//背景//
新型コロナウィルス感染症の症状の程度を決める
1つの分岐は、感染初期に抗ウィルス性免疫機能が
上手く働いたかどうか?
これにあると考えています。
このような機能は、ワクチン接種、治療薬などで
補完することができますが、
オミクロン株が流行している現在のように
ワクチンの中和抗体が逃避変異によって低い状態で、
リスク因子のある人が感染すると、
感染初期の抗ウィルス性が上手く働かない可能性があります。
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その「初動」の抗ウィルス性として
1つの重要な要素はおそらく「NK細胞」です。
Michael S. Diamond氏らが図3に示しているように(3)、
NK細胞に特異的に発現しているTLR3は
NK細胞内のエンドソームに発現しており、
そこでウィルス抗原をパターン認識する事に寄って、
初期、抗ウィルス性において重要な
インターフェロンの産生に寄与します。
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Jiacheng Bi氏(1)、
Joana Barros-Martins氏ら(2)は
NK細胞について詳しく調べた報告をハイライトされています。
//内容//
上述したようにNK細胞はインターフェロン(IFN-γ, IFN-α)。
これらの産生に関わるのに加えて、
組織の線維化(損傷)を防止する働きがあります(4)。
線維化遺伝子因子
COL1A1,ACTA2
これらを抑制する働きがあります(1)。
これらは肺の組織の炎症、線維化を防ぐ働きがあるかもしれません。
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この重要なNK細胞は
「量」と「質」
これらの両方が大切であると言われています。
-
「量」に関しては
NK細胞の量が低い方がウィルス量の低下が低いことが
示されています(2,5)。
-
「質」に関しては
NK細胞はCD3-CD56+という特徴を持っています。
しかし、CD56の活性が弱くなることで機能が低下する
と言われています。
それが新型コロナウィルスの重症の患者さんで
見られているといわれています(1,2)。
そのCD56^dimに関わる遺伝子は
IFI6 , ISG15 , IFI44L , XAF1 , MX1 , PRF1 ,
GZMB , FCGR3A
MKI67, LGALS1, STMN1, TUBA1B , and
HMGB2
これらです(1)。
新型コロナウィルス感染症の炎症によって
IFN-αが多く発現されたときに
その負荷によってNK細胞の質が低下すると
考えられています(1,2)。
また、T細胞の免疫チェックポイントのように
NK細胞の活性を弱める免疫チェックポイントが
以下のタンパク質で示されています。
NKG2A, PD-1, CD39
これらのレベルが高まります。
また、NK細胞は炎症性サイトカイン(TGF-β)によって
細胞接着性が弱まることが指摘されています。
それに関わる遺伝子がITGB2
その表現型である受容体がintegrin-β2です。
このインテグリンが抑制される事に寄って
ダメージを受けた肺などに細胞が接着しにくくなり
組織の修復能力を低下させます。
//治療、展望//
NK細胞の免疫チェックポイント阻害薬として
anti-NKG2Aモノクローナル抗体が
COVID-19の患者さんに対して臨床的に使用されています(6)。
このようなNK細胞のチェックポイントを阻害して
機能を復活させようとする試みは
癌治療でも行われています(7)。
またNK治療を使った新型コロナウィルス感染症への
治験は以下で行われています。
ClinicalTrials.gov:
NCT04797975, NCT04634370, NCT04280224
//まとめ//
NK細胞は新型コロナウィルス感染症で非常に重要な
抗ウィルスの初動に関わるだけではなく、
その後の組織修復にも継続的に関わると考えられます。
しかし、インターフェロン、癌成長因子など
炎症性サイトカインが過剰の放出されることによって
その「質」が低下することが考えられます。
また、加齢などで量が少ないと重症化しやすいことから
高齢の方で重症化している方においては
NK細胞の質と量が共に低下している可能性があります。
上述した免疫チェックポイント阻害の
モノクローナル抗体は初期だけではなく、
中等症、重症の方に対して一定の臨床効果が
生じる可能性があります。
なぜなら、組織の修復に関わる因子であるからです。
(参考文献)
(1)
Jiacheng Bi
NK cell dysfunction in patients with COVID-19
Cellular & Molecular Immunology volume 19, pages127–129 (2022)
(2)
Joana Barros-Martins, Reinhold Förster & Berislav Bošnjak
NK cell dysfunction in severe COVID-19: TGF-β-induced downregulation of integrin beta-2 restricts NK cell cytotoxicity
Signal Transduction and Targeted Therapy volume 7, Article number: 32 (2022)
(3)
Michael S. Diamond & Thirumala-Devi Kanneganti
Innate immunity: the first line of defense against SARS-CoV-2
Nature Immunology volume 23, pages165–176 (2022)]
(4)
Radaeva S, Sun R, Jaruga B, Nguyen VT, Tian Z, Gao B.
Natural killer cells ameliorate liver fibrosis by killing activated stellate cells in NKG2D-dependent and tumonecrosis factor-related apoptosis-inducing ligand-dependent manners.
Gastroenterology. 2006;130:435 – 52.
(5)
Witkowski, M. et al.
Untimely TGF β responses in COVID-19 limit antiviral functions of NK cells.
Nature 600 , 295 – 301 (2021).
(6)
Demaria O, Carvelli J, Batista L, Thibult ML, Morel A, André P, et al.
Identification ofdruggable inhibitory immune checkpoints on Natural Killer cells in COVID-19.
CellMol Immunol. 2020;17:995 – 7.
(7)
Pascale Andre et al.
Anti-NKG2A mAb Is a Checkpoint Inhibitor that Promotes Anti-tumor Immunity by Unleashing Both T and NK Cells
Cell 175, 1731–1743, December 13, 2018
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