大きいものでは0.5μm程度の物質もありますが、
下限については不明で、ナノ粒子のような
これよりも1/10以上小さな径の粒子でも
ファーゴサイトーシスされることがあります(7)。
ピノサイトーシスと同様に病原体を
自然免疫系などの免疫細胞が取り込むことがあります。
一方、細胞の寿命を終え細胞死する過程で
生じた廃棄物などをこの機序で取り込み、
体内の不要なたんぱく質などの物質を制御するのに貢献します。
前述したようにタンパク質を引き込む際に
大きいものもあるのでその位置を固定するために
細胞質側に受容体が必要です。
その受容体は「Scavenger受容体(ex CD45,CD148)」と分類され
多くの廃棄物を共通に認識できるように
その親和寛容性は高くなっています(8)。
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//細胞特異的輸送系統の観点//ーーーーーーーー
これら多様な細胞内取り込みの機序がある事から
細胞特異的輸送系統で疾患に強く関わる標的細胞への
特異的輸送が成功した時には、
細胞内に取り込まれる可能性は高いかもしれません。
また、受容体を介さない食作用もあるため
仮に特定の細胞に対して親和性を持つように
その表面受容体に合わせた装飾因子を
輸送媒体表面に作製できたとしても、
輸送される間で免疫細胞やその他血液細胞
あるいは内皮の細胞によって
受容体結合を介さない形でも意図しない取り込みが
起こる可能性があります。
免疫細胞であれば、機能を歪めてしまうことになり
それによって自己免疫疾患などの
重篤な副作用、副反応に繋がってしまう可能性があります。
体中、固定された、流動された細胞で溢れている以上、
特定の細胞へ輸送する事は
相互作用が多彩であることから非常に困難である
可能性を想定しています。
このようなどうしても生じる損失も含めて
より良い精密医療を細胞特異的輸送系統で
考えていく必要性があります。
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以上です。

(参考文献)
(1)
Joshua J. Rennick, Angus P. R. Johnston & Robert G. Parton 
Key principles and methods for studying the endocytosis of biological and nanoparticle therapeutics
Nature Nanotechnology (2021)
(2)
Alessandra Casamento and Emmanuel Boucrot
Molecular mechanism of Fast Endophilin-Mediated Endocytosis
Biochem J. 2020 Jun 26; 477(12): 2327–2345.
(3)
ang Z, Scherer PE, Okamoto T, Song K, Chu C, Kohtz DS, Nishimoto I, Lodish HF, Lisanti MP (January 1996). 
"Molecular cloning of caveolin-3, a novel member of the caveolin gene family expressed predominantly in muscle". 
J. Biol. Chem. 271 (4): 2255–61.
(4)
Boucrot, E. et al. 
Endophilin marks and controls a clathrin-independent endocytic pathway. 
Nature 517, 460–465 (2015).  
(5)
Lakshminarayan, R. et al. 
Galectin-3 drives glycosphingolipid-dependent biogenesis of clathrin-independent carriers. 
Nat. Cell Biol. 16,  592–603 (2014).
(6)
Kerr, M. C. & Teasdale, R. D. 
Defining macropinocytosis. 
Traffic  10, 364–371 (2009).
(7)
Desjardins, M. & Griffiths, G. 
Phagocytosis: latex leads the way. 
Curr. Opin. Cell Biol. 15, 498–503 (2003).
(8)
Lim, J. J., Grinstein, S. & Roth, Z. 
Diversity and versatility of phagocytosis: roles in innate immunity, tissue remodeling, and homeostasis. 
Front. Cell. Infect. Microbiol. 7, 191 (2017)


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