2022年2月14日月曜日

免疫系干渉が少ない輸送効率の高いナノ粒子設計の推定

//背景//
もともと、ナノ粒子を使った治療は
免疫系を訓練させるものであったとされています(1)。
新型コロナウィルスのワクチンでは
mRNAがタンパク質を生み出す細胞は
自然免疫系の細胞であると言われています。
上流、下流のプロセスで獲得免疫系も含め
自然免疫系もトレーニングされます。
従って、少なくともナノ粒子を特定の臓器や組織に
届けるのではなく、免疫細胞に認識させる事を目的とします。
自然免疫系の細胞は循環器に普遍的に存在するので
輸送効率も高めやすいという事が考えられます。
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一方、ナノ粒子の中に薬剤を入れて、
癌細胞、動脈硬化-炎症部位まで運んで
細胞死、組織修復を促す場合に
効率的な輸送が一つの大きな目標となります。
このようなサイトの付近は
血管壁が崩れていることが多いので、
ナノ粒子が血管から滲出しやすいと言われています。
通常、ナノ粒子は血管から滲出する割合は低いので
結果、癌組織や炎症部などに蓄積しやすいと言われています(2)。
しかし、
こうした輸送を阻む機序は体内に多く存在します。
ナノ粒子の大きさにもよりますが、
腎臓でろ過されないくらい以上の大きさであれば、
通常は血管からの滲出が起きやすい臓器である
腎臓、肝臓、脾臓
これらの臓器に蓄積しやすいと言われています(1)。
また
ナノ粒子自身が免疫細胞などによって
分解されたり、食されたりすることも考えられます。
あるいは免疫系の働きを高めてしまう事があり、
それが副作用に繋がる事も考えられます。
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例えば、
ポリエチレングリコール(PEG)を
ナノ粒子にコーティングすると
細胞による食作用や肝臓の蓄積を
避けることができるといわれています(3)。
従って、薬剤の体内循環の寿命は長くなります。
このような長寿命化のシステムをナノ粒子に与える事は
細胞種特異的系統
(Cell-type-specific delivery system)。
これでも重要です。
それによって細胞種特異的輸送の差別化を
図りやすくなるからです。
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では、どうやって免疫系の応答から
逃れることができるか?
これについての考察を下述します。

//考察//
導入したナノ粒子と骨髄系細胞を含む免疫細胞との
干渉効果、相互作用が大きい状態だと
免疫細胞は循環器に普遍的に存在するので
あらゆるところで分解、取り込みの機会を与えてしまい
輸送効率は劇的に下がることが推定されます。
また免疫系の副作用の原因となります。
従って、できるだけ
免疫耐性のあるナノ粒子を選択する必要があります。
自然免疫系は
パターン認識受容体によって
ナノ粒子などの「異物」を判断します。
このパターン認識受容体は
TLR, Dectin, MR, DC-SIGN, Mincle, MBL,
CD36, Galectinなど
多くの受容体が存在しています。
従って、これらの受容体が働かないような構造を
選択する必要があります。
また、
なぜ、体内に普遍的に存在している物質と
これらの受容体の感受性が低くなっているのか?
それについても調べる必要があります。
生体模倣(Biomimetic)という概念がありますが、
身体の中にある脂質などの物質と構造、成分が近い
ナノ粒子を選ぶことによってどうなるか?
という考え方もあります。
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一方で、PEGコーティングすることで
薬剤の寿命が長いといわれています。
PEGコーティングした時のナノ粒子の構造を見ると
ナノ粒子の周りに無数の長い糸状のものが
外側に突出していることがわかります。
(参考文献(4) Figure.1)
そうすると外側で主に免疫細胞と相互作用するのは
ナノ粒子のエンベロープ膜ではなく
PEGの先端ということになります。
もし、PEGと免疫細胞の感受性が低いのであれば、
仮に内側のナノ粒子が免疫反応性を生み出しやすいとしても
外側のPEGによって守られている事から
実際の感受性はPEGに依存すると想定されます。
これがPEGコーティングナノ粒子が
体内で干渉されにくいことと
関係している可能性があります。
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しかし、こうすることで難しくなるのが
細胞種特異的な標的化をどのように組み込むか?
ということです。
一番理想的なのは外側近くに
細胞種特異的なたんぱく質と結合しやすい
タンパク質、ペプチドを結合させる事です。
イメージとしては
参考文献(4)のFigure.1の下側の構造です。
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こうした考えに従えば、
ナノ粒子の周りに装飾させる鎖状、糸状の
アスペクト比の大きな材料において、
「体内に多く存在する物質」を選択すれば、
免疫系を刺激しにくいシステムを構築できる可能性があります。
例えば、ナノ粒子の生体高分子コーティングする
報告が挙げられています(5)。
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また、外側の装飾部分は
ナノ粒子の大きさを変えるよりも
最外径を調整しやすいということもあるかもしれません。
また径が与える生体への影響も
糸状構造の可塑性、弾力性によって変わる可能性が考えられます。
PEGは弾力性が高いと言われています。
大きさのメリットを生かしつつ、
エンドサイトーシスなど大きな力が働いたときは
径を小さくできるというのがあるかもしれません。
つまり、肝臓などでは蓄積されにくいけど
標的細胞でエンドサイトーシスされるときには
径を小さくすることができるということが
生じるかどうか?ということです。

//まとめ//
ナノ粒子を使った医療応用は
免疫系を訓練させるためにまずは発展し、
実用可能性ではこちらの方がメインだと言われています。
一方で、
今まで難しいとされていた
ナノ粒子を使った薬剤輸送においては
ナノ粒子の外側の接触部分を如何に生体適合性の高い
材料で覆うか?という事が大切であると推定しています。

(参考文献)
(1)
Mandy M. T. van Leent, Bram Priem, David P. Schrijver, Anne de Dreu, Stijn R. J. Hofstraat, Robby Zwolsman, Thijs J. Beldman, Mihai G. Netea & Willem J. M. Mulder
Regulating trained immunity with nanomedicine
Nature Reviews Materials (2022)
(2)
Matsumura, Y. & Maeda, H. 
A new concept for macromolecular therapeutics in cancer chemotherapy: mechanism of tumoritropic accumulation of proteins and the antitumor agent smancs. 
Cancer Res. 46, 63863-92 (1986).
(3)
Allen, T. M., Hansen, C., Martin, F., Redemann, C.  & Yau-Young, A. 
Liposomes containing synthetic lipid derivatives of poly(ethylene glycol) show prolonged circulation half-lives in vivo. 
Biochim. Biophys. Acta 1066, 29–36 (1991).
(4)
Raoul V. Lupusoru, Daniela A. Pricop, Cristina M. Uritu, Adina Arvinte, Adina Coroaba, Irina Esanu, Mirela F. Zaltariov, Mihaela Silion, Cipriana Stefanescu & Mariana Pinteala 
Effect of TAT-DOX-PEG irradiated gold nanoparticles conjugates on human osteosarcoma cells
Scientific Reports volume 10, Article number: 6591 (2020)
(5)
A. Joseph Nathanael and Tae Hwan Oh
Biopolymer Coatings for Biomedical Applications
Polymers (Basel). 2020 Dec; 12(12): 3061


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