いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
細胞特異的に特定の物質を輸送させるときに、
狙いの細胞に物質を届けるための
想定している方略として、
細胞表面から出ている受容体にテザリングすることです。
しかし、標的細胞以外にも同じ受容体があると
そこにも固定されているため
意図したところと違うところに輸送されてしまいます。
また輸送するときには
マイクロオーダーと比較的大きな粒子を想定しているため
アンカーとして構造的に強い受容体が
望ましいと考えられます。
従って、本来持つ性質として
細胞の接着機能があるような受容体は
細胞同士をつなげて固定する役割があるため
構造的に強い可能性が高く、
特定の物質を封入した粒子の固定には適している
可能性があります。
その細胞同士をつなげる役割を持つ受容体が
「カドヘリン(Cadherin)」です。
このカドヘリンは構造的には
5つのドメイン構造(ECドメイン)を繰り返すものです。
(参考文献(1) Figure 1より)
このカドヘリンは
〇Classical / 〇Desmosomal
〇Protocadherins / 〇Unconventional-ungrouped
に大分類され、その種類は120種類あるともいわれます(2)。
これだけ多様な種類があるために
病変部位に特異的に存在する変異した細胞だけに
発現される型のカドヘリンがある可能性はあります。
しかし、カドヘリンには接着特異性が少なく
手あたり次第結合する性質を持つといわれています(3)。
また型の違いは細胞外にはなく
細胞質内にある場合もあります。
(参考文献(1) Figure 1より)
従って、特異的な結合面を見出せるかどうか?
もしそうであったとしても、
高い結合性のために特異性を持たせた装飾因子であっても
標的細胞以外の別の型のカドヘリンと
結合してしまう可能性も考られます。
このようなカドヘリンは
細胞の接着に関わっていますから、
細胞が数を増やして塊を作って組織化する
癌細胞の成長にも関わっています。
その時に通常細胞では
Eカドヘリン(CDH1)が関わっています、
接着機能を果たすカドヘリンが
間葉系のカドヘリンであるNカドヘリン(CDH2)に
癌細胞の成長ではスイッチする事が知られています(4)。
しかしながら、このような傾向は
普遍的にみられるのではなくEカドヘリンでも
腫瘍組織を促進するものもあります。
様々なカドヘリンが特定の癌に対して
亢進と抑制の機能を果たしています。
(参考文献(1) Table 1より)
例えば、大腸癌に進行する前には
異常腺窩巣、過形成、ポリープなど
腸の表皮に組織的な異常が段階的にみられますが、
その初期の段階から細胞同士を繋ぐ
カドヘリンに改変が起き
Pカドヘリン(CDH3)が発現されているといわれています(5)。
このPカドヘリンは、通常は大腸にはなく
胎盤(placenta)や
皮膚、口、食道、膣の表層(stratified squamous epithelia)
で発現しているといわれています(6)。
従って、Pカドヘリン自体は
癌細胞だけに特異的に見らえる細胞接着因子ではありません。
従って、もし腸だけに届けるのであれば、
胃で溶けるようなカプセルに
ナノ粒子を入れて、口や食道で作用するのを防いだ後
腸の病変部位に見られるPカドヘリンに作用させることが
考えられます。
また先ほど述べた様に
特定の型のカドヘリンには癌を抑制する場合
あるいは促進する場合両方が存在すると考えられますが、
例えば、Pカドヘリンでいえば
IGF1R(インスリン様成長因子1受容体)
とクラスタリングして結合した時には
あるいはEカドヘリンが欠損した時には、
癌細胞を促進する働きがあるけど、
単体では抑制する働きがあるかもしれない
と考えられています。
(参考文献(1) Figure 2)
従って、上述したような腸の組織の炎症が見られた時に
特異的にPカドヘリンの発現が見られるのか?
ということはこのカドヘリンをアンカーにして
腸の病変部位を標的とする場合には
見極める必要があります。
このPカドヘリンを標的にする場合には
このカドヘリンが持つ構造上の特異性が必要です。
例えば、
Tカドヘリン(CDH13)とEカドヘリン(CDH1)の
構造を比べても最も細胞外側にあるECドメイン(EC1)の
構造は異なります。
(参考文献(7) Figure 2 (e) 左と右の比較)
しかし、その構造は遺伝子変異が入ると異なるので、
構造の詳細をみれば、同じ型のカドヘリンでも
構造が多数存在することは考えられます。
(参考文献(7) Figure 2 (e) 真ん中と右の比較)
従って、カドヘリンに繰り返し形成される
ECドメインの構造は微細にみれば、
細かく変化しうると考えられます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Frans van Roy
Beyond E‑cadherin: roles of other cadherin superfamily members in cancer
Nature Reviews Cancer volume 14, pages121–134(2014)
doi.org/10.1038/nrc3647
(2)
Wikipedia:Cadherin
(3)
Carien M. Niessen, Barry M. Gumbiner
Cadherin-mediated cell sorting not determined by binding or adhesion specificity
J Cell Biol (2002) 156 (2): 389–400.
doi.org/10.1083/jcb.200108040
(4)
Ugo Cavallaro et al.
Cadherins and the tumour progression: is it all in a switch?
Cancer Letters Volume 176, Issue 2, 25 February 2002, Pages 123-128
(5)
R G Hardy, C Tselepis, J Hoyland, Y Wallis, T P Pretlow, I Talbot,DSA Sanders, G Matthews, D Morton,JAZ Jankowski
Aberrant P-cadherin expression is an early event in hyperplastic and dysplastic transformation in the colon
Gut vol.50 issue.4 p.513 (2002)
dx.doi.org/10.1136/gut.50.4.513
(6)
Shimoyama Y, Yoshida T, Terada M, et al.
Molecular cloning of a human Ca2+-dependent cell-cell adhesion molecule homologous to mouse placental cadherin: its low expression in human placental tissues.
J Cell Biol 1989;109:1787–94
(7)
Carlo Ciatto, Fabiana Bahna, Niccolò Zampieri, Harper C VanSteenhouse, Phini S Katsamba, Goran Ahlsen, Oliver J Harrison, Julia Brasch, Xiangshu Jin, Shoshana Posy, Jeremie Vendome, Barbara Ranscht, Thomas M Jessell, Barry Honig & Lawrence Shapiro
T-cadherin structures reveal a novel adhesive binding mechanism
Nature Structural & Molecular Biology volume 17, pages339–347(2010)
doi.org/10.1038/nsmb.1781
新型コロナウィルスでは
急速に病状が悪化することがあり、
家の近くに適切に処置ができる専用の病院が
ある事が求められます。
このような病院の地理的なネットワークは
日本は世界的にみて高水準で整っていますが、
世界には最寄りの病院まで車で移動しても
1時間以上かかる地域は多く存在します。
日本で車で移動しても1時間以上かかる地域は
北海道の内陸部の一部の地域に限られます。
海外諸国でみると比較的病院へのアクセスが
全国にわたり整っているのは、
ヨーロッパ諸国、アメリカ、韓国、インドです。
(参考文献(1) Fig.1より)
しかし、車ではなく徒歩で1時間以内の地域は
世界的に見て非常に少なく
日本でも都市部に限られます。
(※ただし、状況から考えて
対象となっている病院は世界的にみて
かなり大きな病院に限られると考えれられます。)
世界で病院の地理的状況が良いのは
データを見る限り韓国です。
(参考文献(1) Fig.2より)
新型コロナウィルスのように
進行が非常に速い病気は他にもいろいろあります。
例えば、
急性白血病は「急性」なので
慢性白血病とは違い病気の進行が早く
1日単位で大きく進行する場合もあるといわれています(2)。
従って、できるだけ早く正しく診断され、
適切な治療が求められます。
そうした場合においても
病院間の連携も含め、病院の地理的なネットワークは
とても大切になると考えています。
この急性白血病においてその一種である
急性骨髄白血病では、
その急性骨髄白血病細胞膜表面にある
MET型の受容体型チロシンキナーゼに
そのリガントである肝細胞増殖因子(HGF)が
異常増殖し、結合することによって
その受容体の機能が亢進されている
ということがわかっています。
従って、MET型チロシンキナーゼに特異的に働き
その機能を抑制する抗体(crizotinib)が
薬剤の候補として挙がっていますが、
それで蓋をしたとしても、
そのリガントである肝細胞増殖因子(HGF)が
補助的に分泌を亢進させるために
その薬剤に対する抵抗性を示すとされています(3)。
この受容体型チロシンキナーゼは
ALK, AXL, DDR, EGFR, EPH, FGFR,
INSR, Met, Musk, PDGFR, PTK7
RET, ROR, ROS, RYK, TIE, TRK
VEGFR, AATYK
の19種類ある事がわかっています
(参考文献(4), 表1より)
例えば、MET型のチロシンキナーゼでは
上述したように急性骨髄白血病細胞の表面に
少なくとも発現していることがわかっていますが、
このチロシンキナーゼは細胞表面にあるだけではなく
細胞膜内部にもあり(5)、
胃癌細胞ではTPR-METというたんぱく質が
異常を起こしていると言われています。
(参考文献(4), 表3より)
腫瘍形成の活性化においては
TPR-METのCblユビキチンリガーゼという酵素からなる
装飾因子のためのTPR-METの結合部位が
欠損しているということがわかっています(5)。
つまり、そこに「構造的な違い」が生まれています。
チロシンキナーゼのうち
急性骨髄性白血病の標的となり得る
MET型細胞表面受容体においては
上皮細胞に広く発現していて、
標的とする急性骨髄性白血病などの癌細胞だけに
特異性を持たせるのは難しいと考えられます。
しかしながら、
METの機能が異常に活性化している状態が
肺の癌細胞で確認されています(6)。
上述した急性骨髄性白血病で肝細胞増殖因子を介した
傍分泌の機序で同様にMET受容体の亢進が観られました(3)。
これらのMETの機能改変において
もし、上述したTPR-METのユビキチンリガーゼの酵素
結合部位の欠落のように(5)、
癌細胞だけに構造上の違いがあれば、
細胞特異的輸送系統におけるアンカーとして
使える可能性があると考えます。
この受容体型チロシンキナーゼは上述したように
19種類あるので、
その中でインテグリンのように
悪性腫瘍だけに見られる構造上の特徴がないかどうか?
という点を調査していきたいと考えています。
またインテグリンとも接近した位置で
相互作用する可能性のある細胞表面受容体であり
(参考文献(7), Figure 8より)
これらの組み合わせの中での
特異性も探っていきたいと思っています。
以上です。
(参考文献)
(1)
D. J. Weiss, A. Nelson, C. A. Vargas-Ruiz, K. Gligorić, S. Bavadekar, E. Gabrilovich, A. Bertozzi-Villa, J. Rozier, H. S. Gibson, T. Shekel, C. Kamath, A. Lieber, K. Schulman, Y. Shao, V. Qarkaxhija, A. K. Nandi, S. H. Keddie, S. Rumisha, P. Amratia, R. Arambepola, E. G. Chestnutt, J. J. Millar, T. L. Symons, E. Cameron, K. E. Battle, S. Bhatt & P. W. Gething
Global maps of travel time to healthcare facilities
Nature Medicine (2020)
doi.org/10.1038/s41591-020-1059-1
(2)
愛知県がんセンター病因
がんの知識>いろんながん>白血病
(3)
Alex Kentsis, Casie Reed, Kim L Rice, Takaomi Sanda, Scott J Rodig, Eleni Tholouli, Amanda Christie, Peter J M Valk, Ruud Delwel, Vu Ngo, Jeffery L Kutok, Suzanne E Dahlberg, Lisa A Moreau, Richard J Byers, James G Christensen, George Vande Woude, Jonathan D Licht, Andrew L Kung, Louis M Staudt & A Thomas Look
Autocrine activation of the MET receptor tyrosine kinase in acute myeloid leukemia
Nature Medicine volume 18, pages1118–1122(2012)
doi.org/10.1038/nm.2819
(4)
矢ケ崎史治
埼玉医科大学血液内科
慢性骨髄増殖性疾患:診断と治療の進歩
IV.最近のトピックス
2.チロシンキナーゼ阻害薬
(5)
H H L Mak, P Peschard, T Lin, M A Naujokas, D Zuo & M Park
Oncogenic activation of the Met receptor tyrosine kinase fusion protein, Tpr–Met, involves exclusion from the endocytic degradative pathway
Oncogene volume 26, pages7213–7221(2007)
doi.org/10.1038/sj.onc.1210522
(6)
Jeffrey A. Engelman, Kreshnik Zejnullahu, Tetsuya Mitsudomi, Youngchul Song, Courtney Hyland, Joon Oh Park, Neal Lindeman, Christopher-Michael Gale, Xiaojun Zhao, James Christensen, Takayuki Kosaka, Alison J. Holmes, Andrew M. Rogers, Federico Cappuzzo, Tony Mok, Charles Lee, Bruce E. Johnson, Lewis C. Cantley, Pasi A. Jänne
MET Amplification Leads to Gefitinib Resistance in Lung Cancer by Activating ERBB3 Signaling
Science 18 May 2007:
Vol. 316, Issue 5827, pp. 1039-1043
DOI: 10.1126/science.1141478
(7)
Rachel Barrow-McGee, Naoki Kishi, Carine Joffre, Ludovic Ménard, Alexia Hervieu, Bakhouche A. Bakhouche, Alejandro J. Noval, Anja Mai, Camilo Guzmán, Luisa Robbez-Masson, Xavier Iturrioz, James Hulit, Caroline H. Brennan, Ian R. Hart, Peter J. Parker, Johanna Ivaska & Stéphanie Kermorgant
Beta 1-integrin–c-Met cooperation reveals an inside-in survival signalling on autophagy-related endomembranes
Nature Communications volume 7, Article number: 11942 (2016)doi.org/10.1038/ncomms11942
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
インフルエンザは長く人と共存してきて
身近な感染症です。
インフルエンザの予防接種もあります。
しかし予防接種を打ったからといって
罹らないわけではありません。
でも接種した場合、
多くのケースでは軽症で済みます。
また高熱が出た場合も有効な薬があって
比較的迅速に効果が出ます。
そうした中で経済活動との両立が可能になっています。
その中で大切な事は
「重症化するのをどう防ぐか?」
ということだと思っています。
もちろん、感染が社会で拡大すると
インフルエンザであっても脅威ではあるのですが、
その場合においても重症化を如何に防ぐか?
というのは一つの大切な指針である
という認識です。
それは今社会で脅威となっている
新型コロナウィルスでも同じです。
従って、重症化した時の患者さんの特徴を掴む
ということが大切になります。
参考文献(1)による調査によれば
48人の重症の患者さんの血液を分析した結果
いくつかの特徴がわかっています。
①CD4+T細胞減少
②CD8+T細胞減少
③NK細胞減少
④B細胞減少
⑤リンパ球に対する好中球数増加
⑥Dダイマー増加 ※血栓の判定に用いられる指標
⑦白血球増加
ということです。
これらの指標は、軽度患者さんと比較した場合でも
みられます。
①~③からウィルス感染細胞に対して
免疫細胞が攻撃する能力が低くなっている
と考えられます。(細胞性免疫)
④からウィルスを認識して
感染ルートを遮断するために放出される
抗体産生能力が低くなっていると考えられます。
(液性免疫)
⑤好中球が適正な範囲以上に上昇すると
組織の炎症と関わると考えられています。
⑥血液の凝固が起き、血管の詰まり、
血栓が起きている可能性が示唆されています。
つまり血管系のダメージが所見されます。
⑦白血球が基準値よりも上昇すると
感染症、自己免疫疾患などが疑われますが、
新型コロナウィルスは免疫系も乱れも確認されますから
それにより白血球が上昇していると考えられます。
従って、液性免疫、細胞性免疫
両方の免疫機能が落ちており、
かつ炎症を促す生理反応が起こっていると考えられます。
従って、特定の事が重症化に関わっているのではなくて
全体的に体の免疫機能が落ちていると考えられます。
そのため免疫機能を
通常の軌道に近づけるための治療
あるいは炎症を抑えるための治療両方が必要になる
と考えられます。
また、重症化し、回復した後も
定期的に血液検査をして、
こういった要因を調べることができれば、
体の回復がどのような軌跡を持って起こるか?
というデータも重要だと思います。
重症化した場合には
ウィルスの増殖を抑えるレムデシビル
炎症を抑えるデキサメタゾンが
有効であると言われていますが、
その後の後遺症も課題だと思われます。
繰り返しになりますが、
その病状に対してある程度定量性を持たせるためには
定期的な血液検査によるデータ取得が求められると考えました。
以上です。
(参考文献)
(1)
Cong-Ying Song, Jia Xu, Jian-Qin He & Yuan-Qiang Lu
Immune dysfunction following COVID-19, especially in severe patients
Scientific Reports volume 10, Article number: 15838 (2020)
doi.org/10.1038/s41598-020-72718-9
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
細胞内で「単一」で特異的に表面に発現している
受容体を見つけることは困難だといわれています。
例えば、
転移性を持つ前立腺癌の細胞に共通してみられて
かつ他の細胞に見られないような
特異性のある受容体はあるか?
ということは難題だと考えられてます。
しかし、「2つの組み合わせ」での特異性が含まれるときには
その確率は向上します。
例えば、Aという表面受容体は
他の細胞でも見られるけど、
AとBという組み合わせで
しかもそれが比較的近い位置で発現している細胞は
転移性前立腺癌だけである
という可能性は、単一の場合よりも上がると考えられます。
従って、このような組み合わせが成り立った
ときに「だけ」活性を示すようなタンパク質があれば、
細胞特異的輸送系統のアンカーとしての
タンパク質の可能性は向上します。
参考文献(1)では、そのような
組み合わせが成り立った時にだけ
結合性を変えて活性を示すようなタンパク質
「colocalization-dependent protein switches (Co-LOCKR) 」
の設計に成功しました(1)。
このたんぱく質はスイッチタンパク質と呼ばれ
身近にあるレバースイッチの棒のように
位置がレバーのように動いて
母体の接合から離れて
構造がオープンになり活性になることで
組み合わせの中での特異性を発揮しています。
(参考文献(1) Fig.1(C)で
黄色部分を含む棒状のタンパク質に着目)
そのレバーとなるたんぱく質が
構造から離れる際には「latch」と呼ばれる
留め金となる構造が外れる必要があります。
そのために組み合わせとなる「キー、鍵」となる
別のタンパク質が必要となります。
このようなタンパク質は
以前から知られていましたが、
それを純正化して作り出す際には
3量体の構造的な周期的対称性によって
ドメインが入れ替わるために
凝集が起こるとされていました(2)。
そこでRosettaというタンパク質を任意に設計できる
ソフトウェアを使い、ほぼ単量体から成る、
スイッチ機能を持つたんぱく質、LOCKRを
作り出すことに成功しました(1)。
螺旋となる構造内には
いくつかの水素結合、
あるいは疎水性を持つ残基があります。
(参考文献(1) Fig.1(B)参照)
標的とした細胞は骨髄性白血病細胞(K562)で
受容体はHer2-eGFP、EGFR-iREPです。
使われたドメインは
周期性を持つアンキリンタンパク質
ankyrin repeat protein(DARPin) です。
上述したスイッチタンパク質は
Her2、EGFRがともに発現された時にのみ
選択性を持って配座を変え活性を示しました。
(参考文献(1) Fig.1(E)参照)
cage-latchの親和性を弱めることによって
おそらく構造内の相互作用を弱めて
多量体化(?)することを防いでいると考えています。
この構造内の相互作用を弱めることも
特異性を生み出すうえで重要であると示唆されています。
実際にこの相互作用を弱めるために
構造の色んな部分を変異させ、その部位によって
両方の骨髄性白血病細胞の表面受容体
(Her2, EGFR)が発現した時の特異的親和性は
変わりました。
その中で共通して言えることは
このような構造内の変異を導入することで
その選択性は向上しているということです。
(参考文献(1) Fig.2(B)参照)
例えば、
細胞外でT細胞にウィルスを導入し
任意に細胞膜タンパク質を設計した
CAR-T細胞において、その設計タンパク質が
このスイッチタンパク質の構造がオープンになった時に
特異的に結合して機能を発揮するように設計する事も
検討されました。
その中でCAR-T細胞による癌細胞の減少が
「試験管内の結果」で示されました。
(参考文献(1) Fig.4(C)紫矢印参照)
ここからは細胞特異的輸送系統の目指すべき
方向性を考えながら論を進めていきます。
例えば
インテグリンなどにおいても
α鎖、β鎖のヘテロ2量体からなる表面糖たんぱく質が
「稲が風で倒れるように」
膜に倒れて付着している可能性が示唆されています。
このような状態では
構造は不活性であり、物質との結合性は低く
インテグリンを通じた機能は抑制されている状態です。
(参考文献(4) Figure 2参照)
こうした場合においては
上述した「latch(留め金)」となるような構造が
固定部分で架橋されている可能性は高く
活性を高めるためには、
それを「key(鍵)」となる酵素などの
触媒によって外す必要があります。
こうした相互作用が
膜表面タンパク質の結合部位での
表面結合性、親和性を改変させている可能性があります。
様々な求める生理機能を有する物質を封入した
ナノ粒子、マイクロ粒子に
装飾する糖たんぱく質受容体の設計をするにあたって
標的とする細胞があります。
例えば、小児癌の一つである神経芽細胞腫に対して
副作用が少なく、極めて予後の良い治療を目指して
神経芽細胞腫「だけ」に存在する
受容体結合部位を探すときに
その細胞の表面を調べて
数ある受容体の中から選択することになります。
しかし、受容体はしばしばクラスタリングといった
受容体同士の相互作用があります(5)。
そうした受容体同士の相互作用の中で
上述した「留め金」を通したスイッチのオンオフのような
機能が構造中にある可能性も否定はできません。
そうした中、標的を考えるときに
単に一つの受容体「だけ」に注目するのではなく
複数の受容体の混合状態、複合体の中での
特殊性を見出すことの意義が見えてきます。
例えば、
αvβ3のインテグリンは
他の細胞でもみられますが、
この細胞の場合はクラスタリングしているケースが多く
その時に初めて現れる結合面がある
ということであれば、
それが特異性を見出す道筋ともなります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Marc J. Lajoie, Scott E. Boyken, Alexander I. Salter, Jilliane Bruffey, Anusha Rajan, Robert A. Langan, Audrey Olshefsky, Vishaka Muhunthan, Matthew J. Bick , Mesfin Gewe, Alfredo Quijano-Rubio, JayLee Johnson, Garreck Lenz, Alisha Nguyen, Suzie Pun, Colin E. Correnti, Stanley R. Riddell, David Baker
Designed protein logic to target cells with precise combinations of surface antigens
Science 25 Sep 2020:
Vol. 369, Issue 6511, pp. 1637-1643
DOI: 10.1126/science.aba6527
(2)
S. E. Boyken et al., Science 352, 680 – 687 (2016).
(3)
5. A. Leaver-Fay et al., Methods Enzymol. 487, 545 – 574 (2011).
(4)
Klaus Ley, Jesus Rivera-Nieves, William J. Sandborn and Sanford Shattil
Integrin-based therapeutics: biological basis, clinical use and new drugs
Nature Reviews Drug Discovery volume 15, pages173–183(2016)
doi.org/10.1038/nrd.2015.10
(5)
Caroline Cluzel, Frédéric Saltel, Jost Lussi, Frédérique Paulhe, Beat A. Imhof, and Bernhard Wehrle-Haller
The mechanisms and dynamics of αvβ3 integrin clustering in living cells
J Cell Biol (2005) 171 (2): 383–392.
doi.org/10.1083/jcb.200503017
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスにおいて
これを読まれている方々が気にされている事の一つは
再感染の可能性だと思います。
いいかれば、免疫の持続性です。
先日、世界で新型コロナウィルスにおいて
再感染が疑われるケースが複数みられる
というニュースがありました。
他にも同じ呼吸器疾患を伴うウィルスである
インフルエンザでは
季節性はあるものの毎年の接種が推奨されます。
しかし、少なくとも私の認識では
ウィルスに対する感染の有無は
決してゼロ、イチの2分思考では語れないことです。
つまりその間の「病状の程度」
というのが存在することです。
例えば、インフルエンザの予防接種でも
罹患することを完全に防ぐことはできません。
つまり「ゼロ」にはできません。
でも多くの場合症状は軽くなります。
そうしたことは
新型コロナウィルスでも当てはまるはずです。
元々コロナウィルスは風邪ウィルスとも
いわれることも少なくとも一部ではあり、
大分類でみれば昔から世の中に
遍在していたウィルスです。
参考文献(1)では
従来から人と共存してきたと考えられる
コロナウィルス(NL63, 229E, OC43, HKU1)への感染履歴を
20年、30年に渡って血清により調べました。
調査対象になった人の数は10人です。
それにおいて平均すると
約2年に一回はなんらかの
コロナウィルスに罹患していることがわかりました。
(参考文献(1) Table.1より)
また新型コロナウィルスの型によって
感染間隔がどれくらい空くかというのは
異なる可能性が示唆されます。
例えば229Eという方では12か月がピークとなり
6か月も頻度としては高くなります。
逆にOC43という型では24~30か月がピークとなっています。
(参考文献(1) fig.1(b)より)
この違いを生むいくつかの理由があると思います。
ウィルスの構造上の特徴の比較など知りたい事はありますが、
もう一つの要因として流行性があるのではないか?
と推測しました。
そうした時に再感染のリスクが上がった
ということも考えられます。
それは多くの人が罹患したという
社会的な背景があります。
それによって暴露される頻度があがるからです。
そう考えると
これだけ世界的に流行している
新型コロナウィルスにおいては、
一度感染して回復しても
再度そのウィルスにさらされるリスクは高いわけですから
再感染するまでの期間というのは
短い傾向にあるかもしれないということは
否定はできません。
またコロナウィルスの季節性については
基本的には夏から秋にかけてが一番
感染の確率が下がっています。
今は9月下旬ですから
他のコロナウィルスでは頻度が低い時期です。
しかしそれが冬、春になると
また上がってきます。
(参考文献(1) fig.1(d)より)
新型コロナウィルスも
特徴としては7割、8割の遺伝情報は
一致しているというデータもあるので、
そういった季節性の特徴も
おおよそ一致する可能性はあります。
そうした場合に
今、日本の感染状況をみると
下止まりしている状況で落ち着いていますが、
また第三波がやってくる可能性は
この季節性の特徴を鑑みると
想定しておく必要性はあります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Arthur W. D. Edridge, Joanna Kaczorowska, Alexis C. R. Hoste, Margreet Bakker, Michelle Klein, Katherine Loens, Maarten F. Jebbink, Amy Matser, Cormac M. Kinsella, Paloma Rueda, Margareta Ieven, Herman Goossens, Maria Prins, Patricia Sastre, Martin Deijs & Lia van der Hoek
Seasonal coronavirus protective immunity is short-lasting
Nature Medicine (2020)
doi.org/10.1038/s41591-020-1083-1
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスに対する
効果的な治療法を考えるときには、
体内で起こっている現象を「視覚化して」
理解することは大事だと思っています。
新型コロナウィルスがどのような形をしているか?
それはメディアで度々写しだされているので
頭の中ですぐにイメージできます。
では新型コロナウィルスが細胞に感染するときの
イメージはどうでしょうか?
いくつかの段階がありますが、
それを正確に想像するのは難しいです。
そういった一つ一つのことを細かく、
解像度よく視覚化できれば、
その中で今までよりも良い、
あるいは今までにない発見や治療戦略が生まれる
と思います。
なぜなら人は目からの情報を優先して取るからです。
日々の生活に根付いたものだから、
視覚的に現象を示すというのは
大きな意味を持つと考えます。
そういった視覚的なイメージにおいて、
日常身近なものと置き換えて、それに例えて考えると
イメージとして頭に残りやすいと思います。
例えば、
「パプリカのような構造の膜貫通タンパク質」
というとそれだけで頭の中で形が浮かびます。
そういった観点で
新型コロナウィルスのコロナと呼ばれる
Sタンパク質の突起の部分は
糖たんぱく質という糖とタンパク質の複合体からなります。
その糖の部分である多糖は
視覚化すると「海藻のよう」です。
もじゃもじゃとした海藻があって
そこから結合部位をもったタンパク質が顔を出しています。
(参考文献(1),Figure.1より)
この海藻の部分は、親水性を示して表面膜に偏りがないから
おそらくそれによってゼータ電位、表面電荷を下げられて
体内にある余計なたんぱく質などの付着を防ぐことができる
と推測されます。
そうすることによってSタンパク質の特異性を保っています。
実際にN結合性多糖(N-lonked glycans)が
表面を装飾して宿主の免疫反応や擾乱性の高い外的環境に対する
安定性を担保することに貢献していると考えられています(2)。
あるいはエントリー受容体との結合部位である
RBDの周りにN-terminusがあり、
それがRBDの保護に関わっていると考えられます。
(参考文献(2) Fig.2(B)より)
このSタンパク質は構造を変えることができて
「Down」あるいは「Close」と呼ばれる配座では
結合のための扉に鍵がかかって閉まっている状態です。
その状態では活発に結合することはできません。
結合部位は周りのドメインに固定されています。
(参考文献(2) Fig.5(B)左から1,2つ目の図より)
実際に新型コロナウィルスがSタンパク質を
体細胞のACE2受容体に結合させて、
細胞の中に入っていくわけですか
その時には連結部分を2つに割って回転し、
細胞とウィルスの膜同士が連結して
空壁を作り、ウィルスが入っていく様子が描かれています。
(参考文献(2) Fig.5(B)左から3,4つ目の図より)
実際にSタンパク質の構造変換において
受容体への結合、膜の開放の重要な役割を担っているのは
fusion-peptide proximal region (FPPR)
ペプチド融合近接領域と呼ばれる部分です。
-----
結合の中での構造変換
(参考文献(2) Fig.5(B)左から1,2つ目の図、紺色の部分より)
-----
結合した後の構造変換
(参考文献(2) Fig.5(B)左から3つ目の図、紺色の部分より)
-----
実際にD614G変異と呼ばれるものが
FPPRの変化に関与しているという
他の報告もあります(4,5)。
従って、これらの構造変化を想定した
ワクチン開発は必要になると考えられます。
ここで述べた多糖(Polysaccharides)が
なぜ親水性を持つのか?
その機能を考える上で一つ大切な事があります。
それは、表面エネルギーです。
基本的な考え方として、
エネルギーは低い方が安定ですから、
表面エネルギーが高いと表面状態は不安定になります。
核となる物質Aに対して物質Bが表面を覆う時には
表面エネルギー:A>Bが成り立つときには
系のエネルギーとして物質Bで覆ったほうが
低くなり安定となります。
そうするとBは「玉になることなく」
「均一な層として」形成されやすくなります。
ここで多糖の表面エネルギーを調べてみると
その構造によりますが
27.4~55.7 (mJ/m2)となっています。
その構造の中でも高いのが
a-cellulose purified with acetone 47.4
Chitosan (80%) 55.7
となっています。
(参考文献(3) TABLE.3より)
ちなみに水は7.28 (mJ/m2)なので
それよりも多糖のほうが大きいので
水が表面になじみやすく玉になりにくく
親水性になりやすいです。
もちろん多糖は網目状の構造になっていますから
もっと現象としては複雑ですが、
基本的に表面エネルギーが高いほうがいいです。
ちなみにアミノ酸やタンパク質の表面エネルギーは
調べる限り見当たりませんでした。
水に表面層で覆われると
水自体は電荷中性が保たれていますから
それが均一に表面を覆うような構造の場合は
基本的に表面電荷が少なくなると考えました。
そうすると表面電荷、
あるいはその空間的な偏りが少ないですから
新型コロナウィルスのSタンパク質の表面付近の
電位の勾配(ゼータ電位)は小さくなると考えられます。
そうするとそこに働く引力は小さくなるので
空間中からタンパク質などの付着が小さくなり
結果としてSタンパク質の構造が守られる
ということだと考えます。
そうすると薬剤の戦略において
Sタンパク質の表面エネルギー状態を変えるような
言い換えればアンチサーファクタントのような
材料をウィルスに作用することができれば
ウィルスが持つ特異性が失われる可能性があります。
以上です。
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https://doi.org/10.1101/2020.06.14.151357.
細胞特異性を持つ輸送システムにおいて
免疫細胞を標的細胞に特異的に輸送したいというのがあります。
免疫細胞は自然な輸送経路において
病変部位以外の細胞についても
働きかける可能性が考えられるため、
より有効な形で、効率的に運ぶためには
装飾因子を標的細胞だけに特異性を持たせて
制御した形の胞子の中に保護しながら入れて
輸送することも想定しているからです。
その免疫細胞の中で
重要と考えられるNK細胞について
本日は様々な観点で書きたいと思います。
免疫細胞の中でNK細胞は、
体内に浸入した癌細胞などの病原体をいち早く発見し、
初期に攻撃をしかける自然免疫です(1)。
新たなタンパク質合成や再構成をほとんどせずに、
そのままで細胞傷害性を示すので、
迅速に応答できる特徴を持っています。
B細胞受容体を発現していないので
病原体の事前の暴露は必要としません(3)。
従って、前述したように
病原体の発見と免疫応答における初動に貢献する
と考えられます。
NK細胞は加齢や強いストレスが原因で能力が低下してしまいます。
また癌患者さんもNK細胞の数が減少していることがわかっています(1)。
実際にテロメアが短くなるとNK細胞の寿命が短くなると
報告されています(11)。
そこで癌患者さん自身のNK細胞を体外に取り出し、
増殖させて、免疫機能を高めるのが
「NK細胞療法」です(1)。
他の免疫細胞療法より臨床研究が遅れたのは、
T細胞に比べて培養が難しいことが挙げられます(1)。
NK細胞は血液中のリンパ球の10%程度であり、
ターゲットの細胞に対して、
生体反応に影響を与える酵素の働きに改変を
十分に与えらえるほどのエフェクター
つまり免疫機能を生み出すために
十分な量を取り出すことが難しいとされています(6)。
NK細胞は血液中に存在するリンパ球の10~30%を占め、
パーフォリン(標的細胞の細胞膜に孔を開けるタンパク質)、
グランザイム(標的細胞に細胞死を誘導するタンパク質分解酵素)
などの細胞傷害因子を持っています(2)。
つまり、標的とする癌細胞膜に穴をあけて、
中のタンパク質を分解して、細胞死を誘導するという機序です。
このように細胞障害の機序として、
NK細胞が標的の細胞に遭遇した時、
作用するのに十分な距離に近づいた時、
標的細胞とともにシナプス(神経細胞の結合部)を形成し、
溶解性顆粒がシナプスの方に向かいます。
その顆粒は荷電していて、追加の信号によって、
極性を持ち、それによって可動性を得て、
細胞膜の方に動き結合、融合します(12,13)。
この溶解性顆粒が細胞毒性、
つまりタンパク質を分解して細胞死を誘導する
作用物質であると考えられています(6)。
NK細胞は何十種類もの受容体を細胞表面に持ちます。
(参考文献(36) Fig.2参照)
例えば、キラー活性受容体(KAR)やキラー細胞Ig様受容体(KIRs)
などがあります。
これらは膜タンパク質受容体です。
これらの受容体は、広範な結合特異性を持つといわれています。
キラー活性受容体は正負に帯電した残基を
タンパク質構造中に持つとされています。
このキラー活性受容体は
免疫受容体チロシンベース活性モチーフ
immunoreceptor tyrosine-based activation motifs(ITAMs)
と呼ばれるサブユニット(面)を持ち、
これがNK細胞の細胞障害性などの細胞内外の機能信号を担っています。
この受容体は大きく分類して3種類あって、
細胞毒性の活性をオン/オフを制御しているとされています。
これらを組み合わせて使うことで
がんを認識していることが判明ました。
従来から注目されていたMHCクラスI分子は、
上述したキラー細胞Ig様受容体によって認識されます。
その機能のうちの一つであるとされています(3)。
これらの検知機能によって、NK細胞は、
癌細胞と通常細胞の仕分けをして、
癌細胞に特異的な攻撃性を有します。
NK細胞は「recognizable morphologically」という
表現が使われています(6)。
つまり、「細胞膜の表面状態」も
細胞を攻撃するか否かの判断に貢献しているということです。
通常細胞と癌細胞の表面平坦性が異なり、
一般的には、癌細胞のほうがトポロジーが複雑なので、
その形状を認識している可能性がある
と考察しました。
また、癌細胞ではMHCクラスI分子の発現が小さくなっている
という特異的な特徴を持つ場合がありますが、
必ずしもそうではなく、NK細胞は上述した受容体を
複数使用して癌細胞の標的性を上げていると考えられています。
このように癌細胞だけを標的にできるような特殊性を持つので、
「生きている薬(living drugs)」
とも呼ばれます(6)。
ただ、MHC-Iの発現が癌細胞で抑制されていることで
NK細胞のブレーキが外れ細胞毒性を発揮するといわれているので
癌細胞のMHC-I受容体の
アンタゴニストとなるような抗体が薬剤があれば
特異性があがり、NK細胞の抗癌作用を高める事に
貢献するかもしれません。
例えば、標的癌細胞に特異性を持つ粒子の中に
NK細胞とMHC-Ⅰ受容体アンタゴニスト抗体
両方を封入し、選択的に輸送出来れば、
高い奏功に繋がる可能性もあります。
NK細胞は機能を発揮するにあたり、
他の免疫機能との相互作用もあります。
サイトカイン、Fc受容体、
他にも活性化、抑制性受容体があると言われています(3)。
サイトカインの中の
IL-12, IL-15, IL-18, IL-2, and CCL5など
インターフェロンやマクロファージ由来のサイトカインによって
NK細胞は活性化されます(3)。
NK細胞は、いくつかのサイトカイン、ケモカイン、成長因子を
放出するので(14)、
マクロファージ、樹状細胞、好中球にも影響を与え
それにより、
抗原特殊性を持つT細胞、B細胞の反応を得ることができます(3)。
NK細胞は、T細胞の腫瘍組織の浸潤を誘発して、
サイトカインやケモカインの分泌を通して、
癌細胞を攻撃する炎症作用を引き起こすかもしれない
とされています(19)。
さらに、
遺伝子編集を行うことで人工的な受容体が作られ
NK細胞の活性を高める研究もされています。
これはCAR-NK細胞と呼ばれます。
NKG2DはNK細胞の中心的な受容体ですが、
CD3ζに人工的にNKG2Dを結合させることによって
T細胞の細胞毒性抑制作用を低減したり、
CAR-T細胞の抗癌許容能力を上げる効果が確かめられました(32)。
従って、遺伝子編集により受容体の改変を
行うことで他の免疫細胞の抗癌作用を強める
補助的な働きをする可能性が示唆されています。
すでにフェーズⅠ、Ⅱの臨床試験で
CD19受容体の機能が亢進している
リンパ性白血病において
このCD19を遺伝子編集によって抑制した
CAR-NK細胞の効果が確認されています(33)。
このCD19というのは優れた抗原であるといわれているので
この機能を抑制したCAT-NK細胞は
特異的機能を発揮すると考えられます。
CAR-T細胞では移植片対宿主病(graft versus host disease)
という免疫暴走を伴う合併症が
多くの頻度で起こるとされていますが、
この治験ではサイトカインストームや
移植片対宿主病は確認されなかったとされています。
反応は良く全ての接種レベルで30日以内に
迅速な反応が診られたとされています。
11人中7人は完全寛解したとされています(33)。
NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、へんとう腺、胸腺で
分化、成長することができ、それから
血液の中に入ることができます(3)。
NK細胞は、T細胞抗原受容体、免役マーカーCD3、
抗体(免疫グロブリン)B 細胞受容体を有しておらず、
表面マーカーとしてCD16、CD57を有しています(3)。
抗体に結合した抗原はこのCD16によって認識され、
それによってNK細胞は活性化されて細胞死を誘導します(3)。
NK細胞は後天性免疫機能にも重要な役割を果たしており(4)、
環境への迅速な適応性にすぐれ、
抗原特殊性を有する免役記憶を持ちます(5)。
NK細胞の反応性は、生体内での発展、適応過程、発生、
抗原やサイトカインに対する暴露、記憶様表現型の形成
などによって形作られ、改変すると言われています(5)。
腫瘍は、内生的なNK細胞からの攻撃から逃れる性質をもちます。
NK細胞の体外での活性化、拡張、遺伝子改変によって
その逃避機能を抑制したり、抗がん作用を強めることも
可能であることが示されています(6)。
上述したような血液悪性腫瘍以外にも
がんを持つ患者さんへの
NK細胞の注入に関する臨床試験も行われています(6)。
例えば、分類として
〇CAR NK細胞、
〇遺伝子改変NK-92細胞、
〇iPS由来NK細胞、
〇CIML-NK細胞(cytokine-induced, memory-like)、
〇適応性NK細胞(Adaptive NK細胞)、
〇臍帯血NK細胞(Umbilical Cord Blood)
※臍帯血とは胎児と母体を繋ぐへその緒中の胎児血。
(参考文献(36) Table.1参照)
----
例えば、iPS由来NK細胞は臍帯血NK細胞よりも
「マウスモデル」ではありますが
白血病において高い抗癌作用を示し(37)、
固形癌である卵巣がんでも効果が診られた
とされています(38)。
これらに対する安全性、効果の確認は
現在治験が進められています。
T細胞と違って、
NK細胞は、表面のT細胞受容体を持たないので
前述した移植片対宿主病という
移植後、提供側細胞から宿主に攻撃される
という疾患の原因にならないので(7,8)、
移植のリスクが少ないことが利点です。
従って、在庫として持つことができ、
需要に応じて、最適化して、
複数の患者さんに提供することが可能かもしれない
と期待されています(6)。
しかしながら、免疫暴走の可能性はないわけではなく
造血幹細胞移植設定値の範囲外で使用された場合において
同種異系、つまり異なる提供者から移植された
NK細胞が注入された時、移植を受けた患者さんの
免疫系による拒絶反応が治療継続を制限することが
あるとされてます(28-31)。
人のNK細胞の回転率はおおよそ2週間です(10)。
また数が倍加する速度が遅いため(11)、
上述したように培養が難しいと考えらえています。
刺激に対しても反応は鈍く、細胞死してしまいます。
例えば、誘発性人工多能性細胞(iPS細胞)では、
細胞を培養させるのに数か月かかるといわれますが、
成長速度をゆっくりにすることで癌化が起こりにくい
といわれています。
これは、細胞の成長、分化をゆっくりすることで
遺伝子、たんぱく質の変異が起こりにくいということを
示しているのではないか?と考えます。
従って、NK細胞の回転率が遅いことは、
細胞としての質、安全性を保障するものかもしれない
ということは仮説の域はでませんが推測されます。
NK細胞を冷蔵庫などで保管しておくことを想定すると
その強靭性、寿命を高めることは重要です。
例えば、
細胞分裂寿命の延長が期待できる、
ヒトテロメラーゼ逆転写酵素TERT遺伝子を
過剰に発現させたNK細胞では、寿命の延長が確認されました。
これは、治験でも効果があった
白血病細胞に対して高い細胞毒性を示したとされています(11)。
冒頭で述べた様にNK細胞は
癌組織での発現の低下が確認されていますが、
NK細胞の機能が下がると
回復後の予後の状態がよくない、
と考えられていますが(6)、
ただし、
内発的なNK細胞が腫瘍組織の免疫学的監視
つまり亢進と抑制の制御や、
それによって腫瘍組織の成長にどのように関わっているか
というのは、まだよくわかっていないと言われています(6)。
NK細胞が腫瘍組織にどれくらい浸潤する、
つまり組織内に入り込むかという点について
議論されています(15)。
その浸潤は、ヘパラナーゼの働きと関わっている
と言われています(16)。
このヘパラナーゼは細胞外マトリックスと
細胞の表面両方に作用する酵素で、
多糖であるヘパラン硫酸分子を短鎖のオリゴ糖に分解する
役割を持っています(17)。
ヘパラン硫酸分子は血管生成と活性にもかかわっているので(18)
癌細胞が血管生成によって成長する点を考慮すると、
ヘパラナーゼ自身も腫瘍組織に影響を与えている可能性があります。
このヘパラナーゼは、
細胞の基底膜や細胞外マトリックスの土台、足場である
ぺパラン硫酸を短鎖に切って、
オリゴ糖に分解する役割を持っているので(17)、
癌組織微小環境からの血管生成を抑制し
それにより癌細胞の成長、組織化を防ぐことが
機能として考えられます。
このヘパラナーゼが欠乏した状態では、
免疫チェックポイント抑制免疫療法の効果が低減する
可能性が示唆されています(16)。
NK細胞は、血中循環がん細胞を消滅させることによって
他の組織への転移を防ぐのに貢献するかもしれないという
報告もあります(20)。
この血中への移動は上皮間葉転換とかかわりがありますが、
この上皮間葉転換はNK細胞の感受性を上げるという
報告もあります(34)。
しかし、腫瘍細胞は、以下のような
NK細胞への抵抗性をもちます。
-----
NK細胞が機能を発揮するようにスイッチをいれる
NK細胞NKG2D受容体を活性化させるための配位子の発現を
癌細胞が抑えることで、抵抗性を示します(21)。
例えば、
急性骨髄性白血病で発現の低下がみられた
NKG2D配位子は、
エクソソームの分泌、
金属プロテアーゼによる開裂を通して
起こると言われています(22,23)。
-----
NK細胞、T細胞より分泌されたIFNγは
腫瘍細胞のMHCクラスI分子の発現を亢進し、
抑制受容体の連結反応を通して、
NK細胞の活性を抑制すると言われています(14)。
NK細胞はMHCクラスI分子の発現レベルが低い細胞を
認識すると言われているため(3)、
腫瘍細胞のこの分子の発現レベルが上がると、
認識能力が落ちることが考えられます。
従って、IFNγは、NK細胞のがん細胞の識別能力を
下げる可能性があると考えられます。
ただし前述したようにNK細胞の活性の制御は
他の受容体も関わっているために
活性を抑制するために一つの要因であるという認識です。
-----
腫瘍環境の可溶性因子
(つまり細胞内に浸潤すること?)
はNK細胞の抗癌機能を抑制する
可能性が示唆されています(6)。
可溶性因子である形質転換成長因子(TGFβ)は、
NK細胞のIL-15 によって誘発された
細胞のサイズ、分裂、生存などの調節に関わる(24)、
mTOR信号経路を遮断するので、
TGFβにさらされたNK細胞は、
細胞毒性の低いリンパ系細胞の遺伝子特徴、表現型を取得し
癌細胞の成長を制御することができなくなった
ということがマウスで報告されています(25)。
つまりNK細胞は、癌細胞の攻撃力を
可溶性因子によって失ってしまうこともある
ということです。
------
腫瘍微小環境の低酸素状態、栄養失調状態は、
NK細胞の代謝、抗癌活性を抑制する可能性が
あると報告されています(26)。
これはExhausted NK細胞と呼べると思います。
しかし、ミトコンドリアで細胞が使いやすいように
エネルギー変換する解糖や酸化的リン酸化(OXPHOS)の
代謝レートは遅いといわれています(35)。
このことは代謝速度が遅いために、
癌細胞などの周辺細胞の栄養分布の改変、
例えば低酸素状態、低糖状態などによって
疲弊しやすいのか?
それとも細胞の生存のためにこれらの
エネルギー源を多く必要としないために
T細胞などと比べて疲弊しにくいのか?
しかし、NK細胞が癌やウィルス感染などによって
機能が低下することはしられています(40)。
例えば、その機能を調整する表面受容体にうち
Exhauseted NK細胞では
--
不活性化、抑制因子
NKG2D, CD16, NCRs, CD226, 2B4
--
活性化、亢進因子
NKG2A, PD1, Tim3
--
が挙げられています。
(参考文献(40) Figure.1参照)
------
ヒアルロン酸などによる細胞外マトリックスの堆積や間質液圧の上昇は
免疫細胞のがん細胞の浸潤を抑制するといわれています(27)。
従って、NK細胞がどれくらい腫瘍組織の中に
浸潤するかは間質、細胞外マトリックスの状態によっても
左右され、それが抗癌活性に影響を与える
可能性があると考えました。
PEGPH20; PVHAによって酵素でヒアルロン酸を分解することで
NK細胞の癌組織への浸潤を高めようとする研究もされています(27)。
--------
(以上、癌細胞のNK細胞に対する抵抗性について)
CAR-T、上述したCAR-NK細胞は
白血病などの血液癌が対象になっています。
逆に固形癌への適用を阻んでいる理由は
-----
〇適切な、優れた抗原が見つかっていない
つまり、癌細胞表面特異的に表れる機能を制御するような
CD19のような受容体がわかっていないということ。
-----
〇局所に送り届けるのが難しい
血液癌なら血管内でコンタクトがとれる
-----
というのがあります(39)が、
少なくとも後者に関しては、
癌細胞に特異的に発現している表面受容体に
親和性を持つエピトープを持つ装飾因子を
粒子表面に持つナノ粒子、マイクロ粒子を
効率よく輸送する医療技術が確立すれば、
NK細胞療法がより広範な癌治療に利用できる可能性があります。
以上です。
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CAR-T細胞療法 固形がんへの展開…武田 年内に治験開始、小野も参入へ
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いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
「彼、彼女は理屈じゃなくてハートで動く人だから」
というとどのような様式、姿が頭に浮かぶでしょうか?
あるいは
「よく胸に手を当てて考えてみて」
と言われるとどうでしょうか?
自分の深部、内部にある純粋な「こころ」と
繋がる部分があります。
ハート(Heart)の意味を辞書で調べると名詞に限定すると
【名-1】心臓
【名-2】〔心臓の近くにある〕胸
【名-3】〔自分でコントロールできない感情的な〕心、胸の内、気持ち
【名-4】思いやりの心、愛情
【名-5】興味、関心、勇気
【名-6】中心
【名-7】〔愛情や敬意を込めて〕~な人、あなた、勇者
とあります。(英辞郎より)
心、愛情というのはとても密接なものですが、
生理学的にどういうものかというのはわかっていない
と思います。
でも、脳よりも心臓の方が英語の語彙として
近い位置に置かれています。
日本語でも「心」と聞いて連想するのは
「心臓」だと思います。
ハートマークが動いたりしますが、
あの動きは脈動を連想させます。
これはなぜなのかな?と思います。
私たちが緊張でドキドキするとき
最も敏感に反応してそれを感じられるのが「心臓の音」です。
どの臓器、組織も動いていますが、
その動的な振る舞いを一番深部にありながら
身近に感じられるのは「心臓」かもしれません。
そう考えると神聖で、大切な臓器なのかな
と思います。
その心臓は体中を流れている血液を送り込むポンプ役です。
そういう機能の類似性を持って、
ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋は
第二の心臓と呼ばれることもあります。
ここで心臓と呼ぶということは、
その役目として体に血液を届けるというものが
第一にあるということを示しています。
新型コロナウィルスが恐ろしいのは
この血液、および血管を免疫の暴走などによって
詰まらせたり、炎症を引き起こしたりすることです。
つまり体中の至る所に対して関わりがあるし、
そのポンプ役である心臓との関連も気になります。
スタンフォード大学の西賀雅隆先生は
(※2017年まで京都大学在籍)
心臓血管疾患⇔新型コロナウィルスの関連について
示されています(1)。
すなわち、
心臓血管疾患があると
新型コロナウィルスに対するリスクが高まり、
逆に新型コロナウィルスに罹患することで
初めて心筋障害、不整脈、
冠動脈不全症候群、、静脈血栓塞栓症など
心臓に関する代表的な疾患を引き起こす可能性があること
が示唆されています(1-6)。
実際に過去のSARS, MARSなど同類の呼吸器疾患ウィルス
においても同様に心臓血管疾患が確認されています(7,8)。
その頻度は海外の例でみれば決して低いものではありません。
肥満、高血圧、糖尿病、動脈硬化など
他の血液、血管の状態が通常よりも悪いと
そのリスクは高まる可能性も考えられます。
これらの疾患の原因は確定的ではないと思いますが
〇サイトカインストーム
〇使用されている薬の副作用
〇上述したような既往歴
△直接的なウィルス感染
などが疑われています。
(参考文献(1) Fig.2参照)
ただし、直接的なウィルス感染に関しては
懐疑性がやや強いとされています。
新型コロナウィルスで亡くなられた方において
心筋障害による関与が所見されなかったため
直接的な心臓不全ではないという見方があります(9,10)。
そうすると免疫的な機能不全によって
影響を受けた可能性が考えられると思います。
実際に心臓の細胞の中で
免疫細胞は10.4%を占めると言われています(11)。
サイトカインが直接的に心臓血管に作用した可能性がありますが、
心臓にある免疫細胞が心臓、およびその付近にある
血管の状態に何らかの影響を及ぼした可能性は否定はできません。
一方、
新型コロナウィルスの細胞感染に関連があるとされる
ACE2受容体の数ですが
①周皮細胞(血管の周りにある細胞)
②線維芽細胞
と順に多くなっており心筋細胞は少ないと言われています(11)。
後、特記しておきたいのが
子供が罹患する川崎病についてです。
突然の高熱が数日続き、目や唇の充血、
身体の発疹、手足の発赤(=赤くなること)、
首リンパ節の腫脹など様々な症状を惹き起こします(12)。
軽いものだと目の充血、軽い発疹、微熱程度で
継続するものもあります。
初期は急性熱性疾患(急性期)として全身の血管壁に炎症が起き
心臓の血管での炎症により、冠動脈の起始部近くと
左冠動脈の左前下行枝と左回旋枝の分岐付近に瘤が出来やすい
ということです。
心臓と血管の炎症に関わることから
新型コロナウィルスと川崎病が関連があっても
不思議ではありません。
ただ以前メディアで日本の医師の方が言われていましたが
日本ではまだ確認されていないということでした。
しかし疫学では
欧米に比べると日本をはじめとするアジアに多い
と言われています。
川崎病に関しては少なくとも日本では
その後血管の状態の定期的な観察は必要ですが、
治療法、ガイドラインはしっかりしていると認識しています。
イギリスでは
4歳から14歳までの8人の子供に対して
川崎病に似た症状が現れたので、
新型コロナウィルスの感染有無を調べたところ、
5人が陽性だったとされています(13)。
日本でも子供の感染は確認されているので
そういった症状がないかどうか?
というのは継続的に注視していく必要があると考えます。
あるいは川崎病に罹患している子供に対する
新型コロナウィルスに関するリスク管理も同様です。
新型コロナウィルスの薬の副作用が
心臓血管とかかわりがあるかどうか?
というのはまだデータが不足していますが、
現状での報告についてまとめられています。
(参考文献(1) Table2より)
日本で承認されている
レムデシビルについては
心臓血管に関する副作用は
「Not common(共通してみられない)」
しかしデータが不足していると評されています。
(参考文献(1) Table2より)
後は、心臓血管に障害が出たり、
あるいは後遺症としてそれが現れた時に
どのように治療、ケアしていけばいいか?
という点に関して
私自身、追加調査の必要性を感じています。
以上です。
(参考文献)
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いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
抗体、細胞内のタンパク質、遺伝子などに作用する薬剤、
腸内にいるような善玉細菌、善玉ウィルス
特定の栄養素、
特定の細胞(免疫細胞、CAR-T細胞など)
エクソソーム、サイトカインなどの小胞などを
ナノ粒子、マイクロ粒子などの中に任意に封入して
標的細胞に特異的に発現している細胞表面受容体に
特異的親和性を持つような装飾因子を
ナノ、マイクロ粒子の表面に多く作製できたとしても
それを生体内に入れたあと
その状態が保持されるかどうかわかりません。
いろんな意図しないタンパク質などが
ナノ粒子の周りについて、
それが邪魔をして特異性を失わせることも
すでにナノ粒子を使った薬剤輸送の試みの中で
知られています(1-8)。
しかしここである疑問が生じます。
体内に自然にある細胞、
あるいはウィルスなどは体内に入って
その特異性をなぜ発揮できるのだろうか?
ということです。
この問いに関して未知の部分もあると思いますが、
コロナウィルスの装飾因子であるSタンパク質は、
そういった血液など体内に大量に存在するタンパク質の
付着を防ぐように表面積の40%は多糖で覆われています。
(ref.(11)、Figure.1の海藻のような部分)
従って、特異性を発揮するエピトープ(結合部位)は
それらの保護構造の間から顔を出すようにあって、
周辺環境によって擾乱されにくい構造になっています。
この多糖によるコーティングは
薬剤の輸送において検討されており、
特定の組織への標的性を強化するといわれていて
循環上の安定性が高いといわれています(9)。
一方、
ポリエチレングリコールで表面処理することは
正の表面電荷を下げ、ゼータ電位を下げ、
ナノ粒子の安定性と生体との互換性を挙げる
といわれています(10)。
このようなモフォロジーはナノ粒子の周りに
親水性の層を生み出し、立体斥力により
プロテインの吸着を防ぎます(9)。
このポリエチレングリコールコートの代替として
多糖コーティングが挙げられています(9)。
今述べたような
〇親水性〇電荷を下げる〇ゼータ電位を下げる
ということがポイントです。
ゼータ電位とは粒子表面付近での電位の勾配
のことを示していて、
それが大きいと大きな引力が働きます。
従って、ナノ、マイクロ粒子に
標的細胞特異的に発現している受容体に
特異的親和性を持つように結合部位を設計した
タンパク質などの物質を粒子表面に
多数装飾するときに
ウィルスのように装飾物質自体に
多糖の構造が複合体として存在するような構造にしたり
あるいは、持続性のある表面コートをすることで
冒頭で述べたナノ、マイクロ粒子の
生体内での意図しないタンパク質の付着を
防ぐことができる可能性があります。
以上です。
(参考文献)
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いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスの発症が2019年12月に確認されて
翌年2020年3月にはそのワクチンに対する治験が始まりました。
現在180のワクチンが治験段階にあります。
フェーズⅢの最終段階の治験のワクチンも数種類あり
数か月後には提供が可能かもしれない
という見方もあります(1)。
従来のワクチンでは通常開発まで15年くらいの
時間を必要とするといわれています。
治験前の段階で5年、
治験自体も短くても5年はかかるといわれています。
それを新型コロナウィルスのワクチン開発では
10か月~1年半で行おうとしていることから、
従来では考えられないような速度で進んでいます。
(参考文献(1), Fig.1参照)
従って、従来よりもウィルスと生体内での作用における
詳細な理解、多面的な解析、評価など
今まで蓄積してきた科学技術を結集して分野横断的に
世界で団結して開発に臨む必要があると考えます。
基本的に一人当たり間隔をあけて
ワクチンは2回接種します。
従って必要なワクチンの量は世界で160億個になります。
WHOもワクチンの包括的に確保に動いていますが、
ワクチンによる抗体の維持が永続的ではない
というデータが出ていますから、
インフルエンザのように毎年仮に接種するとなると
毎年それくらいのワクチンの量を
継続的に世界に提供する必要があります。
そうした場合に単に数を作れるだけではなく
資金的な面の課題も出てくると思います。
ワクチンの種類はいくつかあります。
大枠では
〇増殖能力をなくしたウィルスそのもの
〇受容体結合面に結合するタンパク質そのもの
〇ウィルスのような形をしたもの
〇抗体をつくる設計図(DNA、RNA)
(参考文献(1), Fig.3参照)
その中で今治験最終段階(フェーズⅢ)にあるのは
〇不活性化したコロナウィルス
〇複製不能にしたウィルスをベースとしたワクチン
(アストラゼネカ社(さん))
〇RNAワクチン(ファイザー社(さん))
(参考文献(1), Fig.4参照)
※括弧内は日本のワクチン供給と関連がある企業
です。
以下、参考文献(1)で個別に挙げられている
ワクチンについての説明です。
-----
〇Sinovac社(さん) CoronaVac
(治験ナンバーNCT04456595)(3)
・不活性化ウィルスワクチン
・現在フェーズⅢ
600人の健康な人に対する調査(2)
・90%の人が血液中で抗体が検出可能
・18~39歳の人が高齢の方よりも抗体反応が良い
・グレード3の副作用は確認されず
-----
〇CanSino社(さん)AdV5-based vaccine
・複製不能AdV5ベースウィルスワクチン
・中国で一部ライセンスされている
フェーズⅡのデータ(NCT04341389)(4)
・59%の人が血液中で抗体が検出可能(高ドープグループ)
・AdV5事前免疫がある人は反応が弱い
・グレード3の副作用は9%確認(高ドープグループ)
・現在フェーズⅢで評価
((治験ナンバーNCT04526990, NCT04540419など)
------
〇AstraZeneca社(さん)ChAdOxnCoV-19
・複製不能ChAdOx1ベースウィルスワクチン
・オックスフォード大学、Serum Institute of Indiaと
共同開発
・現在フェーズⅢ※複数国で
(治験ナンバー:ISRCTN89951424, NCT04516746)
フェーズⅠ/Ⅱのデータ
(治験ナンバー:NCT04324606)(5)
・1077人(18~55歳)
・接種14日後に高い免疫応答、56日継続
・副作用、倦怠感、筋肉痛など回復する
発熱のケースは少ない、迅速に回復
-----
〇Moderna社(さん) mRNA-1273
・mRNAベースワクチン
・現在フェーズⅢ(治験ナンバー:NCT04470427)
報告データ(6)
・接種15日後には免疫応答あり
・半数以上が副作用を経験
高ドープグループでは重篤な副作用も報告される
-------
〇Pfizer社(さん)(BNT162b1,BNT162b2)
・BioNTech社(さん)と共同開発
・現在フェーズⅢ(治験ナンバー:NCT04368728)
フェーズⅠ/Ⅱのデータ(7)
・45人(18~45歳)(治験ナンバー:NCT04368728)
・2回目の接種後高い免疫応答あり
・最適だと考えられる30μgにおける副作用
熱、倦怠感、頭痛、悪寒など
程度はほぼ軽度が中程度。
------
〇Novavax社(さん)NVX-CoV2373
・ナノ粒子ワクチン
・現在フェーズⅡ(治験ナンバー:NCT04533399)
フェーズⅠのデータ(8)
・131人(18~59歳)(治験ナンバー:NCT04368988)
・2回目の接種後高い免疫応答
・5μgと免疫補強剤が最適だと考えられる
・最適な条件の副作用
筋肉痛、倦怠感、関節痛などは所見されるが
発熱の副作用はない
特に高齢の方に対するワクチン接種においては
高い中和能が必要であるということは
インフルエンザでは明らかになっています(9,10)。
高齢の方への接種にかんしては
Sinovac社、Pfizer社に関しては
改善が必要かもしれないと考えられています(1)。
逆に子供は免疫応答がよいために
リスクとベネフィットの天秤を考えた時に
副作用のリスクが大きくなる可能性があるため
大人と比べて摂取分量を減らすなどの
調整が必要であるとされています(1)。
従って、日本で供給されるワクチンが複数であれば、
年齢別にワクチンの種類、あるいは接種の条件などを
検討する必要性があると考えられます。
以上です。
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DOI:10.1038/s41586-020-2639-4 (2020).
(8)
Keech, C. et al.
Phase 1-2 Trial of a SARS-CoV-2 Recombinant Spike Protein Nanoparticle Vaccine.
N Engl J Med,
DOI:10.1056/NEJMoa2026920 (2020).
(9)
Dunning, A. J. et al.
Correlates of Protection against Influenza in the Elderly: Results from an Influenza Vaccine Efficacy Trial.
Clin Vaccine Immunol 23, 228-235,
https://doi.org/10.1128/CVI.00604-15 (2016).
(10)
McElhaney, J. E. et al.
Granzyme B: Correlates with protection and enhanced CTL response to influenza vaccination in older adults.
Vaccine 27, 2418-2425,
DOI:10.1016/j.vaccine.2009.01.136 (2009).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
このシステムでナノ粒子、マイクロ粒子の中に
封入するのは一般に言われる薬剤だけではなく、
免疫細胞などの特定の細胞や
サイトカインなどの小胞
善玉ウィルス、善玉腸内細菌なども考えられます。
それだけではなく、
特定栄養素なども考えられます。
細胞は分化、成長、相互作用するときには
エネルギーが必要なので、
そのエネルギーを細胞質内にある
ミトコンドリアなどを通して得るためには、
特定の栄養素による代謝が必要です。
そのエネルギーが転写、翻訳を促し、
それによってたんぱく質などを生み出します。
しかし、
病因となっている細胞は
このような代謝サイクルが異常な状態で
そのため栄養バランスが崩れています。
従って、
その栄養素のバランスを整えるために
任意の場所に特定の栄養素をナノ、マイクロ粒子で
保護しながら届けることは
一つの治療アプローチとして成立する
可能性があります。
T細胞はずっと抗原提示を行い免疫機能を
発揮し続けていると「疲弊して(exhaust)」
その機能を失う状態になると言われています。
それを「T cell exhaustion」といいます。
この状態は永続するものではなく回復することもあり、
T細胞が遺伝子的な事も含めて
どのように機能、形質変換するのか?
あるいはその機能が戻る時に生じる生理過程などを
理解することは大切です。
ただ、癌組織のように異常な成長、ストレスがあって
それに体が対峙するときには、
例えば、その攻撃を担う一つである
CD8+T細胞は相当なストレスがあるのだろうと思います。
そうした中で「疲弊して機能を失うこと」は
ある程度避けられないと考えます。
そうした時に
ヘルバーT細胞、NK細胞、マクロファージといった他のT細胞
B細胞による抗体、サイトカインなどの小胞による信号など
総合的なアプローチによって
ストレスを分散させる必要があると思います。
一方で、
癌細胞自体に栄養素の偏りがあることと
上述したexhausted T細胞にも代謝の改変があることから
その局所での栄養状態が同時に大切になると思います。
そうした観点から
疲弊したT細胞において
どのような代謝的な異常な特徴があって、
それを緩和するための栄養学的な観点を探ることは大切になります。
それを細胞特異性を持った薬剤輸送システムにおいて
薬剤の代わりに特定の栄養素を
exhausted T細胞に特異親和性を持たせて
排他的に運ぶことによって
元々の良い栄養状態に戻せないか探りたいと思っています。
疲弊T細胞は栄養状態が不足しており
細胞内の代謝の役割を果たす
ミトコンドリアの呼吸、解糖機能が弱るといわれています(2-5)。
解糖とはグルコースをビルビン酸に分解する過程で
エネルギーを生物が使いやすい形に変換するものです。
ここから得られたエネルギーは
タンパク質を細胞内にあるDNA,RNAによる
遺伝情報に従った転写、翻訳を経て生み出す際に
必要なものです。
従って、細胞の活動には欠かせないものですが、
その機能が弱るということは、
T細胞の免疫機能としての活性化が失われるということです。
従って、代謝的なアプローチをとる際には、
「疲弊したT細胞が使いやすいような」
栄養素を疲弊したT細胞だけが認識できるように
排他的に供給することが大事です。
(ex.小胞に包まれたままエンドサイトーシスさせる。)
あるいはその近接した場所で放出して
確率的に多くの栄養素にアクセスできるようにすることです。
周りの細胞との相互作用もあります。
例えば周りの存在する癌細胞は
乳酸塩の分泌を促進させて
その環境内が乳酸塩リッチな状態になります。
これがT細胞の増殖や機能を失わせると言われています(6)。
乳塩酸塩はビルビン酸、NADH/NAD比のバランスを崩し
それによって好気性解糖を阻害すると言われています(7)。
NADH/NAD比は酸化還元反応に関わり、
その中で電子の生成に関わっているので、
ファンデルワールス力で
細胞内の動的機序に関わる要因の一つだと考えました。
コレステロールレベルもCD8+T細胞の機能に関わります。
T細胞受容体のクラスタリング
(複数の受容体が束になって結合する事)
免疫的シナプスに影響を与えるといわれています。
コレステロールレベルが上がれば、
CD8+T細胞の機能は向上すると言われています(8).
上述した栄養素としての糖に関して
グルコースの接種能力がexhausted T細胞では
弱くなるといわれています(9-11)。
OXPHOS、ATPなど細胞の活動エネルギー源となる
プロセスが弱くなることから
「Metabolic exhaustion」とも呼ばれます(11)。
つまり、T細胞が疲弊する大きな要因として
「栄養不足」というのが挙げられる可能性が示唆されます。
グルコースの分解だけではなく
取得能力も落ちるということですが、
細胞外から細胞内に脂質2重膜を通して、
取り込むときにどのような経路か?
(ref.(1) Fig.4の緑のピーマンのような受容体)
例えばそれが受容体を介するのであれば、
その受容体を亢進させるような働きが機能を改変させる可能性もあります。
あるいは、癌細胞との代謝のバランスにも依りますが、
局所的な周辺環境内のグルコースレベルを
ナノ粒子による糖の排他的輸送によって上げる事ができれば
継続的にストレスを受けるT細胞への栄養供給が
改善される可能性があります。
------
※
血糖値を制御するのは
Gタンパク質共役受容体G-protein-coupled receptors
によるとされています。
それが細胞膜に貫通しているとあるので
この受容体が共通で関与している可能性もあります。
-------
このような栄養武装はタンパク質の合成を
細胞内で担っている小胞体にもストレスを与えます。
それによってたんぱく質の合成の際に
ミス、変異が生じるとされています(1)。
他方、メチオニンからの炭素代謝は
S-アデノシルメチオニンを生み出し
これはDNAのメチル化を制御する物質なので
後天的な細胞の機能変化において
重要な役割を果たしていると考えられます。
しかしメチオニンの代謝が
T細胞が「疲弊する過程」でどのように変わっているか
という点については不明な部分が多い
とされています(1)。
特にエネルギー源となる糖
あるいは免疫機能を高めるコレステロールなどを
どうやってT細胞に届けるか?
という点が大切ですが、
少なくとも糖に関しては
非常に難しさを孕んでいます。
癌細胞は異常な解糖系の活性化(Warburg効果)があるため
固形癌組織に浸潤したT細胞に
糖を届けようと思っても、
「優先的に」癌細胞がその糖を消費してしまう
可能性があります。
T細胞は癌細胞の中に埋まっているわけですから
局所的に糖を供給したとしても
周辺の癌細胞に食されてしまう可能性があります。
従って、T細胞の中に入るまで
小胞などによって糖を保護しておいて、
T細胞の中で初めて小胞が破れて
糖が供給されるような排他的な供給システムが
必要だと考えられます。
そうした時にエンドサイトーシスが不可欠となります。
癌細胞にはなくT細胞だけに発現している受容体を使って
糖やコレステロールが封入されている小胞を
供給するためには、
特異的受容体に感受性が高い装飾を施し
その結合の中でエンドサイトーシスさせる必要があります。
実際に、生体内に自然に存在する小胞の
エンドサイトーシスのシステムは
癌細胞の例ですがあるとされています(12)。
これを模した形で栄養素を入れるという機能を加えて
「T細胞だけに」供給できれば
癌組織の免疫機能状態は代謝的アプローチによって
変わってくる可能性があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Fabien Franco, Alison Jaccard, Pedro Romero, Yi-Ru Yu & Ping-Chih Ho
Metabolic and epigenetic regulation of T-cell exhaustion
Nature Metabolism (2020)
doi.org/10.1038/s42255-020-00280-9
(2)
Bengsch, B. et al.
Bioenergetic insufficiencies due to metabolic alterations regulated by the inhibitory receptor PD-1 are an early driver of CD8+T cell exhaustion council.
Immunity 45, 358–373 (2016).
(3)
Schurich, A. et al.
Distinct metabolic requirements of exhausted and functional virus-specific CD8 T cells in the same host.
Cell Rep. 16, 1243–1252 (2016).
(4)
Fisicaro, P. et al.
Targeting mitochondrial dysfunction can restore antiviral activity of exhausted HBV-specific CD8 T cells in chronic hepatitis B.
Nat. Med. 23, 327–336 (2017).
(5)
Sugiura, A. & Rathmell, J. C.
Metabolic barriers to T cell function in tumors. J.
Immunol. 200, 400–407 (2018).
(6)
Fischer, K. et al.
Inhibitory effect of tumor cell-derived lactic acid on human T cells.
Blood 109, 3812–3819 (2007).
(7)
Brand, A. et al.
LDHA-associated lactic acid production blunts tumor immunosurveillance by T and NK cells.
Cell Metab. 24, 657–671 (2016).
(8)
Wei Yang, Yibing Bai, Ying Xiong, Jin Zhang, Shuokai Chen, Xiaojun Zheng, Xiangbo Meng, Lunyi Li, Jing Wang, Chenguang Xu, Chengsong Yan, Lijuan Wang, Catharine C. Y. Chang, Ta-Yuan Chang, Ti Zhang, Penghui Zhou, Bao-Liang Song, Wanli Liu, Shao-cong Sun, Xiaolong Liu, Bo-liang Li & Chenqi Xu
Potentiating the antitumour response of CD8+T cells by modulating cholesterol metabolism.
Nature volume 531, pages651–655(2016)
doi.org/10.1038/nature17412
(9)
Bengsch, B. et al.
Bioenergetic insufficiencies due to metabolic alterations regulated by the inhibitory receptor PD-1 are an early driver of CD8+T cell exhaustion council.
Immunity 45, 358–373 (2016).
(10)
Schurich, A. et al.
Distinct metabolic requirements of exhausted and functional virus-specific CD8 T cells in the same host.
Cell Rep. 16, 1243–1252 (2016).
(11)
Scharping, N. E. et al.
The tumor microenvironment represses T cell mitochondrial biogenesis to drive intratumoral T cell metabolic insufficiency and dysfunction.
Immunity 45, 701–703 (2016).
(12)
Andreas Möller & Richard J. Lobb
The evolving translational potential of small extracellular vesicles in cancer
Nature Reviews Cancer (2020)
doi.org/10.1038/s41568-020-00299-w
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスにおける抗体による
獲得免疫をワクチンだけではなく
罹患によって自然に生み出されたものも含めて
理解するためには、
Sタンパク質の構造的な理解、解析が重要になります。
参考文献(1)ではヒト胎児腎細胞293(HEK293細胞)
の中で作られた糖鎖生物学、3次元構造をベースとして
新型コロナウィルスから生まれたSプロテインの発生期の
糖型の構造解析を行い、
それに合わせて分子動力学計算(molecular dynamics simulation)
糖たんぱく質からなるSプロテインの抗原性への
影響の程度の評価をされています。
Sプロテイン内に存在する多糖は
広域において分布し、
抗原認識から遮蔽されるように守られていますが
ACE2受容体結合面(RBD)は例外的に露出されています。
どれくらい遮蔽されているかは
特異的な糖の型に対しての感受性は低いとされています。
この表面を覆う多糖は、
結晶粒界境界、へき開面を少なくとも2つ持つ
3量体からなるSタンパク質において
分子重量の17%を占め、
おおよそ40%の表面を抗原認識しないように覆っている
と考えられています。
このように表面を覆うことで
体内の免疫機能から逃れるように
様々な抗体を含むタンパク質のウィルス粒子へのアクセスを
外側にそらす(クローキングしている)
と考えられています(2-4)。
参考文献(1)にSタンパク質の構造が図示されています。
紫、橙、黄の「海藻のような」構造が
多糖であり表面の大部分を縫うように覆っている
ことがわかります。
それに対してタンパク質からなるRBD面が間から出ていて、
抗体の接続性の程度が赤色でグラデーションされています。
(参考文献(1)、Figure1より)
それに対して抗体がどの位置についているか?
SARS(2002年流行)、MARSと比較して図示されています。
これを見るといずれも抗体が結合している領域は
SARS、MARSとマクロなスケールでみれば、
共通しています。
それがFigure1の青〇で囲まれた部分であり、
そこには受容体結合面があるとされています。
(参考文献(1)、Figure2より)
例えば、アロステリックアンタゴニスト
(allosteric antagonist)
という薬剤の戦略があります。
活性部位とは違う領域に抗体を付けて
それによって受容体を不活性にしようという試みです。
下述するようにSタンパク質は構造変換して
あるいは変異が起こるので、
その動的機序を抑えるために、
構造を固定するために、
青〇で示されている以外のアクセスできる
タンパク質露出面に抗体を結合させることによって
将来的に脅威となるかもしれない
変異を防ぐことができるかもしれません。
Sプロテインでは他の受容体と同様に
「永続的ではない過渡な(transient)」?
構造変換を行うとされています。
へき開面で架橋されている有機物質が外れて
構造がオープンになると、
ACE2受容体への感受性が上がると言われています。
この時に表面を覆っている多糖がどのように
同様に構造変換するか?
という点が重要だと思います。
上述されているように糖型(glycoform)に対しての
感受性の低さが指摘されていますが、
大きく構造を変えた時に
表面を覆っている糖がどのように表面状態を変えるか?
という論点です。
このようなオープンになることも含めて
変異(mutation)が起こるとタンパク質が
どの程度糖化されるかというのは変わるということは
既に知られています(5,6)。
以上です。
(参考文献)
(1)
Oliver C. Grant, David Montgomery, Keigo Ito & Robert J. Woods
Analysis of the SARS-CoV-2 spike protein glycan shield reveals implications for immune recognition
Scientific Reports volume 10, Article number: 14991 (2020)
doi.org/10.1038/s41598-020-71748-7
(2)
Tate, M. D. et al.
Playing hide and seek: how glycosylation of the influenza virus hemagglutinin can modulate the immune response to infection.
Viruses 6, 1294–1316. (2014).
(3)
Helle, F., Duverlie, G. & Dubuisson, J.
The hepatitis C virus glycan shield and evasion of the humoral immune response.
Viruses 3, 1909–1932. (2011).
(4)
Marth, J. D. & Grewal, P. K.
Mammalian glycosylation in immunity.
Nat. Rev. Immunol. 8, 874–887 (2008).
(5)
Altman, M. O. et al.
Human influenza A virus hemagglutinin glycan evolution follows a temporal pattern to a glycan limit.
mBio https ://doi.org/10.1128/mBio.00204 -19 (2019).
(6)
Zost, S. J. et al.
Contemporary H3N2 influenza viruses have a glycosylation site that alters binding of antibodies elicited by egg-adapted vaccine strains.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 114, 12578–12583.(2017).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスにおける抗体による
獲得免疫をワクチンだけではなく
罹患によって自然に生み出されたものも含めて
理解するためには、
Sタンパク質の構造的な理解、解析が重要になります。
参考文献(1)ではヒト胎児腎細胞293(HEK293細胞)
の中で作られた糖鎖生物学、3次元構造をベースとして
新型コロナウィルスから生まれたSプロテインの発生期の
糖型の構造解析を行い、
それに合わせて分子動力学計算(molecular dynamics simulation)
糖たんぱく質からなるSプロテインの抗原性への
影響の程度の評価をされています。
Sプロテイン内に存在する多糖は
広域において分布し、
抗原認識から遮蔽されるように守られていますが
ACE2受容体結合面(RBD)は例外的に露出されています。
どれくらい遮蔽されているかは
特異的な糖の型に対しての感受性は低いとされています。
この表面を覆う多糖は、
結晶粒界境界、へき開面を少なくとも2つ持つ
3量体からなるSタンパク質において
分子重量の17%を占め、
おおよそ40%の表面を抗原認識しないように覆っている
と考えられています。
このように表面を覆うことで
体内の免疫機能から逃れるように
様々な抗体を含むタンパク質のウィルス粒子へのアクセスを
外側にそらす(クローキングしている)
と考えられています(2-4)。
参考文献(1)にSタンパク質の構造が図示されています。
紫、橙、黄の「海藻のような」構造が
多糖であり表面の大部分を縫うように覆っている
ことがわかります。
それに対してタンパク質からなるRBD面が間から出ていて、
抗体の接続性の程度が赤色でグラデーションされています。
(参考文献(1)、Figure1より)
それに対して抗体がどの位置についているか?
SARS(2002年流行)、MARSと比較して図示されています。
これを見るといずれも抗体が結合している領域は
SARS、MARSとマクロなスケールでみれば、
共通しています。
それがFigure1の青〇で囲まれた部分であり、
そこには受容体結合面があるとされています。
(参考文献(1)、Figure2より)
例えば、アロステリックアンタゴニスト
(allosteric antagonist)
という薬剤の戦略があります。
活性部位とは違う領域に抗体を付けて
それによって受容体を不活性にしようという試みです。
下述するようにSタンパク質は構造変換して
あるいは変異が起こるので、
その動的機序を抑えるために、
構造を固定するために、
青〇で示されている以外のアクセスできる
タンパク質露出面に抗体を結合させることによって
将来的に脅威となるかもしれない
変異を防ぐことができるかもしれません。
Sプロテインでは他の受容体と同様に
「永続的ではない過渡な(transient)」?
構造変換を行うとされています。
へき開面で架橋されている有機物質が外れて
構造がオープンになると、
ACE2受容体への感受性が上がると言われています。
この時に表面を覆っている多糖がどのように
同様に構造変換するか?
という点が重要だと思います。
上述されているように糖型(glycoform)に対しての
感受性の低さが指摘されていますが、
大きく構造を変えた時に
表面を覆っている糖がどのように表面状態を変えるか?
という論点です。
このようなオープンになることも含めて
変異(mutation)が起こるとタンパク質が
どの程度糖化されるかというのは変わるということは
既に知られています(5,6)。
以上です。
(参考文献)
(1)
Oliver C. Grant, David Montgomery, Keigo Ito & Robert J. Woods
Analysis of the SARS-CoV-2 spike protein glycan shield reveals implications for immune recognition
Scientific Reports volume 10, Article number: 14991 (2020)
doi.org/10.1038/s41598-020-71748-7
(2)
Tate, M. D. et al.
Playing hide and seek: how glycosylation of the influenza virus hemagglutinin can modulate the immune response to infection.
Viruses 6, 1294–1316. (2014).
(3)
Helle, F., Duverlie, G. & Dubuisson, J.
The hepatitis C virus glycan shield and evasion of the humoral immune response.
Viruses 3, 1909–1932. (2011).
(4)
Marth, J. D. & Grewal, P. K.
Mammalian glycosylation in immunity.
Nat. Rev. Immunol. 8, 874–887 (2008).
(5)
Altman, M. O. et al.
Human influenza A virus hemagglutinin glycan evolution follows a temporal pattern to a glycan limit.
mBio https ://doi.org/10.1128/mBio.00204 -19 (2019).
(6)
Zost, S. J. et al.
Contemporary H3N2 influenza viruses have a glycosylation site that alters binding of antibodies elicited by egg-adapted vaccine strains.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 114, 12578–12583.(2017).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
このシステムにおいて
インテグリンを一つの標的としたいと思っています。
その中で本日は発見、薬剤開発の歴史について
簡素ですがまとめたいと思います。
インテグリンが発見されたのは1984年です。
Michael D. Pierschbacher氏と
Erkki Ruoslahti(エルキ・ルースラーティ)氏
によりネイチャー誌より報告されました。
フェブロネクチンの細胞接着活性が
インテグリン受容体によって
強められるというものです(1)。
つまりこのフェブロネクチンという糖たんぱく質は
インテグリンと結合するということです。
これは現在24種類あるとされているインテグリンのうち
RBD面を結合部位としている種類のインテグリンです。
RBDは、
アミノ酸Arg-Gly-Asp(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)
の配列を意味します。
例えば、いくつかの悪性腫瘍と関連がある
インテグリンαvβ3はRBD面を結合面とします。
このフェブロネクチンは
Richard O. Hynes(リチャード・ハインズ)氏が
1973年に細胞接着分子として発見されています。
リチャード・ハインズ氏はアメリカの生物学者で
1997年にガードナー国際賞を受賞しています。
Michael D. Pierschbacher氏は
American Life Science Pharmaceuticals社でCEOをしています。
Erkki Ruoslahti(エルキ・ルースラーティ)氏は
アメリカのがんの生物学・生化学者で
1997年にガードナー国際賞、
2005年に日本国際賞を受賞しています。
このガードナー国際賞は
医学にたいして顕著な発見や貢献を行った者に与えられる学術賞で
医学に関する賞として最も著名な賞の一つとして知られています。
日本国際賞は
科学技術において、独創的・飛躍的な成果を挙げ、
科学技術の進歩に大きく寄与し、
人類の平和と繁栄に著しく貢献した人物に対して、
国際科学技術財団が授与する賞です。
日本におけるノーベル賞に匹敵する賞です。
従って、細胞接着分子が分かったのは47年前で、
インテグリンが発見されたのも36年前です。
また、共にガードナー国際賞が贈られていることから、
医学において大きな意味があったと考えられます。
さらに2020年に送られたガードナー国際賞は
理化学研究所名誉研究員、名古屋大学特別教授、京都大学名誉教授
の竹市雅俊先生です。
それも細胞接着分子カドヘリンであり、
細胞接着の機序という点において
インテグリンと同様に重要な役割を果たしています。
カドヘリンについても今後調査する予定です。
このインテグリンは
生理機能において重要な役割を担っている事がわかっています。
従って、インテグリンを標的とした治療は鋭意考えられてきました。
初めて、インテグリンの薬剤が承認されたのは
1994年でアブシキシマブ(abciximab)という薬です。
血小板凝集阻害薬で
結合するインテグリンの型は
αIIbβ3、 αVβ3とされています(2)。
血小板のインテグリンのβ鎖はβ3とされているので
血小板と高い親和性を持つ薬剤であるとされています。
処方されるのは
経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention)で
狭心症、急性心筋梗塞による心臓の冠状動脈の狭窄、閉塞病変に対して、
血管の内側から狭窄病変を拡張する、カテーテルを使った低侵襲的な治療
を施した時に
血液の凝固を防ぎ血栓のリスクを避けるために(?)
処方されると理解しています。
副作用は、出血で、消化管出血などが懸念されます。
通常血液は出血したら固まりますが、
その作用が抑制されるという理解です。
その後、血小板凝固阻害薬として
Eptifibatide、Tirofibanが認可されています(ref.(2),Table.1より)。
1994年にアブシキシマブ(abciximab)が承認された後
Ref.(2)が報告されている2016年時点で
ClinicalTrials.gov listsとして
80の臨床試験が行われています(2)。
その他、インテグリン標的治療薬としては
クローン病、潰瘍性大腸炎に対するものがあります。
インテグリンα4β7に親和性を持つ薬剤で
MLN02、Vedolizumabがあります。
このMLN02に関しては武田製薬工業社(さん)のNew releaseによれば
Crohn's Disease Activity Index (CDAI)が
70ポイント以上さがり、
副作用に関しても「well tolerated」
つまり耐容性良好であるという評価です。
これは2002年9月16日時点のレポートです(3)。
最も新しい2008年の報告でも
フェーズⅡですがクローン病に対して
投与量に応じた薬効が得られ、
「well tolerated」と評されています(4)。
従って、認可はまだであると考えられます。
一方、
Vedolizumabは武田製薬工業社がEUと米国に申請し
2014年5月20日にFDA(米国)によって承認されました。
対象は中程度から重症の
潰瘍性大腸炎とクローン病に対してです。
2014年5月27日にEU28カ国で同様に承認されました。
2018年7月に日本でも承認されました。
------
クローン病は指定難病96となっています。
指定難病とは
「日本において 厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の
臨床調査研究分野の対象に指定された疾患」
難病とは
「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない
希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり
療養を必要とすることとなるものをいう。」
とあります。
クローン病は口腔から肛門までの全消化管に
慢性的に肉芽腫性炎症が起こる疾患です。
原因ははっきりわかっていないですが、
免疫系の異常であるとされています。
10代から20代に多く見られ
日本の罹患者数は4万人以上とされています。
症状が良くなったり、悪くなったりすることがあり
場合によれば脂質制限などの食事制限が必要で
若い人がかかる病気ですから
長く付き合っていかないといけない疾患です。
一方、潰瘍性大腸炎は
大腸のみに起こる疾患です。
------
以上です。
(参考文献)
(1)
Michael D. Pierschbacher & Erkki Ruoslahti
Cell attachment activity of fibronectin can be duplicated by small synthetic fragments of the molecule
Nature volume 309, pages30–33(1984)
doi.org/10.1038/309030a0
(2)
Klaus Ley, Jesus Rivera-Nieves, William J. Sandborn & Sanford Shattil
Integrin-based therapeutics: biological basis, clinical use and new drugs
Nature Reviews Drug Discovery volume 15, pages173–183(2016)
doi.org/10.1038/nrd.2015.10
(3)
Takeda oncology news releases
Millennium Announces Phase II Data for MLN02 in Crohn's Disease
(4)
Brian G Feagan, Gordon R Greenberg, Gary Wild, Richard N Fedorak, Pierre Paré, John W D McDonald, Albert Cohen, Alain Bitton, Jeffrey Baker, Réjean Dubé, Steven B Landau, Margaret K Vandervoort, Asit Parikh
Treatment of active Crohn's disease with MLN0002, a humanized antibody to the alpha4beta7 integrin
Clin Gastroenterol Hepatol. 2008 Dec;6(12):1370-7.
DOI: 10.1016/j.cgh.2008.06.007
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
ワクチンでは、新型コロナウィルスに整合する
ように設計された抗体を病気になる前に接種し、
それを社会の少なくとも一定割合の人にそうすることで
集団免疫が生まれ、社会の中での
新型コロナウィルスのリスクを下げることが
一つの目的です。
リスクが下がれば、もう一つの車輪である
経済の方を解放できるので、
それで停滞した流動資産を活性化させることができ
景気を回復させることができます。
そのような抗体は病気になる前だけに限らず
新型コロナウィルスに罹患した後でも
有効だと考えられます。
なぜなら抗体によって
体内でのウィルス増殖を防ぐことができるからです。
回復期の患者さんの血漿から取り出した抗体を使って
治療のするのはConvalescent plasma treatment
と呼ばれます。
アメリカが採用を検討しているというニュースがあり
ニューヨークよりその科学論文による
報告が出ているので紹介いたします。
(報告のポイント)
/条件/
39人の重症の患者さん
平均年齢:55歳
Mount Sinai病因:ニューヨーク市
2020/3/24~4/8
-------
/治療結果/
亡くなられた患者さん(治療から30日後)
血漿療法:約25%
※13日以降、亡くなられた患者さんなし。
対照群(血漿提供なし):約60%
(ref.(1) Fig.1参照)
-------
/抗体に関して/
血漿提供者のIgG抗体価に比例して
プラズマ単位のIgG抗体価が上昇
(ref.(1) Fig.3(a)参照)
血漿提供者のIgG抗体価に比例して
血漿の中和能の向上。
ただしばらつきは大きい。
(ref.(1) Fig.3(b)参照)
------
/副作用/
血漿を注入を原因とした
合併症、死亡は確認されていない。
ただし中程度のアレルギー
あるいは自然治癒するアレルギーの
副作用の可能性は考えられる。
ただしアナフィラキシーショックは非常に稀。
ただし血栓をすでに持つ患者さんへの投与は
リスクを伴う可能性がある。
---------
/その他、情報、コメント/
回復期血漿療法(convalescent plasma transfusion)の
効果についての結論はまだ出ていない。
他の感染症での回復期血漿療法の報告はある。
インフルエンザは1703人の患者さんの調査で
死亡のリスクが26→8%になっており
一定の効果が見いだせた(2)。
SARSでは死亡率低下の可能性が示唆される(3)。
ただ確定的にこの治療が効果があるかどうかは
言えない状態で今後のさらなる臨床試験、評価は
必要になるとされています。
以上です。
(参考文献)
(1)
Sean T. H. Liu, Hung-Mo Lin, Ian Baine, Ania Wajnberg, Jeffrey P. Gumprecht, Farah Rahman, Denise Rodriguez, Pranai Tandon, Adel Bassily-Marcus, Jeffrey Bander, Charles Sanky, Amy Dupper, Allen Zheng, Freddy T. Nguyen, Fatima Amanat, Daniel Stadlbauer, Deena R. Altman, Benjamin K. Chen, Florian Krammer, Damodara Rao Mendu, Adolfo Firpo-Betancourt, Matthew A. Levin, Emilia Bagiella, Arturo Casadevall, Carlos Cordon-Cardo, Jeffrey S. Jhang, Suzanne A. Arinsburg, David L. Reich, Judith A. Aberg & Nicole M. Bouvier
Convalescent plasma treatment of severe COVID-19: a propensity score–matched control study
Nature Medicine (2020)
doi.org/10.1038/s41591-020-1088-9
(2)
Luke, T. C., Kilbane, E. M., Jackson, J. L. & Hoffman, S. L.
Meta-analysis: convalescent blood products for Spanish influenza pneumonia: a future H5N1 treatment?
Ann. Intern. Med. 145, 599–609 (2006).
(3)
Mair-Jenkins, J. et al.
The effectiveness of convalescent plasma and hyperimmune immunoglobulin for the treatment of severe acute respiratory infections of viral etiology: a systematic review and exploratory meta-analysis.
J. Infect. Dis. 211, 80–90 (2015).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスのワクチンの目的としては
新型コロナウィルスの細胞内への浸入、増殖に関わる
Sタンパク質の細胞表面の受容体への結合能力を
弱めるためにそこに抗体を付けることです。
抗体を結合させるということですから
Sタンパク質の「特定の」面、
そのなかのいくつかの残基を通じて結合します。
その面をナノスケールと非常に微小な領域で
観察した時には、ワクチンの種類ごとに異なります。
また同じワクチンでも
全てにおいて同じ面に抗体が結合するか?
そういった固定観念の払拭も大切になると思います。
ワクチンがしっかりとした薬効を示すためには
抗体価、中和能が指標の一つとなりますが、
そのような数字で示されるデータだけではなく
構造的にどの面に、どのように結合しているか
可視化して明らかにすることは、
ワクチンの薬効に対して理解を深めるものであり、
それは新型コロナウィルスだけではなく
他のウィルスにも有効です。
それだけにとどまらず、
他の色んな疾患の治療薬を考える時にも有効です。
細胞表面には様々な受容体があり、
それぞれが重要な役割を担っているので、
その生理を利用して
病状の緩和側にシフトさせるために
受容体に対する抗体の開発が
鋭意行われているからです。
従って、今世界的に注目されている
新型コロナウィルスのワクチン開発において
構造的な解析結果を世界に公開していく事は
今後の医療全般に関して大きな意味を持つと拝察します。
免疫には交差性というのがあり、
例えば、2003年に流行したコロナウィルスと
現在流行している新型コロナウィルス
両方に効果を示す抗体もあります。
これらのコロナウィルスは高い類似性を持ちますが、
細かい構造を見ていった時には違いがあります(1)。
従って、そのような構造的な差異にも注目して
新型コロナウィルスに対して
効果的な結合面により高い親和性を持つ
抗体をテーラーメイドする必要性があります。
そこで新型コロナウィルスに対して効力の高い
(IC50:38mM)
H014という抗体に対しての構造解析を行っています(2)。
Sタンパク質に結合した抗体の構造的特徴として
以下の2つの事が挙げられます(2)。
①RBD(受容体結合面)のオープン構造を認識して
タンパク質とタンパク質のみの結合によります。
それは通常受容体に結合するモチーフと
異を放っていると考えられています(ref.(2) fig.2(B)より)。
以下、仮説も含みますが、
母体に対する様々なグレンバウンダリー、
へき開面があって、
クローズの状態ではそこに鍵がかけられていて
母体に多く接近、接触した状態ですが、
オープンというのは
システインのような鍵をかける、橋をかけるような
物質の結合がドメインで外れていて
構造の一部が母体から外れている状態だと認識しています。
(ref.(2) fig.2(A)上段左から3つ目と4つ目の比較より)
通常、オープンな構造のほうが
抗体認識しやすいといわれているので、
抗体が結合するときにはこのような構造変換が必要である
という認識です。
②エピトープ(結合部位)は通常1つと考えられますが、
このH014の結合部位は複数あって(paratope)
それぞれがループを形成しています。
(CDRL1 to -3 and CDRH1 to -3)
(ref.(2) fig.2(C)より)
さらに特異な重鎖があります。
重鎖はそのサブユニットが大きな分子量の
ペプチド重合体からなる部分です。
その結合に関わっている残基は58~65です。
この重鎖の結合がより強い相互作用を生み出し、
RBDと抗体との結合性を高めている事に貢献している
と考えられています。
抗体は通常ペプチドの分子量によって類別される
軽鎖と重鎖をサブユニットとして持ちますが、
結合面に関与している比率は
それぞれ32%、68%とされています。
さらにエピトープとして、
21の残基が結合に関与しています。
抗体H014とSタンパク質RBDとの結合を高めている
理由は上述したパラトープ、エピトープの
多数の結合因子によると考えられますが、
それらの結合の間に疎水効果が働いていることも
挙げられています。
この疎水効果は、水などの非極性分子が
凝集する性質であり、引力的相互作用をもたらします。
上述した特異なたんぱく質-タンパク質の結合の
間で働く相互作用はこの疎水効果であり、
それが互いに引き合う力を強め
結合性に貢献していると考えられます。
またSタンパク質のN終端面(NTD)に
H014抗体が結合した複合体に対して
細胞のエントリー受容体であるACE2が結合した
幾何構造が示されています。
H014抗体はこれらの結合界面に
部分的に挿入されるような位置に結合している
様子がわかります(ref.(2) fig.3(E)より)。
少なくとも抗体で中和するとは
結合そのものを防ぐという役割に限らない
ということです。
つまりエントリー受容体には結合するけど
そこからエンドサイトーシスに転換するような
過程を生み出さないように
結合状態を改変することにも貢献すると
推測しています。
例えば、インテグリンなどは、
細胞内に存在するタンパク質が
インテグリンの構造に関与する可能性が示唆されています。
新型コロナウィルスもエンベロープ膜内での
RNAなどの物質の作用によって、
外側に発現されているSタンパク質の状態に
影響を与える可能性があります。
例えば、感染性の強い状態とは、
Sタンパク質がより活性な状態、
構造の多くがオープンになっている
ということが挙げられるかもしれません。
このようなマクロスコピックな変化だけではなく
もっと細かいスケールでの活性化も考えられます。
あるいは、宿主細胞のACE2受容体の状態も
細胞内のタンパク質、DNA、RNA、酵素などの関与によって
活性状態が変わる可能性は考えられます。
こうした構造変化が、
ワクチンから生み出した抗体における
安定的な薬効を生み出すことの難しさを
生んでいる可能性があります。
そのバラつきの中で、個人差の中で
収束に向けた効果的な集団免疫につながるような
効果が求められます。
以上です。
(参考文献)
(1)
M. Yuan et al.,
Science 368, 630 – 633 (2020).
(2)
Zhe Lv et al.
Structural basis for neutralization of SARS-CoV-2 and SARS-CoV by a potent therapeutic antibody
Science 18 Sep 2020:
Vol. 369, Issue 6510, pp. 1505-1509
DOI: 10.1126/science.abc5881
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
このシステムの想定している一つの形は
球状の袋、胞があって、
その中に任意の薬剤を入れて、
その胞の表面に特定の細胞に接合するような突起を発現させて
体の狙ったところに任意の薬剤を
効率よく持っていくことです。
そういう背景にあって、
ある程度様々な種類の細胞に普遍的にあって、
細胞特異性を持つようないくつかの型がある受容体が
アンカーさせる標的として好ましいです。
その一つになるのが「インテグリン」だと
今は考えています。
すでにこのインテグリンは細胞特異的で
多様なことから、治療において標的となっています。
一つの型のインテグリンに特異性を持つような
モノクローナル抗体を設計して、
それを薬剤として投与します。
そのような研究が幅広くすでに行われています。
従って、すでに
体の任意の組織の任意の細胞に対して
どの型のインテグリンがあって
インテグリン表面の幾何構造、残基などは
ある程度明らかになっていると認識しています。
従って、このデータをフルに活用しながら
上述したような新規のシステムの早期実現に貢献したい
と考えています。
ゆえに、インテグリンの情報を広くとることは
出発点の一つとして重要な位置づけです。
北里大学のチームによる研究によれば、
PAタグをα4β7インテグリンのβ鎖のPSI面に挿入して、
Mn2+イオン依存性持つ
つまりMnイオンがあることで親和性が変わる
高PAタグ抗体(NZ-1)と反応させました(1)。
この抗体NZ-1を効率よく結合させるための条件
〇GTPase Rap1欠損
〇ケモカイン誘発
〇Rap1、Rap1V12の活性型の導入
というのが挙げられています。
※
PAタグは日本発のアフィニティーシステムです。
つまり、特定の結合部位に親和性を示すように
目印として結合させる物質と理解してます。
従って、それに対して抗PAタグ抗体というのが存在します(2)。
これは解析用に使われるもので、
この場合、Rap1が欠損した時の配座の改変を
証明するために使われたと理解しています。
前述したα4β7インテグリンのβ7鎖において
〇PSI面結合部位はRap1欠損細胞で露出される
〇融合面結合部位はRap1欠損細胞で露出されない
ということがわかりました。
この露出とは結合面において
インテグリンでは広く観察される配座変換(構造の変化)
を示しており、
Rap1-GDPからGDPに変換される
つまりRap1が欠損することによって
ドメイン(面)ごとに構造変換の有無がある、
特異性があることを示しています(1)。
白血球の亜型であるリンパ球は免疫と炎症において重要な役割を果たしており
インテグリンは結合、もしくは吸着させる受容体であり
リンパ球のインテグリンが連続してそれらの受容体を
上皮細胞の受容体に作用させることによって
上皮細胞の上を転がり(rolling)
やがて安定して結合(arrest)します。
それは腸管のような粘膜がある組織においても
同様でリンパ球を通じたそれらの動的機序は
α4β7インテグリンを介するといわれています(1,3)。
上述したようなRap1-GDPとGDP
つまりRap1の発言有無において、
T細胞のトラフィッキング、
つまりT細胞が腸の粘膜の分布は
リンパ球の吸着、捕獲の動的機序に大きく影響を与えます。
Rap1-GDPはリンパ球の粘膜表面のローリングを抑制する
と言われています。
つまりRap1がある事でリンパ球は
大腸の粘膜に留まることができます。
腸管膜リンパ節のT細胞の数は粘膜の許容性において
重要な役割を果たします。
Rap1-GDPは特定受容体を発現した分化したT細胞のうち
エフェクター、メモリーT細胞の
ローリングを抑制します。
エフェクター細胞は免疫機能を発揮して
体を防御する働きがあり、
メモリー細胞は、免疫記憶をしているので、
免疫機能を素早く発揮させるために貢献する細胞です。
これらの細胞の粘膜上でのローリングを抑制するということは
それを循環させて排出することを留めるという認識です。
つまりこれらの免疫機能において
重要なT細胞の粘膜上での数を多い状態に維持することが
できるということです。
さらに上述したようにリンパ球でも同じです。
つまり粘膜上のリンパ球の数も増やすことができます。
一方、
Rap1が欠損すると、
リンパ球の減少が起き、
さらに病原性を持つエフェクターT細胞を生み出し、
粘膜の状態を悪化させます。
このRap1の発現有無には、
α4β7インテグリンが関わっているとされています。
Rap1-GDPでRap1が発現されている状態では、
α4β7インテグリンが不活性な状態に束縛されるように
配座が固定されていると考えられます
このRapは細胞質性のタンパク質であり
それがGDPという酵素と合わせて
「細胞内⇔外で?」作用することによって
細胞表面に出ているインテグリンの構造が変わります。
α4β7インテグリンの結合面が露出しないように
例えば、どこかのドメイン間を架橋するような
有機物質が存在する可能性を考えました。
従って、もしRap1の発言有無の細胞を類別でき
そのα4β7インテグリンの構造を個別に調べることができたら
どこに差があるかわかる可能性があります。
例えば、
新型コロナウィルスのSタンパク質では
3量体構造になっていて、2つのへき開面が存在します。
そのへき開面が架橋されて固定されている状態と
そうではない状態で、
結合面の活性化が変わるとされています。
従って、
Rap1というたんぱく質は
α4β7インテグリンの開放度を変える
架橋となるような物質の発現有無を制御している
可能性を考えました。
またその他の関与の可能性のあるタンパク質として
また細胞骨格プロテインである
RIAMやタリンもα4β7インテグリン配座改変に
関わっている可能性が仮説として挙げられています。
従って、Rap1が欠損していて
その影響によって
腸粘膜の免疫機能が弱っている状態の時に、
Rap1の欠損によってα4β7インテグリンが
活性化されている状態を
どうやって不活性に持っていくか?
というのが治療の選択として考えられます。
そのために少なくとも2つの方略があります。
①α4β7インテグリンの構造変異を安定化によって防ぐ(1)。
②構造変異したα4β7インテグリンに特異的抗体を付ける。
これらの選択は、
大腸の代表的な疾患である
大腸炎や大腸がんの新たな治療方針として考えられます。
従って、腸に作用する腸内細菌をいれたナノ粒子に
活性化したα4β7インテグリンに特異的に結合するように
表面装飾すれば、
Rap1が欠損している免疫機能が落ちたところに
選択的にナノ粒子を運ぶことができる可能性があります。
ナノ粒子の中には
善玉腸内細菌、抗体などの薬剤を入れておいて
その病変部位を複数のアプローチで特異的に治療できれば
副作用が少ない治療を実現できる可能性もあります。
以上です。
(1)
Tsuyoshi Sato, Sayaka Ishihara, Ryoya Marui, Junichi Takagi & Koko Katagiri
Dissection of α4β7 integrin regulation by Rap1 using novel conformation-specific monoclonal anti-β7 antibodies
Scientific Reports volume 10, Article number: 13221 (2020)
doi.org/10.1038/s41598-020-70111-0
(2)
FUJIFILM 富士フィルム和光純薬株式会社 試薬
高い親和性・特異性と低コストを実現、ループ構造にも適用可能な新規アフィニティータグ
(3)
Yu, Y. et al.
Structural specializations of alpha(4)beta(7), an integrin that mediates rolling adhesion.
J. Cell Biol. 196, 131–146 (2012).
従来からそのインテグリンの機能を弱める、無効にするような
アンタゴニストが薬剤として提案されてきました。
しかし、配座が変化することから
部分的に逆に機能を強めるような効果が生まれ
それが致命的な免疫反応や細胞の増殖などを
招くことが懸念されています(1)。
従って、インテグリンと高い親和性を持ち、
純粋な型で機能を拮抗させるアンタゴニストの形成が
望まれています。
そのインテグリンは様々種類があり
なかでもαvβ3インテグリンは
転移性乳癌に特異的に発現されていると言われており、
それに高い親和性、特異性を持つアンタゴニスト
の開発が待たれます。
そのαvβ3インテグリンに対して
高い親和性を持ちアンタゴニストとして働く
①wild-type fibronectin(wtFN10),
※10th型、タイプ3のRGDドメインを持つ
②high-affinity mutant (hFN10)
の比較構造解析がされました(1)。
結合させた細胞:K562(骨髄性白血病細胞)
結果は②のほうが適している。
①は上述したRGDドメインを持ちますが、
このRGDドメインとは
アミノ酸Arg-Gly-Asp(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)
という構造を持ち、接着に関わる結合面です。
②が適している構造の特徴
①hFN10のRGD面のループの中のTrp1496
②wtFN10に誘発される構造変化を止めるβ3サブユニットのTyr122
のπ-π相互作用
※π-π相互作用
有機化合物分子の芳香環の間に働く分散力(ロンドン分散力)。
タンパク質、DNAの構造を安定化させる。
つまり、インテグリンとの結合の中での構造変化が
拮抗作用を失わせ、逆にインテグリンの作用を強めるような
従来の物理がありましたが、
π-π相互作用による安定化によって
あるいは構造変化を止めるβ3サブユニットによって
構造が安定し、アンタゴニストとしての機能を保持した
と考えられます。
結合に関与するイオン解析の中で、
構造の安定化を示すCaイオンの検出がwtFN10よりも大きい。
wtFN10においてはβ鎖におけるMnイオンの影響を受けた結合において
結合前のストークス径を0.3nmだけ大きくしたと言われています。
これは反応に水が関与する水和性を高めたことを意味します。
一方、hFN10ではこのストークス径は結合前後では
変わらなかったとされています。
構造的な部分を大きく擾乱させなかったことが
部分的なアゴニストの機能の発現させなかったことと
関係している可能性があります。
また結合構造的な特徴として
wtFN10ではpropellerと呼ばれる部位に結合していたのに対して
hFN10ではその結合が見られませんでした。
あくまで仮説ですが
プロペラと呼ばれる部分ですから
細胞の動的機序においてプロペラのように構造的な
ダイナミクスがある中で、そこにリガントが結合することで
動きによって結合親和性が落ちる可能性はあるのではないか?
と考えました。
hFN10では「動的な?」propellerに結合しないことで
安定性を保ったと考えられないかさらなる調査が必要です。
また静電の相互作用による安定化が
おそらく不活性な基底状態にαvβ3に維持、あるいは近づけ、
それによって細胞外から細胞内への信号を弱め
結果としてアンタゴニストとして働いた可能性を考えています。
(参考)
インテグリンは特異的な受容体で
基本的には不活性だと言われています。
この不活性であることが重要で
血液血小板や免疫細胞にあるインテグリンは、
血管壁に凝集したり、相互作用したりすることを最小化させます。
従って、このインテグリンに作用するためには
細胞外のドメインにおいて
構造的な変化が必要だといわれています。
そのドメインに結合できるモノクローナル抗体として
AP5,LIBS-1, LIBS-6があります(2,3)。
例えば、今述べた血液血小板は、
新型コロナウィルスなどで症状として現れる
血栓などと関係がありますが、
インテグリンαⅡbβ3を標的としたアンタゴニストが
それを防ぐとありますが、
その副作用として重篤な血小板減少症をおこす
とされています。
その副作用の割合は2%です(4)。
従って、新型コロナウィルスなどの血栓に対する
治療の中で血小板のインテグリンの抗体として
働くような薬剤を検討する際には
血小板減少という副作用を考慮する必要があります。
(参考文献)
(1)
Johannes F Van Agthoven, Jian-Ping Xiong, José Luis Alonso, Xianliang Rui, Brian D Adair, Simon L Goodman & M Amin Arnaout
Structural basis for pure antagonism of integrin αVβ3 by a high-affinity form of fibronectin
Nature Structural & Molecular Biology volume 21, pages383–388(2014)
doi.org/10.1038/nsmb.2797
(2)
Honda, S. et al.
Topography of ligand-induced binding sites, including a novel cation-sensitive epitope (AP5) at the amino terminus, of the human integrin β3 subunit.
J. Biol. Chem. 270, 11947–11954 (1995).
(3)
Frelinger, A.L. III, Du, X.P., Plow, E.F. & Ginsberg, M.H.
Monoclonal antibodies to ligand-occupied conformers of integrin α IIb β 3 (glycoprotein IIb-IIIa) alter receptor affinity, specificity, and function.
J. Biol. Chem. 266, 17106–17111 (1991).
(4)
Aster, R.H., Curtis, B.R., McFarland, J.G. & Bougie, D.W.
Drug-induced immune thrombocytopenia: pathogenesis, diagnosis, and management.
J. Thromb. Haemost. 7, 911–918 (2009).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
自己免疫疾患ではT細胞の表面にある
膜貫通タンパク質受容体であるCD28にアンタゴニスト
を結合させて、機能を抑制、拮抗させることが
重要であると言われています(1)。
しかし、ICOSという活性化受容体に
モノクローナル抗体を付けることも
同じように自己免疫疾患を抑制するとあります(1)。
例えば、T細胞表面には
4-1BB, CD40L, OX40, CD27, TCR, CD28, CTLA4, ICOS, PD1、、、
など様々な膜貫通受容体があり(ref.(1) fig.2参照)、
それらの複数が免疫機能に影響を与えていると考えられます。
従って、上述した自己免疫疾患に対する治療においても
それを緩和する方向に作用する受容体は1つではない
ということです。
おそらく医療においては、
一つの経路に頼るよりも
複数の経路で程度としては軽く少しずつ作用させる方が
副作用が少ない可能性があるのではないか?
と推測しています。
もちろんそれによって薬効を評価するプロセスが
非常に複雑になるという弊害はあります。
その中で、例えば複数の受容体に対して作用させる時には、
通常は融合タンパク質、抗体などを複数入れて、
標的となる細胞に個別に運ぶ必要がありますが、
それぞれが独立した形で供給されると
それぞれの薬剤としての生体内動力学が異なるために、
標的となる細胞に対しての同時供給に課題があると思います。
ナノ粒子を使った細胞特異的薬剤供給系統の
一つのメリットは
こうした細胞表面に作用する複数の抗体を
同時に封入して、標的となる細胞の近くまで運び
そこで同時に放出することで
意図した組織に、複数安定的に供給できることです。
ナノ粒子の装飾因子は
細胞特異的に発現している細胞表面にある物質に対して
高い親和性を持つように設計されていて
そこでアンカーされるところは1つ
あるいは近接した複数だけなので、
抗体を独立して複数運ぶよりも
特異性を上げられる可能性があります。
従って、自己免疫疾患であっても
全身でそれが起こっているのではなく
ある特定の体の組織、臓器などに
多く出ていることがわかっていて
そこに特異的に運びたい場合には、
ナノ粒子に作用が期待される抗体を複数封入して
その近くで放出するようにすれば、
任意の場所で、局所的に、複数の経路で治療できる
可能性があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Natalie M. Edner, Gianluca Carlesso, James S. Rush & Lucy S. K. Walker
Targeting co-stimulatory molecules in autoimmune disease
Nature Reviews Drug Discovery (2020)
doi.org/10.1038/s41573-020-0081-9
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
ワクチンの製作をするときに
新型コロナウィルスでは、
ウィルスの膜表面にある糖たんぱく質である
スパイク(Sタンパク質)の
ACE2受容体結合面(RBD)に結合親和性を示すような
中和抗体を体内で生み出すようなシステムを
構築する事を目的とします。
その時に、実際に罹患した人の
血液中から取り出した抗体をデザインの上で
参考にすることもあると思いますが、
一方で、Sタンパク質の構造をベースとして
抗体のデザインを考えるプロセスもあると思います。
あるいは、
どの過程で抗体を作る場合において、
それが実際にSタンパク質のどの部位に結合しているか
構造解析することは
実際に抗体価、中和能を評価することと
並列して求められることです。
そういった構造的な評価は、
効果的なワクチン開発のための論理的根拠の一つとなります。
従って、Sタンパク質を取り出して
それを低温電子顕微鏡などでナノスケールで
解析する必要がありますが、
実はこの過程に問題があります。
実際に解析装置に入れる前の段階で
熱にさらされたり、
機械的な圧力を受けたり、
冷凍-解凍のサイクルがあったり
することで本来持っている抗体結合前の
Sタンパク質の形状を保持することが難しいということです。
新型コロナウィルスのSタンパク質は
結合前の状態では「準安定状態(meta-stable)」
といわれています。
つまり、完全な安定状態にないために、
構造を変えてしまうことがあります。
構造が変わった状態で評価すると、
間違った解釈につながるために、
構造の安定化を施す必要があります。
実際に、糖たんぱく質の表面には
物質の表面にある宙に浮いたような結合の手である
ダングリングボンドのような
Residueというものがあります。
邦訳すると「残留物」という意味ですが、
「表面に露出している余った結合の手」と理解しています。
このようなResidueには番号が付けられていますが、
全てではないにしろ、
結合の手が余っていることで
「化学的に活性状態」と言えると思います。
仮説であり、追加調査は必要ですが、
このようなResidueが不安定な状態を生む
一つの要因となっていると考えてます。
もちろん、システインのように
物質のドメインを架橋するものがあって
それが切れて構造がオープンになることで
大きく形を変えるということもあると思います。
今述べたように構造解析のため
Sタンパク質を安定化させる必要があります。
そのためにいくつかの構造的ポイントがある
と参考文献では述べられています。
①プロリン(proline)置換
②二硫化物(disulfide)結合導入
③塩橋(salt bridge)導入
④キャビディー充填(cavity filling)置換
(参考文献(1).Fig.1参照)
特にSタンパク質の評価において重要な
S1タンパク質サブユニット(RBDがある部分)と
S2タンパク質サブユニット
(形状変化を経てエンドサイトーシスに関係する部分)
がありますが構造が環境によって変わりやすい
S2タンパク質サブユニットの
ナイーブな状態の保持が
①~④の対策を施すことによって
可能になったと理解しています。
①~④それぞれに対して
具体的な置換部位などが掲載されていますが、
こういった処理によって、
より実態に則した構造解析が可能になるものだと考えます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Ching-Lin Hsieh
Structure-based design of prefusion-stabilized SARS-CoV-2 spikes
Science 18 Sep 2020:
Vol. 369, Issue 6510, pp. 1501-1505
DOI: 10.1126/science.abd0826
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスで重症化した患者さんの
血液をECMOで血液に酸素を送り込むときに
その状態を見ることができますが、
白い乳液状のようなものがあり、
その原因は血栓ではないかと言われています。
このように血管、血液の損傷が表れることがあります。
そこで、どのようなガイドラインを持って
診断、あるいは治療していけばいいか?
を考えるときに従来から疾患として存在する
血管炎を参考にすることが
一つの方略として考えられます。
その血管炎の中で
新型コロナウィルスの病理に重なるような
免疫暴走を原因として発症する
抗好中球細胞質抗体関連血管炎
anti-neutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitides
ANCA-associated vasculitides
があります。
このANCA関連血管炎では腎臓が最も障害されやすい臓器
と言われています。
従って、これが当てはまるかどうかを考えることにおいて
新型コロナウィルスと腎機能の関係を
調査することは極めて重要です。
実際にアメリカ、イギリス、中国の報告によると
新型コロナウィルスで入院した患者さんのうち
17~43%の人が急性の腎臓障害が見られた
とされています。
また重症の患者さんんの場合には
さらにこの確率が上昇し61~76%と言われています(1,4)。
従って、
腎臓障害は多くのケースで診られるということで
日本の状況も気になります。
その中で新型コロナウィルスの場合には
人工呼吸器に関連した
血液中にあるヘモグロビンの動きの不安定性
(haemodynamic instability)
が虚血性の急性腎臓障害を引き起こしているかもしれない
という報告もあります(2,4)。
また新型コロナウィルスが細胞内に入って
増殖する経路として
ACE2エントリー受容体があります。
この受容体が腎臓に近接した尿細管(tubule)
に多く発現していることが確認されています(3,4)。
腎臓内部でのウィルスの検出はまだ確認されていませんが、
腎臓の内部の血管が硬くなる
glomerulosclerosis:糸球体硬化(症)は
新型コロナウィルスでも確認され、
HIV, parvovirus B19 (Parvo19), BK virus, cytomegalovirus (CMV)
など他のウィルス感染でも確認されています(4)。
従って、尿検査を代表する
腎機能のモニターは少なくとも
新型コロナウィルスの治療の中で必要になってくる
と考えます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Coca, S. G. et al.
Acute kidney injury.
NephJC http://www.nephjc.com/news/covidaki (2 August 2020).
(2)
Hirsch, J. S. et al.
Acute kidney injury in patients hospitalized with COVID-19.
Kidney Int. 98, 209–218 (2020).
(3)
Batlle, D. et al.
Acute kidney injury in COVID-19:emerging evidence of a distinct pathophysiology.
J. Am. Soc. Nephrol. 31, 1380–1383 (2020).
(4)
Anitha Vijayan and Benjamin D. Humphreys
SARS-CoV-2 in the kidney: bystander or culprit?
Nature Reviews Nephrology (2020)
doi.org/10.1038/s41581-020-00354-7

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