2021年3月4日木曜日

NKT細胞の特異的活性とナノボディーの貢献

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

細胞特異的輸送系統では
細胞膜表面にある分子パターンや
細胞膜を貫通して露出している受容体などを標的とします。
その背景には
疾患の元となっている特定の細胞だけを
薬剤などによって正常化、死滅させたいという目的があります。
その標的性が上がれば、
普通に考えると少ない薬剤で狙いの効果が得られるため
副作用のリスクを下げることができると考えられます。
このような発想というのは今に始まったわけではなく
新型コロナウィルスで有名になった抗体を利用した
薬剤輸送などもあります(抗体薬物複合体)。
あるいは身体の外でウィルスベクターなどを導入して
狙いの受容体を免疫細胞に作成して
体内に投入することで狙いの細胞を攻撃する
キメラ抗原受容体(CAR)があります。
細胞特異的輸送系統のコンセプトとしては
細胞やナノ粒子にこのような結合できる突起を
粒子の外側に任意に作ることを想定していますから
このCAR技術の蓄積は
実現に向けた支援要素になると考えています。
この観点は免疫細胞と癌細胞の結合性を高めるために
主に利用されますが、
このような免疫細胞と免疫が作用する細胞での
結合状態というのは精緻に考えられています。
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Mark A. Exley, Thomas Gensollen and Richard S. Blumberg
(敬称略)らアメリカ、イギリスの医療研究グループは
Roeland Lameris, Adam Shahine, Daniel G. Pellicci 
(敬称略)らオランダ、オーストラリア、アメリカ、イギリスの
国際的な医療研究グループは
癌細胞、抗原提示細胞とNKT細胞の結合性の
強化メカニズムについて報告されています(1,2)。
本日はその内容の一部を読者の視点で追記しながら
読者の方と情報共有したいと思います。
ーーーーーーーー

//報告の概要と筆者の視点、考察//ーーーーーー
癌細胞の表面には免疫細胞(NKT細胞)が認識するための抗原提示
(受容体)があります。
しかし、通常はその受容体に免疫細胞は
高い親和性で直接結合する事はできません。
癌細胞は独自の癌抗原を放出します。
参考文献(1)Fig.1で示されるように
脂質からなる抗原が免疫細胞との間に挟まって
スーパー抗原のように働き結合親和性を高めます。
それによって免疫細胞は癌細胞を特異的に認識し
細胞傷害性の信号などを放出して
癌細胞を死滅させる事に成功します。
(※脂質(糖脂質)を認識するのはNKT細胞の特徴)
この鍵となる脂質からなる間に挟まる抗原は
癌細胞が自然に放出するものもありますが、
外から人為的に流入させることもできます。
その際には受容体に合うように精巧に脂質抗原を
設計あるいは選択する事になります。
また、参考文献(2)(あるいは参考文献(1) Fig.1e)
で示されているように
単一結合面を持つ抗体:ナノボディー(VHH)を
免疫細胞、脂質抗原、癌抗原提示受容体に
結合させるとそれらの結合親和性を高めることができます。
また、参考文献(1) Fig.1dで示されるように
免疫細胞の受容体の働きを抗体でブロックする事も可能です。
また、冒頭で述べた様に
免疫細胞に人為的に受容体を作製することで
複数のルートで癌細胞を認識することができるようになるため
癌細胞が仮に進化の過程で変異を起こし、
結合親和性が変化したとしても
複数のルートで認識できるようになるため
そうした変異に強い免疫系統を築くことができる
可能性があります。
ーーーーーー

//NKT細胞について//ーーーーーー
NK細胞のような特性を持った自然免疫系のT細胞(3,4)。
このNKT細胞は抗腫瘍効果や抗病原体効果がある
一方で、逆効果がある事は稀にあります(3-5)。
そんな中、MHC-I様のCD1d受容体と脂質ベースの抗原を
認識するNKT細胞はiNKT細胞(invariant NKT細胞)と呼ばれます。
これを利用した癌治療は安全で有望である
とされています(6-8)。
このようなCD1d受容体を糖脂質抗原の中でも
海綿の一種であるα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)
を挟んで認識する細胞は
Ⅰ型ヘルパーNKT細胞です。
これは
・抗病原性、抗腫瘍、炎症性
を担います。
また別のⅡ型ヘルパーNKT細胞は
・抗原誘発、免疫調整
これを担うとされています(3,8,9)。
従って、癌治療だけではなく
新型コロナウィルスの治療にも使える可能性があります。
しかし、この
α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)は
生体内での寿命が短いために
抗原として目的の細胞まで届けるのに難しさがあります(6-8)。
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//VHHナノボディー技術//ーーーーーー
上述したようにVHH1D12ナノボディーは
CD1d(α-GalCer)受容体-NKT細胞の結合を
2つの結合面を持って強めることがわかりました(2)。
その結合面はCD1dとTC受容体の両方です。
つまり、スーパー抗原のように
癌細胞などの標的細胞と免疫細胞の結合を
架橋して強める働きがあることがわかりました(2)。

参考文献(2) Fig.5a
VHH1D12ナノボディー結合面
・CDR1(緑色)がCD1d(灰色)
・CDR3(青色)がNKT12(金色)
このように架橋して結合していることがわかります。

参考文献(2) Fig.1e
VHH1D12により「試験管で」
NKT細胞の活性を示すCD25の発現が
コントロール群比べて低濃度から顕著に高い
ことが示されています。
--
また多発性骨髄腫の患者さんから
取り出した骨髄サンプルを培養して
VHH1D12の働きを見たところ
Ⅰ型サイトカイン(IFN-γ、TNF、IL-2)
これらの上昇が顕著であったことが確認されました。
これらはⅠ型NKT細胞の一般的な免疫機能です。
その顕著は発現が確認されました。
(参考文献(1) Fig.7aより)
この環境では実際に癌細胞が退行したことが示されています。
(参考文献(1) Fig.7cより)
ーーーーーー

//細胞特異的輸送系統の観点//ーーーーーーーー
このナノボディーのように
受容体同士の結合を強化させるような
アドジュバントがあれば、
細胞特異的輸送系統で細胞やナノ粒子で
薬剤を患部、目的の細胞まで輸送した時に
その結合の親和性を高めてくれる可能性があると考えます。
このナノボディーの設計においても
2つの結合面があるのであれば
そこに薬剤を運ぶナノ媒体と標的細胞の受容体に
特異性を持つように設計できれば
他の結合強化による
意図しない信号の惹起を防ぐことができます。
その様に考えると
任意のナノボディーをアドジュバントとして
製造できる技術は実現を高める可能性があります。
ーーーーーーーー

以上です。

(参考文献)
(1)
Mark A. Exley, Thomas Gensollen & Richard S. Blumberg 
ーーー
Department of Medicine, Brigham & Women’s Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA.  
University of Manchester, Manchester, UK. 
Imvax, Philadelphia, PA, USA.  Agentus, Lexington, MA, USA.  
ーーー
A nano-engager for iNKT cells in cancer
Nature Cancer volume 1, pages1032–1034(2020)
(2)
Roeland Lameris, Adam Shahine, Daniel G. Pellicci, Adam P. Uldrich, Stephanie Gras, Jérôme Le Nours, Richard W. J. Groen, Jana Vree, Scott J. J. Reddiex, Sergio M. Quiñones-Parra, Stewart K. Richardson, Amy R. Howell, Sonja Zweegman, Dale I. Godfrey, Tanja D. de Gruijl, Jamie Rossjohn & Hans J. van der Vliet 
ーーー
Amsterdam UMC, Vrije Universiteit Amsterdam, Department of Medical Oncology, Cancer Center Amsterdam, Amsterdam, the Netherlands.   
Infection and Immunity Program and Department of Biochemistry and Molecular Biology, Biomedicine Discovery Institute, Monash University, Clayton, Victoria, Australia.  
Department of Microbiology and Immunology, Peter Doherty Institute for Infection and Immunity, University of Melbourne, Melbourne, Victoria, Australia.  
Amsterdam UMC, Vrije Universiteit Amsterdam, Department of Haematology, Cancer Center Amsterdam, Amsterdam, the Netherlands.  
Department of Chemistry, University of Connecticut, Storrs, CT, USA.  
Australian Research Council Centre of Excellence in Advanced Molecular Imaging, University of Melbourne, Melbourne, Victoria, Australia.  
Australian Research Council Centre of Excellence in Advanced Molecular Imaging, Monash University, Clayton, Victoria, Australia.  
Institute of Infection and Immunity, Cardiff University School of Medicine, Cardiff, UK.   
LAVA Therapeutics, Utrecht, the Netherlands.  
Present address: Murdoch Children’s Research Institute, Royal Children’s Hospital, Parkville, Victoria, Australia.  
Present address: Division of Biological Sciences, Department of Molecular Biology, University of California, San Diego, La Jolla, CA, USA. 
These authors contributed equally: Roeland Lameris, Adam Shahine.  
These authors jointly supervised this work: Jamie Rossjohn, Hans J. van der Vliet. 
ーーー 
A single-domain bispecific antibody targeting CD1d and the NKT T-cell receptor induces a potent antitumor response
Nature Cancer volume 1, pages1054–1065(2020)
(3)
Mori, L., Lepore, M. & De Libero, G. 
Annu. Rev. Immunol. 34, 479–510 (2016).
(4)
Kohlgruber, A. C., Donado, C. A., LaMarche, N. M., Brenner, M. B. & Brennan, P. J. 
Immunogenetics 68, 649–663 (2016).
(5)
Crosby, C. M. & Kronenberg, M. 
Immunogenetics 68,  639–648 (2016).
(6)
Fujii, S. et al. 
Front. Immunol. 4, 409 (2013).
(7)
Nair, S. & Dhodapkar, M. V. 
Front. Immunol. 8, 1178 (2017).
(8)
Bedard, M., Salio, M. & Cerundolo, V. 
Front. Immunol. 18,  1829 (2017).
(9)
Schneiders, F. L. et al. 
Clin. Immunol. 140, 130–141 (2011).


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