2022年2月1日火曜日

COVID-19:変異に依存しない糖に結合する自然免疫系MBL抗体

//背景//
新型コロナウィルス感染症に関わらず、
インフルエンザでも同様にいえることです。
それは、体内に侵入した時に、
ウィルスのピーク量、あるいは時間積分量を如何に減らすか?
この事が重要であるということです。
ワクチンを接種すると中和抗体がウィルスの
細胞内感染を防いでくれるため、
ウィルスは細胞内で増殖する機会を奪われ、
結果として寿命を迎えて数を減らすことになります。
あるいは、ウィルスに強い体質の人は
自然免疫系や細胞性免疫、
それらが関わるインターフェロンなどのサイトカインが
抗ウィルス性を迅速に発揮して、
ウィルスの量を減らすことに貢献します。
しかしながら、
ウィルス量がある一定の量を超えてしまうと
身体はウィルス量をコントロールできなくなり、
免疫機能が暴走し、炎症を起こし、
新型コロナウィルスであれば、
肺炎などの症状を起こしてしまいます。
従って、
「ウィルスがある一定量に達する前に迅速に」
ウィルス量を何らかの方法で減らす必要があります。
そのためには
〇初期暴露量を減らす(マスク、長距離、短時間など)
〇ワクチン接種で中和抗体を作る
〇抗体産生をB細胞メモリ効果で速める
〇初期に働く自然免疫系を整える
〇細胞性免疫を整える
〇初期に抗ウィルス剤を投与する
、、、
これらの事が重要になります。
そうすれば、発熱などの症状はあるかもしれないですが、
肺炎を起こさずに軽症で済むと想定されます。
一旦、肺炎を起こし、組織の炎症が進むと
そこからの治療は一気に難しくなります。
免疫を調整しながら、痛んだ組織を回復させる必要があるからです。
その場合、回復までに時間がかかります。
--
Matteo Stravalaci, Isabel Pagani(敬称略)ら
医療研究グループは
B細胞、プラズマ細胞経由の獲得免疫による
液性免疫の機序とは別の
自然免疫細胞による液性免疫によって作られる
抗体について着目しています。
その抗体(MBL)と関連する遺伝子の形態が
新型コロナウィルスの
(少なくとも一部)重症化に関わる事を示されています(1)。
本日はその内容の中で
特に重要だと考える部分を引用させていただき、
自らの考察、調査を追記の上
読者の方と情報共有したいと思います。

//自然免疫系の液性免疫//
Fluid-phase pattern recognition molecules (PRMs) 
・Collectins (for example, MBL)⇒この報告で着目
・Ficolins
・Pentraxins 
   C-reactive protein (CRP)
   Serum amyloid P component (SAP) 
   PTX3
・C1q
これらが挙げられています(3-5)。

//マンノース結合レクチン(MBL)の働き//
Collectins、コレクチンであるMBLは
自然免疫細胞から(?)放出され、
新型コロナウィルスのSタンパク質の多糖のサイトに結合します。
従って、獲得免疫系の抗体が結合するRBDとは別のサイトに結合します。
結合している様子が参考文献(1)Extended Data Fig. 3
これに示されています。
<結合サイト>
The residues N603, N801 and N1074 on the same chain 
N603, N709 and N1074 with N709 on a different chain. 
--
「ここが重要なポイント」です。
この多糖の結合サイトはオミクロン株による
変異の影響をうけない部位になります(1)。
従って、変異に依存しない抗ウィルス効果が期待できます。
--
また、回復者の血漿からSARS-CoV-2が逃れる事がありますが、
これはこの多糖の結合による干渉によると推定されています(6)。

//MBL2遺伝子の変異//
このMBLの抗ウィルス能力は0.08μg/ml(0.27nM)であり
多い人ではこのMBLは10μg/mlに達すると言われています。
つまりおおよそ100倍ありますが、個人差があります。
その個人差を生むのがMBL2遺伝子の変異によります(7)。
つまり、MBL2遺伝子の状態が適さず
濃度が低かったり、MBLの形状が不全であったりすると
自然免疫系による抗体の中和能力が下がってしまうということです。
これはすでに、SARSで確認されています(8,9)。
変異による重症化のリスクが
参考文献(1)Table 1とTable 2に示されています。
例えば、
染色体10-52771482:G⇒A
このように変わるとリスクは1.434倍になります。
染色体10-53229424:C⇒T
このように変わるとリスクは3.474倍になります。
--
ここで示されたようなMBL2の変異と重症化の関連の
報告はほかでも示されています(10)。

//MBL抗体と関連する感染症//
SARSを含めたコロナウィルス以外に
・インフルエンザ
・HIVウィルス
・C型肝炎ウィルス
・ヘルペスウィルス
・ロタウィルス
これらが挙げられています(13)。
従って、自然免疫系のMBL抗体の健全性について考える事は
新型コロナウィルスに留まらず、他の感染症にも関わります。

//臨床応用、考察//
実際にMBL2遺伝子の好ましくない形態を持っている人で
MBLレベルが低い人には、MBLを補充する療法があります。
すでに子供を含めて、慢性的な肺の感染症になっている人で
MBLレベルが低い場合においてMBL補充療法が適用されています。
その安全性も証明されています(11,12)。
--
子供がなぜ新型コロナウィルスの軽症が多いか?
この議論において自然免疫系との関連がいくつかの報告で示されています(14,15)。
自然免疫系は植物などにもあり原始的であるといわれます。
胎児から新生児になりそこから成長して大人になるにかけて
外界の微生物、ウィルスなど様々なリスクがあります。
免疫の発達ラインを見ると
ヘルパー免疫のTh2が顕著に反応性が子供で高くなっていますが、
Th1と自然免疫系と比較するとその差は発育に対して変わらないのですが
(つまりほぼ平行に発達していくのですが)、
比率で見ると若い子供のTh1、自然免疫系の値が低いことから
自然免疫の重要性がTh1よりも高いとみる事も出来ます。
(参考文献(2) Figure.1参照)
そうするとよりこの報告(1)の内容が
子供の免疫を考える上で重要になると考えました。
明らかにMBLが低い場合ではなくても
呼吸器感染症などに罹りやすい子供において、
MBL2遺伝子の状態を調べる事、場合によってMBLを投与する事は
検討の余地があるかもしれません。
--
また新型コロナウィルスやインフルエンザにおいても
抗体カクテル療法がありますが、
その抗体を自然免疫系のMBL抗体に変更するという事も考えられます。
そうすれば、オミクロン株にも効果があるかもしれません。
今後の生じるかもしれない変異株に対しても同様です。
しかしながら、MBLは「諸刃の剣」と呼ばれます。
免疫の活性を高めたり、炎症を制御できなくなるため、
処方するタイミングが非常に重要になると考えられます。
抗ウィルス薬と同様に初期に投与することです。

(参考文献)
(1)
Matteo Stravalaci, Isabel Pagani, Elvezia Maria Paraboschi, Mattia Pedotti, Andrea Doni, Francesco Scavello, Sarah N. Mapelli, Marina Sironi, Chiara Perucchini, Luca Varani, Milos Matkovic, Andrea Cavalli, Daniela Cesana, Pierangela Gallina, Nicoletta Pedemonte, Valeria Capurro, Nicola Clementi, Nicasio Mancini, Pietro Invernizzi, Rafael Bayarri-Olmos, Peter Garred, Rino Rappuoli, Stefano Duga, Barbara Bottazzi, Mariagrazia Uguccioni, Rosanna Asselta, Elisa Vicenzi, Alberto Mantovani & Cecilia Garlanda 
Recognition and inhibition of SARS-CoV-2 by humoral innate immunity pattern recognition molecules
Nature Immunology (2022)
(2)
A. Katharina Simon, Georg A. Hollander and Andrew McMichael
Evolution of the immune system in humans from infancy to old age
Proceedings of the Royal Society B 22 December 2015
(3)
Bottazzi, B., Doni, A., Garlanda, C. & Mantovani, A. An integrated view of 
humoral innate immunity: pentraxins as a paradigm. Annu. Rev. Immunol. 
28, 157–183 (2010).
(4)
Holmskov, U., Thiel, S. & Jensenius, J. C. Collections and ficolins: humoral 
lectins of the innate immune defense. Annu. Rev. Immunol. 21, 547–578 (2003).
(5)
Garlanda, C., Bottazzi, B., Magrini, E., Inforzato, A. & Mantovani, A. PTX3, a 
humoral pattern recognition molecule, in innate immunity, tissue repair, and 
cancer. Physiol. Rev. 98, 623–639 (2018).
(6)
Andreano, E. et al. SARS-CoV-2 escape in vitro from a highly neutralizing 
COVID-19 convalescent plasma. Preprint at bioRxiv https://doi.
org/10.1101/2020.12.28.424451 (2020).
(7)
Garred, P. et al. A journey through the lectin pathway of complement–MBL 
and beyond. Immunol. Rev. 274, 74–97 (2016).
(8)
Zhang, H. et al. Association between mannose-binding lectin gene 
polymorphisms and susceptibility to severe acute respiratory syndrome 
coronavirus infection. J. Infect. Dis. 192, 1355–1361 (2005).
(9)
Yuan, F. F. et al. Influence of FcγRIIA and MBL polymorphisms  
on severe acute respiratory syndrome. Tissue Antigens 66,  
291–296 (2005).
(10)
Medetalibeyoglu, A. et al. Mannose binding lectin gene 2 (rs1800450) 
missense variant may contribute to development and severity of COVID-19 
infection. Infect. Genet. Evol. 89, 104717 (2021).
(11)
Garred, P. et al. Mannose-binding lectin (MBL) therapy in an MBL-deficient 
patient with severe cystic fibrosis lung disease. Pediatr. Pulmonol. 33,  
201–207 (2002).
(12)
Jensenius, J. C., Jensen, P. H., McGuire, K., Larsen, J. L. & Thiel, S. 
Recombinant mannan-binding lectin (MBL) for therapy. Biochem. Soc.  
Trans. 31, 763–767 (2003).
(13)
Holmskov, U., Thiel, S. & Jensenius, J. C. Collections and ficolins: humoral 
lectins of the innate immune defense. Annu. Rev. Immunol. 21, 547–578 (2003).
(14)
J. Loske, J. Röhmel, S. Lukassen, S. Stricker, V. G. Magalhães, J. Liebig, R. L. Chua, L. Thürmann, M. Messingschlager, A. Seegebarth, B. Timmermann, S. Klages, M. Ralser, B. Sawitzki, L. E. Sander, V. M. Corman, C. Conrad, S. Laudi, M. Binder, S. Trump, R. Eils, M. A. Mall & I. Lehmann 
Pre-activated antiviral innate immunity in the upper airways controls early SARS-CoV-2 infection in children
Nature Biotechnology (2021)
(15)
Filippos Filippatos , Elizabeth-Barbara Tatsi , Athanasios Michos
Immune response to SARS-CoV-2 in children: A review of the current knowledge
Pediatr Investig. 2021 Aug 17;5(3):e12283. 


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