2021年9月18日土曜日

癌の重粒子線治療とその展望

//Background and My roadmap//---
 The important aim of cancer treatment is that we can increase five year survival rate of cancer patient in which cancer relapse rate is significantly reduced. My roadmap is not only increasing this five year survivals rate, but also improving quality of life up to healthy person level after cancer treatment. Furthermore, it is that any pain and suffering during cancer treatment are removed. 
 When I decide to cope with the cancer treatment, I set up my ultimate target, which is “the cancer treatment without any pain and suffering”. There are some opportunities so that I can set the challenging target. When “Nature Cancer” was begun in January, 2020, I read the passionate message of chief editor. I was impressed with the comment including enthusiasm for Nature Cancer publishing from Dr Alexia-Ileana Zaromytidou. Furthermore, the TV drama with cancer treatment started in this season in Japan. From these opportunities, my ultimate target on cancer treatment is emerged spontaneously. I can take advantage of my reading ability of academic article based on my long experience for this target. There are no persons reading academic article in an interdisciplinary and concentrated manner without focusing on publishing. I may think that some achievements could be generated from the new social position. My extremely challenging target - the cancer treatment without any pain and suffering – has existed at the back of my mind. Hence, I was able to discover “the cell-specific delivery system”. If I didn’t have the ultimate target for the cancer treatment, I may overlook this discovery in the article on dexamethasone. I believe that the specific drug delivery only at the cancer lesion not normal tissue makes the cancer treatment significantly efficient. Achieving this target and dream is the most important challenging for us. However, I need many global collaborations. Now, we try to exchange “mind” and “knowledge”, but I believe that we can directly make discussion in the future. Thank you.

//背景//---
癌治療において、化学療法、外科的治療、放射線療法は
最も主要に選択される治療方式です。
その中で
癌細胞だけダメージを与えるという標的性では
放射線治療の中で粒子線を使う治療が優位にあります。
特に重粒子線を使う場合には
癌細胞への相対線量が高まる事が示されています(2)。
今述べた様に副作用が少ないほか
〇通院治療が可能
〇難治性の癌治療が可能
〇手術が困難な場所の癌も治療可能
〇治療期間が短い
これらのメリットが挙げられています(2)。
痛みに関しては精査が必要ですが、
少なくとも治療期間が短い事は、
患者さんの治療の負担が少なくなることを意味します。
従って、苦痛のない癌治療を目指す上では
治療期間を如何に最小化できるか?
というのが一つの必須項目となります。
その上で痛みを減らしたり、痛みのメカニズムについて
神経系も含めて考えていく必要性が出てきます。
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Marco Durante, Jürgen Debus & Jay S. Loeffler 
(敬称略)からなるドイツ、アメリカ合衆国の医療研究グループは
放射線治療の粒子線のうち、重粒子線に焦点を当てて
その物理的特性、その医療応用における価値ある挑戦について
幅広く総括されています(1)。
本日は、その内容の一部を参照しながら
独自の視点、調査、考察を加え、
さらには細胞特異的輸送系統との
組み合わせの可能性について考えます。

//(私の)着目点、考察1//---
放射線治療において重要なのは
癌細胞に損傷を与えるエネルギー密度と位置解像度です。
言い換えれば、パワーの強い放射線を
狙いの癌細胞に正確に照射する事ができるかどうか?です。
逆に避けないといけないのが
癌細胞以外の正常の細胞を攻撃してしまうことです。
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放射線の種類、その中の重粒子の種類によって
深さ方向に対するビーム系に関する半値幅の変化や
散乱長などは決まります。
例えば、陽子よりも原子番号の大きい炭素イオンを照射すれば
照射ビームの正確性は3倍程度上がります。
しかし、正確性とエネルギー密度が上がる事は
標的の癌細胞以外の通常細胞に誤って照射された時の
副作用は非常に大きくなってしまう事を意味します。
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人の身体の中にある癌細胞が動く要因は色々考えられます。
〇患者さん自身が動く
〇測定装置が動く、振動する
〇外部磁場、電場によって振動する
〇ガイダンスする画像が動く
〇ガイダンスする画像がぼやける
〇照射ビームがずれる
〇細胞(癌細胞も含む)が動く
〇照射する事によって細胞が動く
〇環境変化(温度)などによって細胞が動く
、、、
このような正確性を下げる要因を一つ一つ取り除いていく
必要があります。

//(私の)着目点、考察2//---
身体の奥行は大体15cm~20cmくらいです。
参考文献(1) Fig.1bのデータから
炭素イオン線を使った場合のビーム半値幅は
1mm~3mmくらいです。
癌として治療が必要になるくらいの大きさが
仮に5mm~10mm以上くらいとします。
人の細胞の大きさが0.02mmくらいです。
そうするとある程度、腫瘍が塊になっていないと
治療の対象にはならないだろうという事が推測されます。
つまり、癌細胞が組織に散在している状態では
放射線による治療は適していないかもしれないということです。
従って、外科手術で切除が難しい箇所にある癌で
かつ腫瘍組織がビーム半値幅よりも大きな癌がある場合において
治療のメリットが出てくるだろうと考えられます。
しかし、癌は一か所にあるとは限らず
周りに播種、散在している可能性もあります。
そうした場合、外科手術と同じように
放射線治療で主要な腫瘍組織を取り除いたのち、
アドジュバントとして化学療法で周辺の小さな癌を取り除く
必要性が出てくるのではないかと考えます。
少なくとも周辺に癌細胞がある可能性があるので
放射線療法で癌細胞を画像診断から取り除けたことが
確認されたとしても、しばらくの間は
癌が周辺から再成長しないかどうかのチェックは必要だと考えられます。
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もう一つの視点としては、
癌細胞と通常細胞の境界が明確に出る組織、臓器、癌種と
そうではないものがあるのではないか?と仮説を立てています。
実際に私自身、様々な癌組織をミクロ、マクロに
観察したことがないので想像の範疇ですが、
例えば、肝硬変から肝臓がんに進行した場合は
肝臓癌である部分が肝臓組織に明確にでるか?
という疑問があります。
明確にでなければ、ビームの照準を合わせる事ができないので
放射線療法が適していない可能性も考えられます。

//コスト、装置開発//---
Therapy Co- Operative Group (PTCOG) databaseによれば
2019年終わりの時点でアジア、欧州で
炭素線を使った癌放射線治療が行われた人は
34,000人と言われています。
陽子線の場合は220,000人なのでおおよそ1/7です。
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重粒子線の治療の一番のネックはコストです。
アメリカでは医療保障が十分ではない事と
コストに見合った効果に対して疑いがあるのが現状です。
特に陽子線よりも重粒子である
炭素線の場合には加速器を3倍程度大きくしないといけない事(1)と
磁力を高める必要があるために装置のコスト、
あるいはフットプリント(大きさ)の問題があります。
従って、日本には千葉の量子科学技術研究開発機構QST病院を含め
6台しかないと言われています。
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まだ重粒子線を使った臨床効果の評価は
様々な癌に対して十分ではないと考えられます。
但し、炭素線は原理的に標的性が高いので
外科的治療を補う治療法として有力であると考えます。
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重粒子線治療装置を低コスト、コンパクトにするための
一つの重要な技術要素は高い効率の磁力発生器を生み出すことです。
その磁力は超電導電磁石が使われる事があります(5)。
超電導体は電気抵抗がゼロであるため
永久に電気が流れ続ける事と発熱の問題がないため
強力な磁力を発生させることができます。
実用化されている超電導電磁石はニオブチタン(NbTi)で
超電導転移温度は10Kであるとされています。
今述べた様に10Kと極低温にしないといけない事と
超電導材料が多く必要な事から
極低温にすることに対する環境設計、メンテナンスの問題や
それを含めた費用の問題が生じます(1)。
例えば、私が提案する
半導体界面の電子配置の2次元化(2次元電子ガス:2DEG)による
電子の高密度化を実現し、電子相関を高めることで
超電導転移温度を10Kから顕著に上げる事が出来ないか?
という事が考えられますが、
2次元系という空間制限的な問題から
適切な超電導電磁石(回路設計、大きさなど)が設計できるか?
という視点も一方であります。
また量が必要になったときのコストの問題もあります。
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いずれにしても今後の技術発展において
装置が小型化され、安価になれば、
豊富な臨床試験や症例の積み重ねによって
より重粒子線を使った治療が癌治療において有効に
利用されると想定されます。
Japanese modelとして
第五世代のアクセレーターは
幅20m、奥行き10m以内のコンパクトなサイズとなっています
最初のモデルの多さの40倍以下の大きさです。
(参考文献(1) Fig.4b)

//重粒子線の利点//---
参考文献(1) Fig.5より
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①低酸素状態になっている放射線に対して抵抗性を持つ
腫瘍組織に対する感度が高い。
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②放射線照射の後、腫瘍組織の再発、再形成に関わる
血管生成を抑える事ができる。
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③放射線治療と他の標的療法との相乗効果が大きい。
細胞特異的輸送系統との相乗効果が見込めるかもしれません。
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④リンパ球減少症の程度を照射によって下げる事ができる。
従って、免疫の低下を防ぐこと。
免疫療法との併用療法の効果を他の放射線療法に比べて
高める事ができる。
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⑤癌細胞の修復能力を低下させることができる。
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⑥細胞サイクルの中で放射線抵抗性を示すS周期の
癌細胞に対して感度が高い。
細胞の周期によらずダメージを与える事ができる。
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⑦線エネルギー付与。つまり単位長さ上がりの
癌細胞に作用するエネルギー量が高い。
また癌細胞に到達するまでのエネルギー吸収量が
相対的に少ないため他の組織のダメージを減らすこともできる。
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⑧散乱が少ない。それによって標的性を上げる事できる。

//臨床の例//---
(肉腫)
骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管等と言った非上皮性細胞由来の結合組織細胞に発生するがんで
通常は手術によって、腫瘍組織の周辺を包み込むように切除することが
一般的であるとされています。その理由は腫瘍組織の周りに
癌細胞が播種している可能性があるからです。
癌細胞を残さないように取り除くためには
ある程度、通常組織も含めて切除する必要があります。
その中でも再建術によって機能を温存できる場合が高い確率であります(3)。
しかしながら、頭蓋内にできた肉腫の中で
外科的に取り除くことが難しい
脊索腫、軟骨肉腫が重粒子線治療の対象になります(6)。
ドイツのハイデンベルグの
The Heidelberg Ion Beam Therapy Center (HIT)で
1998-2008年の間に行われた頭蓋内の脊索腫の
炭素線による放射線治療を施した155症例では
10年生存率が75%と高くなっています(7)。
しかしながら、副作用、安全性も含めて
他の治療方法に対して優位性を示すかどうかの
最終的な結論を出すにはもう少し時間がかかるとされています(1)。
---
(小児がん)
小児癌に関しては、癌組織の標的性の高さという意味では
外科手術>放射線療法>化学療法(抗がん剤)
となっています。
癌組織は周りの細胞へ散らばっている可能性を考えると
これらの治療が組み合わされることがあります。
アメリカや日本でも小児癌に対して
放射線治療を行う割合は高くなっています(1)。
しかし、
小児癌の場合難しいのが
「局所的に治療した場合、成長障害が起きる可能性がある」
ということです(4)。
ある特定の箇所に強い放射線を当てたりすると
その部分の成長が阻害されるために
その部分が脳であれば、その後の脳の組織形成に影響が出てしまう
可能性があるということです。
特に重粒子線で標的性を上げて治療する場合においては
癌切除後の組織の健全な成長のことを考慮する必要があります。
これは放射線治療に限らず、全ての事で言えることです。
小児癌に対して
特に成長において重要な脳神経系に関わる癌を
外科手術で切除した後の子供の脳の成長について関心があります。

//まとめ//---
癌は様々な軸
(遺伝子、場所、大きさ、微小環境、細胞周期、免疫耐性など)
での異種性から「Silver bullet(特効薬)」を
追い求める事は現実的ではない可能性があります。
個別医療の中での適切な検査、診断に基づいた
組み合わせによる治療が重要だと考えられます。
重粒子線による治療は
世界的に台数が限られる事と、コストの問題から
臨床評価もまだ十分には進んでいない段階です。
それを打破するためには
まずは安価で、コンパクトで、性能のよい
メンテナンスフレンドリーな
重粒子線放射線治療装置を開発することです。
私の高温(室温)超電導に対する継続的な貢献によって
単に技術的なことだけではなく、
産業界も含めた社会的関心につながればと考えています。
私が大切にする二つの事(癌治療、室温超電導)の
つながりを示してくれた
Marco Duranteさん, Jürgen Debusさん Jay S. Loefflerさん
に深く感謝いたします。 

//Cell-specific delivery system//---
Can we combine the advantage of heavy-ion radiotherapy and cell-specific delivery system? For example, can we take advantage of heavy-ion signal as a switch to release the drug from nano-particles or nano-sheet anchored to the specific cancer cell while implementing radiotherapy? Heavy-ion itself can kill cancer cell and the drug from nano-particles (with the surface protein specific to the target cancer cell) function as adjuvant for radiotherapy. To exploit the specific advantage of heavy-ion line, we can choose proper (strong) nano-carrier including living cell so that it can rapture or release the (inside) drug only when receiving the high-energy density beam.

(Reference)
(1)
Marco Durante, Jürgen Debus & Jay S. Loeffler 
Physics and biomedical challenges of cancer therapy with accelerated heavy ions
Nature Reviews Physics (2021)
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Author information
Affiliations
Biophysics Department, GSI Helmholtzzentrum für Schwerionenforschung, Darmstadt, Germany
Marco Durante
Institute of Condensed Matter Physics, Technische Universität Darmstadt, Darmstadt, Germany
Marco Durante
Department of Radiation Oncology and Heidelberg Ion Beam Therapy Center, Heidelberg University Hospital, Heidelberg, Germany
Jürgen Debus
German Cancer Research Center (DKFZ), Heidelberg, Germany
Jürgen Debus
Departments of Radiation Oncology and Neurosurgery, Massachusetts General Hospital, Boston, MA, USA
Jay S. Loeffler
Harvard Medical School, Boston, MA, USA
Jay S. Loeffler
(2)
九州国際重粒子線がん治療センターサガハイマット)
重粒子線がん治療とは
(3)
希少がんセンター長 川井 章
肉腫の手術
国立がん研究センター中央病院
(4)
淡河 恵津世(久留米大学 放射線治療センター 教授)
小児がんに対する放射線療法の特徴
(5)
Alonso, J. R. & Antaya, T. A. 
Superconductivity in medicine. 
Rev. Accel. Sci. Technol. 05, 227–263 (2012).
(6)
Weber, D. C. et al. 
Profile of European proton and carbon ion therapy centers assessed by the EORTC facility questionnaire. 
Radiother. Oncol. 124,  185–189 (2017).
(7)
Uhl, M. et al. 
Highly effective treatment of skull base chordoma with carbon ion irradiation using a raster scan technique in 155 patients: first long- term results. 
Cancer 120, 3410–3417 (2014).

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