2021年3月24日水曜日

感染症治療の為のナノ技術(1)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの世界的な流行で
感染症が如何に医療だけではなく社会経済、日常生活まで
大きな影響を及ぼすかということを改めて実感しました。
このような感染症は新型コロナウィルスが
流行する前から社会問題として変わらず存在しています。
感染症のトップ5が
下気道感染症(31%)、下痢を伴う感染症(19%)、
結核(15%)、HIV/エイズ(12%)、マラリア(8%)となっています。
参考文献(1)Fig.1bの世界地図を見ると
これらのトップ5の感染症による死者数は
東南アジア、南アジア、中東諸国やアフリカが高くなっています。
しかし、日本も決して低くありません。
参考文献(2)のCauseの部分にある世界地図を見ると
日本は感染症死者数のトップの下気道感染症の
10万人当たりの死者数が世界と比較しても多いです。
この中にはインフルエンザが含まれるので
おそらくインフルエンザの死者の数が高齢の方が多いためか
世界と比べて多くなっていると考えられます。
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Ameya R. Kirtane, Malvika Verma, Paramesh Karandikar
(敬称略)らアメリカ合衆国の医療研究グループは
これらを含めた感染症に対して
薬剤を中心とした治療においてナノ技術が
どのように適用できるか?
これに関して詳しく総括されています(1)。
本日はその内容の一部を筆者の視点を追記しながら
読者の方と情報共有したいと思います。
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//概要//ーーーーー
(従来の薬剤治療の課題)
〇標的性が低い(low on-target)
〇生体利用効率が低い(low bioavailability)
〇感染源(微生物、ウィルス)へ必要量蓄積されない
〇有害性(副作用、副反応)
〇治療規制の問題
これらがあります。
これら課題を解決するためにナノテクノロジーが
どのように有効な医療的な介入ができるか?考えます。
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ナノ粒子には
細胞膜の材質であるリポソーム(脂質2重層)
ナノ粒子を重合体、ポリマーで覆う
あるいは間質液の中に薬剤を入れ
結晶中に薬剤を入れる(Nano-drug crystals)
これらがあります。
それぞれに対して
吸入型で肺に優先的に投与する方法や
注射、あるいは膣から輸送する方式もあります。
それらは、薬剤をどの組織に運びたいかによって変わります。
また、リポソームで覆う事によって
薬剤の血液中の濃度を安定させることができます。
(Sustained release)
(参考文献(1) Fig.2より)

またナノ粒子は病原体(細菌、ウィルス)などに対して
標的性を上げるために装飾因子を工夫することで
特異的に輸送する事が可能です。
参考文献(1) Fig.3cに示されている図は
細胞特異的輸送系統のコンセプトと近い形になります。

また細菌やウィルスは
薬剤がプラスマイナスの電荷を帯びていると
エンベロープ膜ではじく性質や
一旦、細菌やウィルスの中に入っても
受容体を通じて外にはじき出されるような機序があります。
ナノ粒子の場合は
そのような病原体の性質を理解する事ができれば
そうさせないシステムを任意に組み込むことで
薬剤の作用効率を高められる可能性があります。
(参考文献(1) Fig.4bより)

また細菌は、菌膜(Biofilm)と呼ばれる
集団としての生態系を形成します。
粘膜状の物質でその環境の中で強く相互作用します。
そのバイオフィルムが薬剤のアクセス効率を下げることがあり
その菌膜の材料と反応するような
ナノ粒子の材料を選択する事ができれば、
細菌は組織上に個別に露出する事になり、
薬効を高められる可能性があります。
(参考文献(1) Fig.4cより)

また薬剤は菌膜、粘膜、あるいは血液中の
細胞外酵素によって分解されることがありますが、
そうした分解をナノ粒子で覆うことによって
低下させる事ができる可能性があります。
(参考文献(1) Fig.4dより)

//細胞特異的輸送系統の観点//ーーーーーーーー
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例えば、iPS細胞に代表されるような
体細胞をナノ粒子キャリアとして使い
その細胞に細菌やウィルスに結合するような
タンパク質を装飾因子として形成します。
その時に細胞ですから
細胞内に取り込むエンドサイトーシスの機序があります。
そのエンドサイトーシスによって
細菌やウィルスをナノ粒子中に取り込み
そこで薬効を発揮することで
効果が上がる可能性があります。
つまり、今まではナノ粒子中の薬剤を
有効に放出させる事に焦点を当てていましたが、
逆に、ナノ粒子の中に病原体を取り込んで
攻撃するという方法も考えられます。
これは細胞自身をナノ粒子キャリアとして使った場合
有効にできる可能性があります。
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以上です。

(参考文献)
(1)
Ameya R. Kirtane, Malvika Verma, Paramesh Karandikar, Jennifer Furin, Robert Langer & Giovanni Traverso 
Nanotechnology approaches for global infectious diseases
Nature Nanotechnology (2021)
(2)
Wikiepdia:Lower respiratory tract infection


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