2022年2月8日火曜日

新生児医療の現状と改善案

//背景//--------
新生児は早産などのリスクも高まっており、
特に中低経済所得国での死亡率は他の年齢層よりも高いです。
適切な医療を必要としている新生児は
高経済所得国でも多く存在します。
しかしながら、特に新生児に対する薬や医療機器の開発は
他の年齢層の患者さんよりもかなり遅れている
といわれています(1)。
例えば、2014年に小児用の薬の為に
406種類の薬の効果について総括されましたが、
新生児に適応できるデータはそのうちの7%に留まっていました(2)。
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なぜ、新生児は小児と比較しても難しいのでしょうか?
その理由は
①過渡期であるため病理の理解が複雑である。
②ほとんどが希少疾患であるため市場が小さい。
③適切な動物モデルがない。
④治験のハードルが高い。
⑤安全性、効果の評価が難しい。
これらが挙げられています(1)。
一つ一つ紐解いていきます。
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①に関して
週単位で体は成長していきます。
大人と比べれば急激な変化です。
健康な子供であっても
体内でどのような変化があるかわかりません。
従って、疾患がある場合において、
どのような理屈でそれが生じているかの理解は
大人と比べて非常に難しいと考えられます。
-
②に関して
絶対的な人数が少ない事と
特に安全性が求められる事で
製薬メーカーはリスクが高いと判断して
忌避する傾向にあるかもしれません。
従って、適切な薬剤や医療機器を提供するためには
新生児、特異的な工夫が必要です。
-
③に関して
マウスの寿命が5年だとすると
人のおおよそ1/20程度です。
成長曲線が仮に同じだとしたら、
新生児の時期も1/20に圧縮されます。
新生児は生後4週までなので
マウスでは約1-2日になってしまいます。
このような期間で動物実験する事はできません。
-
④に関して
人の命は年齢に関わらず平等です。
しかし、若い人の残された時間が長いのは事実です。
未来のある新生児の命は重いです。
その中で治験の安全性は特に神経を使う必要があります。
また、参加絶対数が少ないため
信頼性のあるデータを得るのも難しいです。
さらに参加した生後期間によって
細かく分類する必要もあります。
フォローアップの期間も長くとる必要があります。
治験に関しても様々な難しさがあります。
-
⑤に関して
身体が本来持っている状態と医療介入した効果の
切り分けが特に新生児では難しいと言われます(1)。
また、当然、新生児は自覚症状を
泣く以外に言葉にして伝えられませんから
臨床効果の情報が大人に比べて不足してしまいます。
また、希少疾患など難治性の疾患では
新生児の期間は命を落とす確率も高いため、
薬、医療機器の安全性を切り分けて評価するのが
難しいと考えられます。
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Tamorah Lewis, Kelly C. Wade & Jonathan M. Davis 
(敬称略)ら医療研究グループは
新生児医療を発展させるための困難性と機会について
総括されています(1)。
それを拝読したうえで、
今後、どのように改善していけるか?
自身の意見を交えながら情報共有したいと思います。

//改善できる方法論//
Pediatric Trials Network (PTN)は以下の改善案を
提案されています。
①微量採血
②薬の動力学モデル改善-計算など
③検体採血の最小化
④採血の有効活用
⑤電子機器の活用
これらです(1)。
遺伝性の疾患であれば、
⑥母親の臍帯血をとる
という事も考えられます。
他には
⑦便、尿、唾液などの検体の利用
これらも考えられます。

//筆者が考える工夫//--------
①散在している共同体同士のつながりを考える。
Tamorah Lewis氏らは分野横断的なチーム医療が重要である
といわれています(1)。
医者、看護師などの医療スタッフだけではなく
両親、研究者、スポンサー、資金提供団体、統計学者
あるいは自治体なども考えられます。
医師、看護師、研究者、製薬メーカーなど
専門性を有した人の他分野にまたがる連携は
総合医療が必要な新生児医療においては重要です。
そういった中で、世界では多くの共同体があります。
しかし、その共同体が散在しているため
より連携性を高めるためには
高次の国際的なコラボレーションが必要だと考えられます。
例えば、COVID-19においては
国際的な複数のチームがまたがった報告が挙げられています(3)。
このように複数の共同体が連携して
1つの報告を国際科学雑誌に上梓することは
新生児医療でも同様に必要になると考えられます。
このように共通化が進むと
今までのいくつかの課題を解決できる可能性があります。
--
②薬剤はリパーポスを中心に考える。
薬剤の安全性は重要であると考えられています。
しかし、臨床試験は難しいという課題もあります。
そうした場合の解決策としては
既に大人、青年、小児で承認された薬を
リパーポスするという考え方です。
新型コロナウィルスの薬でもレムデシビルなど
リパーポスが進みました。
例えば、③とつながりますが、
疾患のある新生児の細胞を初期化して、
すでにある薬を多く試す中で
薬の絞り込みを行い、新生児の治験に適用する
という考え方です。
すでにある薬は他の年齢では安全性が確かめられていますから
全く新しい薬を試すよりかは障壁は低くなります。
--
③新生児、人由来多能性幹細胞技術を駆使する。
②で示したように動物実験が難しい中で
好ましいと考えられるのは、
iPS細胞技術、臍帯血など
幹細胞技術を使う事によって、
新生児の状態を特異的に細胞分析することです。
動物実験が難しい中で
人工組織を作るこも意義が大きいです。
--
④表情、身体の動きと人工知能の関係
新生児においては言葉を発することができませんから
「苦しい」「痛い」といったことを
泣く、あばれる以外に表現する方法はありません。
表情や身体の動きと人工知能の解析によって
それらの「潜在的な言葉」を読み取ることができるか?
そうした研究も価値があると考えられます。
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⑤発達曲線を考慮した適応解析の改善
身体が日々大きくなっていく事が交絡因子となってしまいます。
それを考慮した適応解析の改善が求められます。

//まとめ//--------
新生児の医療の発達を実現するためには
より優れたデザインが必要になります。
その中には絶対的に存在する経済性も含まれます。
そこには革新性は必ずしも必要ないかもしれません。
すでに大人に使われてきた薬剤を
どのように有効に使うか?
そのためのデザインも考えられます。
それであれば経済性のギャップを埋めることができます。
新型コロナウィルスで培った
国際協力などは同様に新生児医療にも
コンセプトとして参考にすることができます。
そこをつなげるために
Tamorah Lewis, Kelly C. Wade & Jonathan M. Davis 
(敬称略)らが冒頭で述べているように
「新生児の医療が遅れている。」(1)
「多く救える命がある。」
ということをより多くの人に知ってもらう事も
大切であると考えられます。

(参考文献)
(1)
Tamorah Lewis, Kelly C. Wade & Jonathan M. Davis 
Challenges and opportunities for improving access to approved neonatal drugs and devices
Journal of Perinatology (2022)
(2)
Laughon MM, Avant D, Tripathi N, Hornik CP, Cohen-Wolkowiez M, Clark RH, et al.
Drug labeling and exposure in neonates. 
JAMA Pediatr. 2014;168:130 – 6.
(3)
Bo Meng, Adam Abdullahi, Isabella A. T. M. Ferreira, Niluka Goonawardane, Akatsuki Saito, Izumi Kimura, Daichi Yamasoba, Pehuén Pereyra Gerber, Saman Fatihi, Surabhi Rathore, Samantha K. Zepeda, Guido Papa, Steven A. Kemp, Terumasa Ikeda, Mako Toyoda, Toong Seng Tan, Jin Kuramochi, Shigeki Mitsunaga, Takamasa Ueno, Kotaro Shirakawa, Akifumi Takaori-Kondo, Teresa Brevini, Donna L. Mallery, Oscar J. Charles, The CITIID-NIHR BioResource COVID- Collaboration, The Genotype to Phenotype Japan (GP-Japan) Consortium members, Ecuador-COVID19 Consortium, John E. Bowen, Anshu Joshi, Alexandra C. Walls, Laurelle Jackson, Darren Martin, Kenneth G. C. Smith, John Bradley, John A. G. Briggs, Jinwook Choi, Elo Madissoon, Kerstin Meyer, Petra Mlcochova, Lourdes Ceron-Gutierrez, Rainer Doffinger, Sarah A. Teichmann, Andrew J. Fisher, Matteo S. Pizzuto, Anna de Marco, Davide Corti, Myra Hosmillo, Joo Hyeon Lee, Leo C. James, Lipi Thukral, David Veesler, Alex Sigal, Fotios Sampaziotis, Ian G. Goodfellow, Nicholas J. Matheson, Kei Sato & Ravindra K. Gupta
Altered TMPRSS2 usage by SARS-CoV-2 Omicron impacts tropism and fusogenicity
Nature (2022)

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