//背景//
近年、手術、化学療法、放射線療法と並ぶ
第四の癌の治療法として免疫治療が脚光を浴びています。
一方で、癌の治療において一つの重要な指標は
5年生存率ということになります。
再発の多くは5年までに起こり、
そこで再発がみられない場合には
再び、癌細胞が萌芽して、大きな腫瘍になる可能性が
かなり低くなるからです。
--
どのような治療にしても
癌治療を積極的に行った場合には、
治療後、様々な身体の中の変化があると考えられます。
組織が壊れた場合には、傷跡が残ることもあるかもしれません。
あるいは、
免疫細胞の構成比、表現型などが変わる可能性もあります。
--
特に癌免疫治療を受けた場合には
癌が寛解した後も元の状態とは異なる免疫細胞の状態になる
ことが高い可能性で想定されます。
患者さんの人生は癌が寛解したとしても
その後、長く続きます。
従って、急性期の生物学的特徴や臨床結果だけはなく
その後、長期間にわたる生物学的特徴を研究することは
非常に重要になります。
癌の患者さんは定期的に検査を受けるでしょうから
臨床結果はすでに既存の治療プログラムに組み込まれていますが、
詳しい生物学的特徴についての長期的な研究は
まだ多くその余地があると考えられます。
特に新しい治療法に関しての研究は稀有である
と考えられます。
--
J. Joseph Melenhorst, Gregory M. Chen, Meng Wang, David L. Porter.
(敬称略)ら医療研究グループは
CAR-T細胞免疫治療を受け、白血病が寛解した
2名の患者さんの治療から10年の縦断調査について
報告されています(1)。
その中で免疫細胞、特にCAR-T細胞の構成比がどのように
変わったかについて報告されています。
その内容の概要について参照し、
読者の方と情報共有したいと思います。
//概要//
CAR-T細胞は10年後も検出され、治療3年後以降
安定的に推移しています。
一方で、癌の原因となる標的としたB細胞の数は
治療3年後以降、CAR-T細胞よりも
顕著に低いか、検出されませんでした。
この3年後以降、クローナル安定性が築かれています。
CAR-T細胞の表現型がどのように推移するか
2名の患者さんで個人差がありましたが、
5年後以降、Ki67^hiCD4+CAR-T細胞が主要となっています。
このKi67^hiCD4+CAR-T細胞は細胞傷害性を持ち、
遺伝子、代謝機能からも活性であると評価されます。
また、CAR-T細胞はクローナル多様性は
通常のT細胞よりも低く、単一性が高かったこと示されています。
//考察//
参考文献(1)Fig.1b,cとFig.2を比較評価すると
腫瘍の原因となるB細胞が減少し始めたところから
Ki67^hiCD4+CAR-T細胞の比率が高まっているように見えます。
このKi67^hiCD4+CAR-T細胞は
CD27-
腫瘍壊死因子
TIGIT-
免疫チェックポイント受容体
EOMES
CD38-
サイトカイン産生
CTLA-4-
免疫応答を負に調節する免疫チェックポイント受容体
LAG-3-
免疫チェックポイント受容体
Ki67-
細胞増殖能マーカー
HLA-DR
CD95-
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー
CD28-
T細胞の活性化や細胞増殖の誘導、
サイトカインの産生やT細胞生存の促進
IL-6R-
感染、外傷、および免疫学的攻撃の間に
様々な細胞によって産生される多面的サイトカイン
CCR7-
Bリンパ腫エプスタインバールウィルス効果の仲介物質
TOX-
T細胞維持、T細胞疲弊(T cell exhaustion)に関連
これらの信号が高いとされています。
(参考文献(1) Fig.2e)
ここから総合的に考えると
腫瘍に反応している時に働く活性な細胞であると考えられます。
もし、そうであるとするならば、
この腫瘍に対して反応性を持つKi67^CD4+CAR-T細胞が
腫瘍を寛解、退行させた後も体内に主要に残ることが
示されたということです。
言い換えれば、腫瘍の退行、増殖の関係で
退行>>増殖の不等号が維持されるため、
再び萌芽する癌が特別な抵抗性を持たなければ、
再発するリスクは非常に低いと考えることもできます。
一方で、
免疫的なバランスが一部改変された事による
副作用などについても調査する必要があります。
例えば、自己免疫疾患のようなことが起こらないか?
しかし、Ki67^CD4+CAR-T細胞で高まっている
EOMESというマーカーは
T細胞で高まることで自己免疫疾患を抑える働きが
あるとされています(2)。
もし、自己免疫疾患などに対しても良い結果で
その後の免疫機能が優れているのであれば、
CAR-T免疫治療の臨床的な価値がさらに高まることが
示されるということになります。
(参考文献)
(1)
J. Joseph Melenhorst, Gregory M. Chen, Meng Wang, David L. Porter, Changya Chen, McKensie A. Collins, Peng Gao, Shovik Bandyopadhyay, Hongxing Sun, Ziran Zhao, Stefan Lundh, Iulian Pruteanu-Malinici, Christopher L. Nobles, Sayantan Maji, Noelle V. Frey, Saar I. Gill, Lifeng Tian, Irina Kulikovskaya, Minnal Gupta, David E. Ambrose, Megan M. Davis, Joseph A. Fraietta, Jennifer L. Brogdon, Regina M. Young, Anne Chew, Bruce L. Levine, Donald L. Siegel, Cécile Alanio, E. John Wherry, Frederic D. Bushman, Simon F. Lacey, Kai Tan & Carl H. June
Decade-long leukaemia remissions with persistence of CD4+ CAR T cells
Nature (2022)
(2)
Kenji Ichiyama 1, Takashi Sekiya, Naoko Inoue, Taiga Tamiya, Ikko Kashiwagi, Akihiro Kimura, Rimpei Morita, Go Muto, Takashi Shichita, Reiko Takahashi, Akihiko Yoshimura
Transcription factor Smad-independent T helper 17 cell induction by transforming-growth factor-β is mediated by suppression of eomesodermin
Immunity. 2011 May 27;34(5):741-54
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿