細胞種特異的輸送系統。
(Cell-type-specific delivery system)。
これで薬剤を輸送する場合、
おそらくその輸送媒体は今の流れから
脂質ナノ粒子を想定している方が多いと思います。
しかし、考えられる輸送媒体としては
ウィルスもあるし、細胞もあります。
私としては、難しくても細胞の輸送媒体を使えるようにしたい
というのがあります。
その理由は、
iPS細胞によって様々な細胞種が任意に選択できる事、
また、
アンカーに使う表面タンパク質を遺伝子で形成できる事
これらが挙げられます。
実際に細胞を輸送媒体とできるかどうか?
これについて議論はすでにされています(1)。
ーー
その中で細胞内に異物が入ると
細胞はそれをオートファジーによって分解する
機序が働くので輸送物をそのまま維持するのが
難しいと言われています(1)。
また細胞自体も死亡してしまうと言われています(1)。
あるいは標的位置で細胞死してしまうと
細胞内の小器官や遺伝子などが放出されてしまいます。
それが作用機序を複雑にする可能性もあります。
シンプルにナノ粒子で輸送したほうがいい
という考え方は自然ではあります。
ーー
一方、
細胞内にはエンドソームという小胞を作る機能があります。
細胞膜に異物が近づいたときに
細胞膜がそれを取り囲んで、
まずはそれを包んで細胞内に運ぶ。
細胞外に出るときにはエンドソームから
細胞膜と融合して、膜が解かれて外に出る。
細胞内に入るのはエンドサイトーシス。
細胞外に出るのはエキソサイトーシス。
このように呼ばれます。
ーー
もし、小胞が解かれる機能を細胞内でストップして
細胞内で小胞に包まれたまま薬剤を運ぶことができたら
細胞を輸送媒体として使うことができる可能性があります。
イメージとしては
外で細胞に薬剤をエンドサイトーシスさせて
その小胞を維持させて、
標的の部位でエキソサイトーシスさせます。
ーー
しかし、仮にそれができたとしても
薬剤輸送経路の中での他の物質の取り込みに対して
輸送する薬剤だけの取り込みの特異性をどうやって
持たすことができるか?という問題が生じます。
経路でのあらゆる物質の取り込みに対して
小胞の維持が生じてしまうと
物質の循環が崩れる事を意味するので
それで細胞死してしまう可能性もあります。
あとは時間の問題もあります。
標的まで維持する事ができるか?
ーー
一方で、そのような細胞内小器官の恒常性が崩れると
細胞内の自然免疫系統が働き、
ダメージを受けた細胞内小器官が
外部へ流れ出してしまうという現象が生じる可能性がある
ということです(3)。
従って、細胞内の基本的な機能を欠如させる事は
根本的に難しい可能性が考えられます。
但し、免疫惹起も含めてリスクを考慮したうえで
下述するように実験してみないとわからない部分もあります。
ーー
ただ、細胞内にそのまま物質を入れるか?
あるいは細胞内の物質が薬剤となるように仕組むか?
といったことよりも
細胞内の小胞に包んだ状態を維持させて運ぶ
というほうが薬剤の選択性は上がります。
小胞の径が250-1000nm(2)。
低分子量薬剤では数nmくらいの単位なので
大きさとしては大丈夫です。
ーー
これが明らかに不可能か、そうではないのか?
といった議論は実際に実験してみないとわからないですが、
なんとか細胞を薬剤輸送媒体として使う道がないか?
継続的に探っていきます。
ーー
細胞による輸送を諦めない理由は、
iPS細胞は山中先生であり
共に日本人が考えた技術であるので、
なんとか融合させて付加価値を生みたいという思いは
少なくとも日本では追い風になる可能性がある
という風にも考えているからです。
他に良いアイデアがあれば、知恵を貸していただきたい。
このように考えています。
(参考文献)
(1)
Vivien Marx
Cell biology: delivering tough cargo into cells
Nature Methods volume 13, pages37–40 (2016)
(2)
Jatta Huotari and Ari Heleniusa
Endosome maturation
EMBO J. 2011 Aug 31; 30(17): 3481–3500.
(3)
Cassandra R. Harapas, Elina Idiiatullina, Mahmoud Al-Azab, Katja Hrovat-Schaale, Thomas Reygaerts, Annemarie Steiner, Pawat Laohamonthonkul, Sophia Davidson, Chien-Hsiung Yu, Lee Booty & Seth L. Masters
Organellar homeostasis and innate immune sensing
Nature Reviews Immunology (2022)
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿