2022年2月5日土曜日

自己形成標的化ナノ粒子輸送によるアテローム性動脈硬化遺伝子治療

//Cell-type-specific delivery system//--
新型コロナウィルスのmRNAワクチンの普及によって、
今後、脂質ナノ粒子を使った薬剤というのは
ワクチンだけではなく、薬剤輸送媒体として
様々な疾患に対して応用されていくと考えています。
しかし、今のところ、
脂質ナノ粒子を特定の組織に合うように標的化された
形式で合成する方法はごく一部にとどまります。
mRNAワクチンの脂質ナノ粒子の技術の
延長線上で細胞種特異的輸送系統のコンセプトを
組み込むことができたら、
比較的、安価に実現することができるので、
発展途上国の人も含めて、より多くの人に薬剤を
届けることができます。
--
Xiangang Huang, Chuang Liu(敬称略)
からなる医療研究グループは、
Cell-type-specific delivery systemの
コンセプトを実現可能性が高い形で具現化されています(1)。
そのプロトコル(手続き、製造方法)が公開されています。
その技術の主要部を参照させていただき
読者の方と情報共有したいと思います。

//目的、ナノ粒子の合成//ーー
siRNAをアテローム性動脈硬化のマクロファージまで輸送して、
病変形成の因子となるCaMKIIγ遺伝子を
サイレンス(オフ)にすることを目的としています。
そのために、
ポリマー脂質複合体ナノ粒子によってsiRNAを
マクロファージ細胞質まで効率よく運ぶことを想定しています。
ここが一つのポイントです。
上述したポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)に
初めからマクロファージ受容体stabilin-2の標的ペプチドである
「S2P」をPEGの先端に結合させています。
(参考文献(1) Fig.2の赤玉)
ナノ粒子合成には静電気相互作用、疎水性相互作用
PEGコーティング、析出のためのナノ沈殿化(Nano-precipitation)
これらのプロセスを連続的に行うと
最終的に脂質の中にsiRNAが入り、
脂質の外側からポリマーが突出して
その一部にマクロファージ受容体stabilin-2
標的ペプチド「S2P」が先端で結合する状態になります。
従って、先端に存在するS2Pは
マクロファージを含めて、
アテローム性動脈硬化組織にあるstabilin-2に
結合してくれることが期待されます。
--
合成後、モフォロジー、大きさ、保護性などの検査を行って
マウスに注入して効果を見るということです。
想定しているタイムライン、スケジュールは
ナノ粒子の合成で3-5日
ナノ粒子の評価で8-10日
マウスの動脈硬化の臨床効果評価で4-5週間
これらとされています。

//考察//ーー
私が最も着目しているのは
マクロファージ受容体stabilin-2
S2P(CRTLTVRKC)
これらの結合性などの詳細情報です。
stabilin-2受容体自体は
肝臓の内皮、脾臓、リンパ節にも発現していると言われています。
しかし、動脈硬化プラークの様々な細胞に
多くみられる受容体であるとされています(2)。
従ってそこに特異性があります。
一方で、S2P(CRTLTVRKC)というのは
動脈硬化プラークの分子標的としてすでに知られています(2)。
ナノ粒子との複合体化についても研究されています(2)。
--
Xiangang Huang氏らは
この分子標的を利用しながら、
遺伝子的治療をナノ粒子を使って行う事です。
--
この方式で、マウスにおいて
動脈硬化が改善するかどうかの結果の評価については
これからであると認識しています。
--
脂質ナノ粒子を使った自己形成できる手法なので
私が想定している細胞種特異的輸送系統で
最も安価にできる方法だと考えています。
これも含めて、最も早い段階で実現する方法だと考えています。
mRNAワクチンの流れもあるので、
このような脂質ナノ粒子を使った自己形成できる
標的化技術は今後、進むと考えられます。
その時にはそれぞれの特異的受容体に対して
標的ペプチドであるS2Pのような
PEGに結合できる物質の探索が重要になります。

(参考文献)
(1)
Xiangang Huang, Chuang Liu, Na Kong, Yufen Xiao, Arif Yurdagul Jr., Ira Tabas & Wei Tao
Synthesis of siRNA nanoparticles to silence plaque-destabilizing gene in atherosclerotic lesional macrophages
Nature Protocols (2022)
--
Author information
Author notes
These authors contributed equally: Xiangang Huang, Chuang Liu.
Affiliations
Center for Nanomedicine and Department of Anesthesiology, Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA
Xiangang Huang, Chuang Liu, Na Kong, Yufen Xiao & Wei Tao
Department of Molecular and Cellular Physiology, LSU Health Shreveport, Shreveport, LA, USA
Arif Yurdagul Jr.
Department of Medicine, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY, USA
Ira Tabas
Department of Physiology and Cellular Biophysics, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY, USA
Ira Tabas
Department of Pathology and Cell Biology, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY, USA
Ira Tabas
(2)
Ga Young Lee 1, Jong-Ho Kim, Goo Taeg Oh, Byung-Heon Lee, Ick Chan Kwon, In-San Kim
Molecular targeting of atherosclerotic plaques by a stabilin-2-specific peptide ligand
J Control Release. 2011 Oct 30;155(2):211-7.


0 コメント:

コメントを投稿

 
;