いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
神経や身体のあらゆる疾患において免疫が関わっている
と言っても過言ではないと考えます。
血液、リンパ液、間質液などの体液に
免疫細胞やサイトカインなどの小胞が循環して
全身の健康、恒常性維持のために監視しています。
従って、新型コロナウィルスなどの未知のウィルスが体内に入ると
直ちに身体の免疫機能が反応する事になります。
新型コロナウィルスの治療や予防においては
〇ウィルスを体内に入れない
という事はもちろんのことですが、
〇ウィルスの数を増やさない
〇免疫機能を調整する
これらの事が求められます。
ただし、ウィルスの侵入によって
免疫機能が高められ、あるいはウィルス毒性によって
組織が炎症を起こすとそれを治癒するための
余分な免疫機能が必要になりますから
その中でどのように免疫機能を調整するか?
その点においては指針としても難しさがあります。
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Maja Buszko, Aleksandra Nita-Lazar, Jung-Hyun Park(敬称略)ら
アメリカ合衆国の医療研究グループは
上述した免疫の観点で新型コロナウィルスにおいて
これまで明らかになってきた部分において総括されています(1)。
2020年12月1日にアメリカの国立衛生研究所(NIH)と食品医薬品局(FDA)間で
行われたシンポジウムの会議報告書として示されています。
本日は筆者の視点を追記しながら
その内容の一部について読者の方と情報共有したいと思います。
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//重症患者のリンパ系細胞の特徴//----------
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(骨髄系免疫細胞)
血漿中樹状細胞、好塩基球量の低下、欠損
(リンパ系免疫細胞)
CD8+T細胞、γδT細胞量の低下
ーー
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//サイトカインの特徴//----------
IP-10 (CXCL10)の応答が
毒性の低い、従来のコモンコールドなコロナウィルス
と新型コロナウィルスでは異なる。
風邪ウィルスと呼ばれるコモンコールドコロナウィルスでは
感染後、急激に上昇し、その分泌は一時的です。
新型コロナウィルスの場合は
長い時間IP-10の分泌が続くとされています。
このIP-10は免疫細胞を引き寄せる働きがあります。
従って、IP-10が多く発現されている組織においては
それに応じて多くの免疫細胞が引き付けられていることが考えられます。
上述したように重症の患者さんの場合は
免疫細胞が歪められている可能性があるので
偏った形で炎症組織などに
免疫細胞が引き付けられている可能性が考えられます。
このIP-10はインターフェロンに依存して発現されているわけではなく、
新型コロナウィルスに依存して発現されている可能性が指摘されています。
--
シンガポールの研究では
無症状患者と症状を示した患者の
サイトカインの応答の違いを調べたところ
IL-2とIFN-γの発現量が高い群において
無症状の患者が多かったことが示されています。
実際にIFN-γの初期応答が悪いことと
重症化の関連性が指摘されています。
一部の患者ではIFNの働きを阻害すると考えられる
自己抗体が存在している事が確認されています(2)。
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一方、新型コロナウィルスの発症によって
NF-κBとタイプⅡのインターフェロンの発現の
活性化が確認されています。
タイプⅠのインターフェロンが弱く
タイプⅡのインターフェロンが強いと
症状が悪化する可能性が考えられます。
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//リンパ球の交差性//----------
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新型コロナウィルスが流行する前に集められた血漿を分析した結果、
リンパ系免疫細胞CD4+T細胞においては
新型コロナウィルスに反応性を示す表現型(エピトープ)
を持つ細胞が半分程度(40-60%)の人で見らえています。
しかし
〇スパイクタンパク質以外に反応
〇コモンコールドコロナウィルスに強く反応
〇主に記憶型CD4+T細胞
これらであることが示されています。
従って、その反応性は強いわけではないということです。
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//子供のリスク//----------
子供においては日本では症例がないものの
川崎病様のmultisystem inflammatory syndrome
が確認されています。
ウィルスの侵入によって
骨髄系、リンパ系ともに多くの免疫細胞が惹起され
NK細胞やT細胞においては
細胞傷害性信号により組織の炎症につながります。
液性免疫系統のB細胞では自己抗体を発現する事によって
同様に組織の炎症に繋がっています。
(参考文献(1) Fig.2より)
これらの事から子供の場合は
全体的な免疫機能の異常な活性により炎症が起きている
可能性が考えられます。
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//後遺症に関して//------
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後遺症がなぜ生じているか?
それについては現在調査中であると考えられますが
一つの可能性としては自己免疫疾患様であるということです。
例えば、3つの仮説が提唱されています(3)。
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〇分子擬態(molecular mimicry)
自己抗原とウィルスの抗原の類似性によって
身体の免疫機能が惹起されることです。
自己抗原は血中に存在するタンパク質ですが、
ウィルス抗原と身体が勘違いすることで
自己抗原に対して抗体を産生するようになり
それによって細胞の機能が歪められる可能性があります。
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〇ウィルスのスーパー抗原
T細胞の表現型を強く変えるスーパー抗原により
その機能が強く歪められます。
様々な形態が考えられますが
構造的な観点としては
T細胞の表面の機能を決める受容体にタンパク質が結合して
その機能を活性化させるときに
スーパー抗原によってその結合親和性が高められてしまう可能性です。
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〇リンパ球の細胞死と自己反応性を持つリンパ球産生
リンパ球の機能が歪められる事により
正常な組織も攻撃してしまうような
リンパ球表現型が勢力を増す可能性です。
実際に自己反応性を持つB細胞が重症の患者さんで確認されてます。
これは濾胞性ではなくリンパ節外の血漿中などで
発展した可能性が表現型分析から考えられ
ウィルス株自身を認識するToll様受容体(TLR7)などが
表現型分析で確認されています。
自己免疫疾患の一つであるSLE(全身性エリテマトーデス)でも
同様のB細胞表現型発展が確認されています(4-6)。
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従って、今後、日本も含めて世界で
新型コロナウィルスの後遺症の治療と向き合っていく必要がありますが、
自己免疫疾患との共通性を認識しながら、
今までの自己免疫疾患に対する
医療の利用可能性を視野に入れながら
継続的により良い医療提供体制を整える事が
社会として求められます。
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//治療において//----------
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IL-6阻害薬(トシリズマブ)などの治療において
一定の奏功が得られていますが、顕著ではなく
薬剤投与からの期間であったり
そのタイミングなどが重要だと考えられます。
また、 JAK経路阻害薬であるバリシチニブと
抗ウィルス薬であるレムデシビルの併用による
治療実績もありますが
抗ウィルスに必要な
インターフェロン、IL-12などのサイトカインの
機能を抑制してしまう副反応があり、
投薬に関しては状況に応じた判断が求められます。
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以上です。
(参考文献)
(1)
Maja Buszko, Aleksandra Nita-Lazar, Jung-Hyun Park, Pamela L. Schwartzberg, Daniela Verthelyi, Howard A. Young & Amy S. Rosenberg
Lessons learned: new insights on the role of cytokines in COVID-19
Nature Immunology (2021)
(2)
Bastard, P. et al.
Science https://doi.org/10.1126/science.abd4585 (2020)
(3)
Wucherpfennig, K. W. J.
Clin. Invest. 108, 1097–1104 (2001).
(4)
Woodruff, M. C. et al.
Nat. Immunol. 21, 1506–1516 (2020).
(5)
Jenks, S. A. et al.
Immunity 49, 725–739.e6 (2018).
(6)
Nehar-Belaid, D. et al.
Nat. Immunol. 21, 1094–1106 (2020).
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