//背景//---
Vasanti S. Malik & Frank B. Hu(敬称略)らは
各地域の肥満率と砂糖入り飲料の一定の関係性を示されています(2)。
砂糖入り飲料の平均摂取量が少ない
アジアの地域では、肥満率も低くなっています。
世界全体でみると
1975年から2016年にかけて
肥満率は男性で3%⇒11%、女性は6%⇒15%と上昇しています(3)。
--
このように肥満率が高まることで
高血圧、Ⅱ型糖尿病、冠動脈心疾患などのリスクが高まります(2)。
これらの疾患は互いに相乗効果がある事から、
肥満というのは心臓血管疾患に対して
1つの大きなリスク因子であると考えられます。
--
WHOが示している2019年の死因のトップは
虚血性心疾患です。
2位は脳卒中です。
虚血性心疾患と脳卒中は関連性が考えられることから
冠動脈心疾患は世界の寿命を決めている大きな要因である
ことがわかります。
また肥満の少ない日本、韓国では
死因の一位は癌です。
従って、上述した肥満は冠動脈系心疾患の大きな要因である
と推定することができます。
--
しかしながら、虚血性心疾患は
冠動脈の動脈硬化や血管壁の破壊
免疫惹起、プラークの蓄積など
肥満ではなくても高齢になるとリスクが高まります。
上述したように生活習慣や治療によって
肥満を改善していく事は基礎としてありますが、
身体の全体の状態を決める循環器系
特に冠動脈の効果の生理、
そこから治療の道筋を立てる事は
これから高齢化社会を迎える中で非常に重要になります。
--
Suzanne E. Engelen, Alice J. B. Robinson, Yasemin-Xiomara Zurke & Claudia Monaco
(敬称略)からなる医療研究グループは
動脈硬化の生理機序について免疫系も含めて
整理し、どのように治療を進めていくか総括されています(1)。
この報告を参照しながら、共にこの記事で考えていきます。
//視覚的情報を基礎とした概要//---
(参考文献(1) Fig.2)
高コレステロール血症になることで血液の粘性が高まり
コレステロール起因の抗原ApoB-LPなどが
血管壁を超えて滲出しやすくなります。
これは壊死性コアや動脈硬化によって
血管の連結性などが弱まって、リーキーになっている時には
より顕著であると考えられます。
--
コレステロール起因の抗原は
自然免疫系である単球/マクロファージによって
認識され、一部は食され、
・炎症性サイトカイン生成
・成長因子生成
・細胞外マトリックス劣化酵素生成
・マクロファージNET形成
・活性酸素生成
これらが生じます。
また抗原認識したマクロファージは細胞死して
血管壁の隆起の原因となる壊死性コアを生成します。
また生成されたNETにおり平滑筋細胞が破壊され、
それも壊死性コアの形成に関与します。
このような免疫活性は平滑筋細胞だけではなく
血管内皮細胞も劣化、線維化させっます。
サイトカインの生成には
抗原提示細胞によって活性化されたT細胞、B細胞など
獲得免疫系の改変も関わっています。
//動脈硬化と単球の関係//---
一般的な単球は
ケモカインCCR2, CCR5, CX3CR1。
これらからの走化性によって、
動脈硬化の病変部位に運ばれます(4,5)。
この単球は後に示す、
マクロファージや樹状細胞に分化します。
単球の表現型
Ly6C^high-単球は動脈硬化を悪化させる
粉瘤やプラークの不安定性に関連します(6,7)。
一方、この表現型
Ly6C^low-単球は動脈硬化の退行に貢献し、
血管内皮細胞を健全に保つために重要な役割を果たします(8)。
従って、
Ly6Cに対して活性両極の単球のバランスが
病変部位の進行、退行において重要な役割を果たしている
と考えられます。
//動脈硬化とマクロファージ//---
単球は動脈硬化初期において
血管内皮組織在住型のマクロファージの構成を
制御します(9)。
一方、マクロファージは病状が進行するにつれ
病変部位で蓄積するようになります(10)。
--
Endothelial hyaluronic acid receptor 1
(LYVE1)。
これが活性なマクロファージは
病変部位を退行させるのに貢献します(11)。
一方、
血管内膜組織在住型のマクロファージは
病変部位を進行させると言われています(12)。
従って、
動脈硬化の治療をマクロファージ依存的に行う際には
LYVE1+マクロファージを促進させて、
内膜組織常在型のマクロファージを退行させるような
治療システムを組むことが大切になります。
マクロファージは
通常はM1, M2極性で考えられる事が多いですが、
上述したようなマクロファージの異種性があります。
--
泡沫細胞はM2極性の脂質を持ったマクロファージです。
これは血管の閉塞、内皮の隆起の元ととなる
壊死性コアの脂質による形成に関わります。
また、TREM^highマクロファージは
脂質形成の恒常性を担い、プラークの形成に
関与していると考えられています(13-16)。
//動脈硬化と樹状細胞//---
樹状細胞は獲得免疫系と連携をとる機能があります。
それによってT細胞、B細胞の機能が高まります(1)。
樹状細胞は可動性に富んでおり、
ケモカインCCL9, CCL21などから走化性を獲得し
リンパ節に分布することもできます(17)。
この事が、獲得免疫系との連携に関わっている
可能性があります。
--
樹状細胞は動脈硬化を促進、抑制と両方の機能を
有しています。
CCL17に反応する樹状細胞は動脈硬化を促進します(18)。
CD103+cDC1s。
これは制御型T細胞依存的に動脈硬化を抑制します(19)。
//動脈硬化と好中球//---
好中球は動脈硬化のあらゆるステージに関与します(20)。
好中球を除去すると動脈硬化は改善する一方で、
循環している好中球が増加すると
粉瘤の形成を促進してしまいます(21)。
--
好中球は活性酸素を放出して血管炎症を起こす働きがあります。
それによって血管壁の浸透率が高まり、バリア機能が下がります(22)。
それによって組織に抗原や免疫細胞が滲出しやすくなります。
--
好中球細胞外トラップ(NETs)は粉瘤の不安定性、成長を
誘発する働きがあります。
このNETsは粉瘤の腐敗や血小板の凝集などを導き
血栓症を引き起こす原因となります(23)。
--
一方で、好中球は内皮修復や血管生成など
回復的な役割を同時に有しています(24)。
//動脈硬化とT細胞//---
T細胞はマクロファージよりも動脈硬化粉瘤部において
細胞数が多いとされています(25)。
T細胞は活性度は高まっていますが、
疲弊(exhaustion)関連遺伝子も周辺のT細胞よりも
高まっています。
また免疫チェックポイントPD1も多く発現されており、
T細胞のエフェクター機能を低下させ、
B細胞を通じた慢性的な抗原の発出に寄与しています(25,26)。
--
CD4+T細胞は動脈硬化を促進、抑制する
両方の機能を有しています。
Th1タイプの細胞は動脈硬化を促進します。
制御性T細胞はIL-10, TGFβを通じて
動脈硬化を抑制します(27)。
ApoB-反応性CD4+T細胞は制御型T細胞を
炎症表現型に変える働きがあり、
病状の悪化に寄与する可能性が示唆されています(28)。
--
CD8+T細胞はIFN-γとマクロファージの活性化を通じて
動脈硬化を促進すると言われていまう。
一方、B細胞を通じて動脈硬化から守ると言われています(27)。
--
iNKT細胞は粉瘤の近くに多く存在しますが
実際の動脈硬化に対する機序は明らかではありません。
//動脈硬化とB細胞//---
B細胞は液性免疫の機序で酸化特異的なエピトープを認識して
動脈硬化に関わる炎症性を抑える抗体を発現します(1)。
B細胞は過渡的な状態、濾胞性のB細胞や
そこから分化したプラズマ細胞などがあります(29)。
しかし、B細胞の機能はPDL1依存的に抑制される
ということがマウスのケースで示されています(30)。
//動脈硬化免疫治療の戦略一覧//---
(参考文献(1) Fig.3参照)
<自然免疫系>
IL-1, IL-6, TNF, p38
これらを標的として抑制します。
標的となる細胞は
単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞。
--
<獲得免疫系>
細胞増殖抑制剤
制御性T細胞を促進(IL-2)
--
<リポタンパク質>
Anti-oxLDL抗体
Lp-PLA2抑制剤
sPLA抑制剤
Anti-LOX1抗体
標的となる細胞はマクロファージ
--
<免疫抑制剤>
コルヒチン
低用量メトトレキサート
プレドニゾロンナノ粒子
デキサメタゾン
ヒドロキシクロロキン
標的となる細胞
マクロファージ、単球、樹状細胞
T細胞、B細胞
//考察//---
循環器に関連する疾患なので
CAR-T細胞治療、
細胞種特異的輸送系統(cell-type-specific delivery system)。
これらの治療効果が見込める可能性があります。
血管外側の実質に作用するものではなく
血管内皮及びその近傍に作用させる動脈硬化の場合
細胞や薬剤輸送に標的性を持たせた治療は
すでにリンパ腫などに対するCAR-T細胞治療で実績がある
からです。
例えば、Xiangang Huang, Chuang Liu(敬称略)ら
医療研究グループは
病変形成の因子となるCaMKIIγ遺伝子を
サイレンス(オフ)にすることを目的とした
siRNAのマクロファージまでの輸送を
PEGコート下ポリマー脂質複合体ナノ粒子の
PEG先端にマクロファージ受容体stabilin-2の標的ペプチドである
「S2P」を結合させる事によって効率化させようとしています(31)。
このようなナノ粒子を使った輸送の標的としては
Suzanne E. Engelen氏らは
壊死性コアに対してCD47, IL-10などが挙げられています(1)。
--
このように免疫細胞の表現型を
抗炎症作用に変わるように改変するための
遺伝子導入を行ったり、
炎症によって老化した細胞を除去したり(32)
壊死性コアを分解させたり
するような薬剤の効率的輸送を
細胞的輸送系統で行うことが考えられます。
特に免疫系の負担が強まっている事から
炎症によって生じている(かもしれない)
老化様細胞除去薬(Senolytics)を
効率的に動脈硬化の炎症部位に輸送することで
免疫的なバランスを整えることができる可能性があります。
(参考文献)
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Therapeutic Potential of Senolytics in Cardiovascular Disease
Cardiovasc Drugs Ther. 2022 Feb;36(1):187-196
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