2021年3月8日月曜日

ワクチンの免疫活性、輸送の機序

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスのワクチン接種が
日本国内で医療従事者の方から先行的に行われています。
現状では4万6000人(5日午後5時時点)の1回目の
接種が終えているということです。
今月中にはその一部の人が2回目の接種を終えると思います。
2回目接種を終えた時点で
軽いものも含めて副反応の情報の一部が
一般公開されるものと想定しています。
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ここまで1か月でおおよそ5万人だとすると
国内接種を仮に半年(6か月)で終わらせるとなると
仮に9000万人の方が接種するとして
2回接種の計算ではおおよそ600倍の速度(規模)で
進めていく必要があります。
この一カ月はスピード重視ではないですが、
今の接種スピードよりも何百倍も速い手続きをしなければ
半年で接種を終える事はできないということです。
海外からのワクチンの調達の問題ももちろん
根本的にあります。
仮に接種会場が今の600倍になるとすれば
一番の問題は調達、輸送、供給ということになりそうです。
海外の生産状況を考えると
複数社(モデルナ社、アストラゼネカ社)、
複数のルートの調達体制が必要だと考えられます。
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ワクチンを接種すれば
イスラエルのファイザー社の大規模調査によれば
1回目接種から36日後(2回接種)では
90%以上の予防効果があります(2)。
従って、接種から約1か月後には
感染者、入院、重症化する方の数は
接種率が高ければ顕著に減少することが予想されます。
ただ、これは新型コロナウィルスに
逃避変異が起こらないことを前提にしています。
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現在、南アフリカで確認された変異株には
E484Kという抗体逃避変異が確認されており、
中和能を半分以下に下げる可能性があることが
指摘されています(3)。
ワクチンの変異を逐次確認されている慶応大学の発表によれば、
国内でも南アフリカ変異株とは別に
このE484Kの逃避変異が見つかっている
という情報もあります。
この逃避変異株が国内の感染の主要な株となれば
上述したワクチンの効果も変化する可能性があります。
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ただし、注意が必要なのは
仮に中和能が半分になっても
ワクチンの効果が半分になるという事を
意味するものではありません。
ワクチンには抗体の防御の他に
ワクチンの産生能力や細胞による抗ウィルス性など
免疫細胞の機能そのものを強化する働きがあるからです。
もちろん、その変異が入る事によって
抗体依存性感染増強が誘発されないか?
このような懸念事項もないわけではないですが、
少なくとも逃避変異株に対する
ワクチンの効果に関しては抗体の中和能のみで
決まるものではないということです。
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John R. Teijaro, Donna L. Farber(敬称略)からなる
アメリカ合衆国の医療研究グループは
新型コロナウィルスの
ワクチンの系統的な機序について報告されています(1)。
本日はその内容の一部を追記しながら
読者の方と情報共有したいと思います。
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//ワクチンのタイプ//ーーーーーー
-
〇mRNAと脂質ナノ粒子ワクチン
ファイザー/ビオンテック社
モデルナ社
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〇不活性化アデノウィルスワクチン
アストラゼネカ社
ジョンソン&ジョンソン社
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//ワクチンの経路//ーーーーーー
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①ワクチンが体内に筋肉注射によって入ります。
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②ワクチンの成分が樹状細胞(自然免疫系細胞)まで運ばれます。
少なくとも一部はリンパ節まで運ばれます。
もしくは樹状細胞がリンパ節まで輸送されます。
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③ワクチンが樹状細胞の中に入ります。
樹状細胞の中でワクチンの成分である
コロナウィルス株のSタンパク質を
作製するように任意に設計された遺伝子(RNAなど)が
Sタンパク質を自然免疫系細胞中で作製します。
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同時に細胞にエンドサイトーシスされる過程で
エンドソームの表面に存在する
Toll様受容体(TLR3、TLR7, TLR9)
これらと結合し、刺激することが想定されています。
(細胞質のMDA5, RIG-I, NOD2, PKRとも結合します。)
それにより自然免疫系細胞は
Ⅰ型インターフェロンなどのサイトカインを出します(4)。
それがリンパ系免疫細胞である
T細胞の樹状細胞認識を誘発させます。
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④T細胞、B細胞の働き⇒抗体産生まで
樹状細胞によってCD4+, CD8+T細胞が活性化され
その一部はリンパ節、胚中心にある
濾胞性T細胞(T-FH細胞)を含みます。
この濾胞性T細胞の中でCD4+T-FH細胞は
B細胞の特異的発展、分化を促します。
またB細胞は同様に樹状細胞で作製された
Sタンパク質を認識します。
それによって血漿細胞に変わり
その血漿細胞が新型コロナウィルスのSタンパク質に対して
高い中和能を示す抗体産生を行います。
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⑤T細胞、B細胞の記憶性
樹状細胞を認識したT細胞、
あるいは濾胞性T細胞を認識したB細胞は
外部からの信号に活発に反応するエフェクター細胞と
機能を記憶するメモリー細胞に分化します。
この記憶化は再度類似する刺激があった時に
迅速に、強く反応する事に貢献すると考えられます。
従って、
ワクチンを2回接種する「ブースター接種」において
2回目の接種後に抗体反応性が顕著に上がるのは
一つの要因としては
このようなリンパ系細胞の記憶性に関わっている
と考えられます。
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※これらはまだ確定的ではありません。
今後、新型コロナウィルスのワクチンにおいて
詳しく、継続的に調査されていきます。
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//ワクチン相違性、輸送効率//ーーーーーー
ナノ粒子によるmRNAのワクチンは
新しいタイプのワクチンで未知の事が多いですが、
設計変更が容易にできる事は
輸送媒体であるナノ粒子を最適化できる
という余地があります。
従って、変異ウィルスが確認されたとしても
遺伝子を特定すれば、その情報を反映して
次のワクチンの設計を任意に行うことができます。
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一方、不活化アデノウィルスワクチンは
一つの懸念事項としては
繰り返し接種されたときに
遺伝子を覆っている不活化アデノウィルス株が
体内の免疫系で記憶されているために
体内の免疫機能によって有効に消去されてしまう
可能性がある事です。
このような免疫機能による輸送効率の低下の推測は
脂質ナノ粒子では起こらないとは言えませんが、
再度接種することで輸送効率がどのように変わるか
というのは重要な視点になります。
ーーーーーー

以上です。

(参考文献)
(1)
John R. Teijaro & Donna L. Farber 
COVID-19 vaccines: modes of immune activation and future challenges
Nature Reviews Immunology (2021)
(2)
Noa Dagan, M.D., Noam Barda, M.D., Eldad Kepten, Ph.D., Oren Miron, M.A., Shay Perchik, M.A., Mark A. Katz, M.D., Miguel A. Hernán, M.D., Marc Lipsitch, D.Phil., Ben Reis, Ph.D., and Ran D. Balicer, M.D. 
BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting 
The New England Journal of Medicine February 24, 2021,
(3)
Xuping Xie, Yang Liu, Jianying Liu, Xianwen Zhang, Jing Zou, Camila R. Fontes-Garfias, Hongjie Xia, Kena A. Swanson, Mark Cutler, David Cooper, Vineet D. Menachery, Scott C. Weaver, Philip R. Dormitzer & Pei-Yong Shi 
Neutralization of SARS-CoV-2 spike 69/70 deletion, E484K and N501Y variants by BNT162b2 vaccine-elicited sera
Nature Medicine (2021)
(4)
Pardi, N., Hogan, M. J., Porter, F. W. & Weissman, D.
mRNA vaccines — a new era in vaccinology. 
Nat. Rev. Drug. Discov. 17, 261–279 (2018).

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