2022年2月15日火曜日

鬱の頻度と循環器系疾患の疫学調査

鬱は心の風邪ともいわれます。
通常の身体の風邪であって、高熱が出れば、
病院で処方された薬や市販薬を飲んで治療をします。
しかし、鬱に関しては
少なくとも日本では本人が気づかない事も多く
そのまま治療をせずに放置している場合もあると言われます。
基本的には何か明らかにわかる原因があって
気分が落ち込んでいる時には、
その原因を取り除くことをしますが、
原因が特にないのに気分が沈み込んでいる時には
鬱の症状を疑う必要があるとされています。
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鬱は脳神経のバランス崩れて生じていると考えるのが普通ですが、
実際には神経は抹消神経も含めて
身体のあらゆるところとつながり、
正常に、恒常的に働くように制御しています。
従って、脳神経系に異常が出ると
身体の機能にも影響を与える事になります。
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Michael C. Honigberg(敬称略)らの
数十万人規模の調査によると
鬱の頻度が高ければ、高いほど
心臓血管疾患、糖尿病、心房細動などの
循環器系の疾患のリスクが高まることが示されました(1)。
例えば、Ⅱ型糖尿病であれば、
半分以上の日が抑うつ状態の人は
うつの症状がない人に比べて、
30%以上リスクが高まるとされています。
これは、様々な交絡因子を取り除いた後の比較です。
交絡因子とは鬱と関連がある
・肥満
・運動の頻度
・喫煙
・食生活
・睡眠時間
これらの要因であります。
これらの要因を群ごとできるだけ近づけて
比較されています。
このような鬱に連動した傾向は
男性よりも女性に強いと言われています。
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なぜ、鬱は
心臓血管疾患、糖尿病、心房細動のリスクを高めるのか?
生理学的な理解は完全ではありません。
その中で、
・自律神経の乱れ
・神経内分泌系の乱れ
・全身の炎症反応の高まり
これらが指摘されています(2-5)。
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鬱は比較的若い人が罹りやすいという言われており、
Michael C. Honigberg氏らの調査でも
同様の結果となっています(1)。
症状から疑われるときには
精神科に行くことをためらわず早期の治療が望まれます。
一度、うつ状態から薬などの力を借りて
回復する経験を積むと
それが自身の成功体験にもなります。
そうすると再発を防ぐことができ、
結果として鬱の頻度、期間を下げる事ができて
全体としての生活の質が高まるだけではなく
上述した他の疾患への影響を小さくすることができます。

(参考文献)
(1)
Michael C. Honigberg, Yixuan Ye, Lillian Dattilo, Amy A. Sarma, Nandita S. Scott, Jordan W. Smoller, Hongyu Zhao, Malissa J. Wood & Pradeep Natarajan 
Low depression frequency is associated with decreased risk of cardiometabolic disease
Nature Cardiovascular Research (2022)
(2)
Vaccarino, V. et al. 
Depression and coronary heart disease: 2018 position paper of the ESC working group on coronary pathophysiology and microcirculation. 
Eur. Heart J. 41, 1687–1696 (2020).
(3)
Penninx, B. W. 
Depression and cardiovascular disease: epidemiological evidence on their linking mechanisms. 
Neurosci. Biobehav. Rev. 74, 277–286 (2017).
(4)
Miller, A. H. & Raison, C. L. 
The role of inflammation in depression: from evolutionary imperative to modern treatment target. 
Nat. Rev. Immunol. 16, 22–34 (2016).
(5)
Khandaker, G. M. et al. 
Shared mechanisms between coronary heart disease and depression: findings from a large UK general population-based cohort. 
Mol. Psychiatry 25, 1477–1486 (2020).


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